デュエルモンスターズ。
ペガサス・J・クロフォードが作り上げたカードゲームであり、世界的に爆発的な人気を誇り、さらにはプロまで出ると言う、カードゲームというカテゴリにしてはとてつもない評価を誇る。
数多くの学校でデュエルが必修科目となり、今では、ほぼすべての学校でデュエルが行われるようになった。
私立霊山学院。ここも、そんなデュエルモンスターズを学ぶ学校だった。
「眠い」
「それならしっかりと勉強したらどうだ?お前まだ、『スペクトルモンスター』をてに入れてないんだろ?」
少々ボサボサ頭の少年。
制服である、まだ真新しいブレザーを二人とも羽織っている。
「んなこといってもなぁ。俺これでも頑張ってるのに」
「まあ確かに俺より強いしな」
様々な召喚方法が発表されていくなか、I2社では発表していなかったカードを、いつの間にか所持しているという現象がこの数年で発生している。
そのカテゴリーは『スペクトルモンスター』といって、エクストラデッキから特殊召喚するモンスターだ。
『
いつの間にか、とはいったものの、誰かが『一定以上の実力を持つことでてに入れることが出来る』と言ったことから、それが真実なのだということになっていった。
スペクトルモンスターが強いと思うかどうかは個人の自由だが、スペクトルモンスターを所持していること言うことが重要なステータスになっているのは事実だ。
暫定でしかないが、納得しやすいと言えば納得しやすかった。
そしてそれを、遊世は持っていない。
……ほかの召喚は抜群に上手いけど。
霊山学院に入学しているのも、この高校は新設校で生徒数が少なく、設備は整っているものの、生徒数を集めたいという感情があったのか、必要偏差値が低かったのだ。あと家から近かった。
大体そんな感じである。
なお、この学校は、スターカード制度と言うものがある。
星がかかれたカードである。
まず入学時に五枚貰った。
賭けデュエルと言うものがあるが、この学校ではこのスターカードを賭けて決闘を行い、あらかじめ決めていた枚数をデュエル後に渡すというものである。
賭けることが出来るのは、双方が持つカードの少ない方の最大数である。まあある意味当然だが。
ちなみになくなっても、補充デュエルマシンと言うものが設置されているので、これによってカードを補充することが出来る。無くなっていなくてもすることは可能だが、全生徒一日一回であり、勝ってもらえるのは一枚だが。
要するに、生徒たちに自主的に戦わせ、明確な順位を決める手段を設けているのだ。
まあ、似たような制度は他の高校にもあるのだが。
「そういや、遊世って今何枚だ?」
「15枚だ。一応、補充デュエルは毎日やっている。で、あとは何回か突っかかってきたから返り討ちにした」
決闘を受けるかどうかは受ける側が決めることだ。カードの賭ける枚数はそのあと決める。
ちなみに、学生証の代わりに支給された携帯端末には、一応スターカードの枚数が正確に記録される。学校指定のデュエルディスクと連動しているからだ。渡すか渡さないかは自由だが、渡さなくても後々分かるのがこの学校である。
「15枚ってそれなりに多くないか?」
「知らんよ。鉄也は?」
「俺は三枚だ。ちょっと今ヤバイんだよ」
「手札コスト散々要求されて毎回燃費が悪いのになんでドローソースを入れないんだ?」
「いや、一回入れたんだけど、思ったようにいかなくて」
そりゃ入れ換えた瞬間にうまくいったら苦労しない。
「おい!そこのお前。俺とデュエルしろ!」
なんか知らんが男子生徒が遊世に向かって怒鳴ってくる。
「鉄也、相手をしてあげたら?」
「なんで俺が?」
「単純に面倒です。厄介事が増えるばかりなのに」
「おい、ごちゃごちゃいってないで早くしろ!賭けるのは五枚だ!」
まあ、なくなっても問題ないけど。
「遊世。あいてしてやれよ」
「はぁ、なんでこんなことに」
遊世がスペクトルモンスターを持っていないことは学園中に広まっている。悪いうわさと言うのは広まるのも早いのだ。突っかかってくるのはやめてほしいのだが。
「で、デュエルね。始めるか」
デュエルディスクを起動し、展開。レーザーポインター(が出ていると思う)を男子生徒に向ける。
男子生徒も構えた。
そして、携帯端末を見る。
【二年四組、石川佐久間から決闘、スターカード5が申請されました。受諾しますか?】
遊世はYESを押した。
「さて、まあ今まで勝っていた人に負けた八つ当たりだと思うけど、始めようか」
「ごちゃごちゃうるせえんだよ」
「「デュエル!!」」
遊世 LP4000
佐久間 LP4000
「先行は俺だ。俺は手札から『深海獣イルセ』を召喚」
深海獣イルセ ATK1500 ☆3
青い魚の顔のライオンが出現する。
