「あ、あにき、ねえさん、ど、どうしよう……」
「おう、ちょっと待っとけ。今お兄ちゃん頑張って考えてるから。あと呼ぶならお兄様と呼べ」
「そんなこと言ってる暇ないでしょう!二人とももう少しこっちに寄って!気づかれちゃう!」
どーもこんちくわ、ここの文字を見たところ自分が一番知っている元の世界ではないのだと気づき始めた天才転生者、エレニです。でもなんか知ってるような文字ではあったけど、思い出せない。何かの漫画だった気がするんだけどな。
前回の話から1年と半年経ち、俺は姉で天使のシプアと弟でライバルのアクタと三人仲良く森を駆け回ってます。
シプアの脚力が半端ではないのか、追い付けなくて男二人はよく森で迷子になったりしてる。そのため、俺が森に入るときは腰にロープを巻き付け、迷子にならないようにしているのが現状である。解せぬ。
アクタは俺の後を着いてくるだけなので、俺が迷子防止ロープを持っているうちは絶対に迷子にならない。くそ、このガリ勉め。お父さんとお揃いの眼鏡――伊達である――掛けていい気になってんじゃないわよ!
シプアは見たことのない動物や木の実を見付けると駆け出し、その後また見たことのない物を見付けては駆け出しを繰り返しているのに、迷子にならずにちゃんと家に帰ってこれる。スゴい流石天使。
「エレニ、変なところを触らないで」
「でも寄れって言ったのはシプアだし……」
「げんどをしれよ、ばかあにき」
あと今何をしているかと言うと、迷子中+刃物を持ったおっさんに追い掛けられ中=絶体絶命中である。
何故迷子か。それはロープが切れたから、と言うよりか切られたからと言った方が正しいな。そしてロープが切られた理由、それは今俺たちの隠れている周りを探すように歩いているおっさんがナイフのようなもので切ったのだ。バッサリと。その時はまた死ぬのかと思った。
さて、この状況をどう切り抜けようか。先程からずっと頭を悩ませているこの課題に何も光が見えないまま、岩の陰からおっさんを見つめる。
こいつは全然俺たちを見つけられない。話してても気がつかない程だ。ヤバイなこいつ、多分あれだ攻撃特化だから力とか強くて、その他がクソなんだ。主に頭が。目が逝ってるし。
「シプア、家に帰れるのは迷子にならない君しかいない。俺が囮になるから、君はアクタを連れて逃げろ。流石に大人でも足止めしてたら君たちに追い付けないだろうし」
そう、迷子と言ったがそれは俺とアクタの話であって、シプアは――まあ迷子ではあると思うのだが――家に帰れるのだろうという、自信があった。
俺は彼女のことを帰巣本能が強く、勘が良い野生児だと思っている。気がついたらいつも知らない所にいるが勘で帰って来ているという話を前に聞いたことがあった。天使な野生児とか、魅力的だな。
そして彼女は天才だ。天才だからこんな森の中を自分の庭のように駆けれるのだ。彼女は天才であり、少し抜けている所がある、何度も言うが彼女は天使なのだ。
と、そんなシプアのことを考えつつ二人の返事を聞く。
「バカなこと言わないでよ!そんなこと出来るはずがないでしょう!」
「そうだよ、ばかあにき!へんなこというなぁ!」
「いやでも、他に助かる方法が思い浮かばんし」
それに、言わないけど俺は一回死んでるからね。二人よりは大人な訳で、見た目は子ども、頭脳は大人な訳で。
「それに、こんな震えてる兄弟を囮にするほど、私たち鬼じゃないから!」
でも痛いのは痛いわけで。怖いのも痛いのも嫌いな俺は天使の言葉に、弟の頷きに少し安心してしまうわけで。最低だなって思う。けど、この子たち最高にかっこいいし可愛いなとも、思う。
「いい?三人で、この場を切り抜けて、家に帰るの!分かったね?」
「おーう」
「はい!」
「作戦会議は終わったかなぁ?じゃぁあ、お兄さんと遊ぼうかぁ」
天使の背後で悪魔が返事をした。
そして頭上にある木漏れ日で光輝くナイフを見て、俺は腰を抜かした。
主人公は屑であってほしいと、日々思っています。
おはようございます、長くなりそうだったので切りました。前回言っていた『主人公が狩人の世界に~』みたいな話、全部忘れてください。次には分かると思います。
狩人小説なのにハンターしてないじゃん!と思う方、私もずっと思っています。忘れちゃいけない初心の心。
ただ、多分これからもそこまでハンターしないと思います。今はまだ準備編なので。
閲覧、お気にいりありがとうございます。皆さんが見てくれるので定期更新頑張れます。