一人の少年が走っている。
まるで、黒で塗りつぶしたかのような色の髪と瞳を持ち、それと同時に病的なほど白い肌を持っていた。
「いたぞ!」
「ちっ、もう見つかったか」
少年は角を曲がるが、その先にも、少年を追う集団がデュエルディスクを構えて待ち伏せていた。
「もう逃げられないぞ!」
「くそ……」
少年はデュエルディスクのエクストラデッキから一枚のカードを取り出す。
それは『ダークフェイル』だった。
「こんなモンスターじゃ、俺の実力なんて出すことはできないってのに……」
「モンスターのせいにしてはいけませんよ」
少年は前方を見る。
それは、黒いなにかだった。
今は人間の形をしているが、それは形のひとつに過ぎないことを少年はしっている。
「やっぱりあんたか」
「私ほどの実力がなければあなたを探し出すことは出来ませんから。あ、誉めていますよ」
「そいつはどうも」
「ですが、私たちはあなたを逃がすわけにはいかないのです」
「くそ」
少年はデュエルディスクを構える。
「フフ、モンスターのせいにしてはいけないと言ったばかりですが、ダークフェイル一体しか持たないあなたがこの人数を相手にできるとは思えませんがね」
「うるせえ!デュエルだ!」
「フフフ、お前たち、遊んでやれ」
総勢50人を越えるデュエリストが、一斉にデュエルディスクを起動した。
「ハハハ、これはどこまでやれるのか全然わからないな」
少年は様々な物を呪いながらも、デュエルディスクからカードを5枚引いた。
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遊世は空き地に立っている。
デュエルディスクはすでに起動しており、その準備は万端だった。
「もうすぐか……」
朝起きたとき、遊世の机の上に、一枚のカードがあった。
それは、デュエルで使用するものではなく、デュエルディスクに読み込ませることで使うことができるカード。
『メッセージ』
それがそのカードの名前だ。
そのカードには、今遊世が立っている場所で、話がしたいという匿名の連絡だった。
「一体誰が……ん?」
角から走ってくる少年とぶつかった。
なんというか、黒と白を両極端で持つ少年だった。
「おい、大丈夫か」
「ハア、ハア。くそ……」
少年は気絶してしまった。
角から出て来たのは、人の形をした黒いなにかだった。
「お前は誰だ?」
「む、宮襟遊世か」
どうやら向こうは遊世について少なからず詳しいようである。
「その少年をこちらに渡していただきたいのですがね」
「いや、状況はよくわからんが、なんとなく、渡したら逆に危険そうだからな。それは無理だ」
「まあ、確かに予想通りではありますね」
黒いなにかはデュエルディスクを出現させた。
道也も構える。
「偽名でいいから聞いてもいいかな?なんて呼べばいいのかわからない」
「ふふ、それもそうですね。では『アンノウン』ということで」
「そうか、ならそれで呼ばせてもらおうか」
「それでは始めましょう」
「話を聞けるかどうかはしらないが、まあ、今はいいとしようか」
「「デュエル!」」
遊世 LP4000
アンノウン LP4000
「私の先行。手札からフィールド魔法『ダークオーブイデア』を発動」
回りの風景が、黒一色に染まった。
かなり重苦しい雰囲気になる。
そして、アンノウンの後ろに、黒い楕円形のゲートのような空間があった。
「『ダークオーブイデア』の効果を発動、自分の手札から『PO ダークマター』をコストにして、エクストラデッキからレベル8の闇属性ドラゴン族の、POを『PO ダークマター』に限定するスペクトルモンスター一体を、スペクトル召喚扱いで特殊召喚します」
「何?」
アンノウンは手札から『PO ダークマター』を遊世に見せたあとそれを墓地に送る。
「闇の世界に縛られた愚かな竜よ、世界を闇に染めるべく姿を表せ、スペクトル召喚!レベル8『ダークマテリアル』!」
