「ふう……」
遊世は息をした。
「これで50人くらいか」
『全てスターゲイザーの剣の餌食になっていったがな……』
だってレルームを取りやすいから連続攻撃をバカスカ出来るからな。
『それはそうと、先程のスタンディングデュエル。ギャラリーがいたようだな』
「ん?」
辺りを見てみると、同年代の少女がいた。
いや、身長は遊世と同じくらいか。
ただ、気になるのはその服装だった。
制服だろう。しかし、それはロングドレスのような形であり、直ぐにパーティー会場にも行けそうだった。
確か、『デュエルアカデミア・パレス』の制服だったはずだ。
パレスというのは『宮殿』という意味である。
最大の特徴は、セブンガーデンと呼ばれる制度だ。
入学後一ヶ月で、七つある学内チームの何れかに属し、その後、自分の領地を部分的に賭けてデュエルをする。
それぞれの学期ごとに領土の規模はリセットされるが、多くの領土を持っていた方が、学期末に生徒に出てくるサービスも大きくなる。
そんな学校だ。
『詳しいんだな』
(まあな)
で、その生徒が俺のことをじっと見ているのだが……。
「少々、お時間をいただいてもよろしいですか?」
「いいよ」
『即答かい』
ドレイク。ちょっとやかましいぞ。
「助かりますわ。わたくし、『デュエルアカデミア・パレス』の『アクセプトナイツ』のチームリーダーを勤めています。
まあ、デュエルアカデミア・パレスのことを知らないデュエリストはいないとまでされるほどの知名度。まあ主にプロチームの入団者数の圧倒的な多さが理由だが、それほど凄いものなので、いきなりこんな自己紹介をされても不思議ではないのである。
「宮襟遊世だ。よろしく」
『第三者視線としてだが……なんかよくわからん上下関係だ』
何が言いたいんだ?まあいいけど。
「先程のデュエル、とても素晴らしいものでしたわ。それに関して、一つ。頼みがあるのです」
『主導権握るのが上手いな』
ドレイク。いくら見えないからってごちゃごちゃ言い過ぎ。
「一体なんだ?」
『遊世。初対面の人間に対するしゃべり方って知ってるか?第一印象は大切だぞ』
(彼女はそういう
ドレイクは黙った。
「実は今日の午後、アクセプトナイツにとって重要なデュエルがあります、そのなかで、『外部招待枠』と言うものがあるのですが、まだその枠のデュエリストを決定できていないのです」
「なるほど、それで、さっきのデュエルを見て……」
「はい、スペクトル召喚を使わず、あれほどのシンクロ召喚を使いこなす。しかも、たどり着いた者がほとんどいないアクセルシンクロを使うことができるデュエリスト。文句なしに、安心できるのです」
『表面は穏やかだが内心はすごく焦っているようだな……何かあったのか?』
ドレイクは知らないか。
(パレスでの重要なデュエルっていったら『校内代表戦』だ)
『チームそれぞれの代表で戦う感じか』
(まあな。パレスはデュエルしている部分だけという前提でだが、メディアが普通に校内に入ってくるような場所だから、プレッシャーに耐えることは勿論、そこで活躍しなくちゃいけないっていう義務感がある。外部招待枠のデュエルの勝敗によるポイントが、チームのボーナスポイントに大きく影響するのも理由の一つだ)
『ちなみにその制限は?』
(呼ぶのは誰でも構わない)
『それはまた……』
さて、どうするか。
「どうでしょうか」
せめて疑問符つけようか。
とドレイクも思った。
「いいですよ……ん?今日の午後?」
「はい、今から三時間後ですわ」
『この女、悪魔だな』
それには同意しよう。
まあ、なんだかんだ言って移動し、受付を済ませて玄関を潜った。
『うわ、これはすごい大きさだな』
本校者の大きさを見たドレイクが唖然としている。
確かに、デュエルの状況はよくメディアにも載るのだが、校舎とかはあまり載らないのだ。
それにしても、確かにパレスは宮殿という意味だ。
だが……これは、
『これって、
(俺もそう思う。日本最大級のデュエリスト育成学校。その噂は伊達ではないな……)
『これ、もう町とか運営できるくらいの金額で運営しているんじゃないか?』
