おぞましい合唱が響いて、ガゼルアブソーバに迫る。
ドレイクは一瞬絶望する。
遊世はカードをドローして手札が4枚になったが、よほど精神にダメージがあるのか、それを確認しようとすらしない。
だが、しかし、ドレイクには理解不能なことが発生した。
ガゼルアブソーバのシンクロ召喚の時に素材として墓地に送られた『カセドラーム』が、墓地から出てきたのだ。
『これは……ち、仕方がない』
ドレイクは遊世の意識を内側に押し込んで、ドレイク本人の意識を表面に出した。
「墓地のカセドラームの効果を発動!このモンスターを素材とした『聖堂軍』シンクロモンスターがカードの効果によって破壊される場合、そのシンクロモンスターが装備している聖堂剣を二枚を墓地に送り、カセドラームを除外することで、その効果を無効にする!俺は『聖堂剣ホライゾン』と『聖堂剣レルーム』を墓地に送り、『惨劇の合唱』による破壊を無効にする!」
カセドラームがガゼルアブソーバの剣と一体化している聖堂剣二枚を体内に取り込むと、自らが鳴いて合唱を中断させる。
破壊することが出来なかったので、ダークコーラスの攻撃力上昇も発生しなくなった。
なぜ、任意発動の誘発即時効果であるカセドラームが反応したのかは分からない。
だが、間一髪だった。
聖堂剣を失ったことで、ガゼルアブソーバの攻撃力はもとに戻る。
聖堂軍ガゼルアブソーバ ATK6300→3800
ダークコーラスの現在の攻撃力である4000を下回ったが、それはこの際仕方のないことだ。
「む、ふふ、なるほど、あなた、管理コード『4519』ね」
「うるせえな。俺は『ドレイク』だ。他の何者でもねえよ」
リベラルは一発で気付いてきたか。
「お兄様では無いようですが……今は感謝します」
「すまんな。その言葉はまだちょっと早いぜ」
「その通り、私はダークコーラスでガゼルアブソーバを攻撃、『ノイズヘルストーム』!」
黒い不協和音の竜巻がガゼルアブソーバを破壊する。
ドレイク(遊世) LP3500→3300
ライフだけを見ればそうでもない数字だ。
しかし、状況はかなり不味い。
「ふふ、私はカードを伏せてターンエンドよ」
リベラルの手札はなくなった。
「俺のターンだ。ドロー!」
ドローして手札は五枚、そしてその内二枚は『聖堂剣サフィクル』と『聖堂剣ツナミ』だ。
手札が五枚もあれば、遊世ならレベル10の聖堂軍モンスターを出せるだろう。
墓地には既に、ホライゾンとレルームがあるのだ。スターゲイザー辺りを出して、その過程で聖堂剣ホライゾンをまたサーチすれば、遊世なら勝っている。
魔法カードが、ダークコーラスの効果が無効にされているため、普通に使えるからだ。
というか、『カセドラルコール』と、チューナーのチビドラゴンがいれば、ダルクオームを出しながら、レイスを出してホライゾンをサーチ(厳密には墓地に送る)出来て、そのままスターゲイザーに繋げることが出来る。
遊世は『聖堂軍ワイズ』を二枚、デッキに入れているからだ。
いつも通りの流れが出来る。
リベラルの伏せカードは気になるが、それも遊世ならなんとかするだろう。
だがしかし……、
「あなたのターンだけど、どうかしたのかしら?」
リベラルが勝ち誇った笑みを浮かべながら聞いてくる。
ドレイクの今の手札には、『カセドラルコール』も、チビドラゴンもいなかった。
そして、サーチすることも不可能だった。
「くそっ!俺は『聖堂軍ピリオネ』を守備表示で召喚し、手札から『聖堂剣サフィクル』をピリオネに装備して、ターンエンドだ」
聖堂軍ピリオネ DFE800 ☆4
「ふふ、いいカードは無かったようね」
確かに、ドローしたカードも良いものではなかった。
だが、ドレイクは疑問だった。
なぜ遊世は、『プリズムオブジェクト』のカードを入れているんだ……。
そして、『聖堂剣ツナミ』ともうひとつ、魔法カード『宝剣の回廊』という、自分のライフを半分にし、『聖堂宝剣』を一枚サーチできるカードだったが、使うわけにはいかなかった。
「私のターン。ドロー。ふふ、魔法カード『追撃の合唱』を発動するわ。自分フィールド上のスペクトルモンスター一体を選択し、そのモンスターは二回攻撃することができる。まあ、ダメージは半分になるし、他のモンスターは攻撃できないけどね」
「く……」
「私はダークコーラスでピリオネを攻撃し、さらに、ダイレクトアタック!『ノイズヘルストーム』!」
「くそ……」
ドレイク(遊世) LP3300→1300
「さらに、メインフェイズ2。リバースカードオープン、魔法カード『虚構の合唱』を発動するわ。自分がこのターン、モンスターの召喚、特殊召喚、セットを行わず、相手に戦闘ダメージを与えたターンのメインフェイズ2に発動できるカード。次の相手のターン。相手はモンスターの召喚。特殊召喚を、合計二回までしか行うことが出来ない。さらに、相手の手札の全てと、デッキトップを確認することができる」