ダークマテリアル ATK3000 ☆8
アンノウンの後ろにあるゲートから、黄金の瞳を持つ真っ黒のドラゴンが現れると、アンノウンのフィールドに鎮座した。
「手札2枚で攻撃力3000……いや、それよりも、これはなんだ?」
「ふふ、『ダークオーブイデア』によりスペクトル召喚を行った場合、自分はそのモンスターが場を離れない限り、召喚、特殊召喚、モンスターのセットは出来ない。この効果は無効果できませんので、ご安心を」
「そうか」
だが、3000が一体いるだけで安心するような奴にも見えないが。
「ダークマテリアルは、表側表示でフィールドの存在する限り、手札、フィールド上から二体以上のモンスターを同時に墓地に送ることは出来ませんよ」
レベル7以上のモンスターのアドバンス召喚。シンクロ召喚は無理だな。
手札もなので融合も無理、出来るとすれば、儀式やエクシーズか。
一般的にはな。
「私はカードを二枚セットして、ターンエンドです」
手札一枚か。あれってなんだろうな。
「俺のターン。ドロー」
「お得意のシンクロ召喚。出来ますかね?」
「俺が『聖堂軍』使いだと知っているようだな」
「ええ、あのカテゴリーは、聖堂剣をサーチ、コストにしながら次々と連続召喚を行うもの。現在ではまだスペクトルモンスターは出てきていませんが、他の全ての召喚が可能。ただ、シンクロがやはり驚異的です」
「よく調べているな。続けていいか?」
「どうぞ」
「それじゃあ続けるぞ。ちょっと良いものを見せてやる」
とはいっても、出来ることは少ない。ちょっと手札が悪いが、やってやりたいことはできる。
「俺は手札のスケール2の『聖堂軍イゼキ』とスケール5の『聖堂軍キザキ』でペンデュラムスケールをセッティング。レベル3と4のモンスターを同時に召喚可能、ペンデュラム召喚!『聖堂軍モセルザ』『聖堂軍ピリオネ』『聖堂軍ノイユ』!」
聖堂軍モセルザ ATK1400 ☆4
聖堂軍ピリオネ ATK1600 ☆4
聖堂軍ノイユ ATK1000 ☆3(チューナー)
「モセルザの効果で、ペンデュラムゾーンの二枚を破壊して、通常魔法以外の『カセドラル』と名のついた魔法カードを一枚手札に加える。俺は速攻魔法『カセドラルポイント』を手札に加える。そして、ピリオネの効果により、デッキからカードが手札に加わったことで、聖堂剣一枚を手札に加える。俺は『聖堂剣ツナミ』を手札に加える」
「チューナー……シンクロは出来ませんよ」
「分かっているさ。俺はレベル4のモセルザとピリオネでオーバーレイ!」
モセルザとピリオネが光となって上昇していく。
「二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚!来い。ランク4。『聖堂軍イツツバ』!」
聖堂軍イツツバ ATK1000 ★4
「ステータスが低いですね」
「ま、そう言うもんだ。俺はイツツバの効果を発動。オーバーレイユニットをすべて使い、イツツバを除外することで、自分のエクストラデッキから、レベル8以下のシンクロモンスターを、攻撃力を0にし、効果を無効にして特殊召喚する。オーバーレイユニットはフィールドのカードとしては扱わないからな。効果を使わせてもらうぞ。来い、レベル7『聖堂軍ゲルザード』!」
聖堂軍ゲルザード ATK2400→0 レベル7
「ほう、ですが。そのモンスターでは倒せませんよ」
「分かってるさ。俺は手札から速攻魔法『カセドラルポイント』を発動。手札の聖堂剣一枚をコストにして、自分フィールド上のチューナーモンスターとシンクロモンスター一体を選択し、チューナーモンスターをリリースすることで、シンクロモンスターのレベルをリリースしたモンスターのレベル分アップし、チューナーモンスターにする」
「?」
「手札の『聖堂剣ツナミ』をコストにして、俺はチューナーモンスター『聖堂軍ノイユ』と、シンクロモンスター『聖堂軍ゲルザード』を選択し、ノイユをリリースすることで、ゲルザードのレベルを3上げ、チューナーモンスターにする」
