今回の作品は83projectでのサークルコラボということで上げさせていただきます。
コラボ相手は
ゆっくり分隊長様
ジーク(仮)様
です。私のようなバカにコラボを受諾してくれるとは本当に感謝感激です。
ゆっくり分隊長様、ジーク(仮)様の作品も面白いのでぜひ見てください。
今回は初回キャンペーンってことでいつもの3、4倍でお送りします
「世界初であるVRMMO、『ソードアート・オンライン』通称『SAO』が…」
2022年10月30日午前8:00
その時に流れたCMを聞きながら俺は密かに胸を躍らせていた。
何故かって?それはもちろん世界初のVRMMOのサーバーが開かれるのが明日の正午だからだ。
-SAO-ソードアート・オンライン
それは仮想空間で数々の戦士が剣を掲げ、100層もある空中浮遊の城「アインクラッド」を攻略していく世界初のVRMMOである。
仮想空間とは最近開発された「ナーヴギア」というヘルメット型の機械により、脳のありとあらゆる感覚神経、運動神経を遮断し仮想空間…つまりゲームにつなげることによって仮想世界で視神経、聴神経、運動神経を動かし生きることができる。
勿論、現実とは違うためゲーム感覚で遊ぶことも可能。現実世界の体は寝転がっている状態だ。
そんな神のようなサーバーのゲームも紙だった。パズルや育成、釣りなどなど…どれもゲーマー達を熱狂させるほどのゲームでは無かった。
ゲーマー達が「やっぱクソゲーか…」と諦めかけたその時に発売予告がされたのがSAO。ソードアートオンラインである。パズル、育成などと打って変わり剣で戦うRPGは爆発的な人気を生み出した。今CMをやっているのもそうだ。
βバージョンが1000人限定という小人数だけが抽選で選ばれ公開。当然俺もβに応募した。その結果、なんとβバージョンに参加することになった。
もちろんどっぷりハマり込んだ。そしてβバージョンが2か月公開され、それも終了。そして次にプレイヤーに届けられた情報は「SAO商品化」「明日SAOのサーバーを運営開始」である。莫大なデータや金がかかるので10000人ほどしか購入できなかったとか。
とここまで語りつくす俺、β経験者は明日のこともあってか今日は別のゲームもにはあまり手を出さなかった。
「んー!今日はのんびりするか。そうそう、あいつの様子も見に行かなきゃ」
俺は黒がベースで真ん中に会社ロゴが描いてある長袖の服の上にチャックのついたジャケットを羽織りジーンズに履き替え家を飛び出す。
向かった先は歩いて10秒のお隣さん。
表札の横についてあるインターホンのスイッチを押す
「はい」
「笹賀です。夏海さんはいらっしゃいますか?」
「あ、創輝君ね。ちょっと待ってね。」
そういってガチャリと家の玄関を開け出てきたのは俺の呼んでいた夏海……の母親だった。
「いまちょっと部屋をかたずけてるらしいから手伝ってあげて」
「はい。お邪魔しまーす」
ドアに入り迎えたのは長くもない普通の廊下。横には靴箱があり玄関は綺麗に整理されている。靴を脱いで上がって、そのまま奥の部屋の右手前にある階段を上がっていき、一階と同じくらいの長さの廊下がありそこの正面の部屋に入ってく。
「おっす、片づけは進んでる?」
「片づけが進まない人だと思っているの?」
俺が声をかけたのは容姿端麗を絵にかいたような小顔で美白の長髪の女の子。体格は俺より少し小さい。いわいる可愛い小動物なのだがその性格は容姿に似合わずクール系。生徒会にも入っており、リーダーシップもあれば成績優秀、運動神経もそこそこと良いことを埋め尽くした人間である。
またおしゃれに関しても長けている…ので可愛いと評判。今はお出かけも何もないので灰色のTシャツに長めの白いスカートだけども。
ただ足りないとすれば胸…
「なんか言ったかしら?ほら、手伝わないなら出て行って、手伝うならテキパキと動く」
腰まである濃い緑の髪を揺らしながら本を持って本棚へしまう。
「はいはい…」
俺もピンク色のふかふかカーペットに置いてあった数冊の図鑑を本棚へしまう。
家が隣だったり夏海の母親と仲が良かったり部屋の掃除を手伝えるほど部屋の中を知っていたりと接点が多いことに感じるところが多い。実際14年生きていて知り合ったのは14年前、つまり俺たちが母親の体内から生れ出てきた時からはもうお互いに顔を見ていたのだ。つまり幼馴染みだ。