「なんだと!」
合唱が響き渡る。
ドレイクの三枚の手札が、ソリッドビジョンとしてリベラルの側に表示された。
「これは不運ねぇ。モンスターカードが一枚もないし、スペクトルモンスターもいないのに、『プリズムオブジェクト』を、まあ一枚は『聖堂剣ツナミ』だけど、これは攻撃時に相手の墓地のモンスターの効果を発動不可にするだけ。『宝剣の回廊』はもう無意味ね。召喚、特殊召喚を合計で二回しか出来ないのに、レベル10の聖堂軍シンクロモンスターを出すことは不可能よ。レベル10以上の聖堂軍シンクロモンスターは、セルハザード以外は、シンクロ召喚でしか場に出せないからね。そして私の場には、攻撃力4000のダークコーラス。まあ効果は無効になっちゃってるけど、それでもステータスは十分」
確かに、絶望的だ。
「さて、私の次のドローカードは……魔法カード『逆襲の合唱』。このカードの効果は、メインフェイズ1の開始時に発動するもので、ライフを半分にして、自分の墓地の『合唱』と名のつくカードを発動できる。何を発動してもいいけど、まあ、『追撃の合唱』を発動すれば勝てるわね」
これは本気でヤバイ。
「私はこれでターンエンド。さあ、あなたのターンよ」
ドレイクはデッキに指をかける。
「ドロー!」
ドローしたカードを見る。
そのカードの名は『聖堂軍バセレア』
儀式召喚の際、墓地のこのカードと聖堂剣を除外することで、レベル5~8の儀式モンスターのリリースを代用できる。
しかし、このカードでは突破できない。
「その顔を見る限り、いいカードじゃなかったようね。モンスターカードではあるみたいだけど」
「俺は……『聖堂軍バセレア』を、守備表示で召喚する」
聖堂軍バセレア DFE1000 ☆4
「運に見放されてしまったわね。そのモンスターを出したところで、私の勝利は揺るがないわ」
「くそ……」
「そ、そんな……」
リベラルは嗜虐的な笑みを浮かべる。
「ふふふ、中にいるボウヤは今は限界みたいだけど、高密度のダークマターによる干渉だから、その内私たちの意のままになるでしょう。死ぬまで働き続けて貰いましょう。どのみち『ボーダー』の人間なのですから、むしろこれは光栄ですわね」
「リベラル、貴様!」
「口だけは元気のようだけど、あなたにこの状況を覆すことが出来るわけもないでしょう。それにしても、随分と同胞たちがその少年に負けてしまったようですわね。ここはいっそのこと、縛り上げてそのものたちの所に放り込んでおいていいかもしれませんね」
「この……サディストが……」
だが、どうすればいい。
本当に、それが分からない。
「それなら、私が……私がお兄様の身代わりになります」
「早苗!」
リベラルが楽しそうに笑う。
「面白い子ね。あなた、身代わりという言葉の意味を分かっているのかしら?」
「分かっています」
「即答ね。覚悟はあるみたいだけど、でも、ひとつあなたは勘違いしているわ。いずれそのボウヤは私たちの意のままになる。それはもう、確定事項なのよ」
「そんな……」
「ふふ、さあ、管理コード『4519』さっさとターンエンドをいいなさいな。そのボウヤは、もともと価値のないボーダーの人間にしては有能なのよ」
「くそ……」
遊世、俺は、どうすればいい。
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遊世は何かに沈んでいく感覚の中で、思考の渦を感じていた。
遊世は力を求める。
いや、力を求めることそのものは誰にでもあるだろう。
しかし、遊世の場合は、それは一つの真実だった。
遊世は本当の自分の家族を知らない。
光一郎も、早苗も、義理の家族だ。
それ以前、遊世はある場所にいた。
その名は『ワーストエリア』
デュエルの勝ち負けが、人生の質に直結する場所だった。
負けたものは、そのすべてを掲げる権利を失う。
物資の供給が、ワーストエリアに新しく来る何らかの理由を持ったものたちを倒し、奪う事だと言えば、なんとなくわかるだろう。
当然、新しいカードだって、そうやって手にいれる。
物心ついたときからその場所にいて、12歳まではそこにずっといた。
デュエルディスクを初めてつけて、デュエルをして、その勝った相手が、ワーストエリアの中でもトップ100にはいると知ったときは、不思議と何も感じなかった。
ただ、信用という言葉を知らなかったのは、事実だと思う。
実力を比較すれば、ワーストエリアの上位ともなれば、表ではプロにも普通に匹敵するレベルだった。
遊世の実力は、はっきりいって、高かった。
しかし、そこに楽しさはなく、手札に来たカードを上手く使って、相手のライフを0にする。
作業と化したデュエルだった。
そんなとき、当時の遊世には理解できないことが発生した。