聖堂軍ゲルザード ☆7→10(チューナー)
「これは一体、何を……」
「これが俺の答えだ。行くぞ!俺はレベル10の『聖堂軍ゲルザード』一体で、チューニングドライブ!」
ゲルザードが発光し、そして、ゲルザードの体内から出てきた10個の光球が、ゲルザードの周りを超高速で動いていく。
「ユニークシンクロ!現れろ。レベル10『聖堂軍バセルーク』!」
純正の銀の両手剣を握る騎士が、ゲルザードを覆い尽くしていた光球の軌跡を、正面を地面と垂直に切り下ろすことで出現した。
聖堂軍バセルーク ATK3100 ☆10
「馬鹿な、ユニークシンクロだと?そんな召喚方法が……」
「バセルークの効果を発動。このモンスターのシンクロ召喚の成功したとき、デッキからカードを二枚ドローする」
一枚しかなかったのが三枚に増えた。
まあ、バセルークの本領はドローソースだからな。
遊世は手札の聖堂剣に手をかけたが、それを本能的に拒否した。
「バセルークでダークマテリアルを攻撃!そしてこのとき、バセルークの効果を発動。このモンスターが相手モンスターとバトルするとき、デッキからカードを一枚ドローし、それが聖堂剣だったとき、もう一枚ドローする。引いたのは『聖堂剣ホライゾン』だ。もう一枚ドロー!攻撃続行。バセルークで攻撃『ライドブレイド』!」
バセルークはダークマテリアルを切り裂いた。
アンノウン LP4000→3900
「俺はターンエンドだ」
「伏せカードは無いのですね」
「まあな」
「ふむ、まあいいでしょう。私のターン、ドロー。まずはリバースカードオープン、罠カード『ダーククレーン』自分の墓地のPOを一枚、手札に加える。私は『PO ダークマター』を手札に加えます」
墓地の、と言ったが、POに限定すればほとんどスペクトル召喚に使われるので除外されるはずである。
そう考えると、ダークオーブイデアを使うことを想定したもののようだ。
「さて、私は手札から魔法カード『死者蘇生』を発動。『ダークマテリアル』を復活させます」
再びダークマテリアルがアンノウンのフィールド上に出てきた。
ダークマテリアル ATK3000 ☆8
「ダークオーブイデアの効果で出てきたわけではありませんので、召喚や特殊召喚は可能です。私は『PO ダークマター』を発動。そして、ダークマターとダークマテリアルを除外して、スリットチェンジ」
ダークマテリアルが光の線に変わり、黒いプリズムを貫通する。
「深淵の闇を司る有罪の竜。今ここに具現し、理不尽の怨念を叩きつけろ。スペクトル召喚!レベル10『ダークオリジン』!」
ダークマテリアルよりも大きく、存在感の強い竜だった。
瞳は黄金ではなく、真っ白の宝石を入れたようになっている。
ダークオリジン ATK3500 ☆10
「私はダークオリジンで、聖堂軍バセルークを攻撃。『ギルティノイズ』!」
ダークオリジンがバセルークに黒い雷のようなブレスを放ってくる。
「バセルークの効果発動!このモンスターがバトルするとき、カードを一枚ドローし、それが聖堂軍だった場合、もう一度ドローできる。ドローしたのは『聖堂剣ツナミ』だ。もう一枚ドロー!」
「ですが、攻撃は続行されます」
遊世 LP4000→3600
「ダークオリジンの効果を発動。このモンスターがバトルでモンスターを破壊したとき、自分の墓地の魔法、罠を可能な限りセットする。私はダーククレーンをセットします。これでターンを終了しましょう。なお、ダークオリジンがフィールド上に存在するとき、相手がエクストラデッキからモンスターの特殊召喚に成功した場合、手札を一枚捨てることで、そのモンスターを破壊する効果があります」
今は手札は一枚だから、少なくとも一回は無理ってことか。
あと、いまの言葉的には……強制起動効果だな。
「俺のターン。ドロー」
