やはり横浜渚は誰よりも漢女だった。   作:きむら たくや

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超常現象

さて、前回までのあらすじ。

何か横浜渚とかいう男みたいな女?が奉仕部に来た、以上。

てか誰に向けて言ってんの?しかもあらすじのわりに短すぎるし。

まあとりあえず状況を確認しよう。

 

一、平塚先生が面倒な依頼を持ってきた。

二、初対面の女子にすっごい目の敵にされてる、これはいつもだったわ。

三、中指を立てて見下ろされてる。←イマココ!

 

うん、この先輩は俺よりも先に更生すべきなんじゃないかな。

てか俺じゃ無理だわ。

八幡完敗、略してハチカン。

すげえ!急に1000年に一人のアイドルっぽくなった!

 

「お、おい。お前まさかオレが女だって本気で信じてないのか…?」

 

急に震えだした横浜くん。

どれだけ女だと思われてみたいんだよ。

てかやっべえよ、考え事してたら返事するの忘れてたなんて言えねえよ。

 

「せ、せせせ先輩は可愛い女の子だとおお思いましゅよっ!?」

 

「やっぱり信じてないんだな…。いつもそう思われてるから別にいいんだけどさ」

 

プイッと顔を逸らす横浜先輩。

怒っているのか、少し頬が赤く染まっている。

何だよ、ふとした仕草はちゃんと女の子じゃねえか。

 

「今確信しました。先輩はちゃんと女性ですね。なのでさっきの件をセクハラとして訴えないで下さいお願いします」

 

なんなら20秒程ゲザるのも辞さない。

もっと言えば頭を踏んでくれてもいいまである。

いや、趣味とかじゃないからね?

 

「セク谷くんが有罪か無罪じゃないのかはともかくとして、横浜先輩の問題を考えましょう。因みに横浜先輩は、どういう経緯で平塚先生に連れて来られたのですか?それと、ご挨拶が遅れました。私は2年の雪ノ下雪乃です、奉仕部の部長をしています。そしてそこの目の腐敗しきった彼は同じ2年の比企谷八幡です」

 

それってもうギルティしかないんじゃ…。

しかも、雪ノ下からフルネームで呼ばれたのは初めてな気がする。

因みに由比ヶ浜はトップカーストカラオケ会に行っていて今日はいない。

 

「わざわざ律儀にすまん。別に経緯って程のものでもないと思うんだけどな?たまたまオレがいつも一人でメシ食ってるのを先生にツッコまれて、話しているうちに先生と仲良くなったと思ったら、急に連れて来られたんだよ。正直な話、オレが一番ビックリしてるんだよな」

 

「そこからの話は私がしよう」

 

これ以上喋られたら自分の評価に関わると思ったのか、平塚先生が割り込んできた。

あれ?最初から先生が説明してくれれば良かったんじゃ?

 

「横浜と話していると、私の学生時代とどうしても被ってしまってな。しかも横浜はこの通りツリ目がちで、口調もその辺りの女子とは違う。こんなに良い奴なのに一人で居るのは勿体ないと感じたのだ」

 

簡単に言えば私の老婆心だな、と続けて一人で落ち込んでいるよ。

誰か貰ってあげてくれないかね?

 

「んんっ!つまりだ、横浜の良さをどうやったら周りが理解出来るようになるか、それが依頼と言ってもいいだろう」

 

「それにはまず、横浜先輩自身が友人を求めているかどうかが気になります。横浜先輩、どうでしょうか?」

 

雪ノ下が言っていることは如何にも正論だ。

俺たちは善意を押し売りしている訳ではないしな。

 

「オレが珍しいのかも知れねえけど、普通の友達なら別にいらねえんだ。本当に何もかもを話せる親友が数人居てくれたらそれでいい。まっ、高校3年になってもまだ一人も見つかってないんだけどな」

 

ハッハッハと笑う横浜先輩。

正直な話、笑えねえよ。

俺が心の奥底で求めていたものを。

いや、今までは求めていないと思っていたことを平然と言ってのけてやがる。

そうか、俺は本物が欲しかったんだ。

完全に対等、どんな話だろうとこいつには出来るっていう関係。

それに気付かされた俺の顔はとてもひどいものだっただろう。

 

「比企谷くん、貴方物凄い顔しているわよ?」

 

「何だよ、そんなにビックリするこたあねえだろうよ…」

 

やはりこの先輩は俺の本心をわかっている。

こんなに簡単に俺を理解してくれる他人は初めて見た。

俺が友人になってみたかった雪ノ下よりも、今は素直に先輩と友人になってみたくなった。

勿論そんなことは言えないが。

 

「まあ何だ、ちょっとビックリしただけだ。それよりも提案なんだが、人と一緒に行動するのに慣れるためにも、しばらくの間奉仕部に参加してもらうってのはどうだ?」

 

正直苦肉の策だ。

見つめ合ってないけど素直になんてなれないんだからねっ!

意外であろう、俺の前向きな提案に対し雪ノ下と平塚先生は目を見開いている。

しかし、彼女は違った。

平塚先生よりも豪快に笑ってみせたのだ。

 

「いやあすまんすまん。確か比企谷だったな?気に入ったぜ。オレとしては異存はないんだが、雪ノ下と先生はどうだ?」

 

「私も問題ありません。先生もよろしいですね?」

 

先生は無言で頷いた。

ここで、横浜渚の奉仕部参加(仮)が決定した。

当人の横浜先輩は満面の笑みを浮かべている。

 

「ってことでよろしくな!それと、これからはお前らのことは下の名前で呼ぶからな!勿論、オレの事も下の名前で呼ぶようにな? 改めてよろしくな、八幡、雪乃!」

 

驚愕の宣言に、俺と雪ノ下は互いに目を合わせていた。

雪ノ下は軽く溜息をつくフリをしていたので、察してしまった。

これは諦めろってことなんだな…。

 

「分かりました、なっ…ぎさ先輩。改めてよろしくお願いします」

 

これはアレじゃん。

由比ヶ浜にしか見せないデレのんモードに若干入りかけてんじゃん。

デレのんマジチョロのん。

 

「俺もよ、よろしくお願いします、先輩」

 

雪ノ下から非常に強い殺気を感じたので、先輩に向き合う。

こいつ悪意に関して敏感すぎじゃね?

やっぱエスパーなんじゃないの?

 

「やっぱりお前って素直じゃないのな。見逃してやるのは今回だけだぞ?」

 

ケタケタ笑いながら言う先輩。

この人には敵わないと素直に思った。

が、不思議と嫌な感じはしなかった。




あくまで個人的なイメージですが、渚ちゃんの声は某武士娘ゲーの西楚の覇王様のイメージで書いてます。
覇王様の「んはっ」っ笑い方ホント好き。

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