いまだからこそ、いや、今でもなんとなくな部分は多い。
『デュエルモンスターズが生まれたばかりの世界』
『デュエルの学校ができはじめた世界』
『ライディングデュエルが普及したばかりの世界』
『大規模なビジョンを一般普及した機械で扱える世界』
『ビジョンが質量を持ち始めた世界』
混乱した。
だが、それと同時に、『デュエルモンスターズが存在する本当の理由』を知った気がした。
競い会うためではある。
だが、前提として、楽しむためのゲーム。
そういうものだと、遊世は知った。
各世界の人間から、カードを貰った。
なぜかドラゴンばっかりだったけど。
一つ目の世界では、すごくプライドが高い男性から貰った。
二つ目の世界では、何かの道場の出身者だった。
三つ目の世界では、仲間思いなメカニックから。
四つ目の世界では、ちょっと不器用で、でも真っ直ぐで家族思いな青年から。
五つ目の世界では、本当に皆を喜ばせることが出来る少年から。
カードを貰った時、遊世は本当に嬉しかった。
だけど、そんな平和のなかにも、やはり、越えなければならないものや、倒さなければならない敵はいた。
その為に、遊世は強くなるしかなかった。
でも、一人で出来ることはやっぱり限界があった。
そんなときに、仲間がいたから、前に進めた。
だが、それでも遊世の中には、貪欲なまでの強さへの渇望があった。
つよくならなければ、いずれ、どこかで取り返しのつかないことになる。
まるで、それが世界の法則であるかのように。
だが、闇の力を手にいれたとしても、それが本当に自分にとって良いものなのか、それは遊世にも分からない。
必要悪の基準が、まだ分からない。
ただ、ドレイクはダークマターではあるけど、嫌悪感はしなかった。
しかし、不安はある。
だが、不安を蹴り飛ばせるような、そんな力が、遊世はほしい。
ただつよければ良いわけではない。
ただ優しければ良いわけではない。
どっちもある、そんな強さがほしい。
だから、ダークマターを素直に受け入れることは、遊世には出来ない。
だが、力は力だ。
でも、その先の自分が不安になる。
だから、欲しかった。
自分の、本当の相棒を。
「なあ、もう、会えるよな。俺たちって」
遊世は誰に言うわけでもなく、そう呟いた。
「多分俺たちには、数々の困難が待ってる。俺は、他の時間に飛ばされるような奴だから、多分そういう運命なのかもな。それが原因で、今まで君には会えなかったし」
呟く。
「でもさ、もう、お互いに悩むのはやめにしようと思うんだ。俺に言えたことじゃないけどな。でも、お互いに、多分お互いが必要なんだと思う」
遊世は微笑む。
「お互いに悩んでいることはあると思う、でもな、一緒に考えようよ。そうすれば、きっといい答えが見つかるから」
遊世は手を伸ばす。
「俺は君に、『待ってろ』なんて言わない。君を不安にさせてしまうかもしれないから」
遊世は伸ばした手のひらをおもいっきり開く。
「俺は君に、『行け』なんて言わない。君にとってプレッシャーになると思うから」
遊世は、腕を、さらに限界まで伸ばす。
「多分、皆、『待ってろ』とか、『行け』とか、それしか言わない。そして、これから起こるかもしれない、本当の困難に遭遇したとき、その言葉は、悪い意味にしかならない」
もう少しで、何かを掴めそうな気がした。
「だから俺は言うよ。『付いてこい』ってさ。多分、それが一番カッコいいから」
何か、大きなものが、そこにある。
「なあ、俺に付いてこいよ。どこまででも引っ張ってやるからさ」
そして、掴んだ。
「モヤモヤしたものなんて、いらない。全部吹っ飛ばして行こうぜ。相棒!」
次の瞬間、周りのすべてが、光で満たされた。
遊世は、握りしめた右手にアツいものを感じた。
「もう、恐れない。ダークマター。俺を敵にまわしたこと、後悔させてやろうじゃないか」
遊世は走り出す。
そして……
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「!!!!!……な、なんだこれは」
ドレイクは沸き上がる何かを、感ぜずにはいられなかった。
『ドレイク、待たせた』
「……そうか、そうだな。お帰りっていっておくぜ」
『俺に変わってくれ』
「ああ」
ドレイクの意識が沈んでいき、遊世の意識が表に出た。
遊世はゆっくりと目を開ける。
「……すまないな。待たせた」
「な……お、お前は……」
「お兄様……」
さて、細かい部分はあとにしようか。
(ドレイク、状況を教えてくれ)
『自分に関して言えば、まあ見ての通りだ。リベラルに関して言えば、あのダークコーラスの効果は今は無効化されている。だが、攻撃力は4000になっている』
(ふむふむ。召喚権は使っているようだな)
『ああ、あと、もう遊世はこのターン、あと一回しかモンスターを特殊召喚できない』
(なるほど。それだけか?)