(全てにおいてランクはすさまじい。まず入学するだけでも、リトルリーグ……あ、この学校、中高一貫な。で、小学生の公式大会での優勝経験とか、それに匹敵するキャリアが必要になる)
『遊世は条件を満たしていなかったのか?スペクトルモンスター関連で』
(いや、この学校はスペクトル至上主義とかそう言ったものではないが、まあどのみち来てないだろうな……)
『理由は?』
(めんどくさい。あと、この学校は全寮制だからな。俺、枕が変わるとうまく眠れないんだよ)
ドレイクは聞いた俺がバカだった。とでも言いたそうな顔をした。
「驚きましたか?」
「それはもう」
歩いていると、何人かの執事やメイドが来た。
『……なんだこれ』
(パレスは、全生徒に最低一人、執事かメイドがつくんだよ)
『まるで意味がわからんぞ。あと、顔面偏差値がふざけたレベルだな』
ものすごく高いと言いたいのだ。
まあそれはいいとしよう。
その後、5人ずつのメイドと執事に囲まれて、遊世は移動する。
『うーむ。このメイドと執事、動きに無駄がないな。武器を扱わない武術で有段者だろう。着ている服も、デザインを重視したものでありながらなかなか性能面にも力を入れている。一着数十万円と言われても俺は納得できるぞ』
(俺はドレイクのDNAが気になったよ)
なんでそんなに分かるのか……かなり疑問である。
そんななか、控え室についた。
中には二人のデュエリストがデッキの調整をしていた。
男子一人、女子一人だった。
美野里を入れて三人だな。
「この部屋が、アクセプトナイツの代表戦における控え室ですわ」
ふむ、そうか。
「ん?リーダー。その人が招待枠の人?」
女子生徒が聞いてくる。
赤い髪のツインテールの少女だ。
パレスの女子生徒の制服は、ロングドレスのタイプとセーラー服の二種類があるが、この少女はセーラー服だった。
「ええ、そうですわ」
「宮襟遊世だ。よろしく」
「宮襟……
「ああ、早苗は俺の妹だ」
「へぇ、じゃあまだスペクトルモンスターは持ってないんだな」
茶髪でチェーンをアクセサリーとしてズボンのベルトに着けている少年が値踏みするような視線で遊世を見た。
「ああ、スペクトルモンスターは持っていないよ」
『厳密には使えないだけだがな。っていうか、妹がこの学校の生徒だったんだな』
別に言う必要はないことだ。
「ふふ、個性豊かですが、私を含めた三人が、アクセプトナイツの代表メンバーですわ」
で、まあ自己紹介。
赤い髪のツインテールが
茶髪とチェーンアクセサリーが
リーダーは、金髪ロングの桐原美野里。
この三人がアクセプトナイツの代表である。
「俺はまだリーダーが選んだにしても信用できねえな。スペクトルモンスターを持っていないのに……」
「ですが、実力は本物ですわよ」
「じゃあ、今から俺と……」
「残念ですが、あと数分で待機時間は終了です。それよりもデッキ調整を済ませたのですか?」
真はあからさまに舌打ちした。
「まあいい。本番で下手なことしなけりゃな」
「ふふ、それでいいのですよ」
そして、本当に数分後に待機時間は終了した。
あと数分遅れていたらどうするつもりだったのだろうか……。
まあ、すんだことはあとにしよう。
『遊世。代表戦について知っていることがあったら教えてくれ』
(わかった)
代表戦は、各チームの三人の代表と、一人の招待枠の計四人でチームになり、それが七つで行われるトーナメント方式だ。
チームが七つなので、現段階で最大量の領地を持っているチームが不戦勝になり、他の六チームがくじ引きで対戦相手を決め、それぞれ対戦。勝ち上がった三チームと不戦勝だった一チームが再度くじ引きで決めて対戦し、その後決勝だ。三位決定戦は存在しない。
デュエルに関してだが、簡単に言えば勝ち抜き戦だ。
チーム代表A→チーム代表B→招待枠→リーダー
この順番で出場する。
どちらかが勝った場合、負けた方はさっさと退場する。
なお、この時にフィールドのカードを引き継いだりすることはせず、デュエルごとにフィールドはリセットする。
そうして、相手選手をすべて倒せば終了だ。
ただし、招待枠のデュエリストは、同じ招待枠のデュエリストに勝った場合でも、リーダーに変わるのだ。
ちなみに、二人目のチーム代表メンバーが相手のリーダーに負けた場合、自分チームの招待枠のデュエリストの順番を飛ばして進行する。