「リバースカードオープン、罠カード『ダークバック』を発動。自分の除外されている『PO ダークマター』を墓地に戻すことで、一枚ドロー、そして、『ダーククレーン』を発動し、ダークマターを手札に加えます」
「三回ダメになったか……」
「そういうことです。貴方のシンクロやエクシーズは強力ですが、それでも限度はあるでしょう」
「ちなみにいっておくけど、俺の手札。八枚だからな」
「!」
だが、聖堂軍のシンクロモンスターでは突破は難しいだろうし、エクシーズはフィールドに出して、起動効果で効果をしようするので相性が悪い。融合や少々難しいし、コスパが悪い。儀式はエクストラデッキから出すわけではないので問題はないが。
仕方がない。儀式にいまの状況を打開できるカードは今は入れていない。
これは……アイツの出番か。まさか出すことになるとはな。
「俺は手札から『カセドラルコール』を発動、手札から聖堂剣をコストにして、デッキから聖堂軍の通常モンスターを特殊召喚する。俺は『聖堂剣ツナミ』をコストにして、『聖堂軍ワイズ』を特殊召喚する」
聖堂軍ワイズ ATK2400 ☆7
「そして、墓地の『聖堂剣ツナミ』をゲームから除外して、『カセドラーム』を特殊召喚!」
カセドラーム ATK500 ☆1(チューナー)
「シンクロ召喚ですか?行った瞬間に破壊しますよ」
「弱点を教えてやるよ。二つあるけどな。ダークオリジンは、召喚に成功したときに破壊する。ようするに、シンクロ召喚そのものは成功させてしまうと言うことだ」
「それはいったい……」
「俺はレベル7の『聖堂軍ワイズ』に、レベル1の『カセドラーム』をチューニング!」
力を貸してくれ。
「集いし願いが、新たに導く風となる。光さす道となれ!」
遊星!
「シンクロ召喚!レベル8。飛翔せよ。『スターダスト・ドラゴン・アナザーエイジ』!」
星屑を散らしながら、美しい竜が遊世のフィールドに出現した。
スターダスト・ドラゴン・アナザーエイジ ATK2500 ☆8
「な……こ、このモンスターは……」
「ダークオリジンの効果、忘れたわけではないよな」
「く、強制の誘発即時効果であることを狙ったのですね。仕方がないでしょう。私は手札を一枚コストにして、シンクロ召喚されたスターダスト・ドラゴン・アナザーエイジを破壊する」
「スターダスト・ドラゴン・アナザーエイジの効果発動!モンスターカードを破壊する効果が発動したとき、このモンスターをリリースすることで、その効果を無効にし、破壊する。『アナザー・サンクチュアリ』!」
スターダスト・ドラゴン・アナザーエイジはダークオリジンが放つ雷を回避し、ダークオリジンのそばにいくと、翼で包み込み、ダークオリジンごと消滅する。
「く、私が進化させたモンスターを、こんな簡単に……」
マテリアルという単語に『材料』や『資材』という意味があるので、そこからダークマターを再度使用することで強化したモンスターはいくつか存在すると言うことだろうか。
マテリアル『材料』からオリジン『起源』を産み出した結果が、このモンスターと言うことになる。
そんな解釈でいいだろう。
少なくとも、ダークマテリアルからモンスターが強化されることはあっても、ダークオリジンからモンスターが進化することはないと言うことだ。
重要なのかどうかは定かではないが、少なくとも、ダークマターという存在の情報収集という意味では適しているだろう。
まあ、重要なこと、それは。
まだ遊世の手札は五枚(内二枚は聖堂剣(ホライゾン含む))であるということだ。
さあ、今は除外されているが、せっかく出したのだ、フェニッシャーくらいさせてやってもバチは当たらないだろう。恐らく。
「俺は手札から魔法カード『シュラインゲートバック』を発動。手札の聖堂剣を二枚除外し、そして、それ以外の手札をすべて捨てることで、墓地のレベル8以下のシンクロモンスター一体を特殊召喚する。その時特殊召喚したシンクロモンスターは、除外した聖堂剣を装備した時の効果を全て得ることができる」