家の親が仲がいいというテンプレ展開も含んで、毎日顔を合わせるほど仲が良かった俺たちは幼稚園も、小学校も、中学校も同じでほかの同級生からしたら付き合ってるようにしか見えないという。
というのも小学5年生で起きたあの事件もあるからだが。
小学3年生までは毎日の日課のように長く遊んでいた俺たちだがやはり子供は子供。4年生からは俺は同級生の男子と遊ぶようになり、毎朝顔は合わせても遊ぶことはなくなっていってしまった。その時だ。起きてしまったのは。
夏海はもともと他人と関わるのがお世辞にもうまいとは言えない。言ってしまっては悪いが夏海と仲がいい同級生とかは相手の方がコミュニケーション力が高いからである。
なので当然このころに起きるのは…
「なにボーッと突っ立ってるのよ。十数秒前に言ったことすら忘れるの?」
「いやいや、ちょっと思い出してただけさ」
「何を?」
「俺たち他のやつからカップル言われるけど実際に告白とかしたことないよな」
「…あなたは何故そのことを今言うのかしら?」
「さあ?」
ムッとした夏海の顔にはほのかに赤色だがそんなことに俺が気づくはずもなく。
夏海は「確かにそうね…」と機械を使わないとわからないくらい極小の声でつぶやく。
「なんか言ったか?」
「なにも言ってない」
「全く、もうちょっと明るくできないのかね?」
「できないし、しないし、やりもしない。それはあなたの方が知ってるでしょ?」
「う、うん」
しばらく無言が続き作業だけをし続けた。
「これくらいで終了にしましょうか」
「やっとか。てか夏海の部屋って結構詰まってるんだな」
片づけに1時間弱、割と時間がかかっている。
「気のせいじゃない?」
「そんなもんかな…」
「さて、どうせアレの件で私に会いに来たんでしょ?」
アレ、つまり今話題のアレである
俺はその問にコクリとうなずく。
「心配しなくてもちゃんと買ってあるわよ。ちょっと親に反対されたけど創輝君ならいっか、とかで許したわ。私たちの将来をどういう風に見つめてるのか気になるわ」
「結果オーライだよ。さて、その報告を聞いたはいいものの今日は特にやることがないんだ」
「いつもゲームやってる暇人がやることがないとは明日がどうなることやら」
「明日は勘弁してくれ。俺が死んだ後からならいつでもいいけどさ」
「で、やることがないから何?」
「…久しぶりにちょっと出かけないか?って」
「絶対今考えたでしょ。まあいいわ。どこに行くの?」
「………」
「なんで私はこんな無計画な人といるのかしら」
「ごもっともです」
「じゃあほら。映画とか行きましょう」
「いいね。じゃあ早速行こうか。と言いたいがさすがに財布がピンチかも」
「頼りない男子ね」
「まあギリギリ間に合わせるよ」
「じゃあ12時くらいに私の家に来て。お昼はあっちで食べましょう」
「わかった。じゃあ俺はここでお暇させてもらうよ」
映画の約束をして夏海の家を出る。
俺は家に帰ったあと財布の寂しさを想像するが嫌になってしまうのでそんなことを頭の隅へ追いやる。
2時間くらい退屈にしてやっと時間が来た。俺は肩掛けカバンに財布を詰め込んで夏海の家に行き、本日2回目のインターホンを鳴らす。
「笹賀です」
「はい」
ピ、と切れるとガチャリとドアが開き、白のシャツに深緑のセーターを羽織い白いロングスカートを身にまとい、白いポシェットを肩に下げた夏海が出てくる。
「わーお、おしゃれだね」
「あなたは着替えないの?」
「良いんだよこれで。どうせ俺が何を着たところでだから。それより行こうか」
狂気の申告まであと29時間
「……どれ見るか」
「決めてなかったの?」
2人が来ていたのは映画館。東京タワー付近にある映画館に来ているが創輝たちは東京の北あたりに住んでいて離れている為、電車で来たのはいいのだが見るものを決めていなかった。
「とりあえず面白そうなやつ…」
「じゃあこれとかどう?」
「ゲームが世界観か。確かにSAOのこともあるしいいな。よし、これ2枚ください」
2人はチケットを買い、時間まで和食の店によって腹ごしらえをする。
「さて、もうそろそろホールに行くか」
「そうね。面白いといいな」
夏海はご飯を食べて気が緩んだのか、優しい顔をするようになった。その顔は可愛らしい。
2人は後ろから3列目の席を取り、そこに座る。
午後1時上映された。
「…あんまり…というか微妙…」
「やっぱりSAOのこともあって広告としては良くても内容があれだったな」