『そうだな』
(あとは任せろ。もう、このターンがファイナルターンだ)
『任せる』
遊世はリベラルを見た。
「すまないが、このターンで終わらせる」
「フッ、何を言い出すかと思えば、あと一回の特殊召喚だけで、いったいなにができるというの」
「まあ、見ていろ。俺はライフを半分払い、手札の『宝剣の回廊』を発動、デッキから『聖堂宝剣』と名のついた装備魔法を一枚、手札に加える。俺が手札に加えるのは『聖堂宝剣ガゼルアブソーバ』だ」
遊世 LP1300→650
ガゼルアブソーバのカードがデッキの中間辺りから飛び出てきたので、それを抜き取る。
「そして、手札の『聖堂剣ツナミ』を、『聖堂軍バセレア』に装備する」
「いったい何をしようというの、そんなことをしても、意味などない!」
『遊世……』
「お兄様……」
遊世は手札の永続魔法を掴んだ。
「俺は手札から永続魔法、『PO カセドラルモア』を発動する」
POは、使うかどうかは別だが全てに効果がある。
ただし、カセドラルモアの効果は、聖堂剣を墓地から3枚除外して、除外されているこのカードを手札に加えるというものなので、今は関係ない。
「何をいまさら、そんな役にたたないカードを」
遊世は、さっき掴んだ何かを意識するかのように、右手を握りしめる。
「俺は、カセドラルモアと、レベル4のモンスターである『聖堂軍バセレア』と、装備魔法である『聖堂剣ツナミ』を除外して、スリットチェンジ!」
カセドラルモアがプリズムとなり、バセレアとツナミが細い光の線となって、カセドラルモアを貫通。
スペクトルが辺りに輝いた。
「我が心を満たす
遊世は右手にある力を叩きつけるかのごとく、空白だらけのスペクトルモンスターカードをデュエルディスクに叩きつける。
そして、カードに全てが刻まれた。
強烈なまでのスペクトルから、青を基調とし、金色の鎧を身にまとう騎士が現れる。
「行くぜ、相棒!レベル7。『剣聖ゴディアス』!」
剣聖ゴディアス ATK2500 ☆7
「な……スペクトル召喚を」
『遊世……やったな』
「お兄様」
そして、最後の手札にてをかける。
「俺は墓地の『聖堂軍ガゼルアブソーバ』を除外して、『聖堂宝剣ガゼルアブソーバ』を、『剣聖ゴディアス』に装備する!」
ゴディアスの剣が、ガゼルアブソーバが持っていたものと同じになる。
「バカな。聖堂宝剣は、レベル10以上の聖堂軍シンクロモンスターしか装備できないはず……」
「剣聖ゴディアスは、全ての装備魔法を、条件に関係なく装備できる。まあ、コストとかはちゃんと払う必要はあるけどな。ガゼルアブソーバの効果。一ターンに一度、自分の墓地の『聖堂剣』を一枚デッキに戻して、ターン終了時まで、ガゼルアブソーバはその効果を得る。俺は『聖堂剣ホライゾン』をデッキに戻して、コピーする。剣聖ゴディアスの元々の守備力は2000。よって、攻撃力は2000ポイントアップする」
剣聖ゴディアス ATK2500→4500
「さあ、もう十分だ。俺は『剣聖ゴディアス』で、『ダークコーラス』を攻撃『ソード・オブ・ホーリー』!」
剣聖ゴディアスはダークコーラスを一刀両断にする。
リベラル LP4000→3500
「聖堂宝剣ガゼルアブソーバの本来の効果、相手モンスターを破壊したとき、その攻撃力分のダメージを与える。4000ポイントのダメージだ」
「そんな……」
ダークコーラスはリベラルに向かってた折れ込んだ。
リベラル LP3500→0
「俺の勝ちだ」
「そ、そんな馬鹿な、この私が負けるはずが……」
リベラルは否定するかのように首を振る。
その時、球体内部が大きく震えた。
『遊世、ここはもうもたない。早く脱出するぞ!』
「ああ、早苗!脱出するぞ」
「はい、お兄様」
そして、球体を出て数秒後、存在を維持することが出来なくなったようで、球体は転移したかのように輝き、消えていった。
「ふう、間に合ったか」
『だが、まだ地上には……』
振り向くと……、
