「ふぅ…………」
朝起きた俺は、アリーナで、無数の木刀を宙に投げ、精神を集中していた。
一流スポーツ選手だけが、到達する領域、極度の集中状態“ゾーン”其れを自発し、使う本来の継なぎ刀の形。
学園に来て、織斑先生以外に使ったことの無い、状態。
「ーーーッ!!」
無数の木刀が、俺と同じ高さになった刹那、手に持った鉄刀で、全ての木刀を玉砕する!
バギッと音を立てた木刀が、地面にパラパラと落ちる、其れと同時に、俺以外の気配を感じた。
「来たか」
足音が、近づき俺の眼の前に現れたのは、昨日呼んでおいた織斑だった。
「教えてくれないか、ボーデヴィッヒが、何であんな風なのか」
「其れを教えてやるって、昨日言っただろ?まぁ、順をおって話してやるよ」
「頼む」
返事を返した織斑の眼は、俺との戦闘やゴーレムの襲撃の時とは、違いちゃんとした覚悟を決めた眼だった。
「俺が、此れから言う言葉は、本当のことだ、ボーデヴィッヒは、彼奴は人間じゃない」
「ど、どういう意味なんだよ?」
「言葉が、足らなかったな、彼奴は普通の人間じゃない、ドイツが作った、所謂試験管ベビーだ」
「其れって、じゃあ、彼奴に親は!」
「いない、ついでに言うと、彼奴は作られてから、戦う事しか教えてられて来なかった、そしてISの登場で、ISの操縦者として、落ちこぼれ呼ばわりをされた」
織斑は、俺と同じように親が、居ない。
その事自体は、同情するつもりは無い、彼奴の今を必死に生きる姿勢は、俺は認めている。
織斑は、その事を知って怒りを露わにしたが、俺は話しを続ける。
「その時、訓練教官として、ドイツに行った織斑先生と出会った」
「そんな事が」
「其処で、彼奴は才覚を発現し、隊長を務める様になった、そして織斑先生の強さに、憧れた」
確かに俺が、あんなに特訓していなければ、織斑先生のあの強さは、憧れていただろう。
だが、其処で、彼奴にとって気に食わない事が、起きた。
「織斑、お前の存在が、彼奴は気に食わない、何故か分かるか?」
「多分、ボーデヴィッヒが、千冬姉を尊敬しているなら、千冬姉の栄光を奪った俺が、気に食わない理由だと思う」
「嗚呼、そう言えば織斑先生が、ドイツに渡った理由は、お前の誘拐が要因だったな」
「な、何で夕紀が、その事を!」
「うっさい、黙れお前も知っている人から、聞いたんだよ、話しを続けるぞ」
「頼む」
脱線しそうになった話しを、戻す。
「彼奴は、憧れの織斑教官が、自分には見せない顔、と言うか理想の顔をさせないと思っている、お前の事が、殺しそうな程に憎いんだよ」
「俺は、俺はどうすれば良いんだ?」
「そんなの自分で、考えろ其れと、此れだけは、言っとくぜ、俺は人間は絶対に殺そうとは、思わないが、彼奴みたいな人造の人間は、殺そうとは思うからな」
「お、おい!」
バラバラの木刀を片付けた俺は、忠告と警告をして、アリーナを出ようとしたが、一つだけ伝えた方が良いと、思った事を思い出した。
「最後に一つだけ伝えとく、お前は織斑先生の栄光を奪ったなんて、思ってるが、あの人は本当に栄光が、欲しかったのか?」
「どういう事だよ?」
「はぁ、俺絶対、後で面倒くさくなるな、織斑先生は、二連覇と言う栄光よりも、たった一人の家族のお前が、大事だって事だよ、少しは頭で考えろ、嗚呼、今日お前に伝えた事は、誰にも言うな、もし言ったら、どうなるか知らないぜ」
言うだけ言って、アリーナを出た俺は、全速力でその場から離れた。
「此れぐらい、離れれば大丈夫だろ」
「何が、大丈夫なんだ?」
「んなバカな!」
早朝の学園に、一人の男の叫び声が、響いたのは言うまでも無い。