「何!」
「まあ、これを使った『後』、俺はこのターン、他のモンスターを召喚、特殊召喚できないがな。俺は墓地の『スターダスト・ドラゴン・アナザーエイジ』をフィールドに帰還させ、除外した『聖堂剣ホライゾン』と『聖堂剣ツナミ』の装備時の効果をスターダスト・ドラゴン・アナザーエイジに加える。ホライゾンの効果により、スターダスト・ドラゴン・アナザーエイジの攻撃力は、元々の守備力である2000ポイントアップし、さらに、聖堂剣ツナミの効果で、このモンスターが攻撃するとき、相手は墓地のモンスターの効果を発動できなくする」
スターダスト・ドラゴン・アナザーエイジ ATK2500→4500 ☆8
「ま、まさか。読んでいたのですか?私が見せていなかった一枚を」
そう、ダークオリジンの発動コストで墓地に送ったカード。それはまだ、遊世が知らないカードを墓地に送っていたのだ。最初から持っていたカードと、『ダークバック』によりドローしたカードの二枚が候補だが、それくらい用意していても妙な話でもない。
「ダイレクトアタックだ。行け!スターダスト・ドラゴン・アナザーエイジ!『シューティング・インパクト』!」
スターダスト・ドラゴン・アナザーエイジのブレスがアンノウンを包み込んだ。
「ぐおおお!」
アンノウン LP3900→0
「俺の勝ちだな」
「まさか、ここまでの強さだったとは……ダークマテリアルもダークオリジンも、貴方にとっては不利だったはずだったのですがね……」
「そう言うもんさ。デュエルって言うのはな。で、どうする?」
「ここは退きましょう。それにしても、先程のあの白い竜。一般的に普及しているもの……、いえ、オリジナルの分身ですね」
「……」
「まあいいでしょう。次に会うときを楽しみにしています」
「テンプレを言うつもりはないな。ま、とにかく帰れ」
「フフフ」
アンノウンは自らの影に溶け込んでいくと、そのまま影も消え去った。
「さて、あとはこいつをどうするかなんだが……」
紛れもなく、気絶している少年である。
「……君、起きてるよな」
少年は顔をピクッとひきつらせた後、目を開けた。
「どうしてわかった」
「いや、言ってみただけ。別に見ただけで俺わからないし」
少年は起き上がりながら頭を抱えた。
「それで、俺は状況がよくわかっていないんだが、君なら知っているか?」
「まあ、そうとも言えるな。時間はまだ大丈夫か?」
「ああ、問題ない」
「それなら、俺が知っていることは全て話すとしよう」
たって話すのも変なことなので、適当なところで座った。
「まず、どこまで知っているか聞いていいか?」
少年が先に聞いてくる。
「そうだな。多分さっきのアンノウン……これって偽名なのか?」
「いや、本名だな。というより、そういう存在だと思えばいい」
「なるほど、恐らくあいつらに関係する組織が、デュエルによる『ダークマター』というPOを押し付けることにより、その力を持ったモンスターを持たせている。いや、ダークマターの方が目的かもしれんがな」
「大方あっているな。まあ、さっきのデュエルを含めてダークマターが影響することに何か関わった経験があるようだが、君の言う通り、ダークマターを送りつけることを『準備』としている」
二人はあることに気づいた。
「自己紹介がまだだったな。俺は宮襟遊世だ。よろしく」
「宮襟遊世。『DSOU』が危惧している特記戦力か。俺は『ドレイク』だ」
少なくとも日本人ではないな。
ていうか、特記戦力って……。
「で、DSOUってなんだ?」
「『ダーク・サイド・オブ・ユニバース』の略称でな。そうだな。こことは別の異空間に拠点がある」
ダーク・サイド・オブ・ユニバース。『世界の黒の部分』だろうか。
「そして、現在ダークマターを押し付けている理由だが、DSOUの頂点である『ラフェル』の復活のために、多くの生け贄が必要なんだが、この空間の人間は拠点のある空間にいかせることが出来ないようになっているらしい」