要するに、『チームリーダーVS招待枠デュエリスト』という対戦カードは存在しないのである。
「なお、アクセプトナイツは不戦勝ではありませんよ」
「バカにする訳じゃないけど予測はしていた」
まあ、そんな雑談はあった。
ただ、代表戦前とデュエル直前では控え室が違うのだが、これの意味がよくわからない。
一緒ではダメだったのだろうか。
「それでは、私はくじを引きに行ってきます」
美野里がステージにいった。
ちなみに、其々のチーム名だが、
領土の量の多さ順でいうと、
序列一位 『ユニバースライザー』
序列二位 『ゲートユナイズ』
序列三位 『オリジンコスモス』
序列四位 『メテオパズル』
序列五位 『フリーダムビースト』
序列六位 『バスタードキングダム』
序列七位 『アクセプトナイツ』 ←遊世たち
といった感じだ。
そして、トーナメント表。
一回戦 アクセプトナイツ VS ゲートユナイズ
二回戦 フリーダムビースト VS バスタードキングダム
三回戦 オリジンコスモス VS メテオパズル
不戦勝 ユニバースライザー
となった。
「一回戦から序列二位が相手か」
「ビビってるのか?」
「いや、全然」
真がいってくるのを軽く受け流す。
そして、一回戦ということもあってすぐに試合だった。
「それじゃあいってくる」
「茜、頑張ってくださいね」
「分かってますって」
茜がステージに上がった。
対戦相手も上がってきた。
「うわ、相手、ゲートユナイズのエースか。出てくるとは思ってたけどなぁ」
真が嫌そうな顔をした。
「そんなに強いのか?」
「ああ、あの銀髪。かわいい顔してむちゃくちゃ強いぜ」
「ある意味で普通に感じるな」
(ただ、物凄く無表情な少女がチュッパチャプスをくわえながら立っていると妙な雰囲気になるな。人形みたいに可愛いから余計にその雰囲気が強い)
『俺も同感だ』
さて、デュエルに集中しようか。
【それでは第一回戦、アクセプトナイツ VS ゲートユナイズの試合を始めます。アクセプトナイツからは、上月茜選手、ゲートユナイズからは、
「「デュエル!」」
茜 LP4000
未来 LP4000
先行は茜だ。
「私のターン。私は手札から永続魔法『契約自販機』を発動」
永続魔法も発動と共に、自動販売機が出現した。
その商品だが……丸められた書類のようだ。
「魔法自販機の効果を発動。ライフを500ポイント払うことで、デッキから『契約書類』と名のつくカードを一枚、手札に加える。私が手札に加えるのは『二重召喚の契約書類』」
茜 LP4000→3500
「私は『二重召喚の契約書類』を発動。相手のライフを800ポイント回復することで、このターン。二回の通常召喚を行える」
未来 LP4000→4800
契約書類が未来のそばに近づいていき、頭上から降ってきた判子が押されると、書類から未来に緑色の光が放出されて、未来のライフが回復した。
ていうか、契約書類って自販機で買えるもんじゃないよな。普通。
「私は『強制商人アクト』を召喚」
ピエロの仮面をしているスーツの男性が出現した。
強制商人アクト ATK1800 ☆4
攻撃力が地味に高いと思った遊世は多分間違いではない。
……恐らく。
「アクトの効果を発動。相手はカードを一枚ドローして、自分はデッキからPOを一枚手札に加える。私は『PO セールス』を手札に加える」
アクトは未来に近づいて行って、書類を見せて、未来が見る前にすぐさま判子を押して、問答無用で茜のフィールドに戻ってくる。
……相手の判子は要らないのだろうか……。確かに強制である。
未来はドローした。
『なんとなくカテゴリーのコンセプトが分かった』
(ああ、相手にメリットを与えることで、本来コストが必要そうな効果をノーコストで使うのか)
『成金ゴブリン』とか『ソウルテイカー』、『奇跡の軌跡』のようなものか。
『だが、あの自販機はコストを支払ったが、他のカードはどれも相手にメリットがある。ライフならまだ問題はなさそうだが、手札を増やしすぎると不味いと思うぞ』
(俺もそう思うな。いろいろと考えて使わないとひどい目になるだろう)
『ところで遊世』
(なんだ?)
