クラス代表選考試合と言う、物凄く面倒くさい事に巻き込まれた俺のイライラは、もうそろそろ限界突破しそうであった。
試合する事が、決まった後俺と織斑に専用機が、与えられるとか言ってたが、俺には間に合ってるから貰うだけで、使わない。
そして、次の日俺は、昨日と同じ時間に武道場に来ていた。
ある程度、素振りを終えた後、竹刀を二つ持ち構えずに振り回す。
型にはまった動きは、嫌いな俺は、こんな適当な感じの動きが大好きだ、なので無双剣も決まった技はあるが、決まった型は、無い。
「昨日よりも、荒々しいな天凪」
「誰の所為だと、思ってるんすか、貴女は俺の出身中学知ってるはずですよね?」
「嗚呼、だが此処に来たらそんなのは、聞き入れられないからな、お前は特に」
「こんな事になるんなら、情報削除なんて頼むんじゃなかったぜ」
入学する事が、決定した俺は天災さんや紫苑、一歩に頼み俺の情報を消してもらったが、其れが裏目に出たようだ。
「はぁ、卒業しても当てはあるから良いですけど、今のISなんて本来なら触りたくも無い物ですからね」
「“今の”か」
織斑先生は、俺の言葉に何かを感じた様だったが、直ぐに振り払うと手に持っていた竹刀を正眼に構えた。
「いくぞ、昨日のリベンジだ」
「ええ、今回は完成版をお見せしますよ」
「「はぁああ!!」」
両方共、軽く言葉を終えると、声と共に剣戟を始めた。
「はぁ、はぁ、はぁ、くっ、やはり避けきれないか」
「幾ら、織斑先生貴女といえど、一日見たぐらいで避けられたら、無双の名が廃れますよ」
「一つ聞くが、如何してお前は、その剣を作ったんだ?」
まぁ、もっともな疑問だろう、幾ら俺の出身中学が特殊でも、人間離れした剣術を生み出す理由にならない。
織斑先生には、話しても良いかと思い話そうとするが、文の血塗れ顔が、頭をよぎる。
泣き出しそうになる自分を抑え、織斑先生に理由を話す。
「入学式のあの事件、死者の中に俺の幼馴染もいました」
「?!」
俺の口から出た言葉に、織斑先生は僅かに目を見開くが、直ぐに元の表情に戻った。
「襲撃があった時、俺は咄嗟に文の手を引き、守ろうとしました」
文の事は、知らないだろうが、織斑先生は幼馴染の名前と結論付けた様だった。
俺の話しは続く。
「鳴り響く銃撃音の中、文を抱き寄せたと思った時、文の奴が俺の横に飛び出したんです」
この話しをすれば、今でも思い出せる、手を引き守ろうとした文が、命と引き換えに俺の事を助けてくれた事。
「文は、俺に向かっていた銃弾に撃たれました、どう思った思います?長い間、一緒にいた幼馴染が、自分の眼の前で死んでいくのを、何で俺じゃないのか?!って軽く狂いましたよ、其れで、文に救われたこの命を守る為に、無双剣を作りました」
「‥‥‥そうか」
返ってきた織斑先生の声は、何時もよりも悲しみを孕んだ物だった。
「俺の剣は、誰かを守る為の物じゃない、俺自身を守る為の剣、文の代わりに生きている俺自身を守る為の剣、だから俺は、そう簡単に死ねないんです」
話しを続けながら、竹刀を片付けた俺は、織斑先生に振り向き面と向かって、こう宣言をする。
「ですので、俺は今までも此れからも、自分のことを守っていきます、如何です?かなりの下衆でしょ?」
「確かにな、だがそう考えるなら私は何も言わない、だがお前一人が、全てを抱え込む事は、しないでいい織斑達とは、仲良くなる気は無いのだろう?だったら、せめて担任である私か山田先生を頼れ」
「貴女は兎も角、山田先生は如何かと思いますよ?」
「一見そうかもしれないが、麻耶は麻耶で良い奴だ」
「まぁ、できる限りそうさせて貰います、其れじゃあ失礼します」
「ああ」
織斑先生との話しを終えて、俺は武道場を出る。
そして、寮には帰らず途中の大きな廊下で、立ち止まる。
「貴女は、盗み聴きが趣味か何かですか?楯無先輩?」
「あら、気付いてたの」
「ええ、何せ俺は、一般人じゃなくて逸した逸般人ですからね」
「ふふ、何よ其れ」
楯無先輩は、手に持っていた扇子を広げた、扇子の紙には愉快!なんて、書かれていたが、其れを無視して昨日知った事を聞いてみる。
「嗚呼、貴女のお父さん“先代楯無”でしたっけ?で、そのお父さんから聞きましたが、ロシア代表らしいですね」
「‥‥何で、貴方がそんな事を知っているのかしら?」
「俺の親友のメル友ですよその人、気になって昨日聞いてきました」
「貴方も何者か、気になるけどその親友の事も気になるわね」
もう一度開かれた扇子には、驚き!と書かれていたいつの間に書き換えたのだろう。
「気になるのであれば、自分で調べて見ては如何ですか?更識家の事を軽く調べて見ましたが、情報関係が得意そうらしいのでしょう?」
「貴方一体何者よ?」
「未だに過去を引きずっている、臆病者ですよ」
振り返り、後ろ向きで手を振りながら去っていく。
そして一週間とは、意外と早く過ぎるものだ。