あんなやつもいたんだな。
「俺はイルセの効果を使い、召喚に成功したとき、手札一枚をコストに、デッキからレベル3の『深海獣』と名のつくモンスターを、一体特殊召喚する。来い!『深海獣リカルド』」
深海獣リカルド ATK1200 ☆3
今度は魚の顔面の鳥だった。
なんというかこう。すさまじいなにかを感じる。
「さらに俺は、永続魔法『PO マリンドレク』を発動」
PO、『プリズムオブジェクト』か。
「さあ、見せてやるよ。これが貴様の持っていない力だ。俺はマリンドレクとイルセとリカルドを除外して、スリットチェンジ!」
魚面の二体が、とても細い線になった。そしてそれは、空中で進みながらひとつに混じりあう。
「深海を統べしものたちよ。更なる進化を欲し突き進め。スペクトル召喚!」
混じりあった線は、出現したプリズムを貫通する。
光は拡散され、それはスペクトルになる。
「来い。レベル7。『深海獣ドガルド』!」
深海獣ドガルド ATK2600 ☆7
なんかちょっと化けすぎではないのか?魚の頭のグリフォンなんて。
しかし、スペクトル召喚。やはり簡単だな。
永続魔法、及び永続罠になる『PO』と、スペクトルモンスターによって決められたカードを除外することで、エクストラデッキから特殊召喚するカード。なかなか縛りが緩い。
ドガルドは、深海獣が二体ってところか。
「俺はこれでターンエンドだ。サレンダーするなら今のうちだぜ」
「するわけないだろ。俺のターン。ドロー」
「スペクトルモンスター無しで俺のドガルドに勝てるかな?」
倒せるモンスターはたくさんいると思います。
「このターンで決めるか」
「はっ?」
「俺は手札から、スケール2の『聖堂軍イゼキ』とスケール5の『聖堂軍キザキ』でペンデュラムスケールをセッティング。レベル3と4のモンスターを同時に召喚可能。ペンデュラム召喚!『聖堂軍モセルザ』『聖堂軍バセレア』『聖堂軍ピリオネ』『聖堂軍ノイユ』」
聖堂軍モセルザ ATK1400 ☆4
聖堂軍バセレア ATK1200 ☆4
聖堂軍ピリオネ ATK1600 ☆4
聖堂軍ノイユ ATK1000 ☆3(チューナー)
白を基調にした青いラインで、それぞれ形状の少々異なる剣と兜を身につけたモンスターが出現する。聖堂軍の基本スタイルだ。
「な、だが、俺のドガルドには及ばねえ。手札も使いきっているし、何もできないだろ。そういう雑魚は守備表示で出すんだぜ」
「はぁ、モセルザの効果発動。このモンスターがペンデュラム召喚に成功したとき、ペンデュラムゾーンの二枚のカードを破壊することで、デッキから通常魔法以外の『カセドラル』と名のついた魔法カードを手札に加えることが出来る。俺が手札に加えるのは、儀式魔法『カセドラルエリューア』だ」
「な、儀式魔法だと?ていうか、ペンデュラムゾーンのカードをどっちも破壊するなんて、バカなんじゃないか?」
「このターンで決めるし、ペンデュラム召喚は一ターンに一回だ」
さらに言うなら、ペンデュラムモンスターは破壊されてもエクストラデッキにいくのだ。墓地アドバンテージが欲しいときは苦労するものの、特に不便はない。大丈夫か?コイツ。
「続けるぞ。ピリオネの効果を発動。自分のデッキからカードが手札に加わったとき、『聖堂剣』と名のつくカードを一枚、手札に加えることが出来る。俺が手札に加えるのは『聖堂剣ホライゾン』だ」
聖堂軍専用の装備魔法だ。聖堂軍は今現時点から言うと少々古い感じになるものの、その分カードは豊富である。特に装備魔法が。
まあ、いろんな意味でそれ以上にシンクロが豊富なのだがな。今現在。
「さて、行くか。俺はレベル4で聖堂軍モンスターである『聖堂軍バセレア』に、レベル3の『聖堂軍ノイユ』をチューニング」
ノイユが三つの輪になり、バセレアを包み込んだ。
「シンクロ召喚!レベル7『聖堂軍ゲルザード』」
聖堂軍ゲルザード ATK2400 ☆7
「シンクロ召喚だと、だが、俺のドガルドには及ばない」
「一々言われなくても分かってるって。ゲルザードの効果発動。特殊召喚されたモンスターだけでこのモンスターのシンクロ召喚に成功したとき、手札の聖堂剣をコストにして、デッキから永続魔法以外のカードを一枚、手札に加える。俺はホライゾンをコストにして、デッキから儀式モンスター『聖堂軍モラフェリ』を手札に加える」
「ちっ、儀式モンスターか」
「俺は手札から『カセドラルエリューア』を発動し、その時に墓地のバセレアの効果を発動。このカードと墓地の聖堂剣一枚をゲームから除外することで、レベル5から8までの儀式モンスターを儀式召喚できる」
「シュリットか!」
「聖堂剣つきだけどな。俺はバセレアとホライゾンをゲームから除外し、レベル6『聖堂軍モラフェリ』を儀式召喚!」