『契約書類って自販機で買えるのか?』
(んなわけあるか)
さて、デュエルを見ようか。
「さらに私は、手札から『強制商人ルクト』を召喚」
強制商人ルクト ATK1900 ☆4
「ルクトの効果を発動。相手はデッキからカードを一枚ドローして、私のライフを1500ポイント回復する」
未来はルクトが来る前にカードをドローした。
茜 LP3500→5000
『こ……これは悪くはないな』
(まあ、今だけ見ればな)
「私は『PO セールス』を発動、そして、セールスとアクトとルクトを除外して、スリットチェンジ!書類を手に走り回る商人よ。全ての契約を複製せよ。スペクトル召喚!レベル6『強制商人マクト』!」
強制商人マクト ATK2800 ☆6
攻撃力高い!レベル6か本当に。
「マクトの効果を発動、このターン中、『契約書類』または『強制商人』と名のつくカードによって相手に起こったことを一つ選択して、そのうちの一つを私が行う。二重召喚の契約書類の効果であなたが回復した800ポイントを、私にも加える」
茜 LP5000→5800
「そして、相手はデッキの上からカードを三枚墓地に送る」
未来は無表情のままでカードを墓地に送った。
「私は一枚カードを伏せて、ターンエンドよ」
【茜選手。一ターン目からスペクトル召喚を炸裂だー!その攻撃力はレベル6にしては高い2800。未来選手はこれを突破できるのかぁ!】
多分普通にできる。
「む、私のターン。ドロー」
未来がカードを引いた瞬間、一瞬だけ笑った。
(あ、これ終了フラグだ)
『負けたな。茜』
そう、未来は手札が八枚だ。
しかも、墓地にカードが送られているが、ある意味ではアドバンテージである。
「私は手札から、『
エフェクトはなく、瞬きひとつした後にはすでに竜が存在していた。
細いフォルムで黄色い竜だった。神速竜の基本フォルムである。
神速竜ダストルア ATK1500 ☆4
「さらに、ダストルアの効果を発動。このモンスターの召喚に成功したとき、手札の神速竜モンスターを一体、守備表示で特殊召喚する。私は手札から、チューナーモンスター、『神速竜オルラーダ』を特殊召喚する」
神速竜オルラーダ DFE1000 ☆3(チューナー)
またもやエフェクトはない。
ていうか、速すぎ。
「私はレベル4の『神速竜ダストルア』に、レベル3の『神速竜オルラーダ』をチューニング」
あ、シンクロ召喚は普通に見える。
「神速に至る竜たちの定めよ、その膂力を持って全てを砕け!シンクロ召喚!レベル7。『神速竜ライトレイ』!」
でも、出てくるときだけは本当に一瞬だった。
神速竜ライトレイ ATK2700 ☆7
「そのモンスターじゃ、私のマクトの攻撃力を越えることはできない!」
(それは負けフラグだって……)
「それは間違い。私は手札から、『神速竜ユレイドム』の効果を発動する。このモンスターを手札から墓地に送ることで、神速竜一体以外の攻撃を禁止することで、一体をダイレクトアタックさせることができる。私はライトレイを選択する」
「あ、そう言えばそういう効果が……」
「さらに、手札から『PO マッハゴール』を発動する。マッハゴールは、自分フィールド上に神速竜と名のつくシンクロモンスター一体だけが存在するとき、スペクトル召喚の素材を、自分の手札だけで行うことが出来る。ただし、この効果を使う場合、そのスペクトル召喚のあと、私はモンスターを召喚、特殊召喚はできない。私はマッハゴールと、二枚目のダストルアと、『神速竜エルシオン』を除外して、スリットチェンジ!神速の力秘めし双翼よ、殲滅の礎の糧となれ、スペクトル召喚!レベル5。『神速竜フルルーモ』!」
スリットになる段階からプリズムを貫通するまでのタイミングがものすごく速かった。