「ダークマターを持たせることで、違う空間の間にパスを作ることが出来るってことか」
「理解が早いな」
「ではなぜ、ラフェルという存在を復活させようとしているんだ?そして、なぜ今なんだ?」
「いや、それは俺の知らんが、多分、失恋が原因だと推測している」
すごく迷惑な失恋だ。
「これ以上それについてはいいか。なんか馬鹿らしくなってきた」
「それくらいで丁度いいと思うぞ」
「ただ、ダークマターを押し付けることでパスを作り、ラフェルの復活のための生け贄の数を揃える。という目的のようだが、俺が戦ってきた限りでは、ダークマターその物にもシステムが多数あるように思うが」
「そうだな。ダークマターその物にも、まず複製能力がある。持ち主が増やすことは出来ないが、デュエルで勝ったときに押し付けるために自動で複製されるんだ」
「そうか。で、あの『ダークフェイル』って言うモンスターなんだが……」
「そのモンスターを相手にしたことがあるようだな。まあそもそも、ダークフェイルを持っている時点で、そこまで強いデュエリストとは言えん」
ドレイクによると。
・一定以下の実力を持つ。 → ダークフェイルを入手する。
・一定以上の実力を持つ。 → 自分の持つスペクトルモンスターがダーク化する。
「といった感じだな。さっき戦ったアンノウンが使っていた『ダークマテリアル』は、DSOUでも有能な者が持つモンスターで、さっきの一定以上の実力を持つデュエリストにダークマターを与えるために動いている」
「なるほど、で、あのフィールド魔法は?」
「『ダークオーブイデア』のことか?あのカードは、ダークマテリアルを進化させた者が渡されるカードだ。渡しているのはラフェルの子孫だがな」
まさかの先祖の完全復活計画を遂行中だったのか。
「進化させた者って何人いるんだ?」
「派遣部隊と拠点在中組を合計すると……5人だな」
「あのアンノウンってやつ、無茶苦茶エリートだったってことか?」
「紛れもなくな」
そんなに偉かったんだ。アイツ。
「まあ、ダークマターとか、DSOUの目的とかは何となく分かった。個人的にはこれが一番重要なんだが……君は一体何者なんだ?」
「そうだな。『意思を持ったダークマター』だと思えばいい」
「よくわからないが……」
「そもそもダークマターの原材料は、試験管で生まれたばかりの赤ん坊の魂だ。本来なら調節プログラムがあるから、決まった方向性で作られるんだが、調節プログラムそのものが完全なものではない。俺みたいな、調節プログラムにあっていない個体が出来る可能性は普通にある。俺はそのほんの一例だ。まあ、ダークマターのカードの状態になってしまうから、擬人化することが出来るのは俺くらいだと思うがな」
「で、強制的な調整が施される判決が下されたから、今まで逃げていたと」
「俺の基本的な精神構造や考え方は、この空間、俺たちは『ボーダー』と呼んでいるが、まあ、君らとそう変わらないからな。俺たちの空間『イデア』の人間は試験管ベビーがなぜか不可能だったし」
「ボーダーの人間から得た遺伝子で行っているのか?」
「遺伝子レベルであれば持ち帰ることは可能だったらしいからな」
なんかよくわからん。
「しかも、イデアの技術で赤ん坊を作った場合、その遺伝子の親の様々な常識を持つようになる。だから、俺はイデアの存在だが、この世界でも別に普通に暮らせる程度の知識はある。デュエル以外の教養はないが」
「まあ、そうだろうな」
本質的にも、常識的にも、遊世たちとそう変わらないと言うことである。
「そう言えば、スペクトルモンスターを持っていないのか?ダークマテリアルは墓地にいくことを制限するだけで除外は問題ないから、スペクトル召喚は普通に出来るはずだが……」
「ああ、それがな。こんな状態なんだよ」