聖堂軍モラフェリ ATK2300 ☆6
「だからそんなモンスターじゃ勝てねえよ」
「わかってら、俺は聖堂軍モラフェリの効果発動、このモンスターの儀式召喚に成功したとき、自分フィールド上のレベル4以下の聖堂軍モンスター二体を選択し、レベルを1ずつ上げる。俺はモセルザとピリオネのレベルを一つずつ上げる」
聖堂軍モセルザ ☆4→5
聖堂軍ピリオネ ☆4→5
「さあいくぞ。俺はレベル5のモセルザとピリオネをオーバーレイ!」
二体のモンスターが光となって上昇する。
「二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!現れろ。ランク5『聖堂軍ヒューセル』!」
聖堂軍ヒューセル ATK2500 ★5
「だから勝てないんだって」
「聞きあきた。ヒューセルの効果発動、二種類あるが、二つ目の効果を使う。オーバーレイユニットを一つ使い、除外されている聖堂剣一枚を手札に加える。俺はホライゾンを手札に加え、そのまま発動。ヒューセルに装備し、攻撃力を、ヒューセルの元々の守備力の数値分アップする。ヒューセルの守備力は1000。よって1000ポイントアップ!」
聖堂軍ヒューセル ATK2500→3500
「なに!」
「ふう、長かった。俺はヒューセルでドガルドに攻撃。その後、ゲルザードとモラフェリでダイレクトアタック!」
佐久間 LP4000→3100→1700→0
「これで俺の勝ちだ。スターカードは五枚もらうぜ」
「う、嘘だ。俺がこんな落ちこぼれに負けるはずがない。そうだ、きっとなにかズルをしているんだ。俺は絶対に認めないからな!」
そのまま走り去っていった。
「遊世」
「端末見たけど、しっかり五枚増えてる。で、対戦ログも、誰とやったかは残ってるし、問題ねえよ」
「まあ、お前がそれでいいんなら構わないがな」
「で、鉄也、今日はお前はどうするんだ?」
「俺は補充に行くわ」
「俺が相手になってやってもいいぜ」
「一ターン中にシンクロとエクシーズと儀式を決めるやつとなんぞできるか」
「あっはっは。やろうと思えば一ターンで三回シンクロ出来るぞ」
「そういうことが言いたいんじゃねえよ。ていうか、手札揃いすぎじゃないか?」
まあさっきのデュエルを見られたらそう思われるか。
「揃ってた訳じゃない。まあ今日はいい方だったけどな。なにが来るのかを望むんじゃなくて、来たカードでどうするかを考えるのが俺だ」
「そう言うことなんだろうな。それじゃ、また明日」
「ああ」
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その日の帰り道、遊世はエクストラデッキからカードを一枚取り出した。
スペクトルを表すように、そのカードは様々な色で縁が出来ている。
しかし、名前もテキストも、モンスターの姿も、そこにはなかった。
「お前はいったい誰なんだ?そして、いったいなにを望んでいる?」
遊世の呟く。
遊世はスペクトルモンスターを持っていないわけではない。使えないのだ。
なぜなのかはわからないし、それにかなり昔から持っている。
実力をつけてきた筈だ。このモンスターを見たいから。
強くなると、二枚以上のスペクトルモンスターを持つものも出てくるが、遊世にはその様子もない。
「分からないな」
ただ、やることは分からないと言うことも、それはそれで事実なのだ。
レルクス「初めまして、いえ、そうでない方も多いと思いますが、初めまして、レルクスです」
遊世 「主人公の遊世だ」
レルクス「さて、始めたなぁ」
遊世 「一つ重要なこと聞いていいか?」
レルクス「何かな?」
遊世 「スペクトル召喚って……強いの?」
レルクス「いや、多分、融合の下位互換だとおもうよ」
遊世 「そうか、ではもう一つ聞こう。『PO』って必要だったのか?」
レルクス「それがないと『霊獣』の丸パクリになっちゃうからね」
遊世 「……では聞こう。スペクトル召喚の利点はなんだ?」
レルクス「POは永続魔法だからね。無論、永続効果が存在するものもある。まあ、POは各カテゴリーと密接に関わっているから汎用性は低いけどね。『スペクトル召喚に必要』ではあるけど、『スペクトル召喚するためだけのカードではない』ということだよ。世界観的には専用カードだけど」
遊世 「『永続魔法として運用』→『要らなくなったらスペクトル召喚に使う』というかんじだったのか」
レルクス「当初はね。でも、これがまた考えるのがめんどくさくて……」
遊世 「そうだろうな……」
レルクス「まあ、課題は多いよ。それでは、また会おうね」
遊世 「次回もご都合主義だ。それを忘れないようにな」