神速竜フルルーモ ATK0 ☆5
「攻撃力……0?」
「フルルーモをリリースして効果を発動、自分フィールド上の神速竜モンスターは、相手のライフに戦闘ダメージを与えたとき、500ポイントのダメージを相手に与える」
リリースして発動するにしては効果が薄い気もするが、相手に与えるごとに、とも言えるので、攻撃回数によってはかなりのダメージになりそうである。
「そして、ライトレイの効果は、このモンスターの攻撃宣言時、ダメージステップ終了時まで、相手は魔法、罠を使うことはできない」
「嘘っ!」
「さらに手札から『巨大化』を発動して、ライトレイに装備、私の方がHPが低いから、攻撃力を倍にする」
神速竜ライトレイ ATK2700→5400
『問答無用でダイレクトアタックを可能にさせるモンスターがデッキにいるなかで『巨大化』を入れるとか……容赦ないな』
(否定できん)
「うそ……」
「ライトレイでダイレクトアタック。『ファントムダイブ』!」
本当に見えなくなったかと思うほどの速度で茜に突撃した。
「ぐうう……」
茜 LP5800→400
「そして、フルルーモの効果によって、500ポイントのダメージを与える。『ソニックショック』」
茜 LP400→0
【決まったー!未来選手。フェイバリットモンスターによる攻撃で茜選手の5800ポイントのライフを削りましたー!二つ名、『ハイスピードスター』は伊達ではないぞー!】
ハイスピードスターか。神速竜のエフェクトによるスピード、さらには決着が毎回早いのだろう。
『二つ名通りだとするなら、毎度毎度展開力は高いのかね。ライトレイだったか。あのモンスターは単体でも、攻撃力2700。さらには相手は、攻撃時に魔法、罠が使えないのか。しかも、神速竜は手札から墓地に送ることで発動する、魔法っぽい効果モンスターも多いからなぁ。今回はユレイドムだけだったけど』
(打点がちょっと高いな)
『まあ、聖堂剣込みなら打点的には問題ないだろう』
(それもそうだが……)
なかなか強いな。
しかし、魔法っぽいモンスターとは言うものの、手札から捨てて発動できるタイプのもので、しかも、相手ターン中でも使えるカードは多いらしい。
例え無効にされたとしても、モンスターであるがゆえに回収もそう困難ではないし、しかも、魔法、罠に対してメタデッキを相手が使っていてもほとんど問題ない。
なかなか厄介である。
あと、真はすでにステージに立っていた。
茜が戻ってくる。
「すみません。勝てませんでした」
「こう言うこともありますよ。今は真の応援をしましょう」
「はい」
強制商人、結構色々好きなことができそうなデッキなので、慣れれば問題はないはずだが、ライフにおいてはシモッチもいれないで使うのは無謀では?というか、『活路エクゾ』で活躍しやすそうである。
『俺だったら『手札抹殺』とかで散々デッキを削ったあとで『大暴落』だけどな。ただ、相手がドローするタイミングの問題で、『便乗』の発動条件を満たせないのがな……相手のドローが、こっちの効果発動の後だったら結構楽なんだけど……』
近年、便乗が制限カード入りしたが、多分このカテゴリが原因だな。
(……まあ、そうとも言えるな)
『しかし、あの未来という少女、デッキの雰囲気はかなり強いな。序列二位のチームに所属しているが、一位のチームよりもかなり強い雰囲気だ』
(そこまでか)
『というか、一位のチームのメンバーは、デッキの雰囲気と本人が噛み合っていない。全くではないけどな。恐らく、デッキビルダーで優秀なメンバーがいるんだろう』
(まあ、一つに作戦ではあるが……)
『まあ色々だからな……さて、真はどんなデュエルをするんだか……』
(デッキの雰囲気は?)
