腰を抜かしたまま、高い位置にある頭を見る。
ニヤニヤとした笑顔を向けてくる顔は吐き気がするほど気持ち悪く、こいつ絶対人をめっちゃ殺してんな、と目を見つめて思う。
俺は腕の力で後退ろうとするが、全身が重く、言うことを聞いてくれない。神経仕事して。伝達はやく!
目だけ動かし右隣を見れば、アクタは震える足で立っていた。目には涙が溜まっていて、カチカチと歯が鳴る。
何故この子はここに立っていられるのだろう、そんなに怖いならいっそ気絶してしまえばいいのに。そしたら、……。
「あーぁ、腰を抜かしちゃったお兄ちゃん、大丈夫かいお兄ちゃん。今すぐそこから助けてあげるよ」
男は即興で作ったであろう変な歌を歌いながら岩を回ってこちらに来ようとする。ヤバイこれ怖い、何かもうあいつずっと俺のこと見てくるんだけど怖い。腰を抜かした俺を最初に殺そうとしているのだろう。どんな野性動物も狙うのは一番弱い子どもからだ。
俺に向ける目は飢えた獣のようにギラギラとしていて、俺たちを殺したくてうずうずしているのを隠しきれていない。
「あ、あ……」
シプアは涙を流しながら失禁していた。
いつもだったら、シプたその聖水飲みたいでござる~ぐらいは思うのだが、今はそんなことを思っている場合ではない。
「そこのお姉ちゃんはお兄ちゃんの次に可愛がってあげるからねぇ」
気持ち悪い笑顔をしたまま、シプアの方を向く男。
シプアはその顔を見て、泣いていた。
「弟くんは最後だぁ!その間に逃げるなら逃げてもいいんだよぉ?まあ、追い付けるだろうけどね、普通に」
アクタには顔を向けずに、そう言う。
アクタはずっと立ったまま、男の話を聞いていた。
ゆらり、ゆらぁりと男が俺に近づいてくる。
その間に俺は走馬灯を見ていた。
この世界に来る前の俺と、来た後の俺のことを考えながら。
後悔していた。もっとちゃんとシプアやアクタと触れあっておけば良かったと。
天使だと言いながら、俺はシプアのことを恐れていた。自分より出来の良いアクタのことを、妬んでいた。俺はこいつらよりも大人だと、少しバカにしたこともあった。きっと、その事を神様は察してしまったのだろう。
後悔先に立たずとはまさにこのことだな!と笑いながら、終わりの時間を待つ。
シプアやアクタと一緒に死ぬのは、酷いこととは思うが少し安心している。前の時は俺一人だけだったから。
後で会おうね、とシプアやアクタに視線を向けて、男が俺の前に来た。
「お別れはしなくて良いよぉ、すぐに会わせてあげるからぁ!」
そう言われて降り下ろされたナイフは、眩しかった。
トン!と軽い力で押される。
え?と思って右隣を見ると、弟の肩からナイフが生えていた。深く傷ついたのだろう、後からどんどん血が流れる。
耳を裂くほどの悲鳴が聞こえる。
前から不快感が溢れるほどの笑い声が聞こえる。
アクタは左手で俺の袖を掴むと笑顔を向けながら、気絶した。
「あ、ハハハ!いやぁ!いい兄弟愛じゃあないか!いいねいいね!でもつまんないなぁ、もっと声を上げてくれなきゃ……、つまんないから、それはいらない」
男が何かを言っているがそんなことはどうでもいい。はやく応急処置をして医者に見せないとこの子は死んでしまう。さっきまでは一緒に死ねることを嬉しく感じていたのに、今はこの子が死ぬのが嫌だった。先に死ぬのと、後に死ぬのとの違いだけなのに、呆れてしまう。
あんなに酷いことを考えた俺を、何故、助けてくれるの?
「ァアアアァァアアアアアア!アクタ!アクタ!」
「アクタ……、ゆる、さない」
シプアがこちらに来て、アクタの顔を見る。アクタは血色が悪くなってきていて、このままじゃ本当に死んでしまう。どうしよう、とりあえず服を使って血が流れないようにしようとしてみるが、なかなか止まらない。
どうしよう、どうしようと小さく呟いていると、シプアは許さないと言って、立ち上がった。
俺たちを背に隠し、シプアは男と対峙する。
一瞬見えたシプアの目は、赤く染まっていた。
「それ、君たち特殊な民族だったのかぃ?その瞳!まるで宝石のようじゃないか!きっと美味しいのだろうねぇ」
「弟を返せ、アクタを返せ!」
「返せないけど、君も同じところに連れていくことはできるねぇ、それに、今の君に何が出来るのかな?武器も何もないじゃないか!」
「武器ならあるわ!私はナイフを持っている!だから殺す!お前を殺して私はアクタを生き返らせる!」
まだ死んでねぇよと思うが、時間の問題だ。
俺ができる応急手当なんて、縛るぐらいのことだ。あとは押さえる。
応急手当初期値のことを悔み、前世の回ってきた画像などを思い出してはいるが、くそ!何で真面目にそういうものを調べてこなかったんだ!
「さあ、じゃあはやく始めようか。思い出したんだけどボク、あまり時間がないんだよ。だからさ、さっさと終わらそう?」
「死ね!殺す!」
そうして二人の刃が交わる時、それは止められた。
三人、いや、四人の身体が静止する。二人の間に入ったのは、一人の老人だった。
「お嬢ちゃん、こいつはワシの獲物でのぉ、譲ってくれんか?」
「こいつ、殺すの?」
「あらら、見つかっちゃったか。惜しいなぁ、子どもさえ食べてればなぁ、見つからずにすんだのに」
老人とシプアは話し、男は本当に残念そうな顔で、まいったまいったと言っている。
シプアと話す老人は、小柄で、物騒な四字熟語が書かれている服を着ている。
一方的に見たことの彼、ゼノ=ゾルディックを俺は息も忘れて見つめる。
え?シプアの目を見た辺りで何となく思ってたけど、ここHUNTERXHUNTERの世界?
俺はこれからのことを考えて、頭を抱えながらアクタを見た。
ゼノさんが協力してくれたら、アクタは死なないかもしれない、という極小の希望を前に、アクタを応援するのだった。
ゼノさんが来てくれました。そしてシプアの覚醒。
ゼノさんの話し方がわからなくなってあたふたしながら書いたので、今後修正が入ると思います。
長くなってしまいすみませんでした。いつも1001文字を目指して書いているのですが、難しいです。
色々と思うところもあると思いますが、閲覧、お気にいりありがとうございます。これからも3歩進んで2歩下がりながら頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
12/1 少し修正しました。