「ライトレイΩ。『ハイスピードショック』!」
未来のライトレイΩが次々とデュエリストを倒し、そしてダークマターの影響下になったものたちを倒していた。
「一応無事のようだな」
「そのようですわね」
『元気なもんだな。遊世もそろそろ加勢したらどうだ?』
(それもそうだな)
まあ、時間はかかったが全て終了した。
しかし、被害状況は凄まじい。
あちこちに破損場所があるのが目に見えてわかる。
「これは凄まじいな」
『ダークマターに影響された場合、モンスターに質量が発生する場合がある。おそらくそれが原因だろう』
覚えておこう。
「しかし、大会そのものはめちゃくちゃになったな」
一回戦で乱入してきたからな。
それに、学校の機材もダメージが大きいし、大会を続けようという気分ではない。
「お兄様、このような状況ではエキシビションマッチが行われるのがパレスのやり方なのです」
「エキシビションマッチ?」
「はい、パレスの学内代表戦は、出場チームが七つしかないとはいえ、デュエルアカデミアを名乗る多くの学校のなかでも最大級になります。しかも、外部のプロデュエリストすらも出場することの出来る大会ですから……」
「要するに、スポンサーが納得しないのか……」
あくまでもパレスの代表戦は生徒同士の競いあいである。
外部から呼べるとは言っても、それは全てのチームが同じであり、結果的に生徒たちにとって損得はあまり変わらない。まあ、どんなデュエリストを呼べるのかによるが、まあそれはいいだろう。ルール上では、外部招待枠は重要ではあっても決定的ではない。
生徒同士の競いあいであるために金だのなんだのといったことはないと言うのが一般的な意見ではあるが、現実的にはそれは無理な話なのである。
全国放送クラスなので、放映権の獲得も凄まじい。
そのため、一チームしかぶつかっておらず、しかも、片方は一人目だけしかでていない。
そんな状況は、いくら事情があったとしても、スポンサーは首を縦にはふらないのだ。
無理な話だが、『想定しなかった方が悪い』ということである。
「まあ、エキシビションマッチが行われることに疑問はないが、エキシビションマッチを行うだけでスポンサーが納得するものなのか?」
『俺もそれは疑問だな。普通なら大会そのものは続行すると思ってた』
遊世の疑問に早苗は苦笑する。
「そのエキシビションマッチの対戦カードが大胆ということなのですよ」
「どんな風に?」
「まずパレスはチームに属さないという方法もあるのです。実際に私がそうなのですが、チームに所属していないものでランキング1位のデュエリスト&そのデュエリストが選ぶデュエリスト。チーム序列1位である『ユニバースライザー』のチームマスターと、そのマスターが選ぶデュエリストでチームになってでのタッグデュエルなのです」
……。
「で、いまここでそんなこと言うんだから……」
「はい、チームに所属していないデュエリストの中での1位は、私なのです」
『……遊世。お前結構苦労人だな』
(知ってる)
「……で、ユニバースライザーのトップは?」
「唯一の中等部でチームマスターになった『
札馬……八雲の弟か。
「なるほど」
次の瞬間、早苗のデュエルディスクに着信が来た。
「少々待っていてください」
早苗は通信して、ほんの数秒で会話を終わらせた。
「お兄様……」
「わかってるよ……一緒にいくか。早苗」
「はい」
早苗は満面の笑みを浮かべた。
『はぁ、ダメだこりゃ』
黙れ。
まあ、移動しなくてはなにも始まらない。
厄介ごとは必ずあるものだと、遊世はため息をはいた。
思えば、歴代主人公の『メインデッキに入るエースモンスター』は全てレベル7であり、スターダストドラゴンはレベル8、希望皇ホープはランク4である。
剣聖ゴディアスは無論。エクストラデッキに入っているモンスターなのですが、なんだかんだ言ってレベル7になりました。
でも、レベル8のほうが、なんとなく扱いやすかったりする。個人的にですけどね。