遊世はドレイクにスペクトルモンスターのカードを見せる。
何も記載されていなかったが。
「ああ、なるほどな」
「分かったのか?」
「なんとなくな。遊世は、あのスターダスト・ドラゴン・アナザーエイジっていうカードをいつも入れているのか?」
「ああ、そうだが」
「オリジナルの分身というアンノウンの言い方とあの反応を見るに、このカードは、今の時間軸でてに入れたわけではないな」
「ああ、別の時間でてに入れたものだ」
「俺も詳しいことは知らんが、そういったカードは自らの時間軸を持ったままこっちに来るからな。恐らくその世界はスペクトルモンスターがなかったんだろ。影響力ってかなりあるんだ。そもそもオリジナルのコピー何て言う言い方をしている時点で、特別なカードだってことはわかるし」
元々はシグナーの竜だからな。
それが、こちらの世界に戻ってきて、このカードに変わったのである。
「俺のデッキで影響力の強いこのカードがあったことで、俺のスペクトルモンスターは、時間軸に適用できずに出てこれなかったのか」
「そう言うことだな。まあ、スターダスト・ドラゴン・アナザーエイジのカードを退けたあと、数はわからんがデュエルしていけば、そのモンスターもわかるようになるはずだ」
「分かった」
ちょっとの間休憩だな。スターダスト・ドラゴン・アナザーエイジ。
まあ、他にもいるんだけどな。そのカードも今は退けておくか。
「それで、これは俺からの頼みなんだが……」
「なんだ?」
ドレイクが呟くように聞いてくる。
「俺を匿ってくれないか?っていうかむしろ、ずっと仲間にしてくれた方が安全なんだけど」
「……はぁ、別に構わん」
「そりゃどうも」
ドレイクは内ポケットからカードを取り出す。
「『PO ダークマター』か」
「俺特性の物だからな。遊世に影響力はないからよ」
「受け取っておくか」
遊世はカードを受け取った。
「それじゃあ、俺は擬人化を解いてカードの中にいるから、あと、テレパシーで色々話すからよ」
「何でもありかお前は」
「まあそういうな。よろしく頼むぜ」
ドレイクはそういうと消えた。
「こりゃすごく面倒になったな……」
遊世の呟きは……ドレイクにしか聞こえていないだろう。
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ドレイクは考えていた。
この世界に逃げてきたのはいいが、この世界はあまりにも混ざりすぎている。
『イデア』にいたころは、『スペクトル召喚』しか存在しなかったのに、この世界では、融合、儀式、シンクロ、エクシーズ、ペンデュラム。それらの召喚方法が存在した。
融合や儀式は時間軸的には影響力は薄いので、多くの状況での運用されているのは納得できないわけではない。
しかし、ここまでそろっているのは、逆に不気味だった。
『ボーダー』と呼ばれているこの空間は、もともと、デュエルモンスターズが普及している訳ではなかった。
それを、イデアとはまた別の空間に存在するものが、自らの時間軸の延長線上につなげ、発展した結果だった。
本来は、スペクトル召喚以外の方法は出るはずではなかった。
しかし、時間軸による強制力と言うのは恐ろしいもので、結果的に、スペクトル召喚しかなかったはずの世界は、他のすべてを巻き込んで、世界がそれを正しいと認識し、結果的に今のようなカオスの状態になってしまったのだ。
スペクトル召喚。永続魔法である『PO』を用いるという召喚方法なので、不要になった永続魔法を素材にして次につなげるというやり方もあるが、世界観的には、スペクトル召喚を行うためだけのカードになっている。
いいのか悪いのか。それもドレイクにはわからない。
しかし、スペクトルモンスターを覚醒させなければ、遊世は時間軸の影響で消滅してしまう恐れもある。
考えることは多いが、少なくとも今は、遊世の中にいることが重要だろう。
それ以上の良い判断が何なのか、ドレイクにはわからない。