『ボチボチだな』
……さすが、序列七位。いや、バカにしたい訳じゃないけど。
まあ、次は真だ。
【それでは、アクセプトナイツVSゲートユナイズの二試合目、アクセプトナイツからは木戸川真選手です。未来選手を倒すことは出来るのか!それでは、デュエルスタートです!】
「「デュエル!」」
真 LP4000
未来 LP4000
先行は真だった。
『なんだろうな。すでにフラグ臭がする』
(この試合、先行後行はコンピュータのランダムのはずなんだが……)
未来のエースモンスターとカテゴリ的に、得意なのはどちらなのか何となくだが確定している。
コンピュータも結構意地悪だ。
「俺のターンだ。俺は手札から、『深海獣イルセ』を召喚!」
深海獣イルセ ATK1500 ☆3
来た、魚面ライオン。
あ、アイツって深海獣使いだったんだ。
『どっかで出てきたっけ?』
(ちょっと前にな)
『そのデュエリストって強かったのか?』
(個人によるな。その評価は)
『なるほど』
「イルセの効果により、一ターンに一度、手札一枚をコストにして、デッキからレベル3の深海獣モンスターを特殊召喚できる。俺は『深海獣ケイオル』を特殊召喚!」
魚面の象だった。なんか変な方向に迫力がある。
深海獣ケイオル ATK1400 ☆3
「さらに、ケイオルの効果を発動、自分の墓地の、レベル3の深海獣モンスターをデッキに戻して、召喚回数を一回増やす。俺は墓地の『深海獣リカルド』をデッキに戻す」
ふむ……いや、普通かな。
『レベル3統一カテゴリか?』
(いや、3とか6が多かったはずだが……)
『展開力は無いわけではないな』
「俺はイルセとケイオルをリリースし、『深海獣ドラム』をアドバンス召喚!」
今度は魚面大蛇か……。
深海獣は種族がバラバラなカテゴリなのでなんとも言えないが……まあいいか。
深海獣ドラム ATK2400 ☆6
『ん?レベル6のモンスターを二体のリリースで召喚したよな』
(まあ見てろ)
「俺は深海獣ドラムの効果を発動。このモンスターが二体のリリースで召喚されたとき、自分のデッキから、『PO』1枚を手札に加えて、さらに、自分の墓地のモンスターを一体、効果を無効にして、レベル6扱いで特殊召喚することが出来る。俺は『PO マリンエラル』を手札にくわえ、さらに、『深海獣イルセ』を特殊召喚する」
深海獣イルセ ATK1500 ☆3→6
再び現れる魚面ライオン。
そして、レベル6が二体。
「俺はレベル6の深海獣ドラムとイルセでオーバーレイ!二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、深淵に眠りし魚面の魔獣よ、眠りを妨げる愚か者を食いちぎれ!エクシーズ召喚!現れろ、ランク6、『深海獣ダイアガーザ』!」
魚面大蛇だが、首が三つあった。
な、なんかすごい。
深海獣ダイアガーザ ATK2500 ★6
「そして、『PO マリンエラル』を発動し、マリンエラルと、深海獣エクシーズモンスターであるダイアガーザを除外して、スリットチェンジ!遺伝子に刻まれし本能よ、抑えることを放棄し、暴食の化身となれ。スペクトル召喚!現れろ。レベル7。『深海獣サイネリア』!」
鮫の顔をもつ鯨が出現する。
なぁにこれぇ。
深海獣サイネリア ATK2700 ☆7
「俺はカードをセットして、ターンエンドだ」
「ふむ、私のターン。ドロー」
「スタンバイフェイズ時、リバースカードオープン。罠カード『アビスルート』を発動!自分フィールド上の深海獣モンスターを一体選択して発動、相手はそのモンスターしか攻撃対象に選択できない。そして、選択されたモンスターは、一ターンに一度、戦闘では破壊されない。俺はサイネリアを選択する」
『なるほど、ユレイドムの効果によるダイレクトアタックを回避するためか』
(そうみたいだな)
『あと、あのサイネリアというモンスター、一ターンに一度、自分にダメージが発生したとき、そのダメージを一度だけ0にして、相手に500ポイントのダメージを与える効果がある』
(なんじゃそりゃ。戦闘では本来は破壊されるんだろ?)
