今日も今日とてバイト。しかし、今にして思えばなんでリリはナイフをスッたりしたのだろうか。いや、何度か過去にそゆこと考えたりしてるけど、すぐにどーでも良くなっちまうんだよなぁ。
あいつ、確か【ソーマ・ファミリア】だっけ。
「おい、ベート」
「あん?」
花をぶっ殺した日からタメ口、呼び捨てが許されるようになりました。
「【ソーマ・ファミリア】について知らない?」
「ああ?急にどうした」
「や、うちの白髪が最近新しくパーティに入れたちっこいのかいるんだけど、そいつが【ソーマ・ファミリア】みたいなんだわ」
「ああ、なるほど。っつっても、俺ァ、雑魚に興味なんざねぇし、知らねぇよ」
「そうですか……と、ウラカゼはあなたの役立たずっぷりに思わず落胆します」
「ああ?喧嘩売ってんのか?」
「何でもない」
「でも、ロキの野郎ならなんか知ってんじゃねぇのか?一応、神だしな」
「ええー、またあのひんぬー教徒と会うのかよ」
「お前ほんと罰当たりどころの騒ぎじゃないのな」
「まぁ、別にぶっちゃけベルがどこでどんな目に合おうか知ったこっちゃないんだけどな」
「あ?」
「あいつ、俺なんかよりよっぽど強くなっておきながら、未だにガードが甘いんだよな。この前もリリにナイフ盗られてたし。一回、痛い目に遭っといた方がいい気もする」
「まぁ、言いたいことはわかるけどよ……つーか何、そいつ自分のサポーターにナイフ盗られたの?」
「おう。アホだろ?」
「まぁ、そりゃアホだがよ……」
「けど、まぁ、その、何。一応、仲間だし友達だから、何とかしてやりたいってのもあるんだよな」
「………なるほど。けど、それならお前も一緒にダンジョンに行けば良いだろ」
「やだよ、一分一秒でも早く返済したいし」
「お、おう。お前本当に冒険者か?ダンジョンで稼ごうってならないの?」
「俺たちの稼ぎよりここの日給のが多いんだよ。ダンジョンで稼いだ所で三等分だし」
「………そんな稼ぎ悪ぃのか?」
「俺の知ってる限りはな」
「………なんつーか、大変だな」
「慣れたよ」
「ま、それならしばらくバイトしとけよ」
「そだな」
ほっとくことにした。
1
それから、大体一ヶ月が経過した。俺は来る日も来る日もせっせと働いた。時には泊まったりもして、常連さんには顔を覚えてもらい、料理のご指名を受けるほどまで成長した。というか、『料理人ウラカゼ』という何の捻りもない通り名がついた。あ、ランクアップの二つ名とは別な。
そして、一ヶ月の頑張りによって、ババァからしばらく店を休んでダンジョンに潜ることが許可された!
ようやく、ようやく俺は冒険者らしく冒険ができる!そう思って、ベルとダンジョンに潜る当日、
「聞いてよウラ!僕、ランクアップしちゃった!」
涙目で逃走した。
2
どっか。俺は膝を抱えていた。ありえない、ありえないんだよ……。俺の知らない間に俺とほぼ同時期に冒険者を始めた奴がランクアップ……その間、俺は何してたんだ?ただ雑用やって人手足りない時に料理作って、バイトから料理人のウラカゼにランクアップしただけじゃねぇか。
割とマジで凹んでると、後ろから声が聞こえた。
「ここにいましたか」
リューさんの声だ。
「リュウさん……」
「リューです。聞きましたよ、クラネルさんから」
「…………」
「あなたの気持ち、少しわかります。悔しいですよね、同期の仲間に置いていかれるのは」
「…………」
「でも、落ち込まないで下さい。駆け出し冒険者は誰だって無様で、格好がつかなくて、それでも生き残るものです」
「…………」
「だから、その、元気を出してください」
「…………」
必死に慰めてくれているリューさんを見ながら、俺は思った。
俺も単独でミノタウロスを倒せばいいのでは?と。
ここ最近、【ステイタス】は更新してないけど、耐久だけはベルより高い自信がある。それに加えて、攻撃力、防御力共に反則めいた盾がある。
………やれる!念のため、もう少し耐久上げておいた方がいいか。
俺はリューさんを見た。
「元気出ましたか?」
「ええいままよ!」
俺はリューさんを正面から抱きしめた。
「⁉︎」
「死ぬ覚悟はできてます!……でも、骨折までで勘弁してください」
「…………」
「あの、リューさん?」
「………大丈夫です、まだ頑張ればクラネルさんに追い付けます」
いやそうじゃねぇよ!と、思ったがオッパイが良く当たっていたので、とりあえず黙っておいた。
「では、戻りましょう」
「う、うん。すみません、なんか」
「いえ、別に……」
「…………」
えー、あれー?ナニー、リューさんなんで顔赤らめてんのー?ちょっとここは殴ってくれないと困るんだけどー。
いや、でも、まぁ、いいか、ミノタウロスは明日で。とりあえず、今日はこれから自棄酒だな。