うん、と頷く夏海の顔は映画を見る前の顔とあまり変わらなくて正直ホッとした。メインイベントくらい堅い顔にはなってほしくないからね。
が、やはりこのまま平均的に帰れるわけがなかった。なにかの小説のごとく事件は起きた
「おうおうお嬢さん、可愛い顔してるじゃねーか。そのひょろ男より過激で面白い場所に連れて行ってやるよ」
ひょろ男というワードに創輝はピクリを眉を動かす。夏海は先ほど見せていた綺麗な笑顔が顔から消え、クールな顔へと戻る。
「私はそこまで過激で面白い場所に興味はない。そこをどいて」
今の状況を説明すると映画のホールから出て、映画のチケット売り場と映画のホールへ通ずる廊下の境目が今の戦場だ。映画のチケット売り場側に4人の中3、もしくは高1の生徒が学ランはをはおって俺たちを囲んでいる。通行人はがやがやとするが面倒ごとは御免のごとく俺たちを憐みの目で見てから足早に去っていく。
「生意気なのもまたかわいいぜ?ほら、はやくこっちこいよ」
「お前も怪我したくなかったらさっさと消えろ、目障りだよヒョロ男」
そういってチンピラは夏海の腕をつかもうとする。
が、俺はその間に割って入る。
「おれが消えるのは良いぜ?せっかくの花も糞が一緒じゃ意味ないからな。だけども俺が普通に生きていくためにはお前らの言うお嬢さんが必要だ。消えるときは一緒だよ。てことで、そこどいてくれ」
「ああ?ヒョロの癖に言うじゃねーか。自分で糞ってわかったんならさっさと失せろっての!」
4人組はハハハ!と笑う。その隙にと夏海の腕を引っ張ってチンピラの横を通っていくが
「が、そいつは置いてけ」
急に暗くなった声に驚き体を硬直させる。硬直させたのもつかの間、水月に重いこぶしが刺さる。
吐き気がし、一瞬吐きそうになったがそれを我慢し、顔をあげる。チンピラAが俺の水月にこぶしを刺していた。
顔をあげたとたん横から肩を狙って蹴られ廊下に転がる。
「創輝!」
「おうおう呼び捨てかよ。そうとうラブラブだそうだぜ?でももうそんなつまらない奴ともおさらばして俺たちについて来れば、」
「はなせ!」
突然聞こえてきた横からの幼い少女の声、そしてドン!と鈍い音も次いで聞こえてきた。
「ってぇな!なにすんだクソガキ!」
「離してあげなよ!」
見たことある。あの子は。短髪、そして竹刀が入ってあろう長めの袋、深緑の目。間違いない、剣道の全国大会で突如出てきて優秀な成績を収めた天才児だ。名前は忘れてしまったが覚えている。が、まだ中1。俺らと多少変わらないが少し小柄だ。
「は!威力たんねぇよクソガキが!」
とチンピラのストレートパンチ。普通ならまともに食らってもいいのだが、長い棒を持った少女は身を右に翻し、鮮やかに避ける。
「はは、やるなクソガキ。剣道でもやってんのか?」
無言の少女。
「やめろ、剣道全国大会ででただれか」
俺は言ってしまった
「お前がやってしまったら過剰防衛だ。けども俺がやったら正当防衛なわけだ。何より、ここで女子に頑張られてもな」
俺は壁を使い立つ。
「そうだろ?天才」
俺は夏海の方を見て顔をすこし傾け、問う。
コクリ、とうなずく夏海を見た後、俺はチンピラの方を見た。
「ああ?かっこいいこと言っちゃってー、どうせまたボコられるだけなんだからさっさと家に帰って流されとけ」
さっき俺の水月にストレート挨拶をしてくれたチンピラAが俺の顔めがけてストレートパンチを仕掛けてきた
「あぶない!!」
剣道の少女の声が聞こえたような気がした。だがそんなこと気にしている場合ではない。全てが平均な俺がどうやってこいつらに勝つかを考えなければならない。
ときに、すべて平均とは強さを意味するときがある。それはつまり今だ。
チンピラAのパンチを屈んで避け、男性の一生一番の急所、つまり股らへんにある玉をめがけ正拳突きを繰り出す。
見事にクリーンヒット。筋肉は平均程度と言えど急所に当たれば平均でも痛い。チンピラAは悶絶する。
「あ、あぁぁ!俺の!いってぇぇ!てめぇ!」
「正当防衛正当防衛」
俺は軽い口で言う。
悶絶する男を見た後、次殴ってくるであろう他のチンピラを見る。
「てめぇ調子に乗るんじゃねぇぞこらぁ!」
今度は外したのか知らないが肩を蹴ってくれた優しいのか度胸がないのか分からないチンピラBが俺に向かって学習しないバカのごとく、右のこぶしをさっきのチンピラAより早い速度で殴り掛かってくる