『まあそうだが、結果的に言えば悪い話ではない。あと、オマケかな。サイネリアをリリース出来ないという効果がある』
(そうか)
未来はどうするのだろうか。
「私は手札から『神速竜ダストルア』を召喚する」
神速竜ダストルア ATK1500 ☆4
茜とのデュエルにも出てきたモンスターだ。
「私はダストルアの効果で、手札から神速竜モンスターを一体、守備表示で特殊召喚する。私は『神速竜エルシオン』を特殊召喚する」
神速竜エルシオン DFE1300 ☆3
『チューナーでは無いようだな』
(ああ、だが、モンスター効果は普通に使えるから、それが狙いだろう)
「私はエルシオンの効果を発動する。エルシオンをリリースして、デッキからレベル4以下の神速竜モンスターを一枚、手札に加える。私は『神速竜ユレイドム』を手札に加える」
「ダイレクトアタックを可能にするモンスターか。だが、アビスルートの効果でそれは無意味だ」
真がすぐさま反応した。
「知ってる。でも、効果で破壊すればいいだけのこと、でも、マリンエラルを除外してスペクトル召喚されたモンスターは、次の自分のターンのエンドフェイズで自壊してしまうけど、相手のカード効果で破壊されないという追加効果を加えることができる」
「よく知っているな」
確かに、無表情だがかなり勤勉である。
あと、マリンエラル。ちょっとデメリット重くないかな。
「そして、ダイアガーザの効果もある。除外されているダイアガーザは、相手が自分フィールド上のモンスターを手札、デッキ、墓地に戻す効果を使ったとき、デュエル中に一度だけ、デッキに戻してその効果を無効にして破壊できる」
それはまたすごいな。
「確かにその通りだ。マリンエラルとダイアガーザがいることで、お前はカード効果で俺のサイネリアを除去することは出来ねえ。そして、アビスルートの効果により、お前はサイネリアにしか攻撃できない。そして、お前のエースモンスターの攻撃力と、俺のサイネリアの攻撃力は同じだ。だがそれも、マリンエラルの効果で一度だけ戦闘では破壊されない。さらに、サイネリアはリリース出来ないから、『痛み分け』は効かないぜ」
「なるほど、相殺することも不可能」
まあ、なかなか耐性を付与したものだな。
ただまあ、攻撃力が同じだと戦闘ダメージが発生しないので、サイネリアの効果は発動されないが。
『この様子だと、自分の次のターンに、サイネリアが自壊してしまう状況にたいしても策がありそうだな』
(俺もそう思う。残っている手札、たぶんそれが対策用カードだ)
『神速竜モンスターのシンクロモンスターがライトレイだけと言うわけではないだろうが、それでも、他のモンスターを出すにしてもほぼ鉄壁だな』
(ああ、そう思うな。でもデッキの雰囲気は普通なんだろ?)
