「兄さん、最終試験の最終試合ですよ。皆さんを待たせてます、早くしてください」
「あえ、ごめんなさい、考え事してた」
会場に向かいながらキルアの様子を伺うが、目の色が濁り前さえ見えていなそうだ。
大丈夫だろうか、この子は。
「キルアくん、よろしくね」
「負けんなキルア!そいつをぼこぼこにしてやれ!」
「相手は君のことを変な目で見ていた。その鬱憤を晴らすんだ!」
レオリオはいいがクラピカにまでそんなことを言われた。キルアは全ての声に何も返さず、ただ立っている。
新しい審判さんが声を出す。
「始め!」
「――シッ!」
キルアが俺目掛けて手を付き出して来た。流石暗殺一家の麒麟児と言うのだろうか、足音を立てず一瞬で俺の目の前まで来ていた。
左手でキルアの手を反らし右手で反撃する。初撃は避けようと少し重心を後ろにしていたので体重が乗らずに変な体勢になってしまった。そして反撃の拳も弱く、キルアはそれを避けて元の位置に戻った。
連撃はしない、か……。誘っていると思ったのだろうか、まあ体勢を立て直すのに好都合なのだが。
体勢を直すのはすぐにできるのだが、彼を潰すのは出来ると思えない。俺は天才でもなんでもないのだ。なので少し意地の悪い方向から攻めていくことにする。
幸い彼は初撃が当たって終わると思っていたらしい、キルアの動揺は誰が見ても分かるものだ。
「キルアくん、やっぱり強いね。……あんなお兄さんもいるんだし、暗殺一家だし、そりゃあ強いよね。」
「はぁ、はっ、はあっ」
「でもね、そんな君よりも俺の方が」
「くっ、すう、はっああ」
「強いよ」
「――うっ」
話ながら念を当てる。イルミなんかよりずっと爽やかで、汗をかいてる体に当たるそよ風の様なものから、呼吸を乱すような殺気を混ぜたものにする。
殺気と言ってもキルアを殺そうと思えないので、目の前にいるのは苦手な蜘蛛だと思いながら話を続ける。
そうするとあら不思議、キルアの体が動かなくなってしまったのだった。呼吸すらも儘ならない状態である。
「キルアくん、怖いね?苦しいね?」
キルアに語りかけながら近付く。彼はこちらを怯えた目、先程イルミに向けていた目と似た目をして見つめてくる。
「でも大丈夫だよ」
キルアの目の前まで来た。キルアは動けずにその場で固まってしまっている。可愛いと騒ぎ立てたい心を抑えて、彼の耳元に口を近付ける。
「きっと彼が君を助けてくれるから。それまで、君は待っててあげて」
必殺 主人公に全て任せようである。これは、誰もの心を和らげてお家に着くまでの間はリラックスして過ごせるようになるものだ。効くのは姫属性のみである。
これを聞いたからか、俺からのプレッシャー――キルアに近付くにつれて弱めていったので精孔は開かなかった――がなくなったからか、キルアは腰を抜かしてしまった。
「……まいった」
目をつぶって少し何かを考えたあと、静かな声でキルアが言った。
「第9試合、キルア対エレニ!勝者エレニ!」
こうして俺はハンター試験をギリギリに合格――目標だった目立たず合格することは果たせなかった――し、キルアはすぐに会場から出て飛行船に向かった。
この試合中ずっとレオリオが何かを言っていたが、俺とキルアには聞こえていなかったので
これからハンターの説明会を行うらしい。ライセンスはまだ渡されていない。
多分説明をそっちのけで去ってしまう人がいたのだろう、受けてからでないとライセンスはあげないと言われてしまった。
これからのことを考えながら、俺たちは説明会場へ向かうのだった。
ゴンキルはいいぞ。そう言って彼は果てたのだった。
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