『そう見える。で、遊世ならどうする?ユレイドムをつかってこのターン中に倒す前提で』
遊世はドレイクに見えないように紙に書いた。
そしてそれを折り畳んで、ドレイクに渡す。
(未来が切り抜けるまで持っていろ)
『……何かはしらんが、あるんだな』
(ああ)
未来は自分の手札のカードを一枚つかんだ。
「まずはエースを出す。私は墓地のエルシオンを除外して、手札のチューナーモンスター、『神速竜コノマノア』を特殊召喚する」
神速竜コノマノア ATK300 ☆3(チューナー)
本当にレベル3なのか疑いたくなるようなステータスだ。
遊世のデッキのチビドラゴンたちよりも攻撃力が低い。
「私はレベル4の神速竜ダストルアに、レベル3の神速竜コノマノアをチューニング。神速に至る竜たちの定めよ、その膂力を持って全てを砕け。シンクロ召喚!レベル7。『神速竜ライトレイ』!」
神速竜ライトレイ ATK2700 ☆7
「さらに、手札の『神速竜ムレイク』の効果を発動。ライフを半分払って、このモンスターを手札から墓地に送り、神速竜モンスターを一体選択する、そのモンスターは、そのモンスターのレベル1につき、攻撃力が200ポイントアップする。ライトレイを選択し、レベル7のため、攻撃力は1400ポイントアップする」
未来 LP4000→2000
神速竜ライトレイ ATK2700→4100
【未来選手のエースモンスター、神速竜ライトレイが真選手のライフを上回ったー!しかし、ユレイドムが手札にあるとはいえ、このままでは突破できないぞー!】
MCもテンションが高くなっているようだ。
「その残った手札三枚で突破しようってのか?だが、そのうち一枚はユレイドムだ。実質二枚だぞ」
「問題はない。一枚で十分」
「何?」
「デュエルモンスターズの黎明期は、シンプルで強力なカードも数多くある。これもその一つ、私は手札から、速攻魔法『月の書』を発動する。モンスター一体を裏側守備表示に変更する。私はサイネリアを選択」
「な、なんだって!」
サイネリアがその姿を消し、フィールドには一枚のセットモンスターだけが残ることになった。
確かに、マリンエラルの効果が適用されていても、アビスルートの効果があっても、セット状態になっていては、そのモンスターが何なのかは分かっていても、すべてリセットされる。そして、フィールドからどかせる効果ではないから、ダイアガーザの効果は発動されない。
ドレイクは遊世が書いた紙を開いた。
そこにはそう書かれていた。
『サイネリアをセット状態にする』
使用している言葉は違うが、言っていることは全く同じだった。
そして、ふとドレイクは疑問を持った。
『遊世のデッキに、フィールドのモンスターをセット状態にできるカードなんて入ってたかな?』
(……)
入れてないんだな。とドレイクは思ったが、口には出さなかった。
「私はユレイドムの効果を使う。効果の説明は不要。ライトレイを選択する。そして、ライトレイでダイレクトアタック。『ファントムダイブ』!」
茜の時と同じく、すさまじいスピードで真を攻撃した。
真 LP4000→0
【決まったー!未来選手、あの状況で、たった一枚のカードで突破しましたー!アクセプトナイツの残るデュエリストは、招待枠のデュエリストと、リーダーしかいなくなってしまったぞー!】
一々声のでかいMCである。
真が戻ってきた。
「リーダー。すみません」
「良いのですよ」
いや、そうは思っていない。それはよくわかる。
『恐らくだが、俺たちには言えない状況になっているんだろう。美野里が覚悟を決めた目をしている』
(はぁ、ま、せっかく参加するんだ。ちょっと本気でいくか)
遊世は歩き出す。
『ん?遊世。そっちは違うぞ』
(招待枠のデュエリストであっても、Dホイールに乗れる場合は乗る必要があるんだよ。未来は乗れるだろうしな)
『分かるのか?そう言うの』
(まあな。それじゃあ、さっさと移動するか)
遊世は移動し始めた。