「…すべての武術…平均ね。流石…」
夏海はふとつぶやく。
そう、強さ。それはすべてを平均的に知ることができ、すべてを平均的に使うことができる。
これが彼の強さである。一見弱そうに見えるが半端に武術や運動をやってたくらいじゃすべての武術には勝てない。今の半端者、チンピラに勝ち目はない。
創輝はチンピラBの右ストレートをかわしチンピラの右手首をつかむ。掴むとチンピラBの背後へぬるりと這いよるとチンピラの腕は綺麗に伸ばされ足のバランス感覚もすこし崩れる。
創輝はそのチャンスを見逃さず、足をひょいと蹴ってバランスを崩させ前向きに倒れたチンピラの首を踏み頭を固定。あとは伸ばさせた腕をなるがままに捻る。刑事ドラマなどでよく見る態勢になった。
「あいたたた!いたい!離せ!」
創輝は実に器用だ。ほとんどが力を有する武術だが力で劣れば負けは必至。だがすべての知能を統一すれば力を利用し、それを受け流すと同時に組み付くこともできる。その結果が無様な姿となったチンピラBと悶絶しているチンピラAだ。
「て、てめぇ良くも…!」
「まぁ落ち着け。もうそろそろ時間だ」
創輝は余裕な顔で男の後ろを見る。
剣道っ子の友達が読んだ警備員がすぐそこまで来ているのだ。
「くっ、くそ!」
残るチンピラは向きを変え、逃げようとするが
「逃げるなんてみっともない男ね。頼りなさ過ぎて笑っちゃうわ」
棒を持った剣道っ子が逃がさまいと逃げ道を塞ぐ
「クソガキが調子に乗るんじゃねぇ!!」
一番体格の良いチンピラが少女に向かって突進する。
が、圧倒的にリーチが足りない。無論、先に攻撃できるのは…
「面!!」
鈍い音が響き、漫画のように硬直して後ろに倒れるチンピラ。
少女は棒を顔に突き付け、
「本当、情けない男。お兄ちゃんには敵わないわ」
事後、警察の方に話すと納得され、無償で出してくれた。
チンピラも誘拐疑惑、暴行で捕まるはずなのだがどういうことか反省で出してもらえたらしい。
少女も逆に駆けつけて勇士を見せるのはいいことと言われたらしい。
桐ケ谷直葉
それが彼女の名前らしい。
「はちゃめちゃだったな。警察の方にごようになるし」
「綺麗で悪かったわね」
2人は電車も乗り終え、自分たちの知る帰路についた。真っ暗な夜道を街灯の少ない明りが照らす中、2人は気ままに
「そうそう、忘れていたわ」
夏海は何かを思い出し、足が止まる。
「さっきの花となんとかのセリフだけど、結構かっこ悪かったわよ。よく堂々と人前であんなこといえるわね。一緒にいるだけで恥ずかしいわ」
「え…、それは…その…すまん」
正直今になって言われるのは予想外だった。確かにあのときカチンときて変なこと言ったのはそうだけどちょっと傷ついた。だけどそれを吹き飛ばすような笑顔で夏海は言った。
「でも、今日はありがとう」
「どういたしまして」
俺も夏海の顔を見て、笑顔で言った。
………俺はあの日から決めたことがある
それは絶対に破ってはいけない事だ
俺は「あの日」に破ってしまった
もう絶対に見たくない、生涯生きる中で絶対に見たくない光景だった
だから…俺は…絶対に…
狂気の申告まであと21時間
俺は目覚まし時計の出す騒音によって無理やり起こされた。
今日は10月31日。ついにこの日がやってきた。
俺は階段を降り、リビングの冷蔵庫の中にある食パンを取り出し、それをトースターの中に入れ焼いていた。
焼けるまでの間、ネットでSAOのニュースを見ていた。パンが焼け、バターを塗ってそれを食べた。
「待ちに待った今日!SAOサーバーが13時に運営される!」
そんなCMを見て俺も心の中で同じことを大声で言った。
-10月31日、正午
ピンポーン、と俺の家のチャイムが鳴る。俺は玄関のドアをかちゃりと開けると夏海がすぐに顔を出してきた。
「ナーヴギアとSAO、持ってきたよ。一緒にやろ」
「待ってたよ」
「じゃあ、いっせーのーせで起動しようか」
俺のベッドの上に2人は腰をかけ、ナーヴギアを被り起動すればSAOの世界に入り込める状態だ。夏海と俺は同時にSAOの世界に入る予定。プレイヤー名はわかりやすいようにnatsumiとsouにすることにした。無事落ち合うことだできればいいのだが。
「いっせーのーせ!」
「リンクスタート!」
「リンクスタート!」
2人は同時にセリフを言い、ナーヴギアを起動させ、仮想世界に入った。
13:00
創輝たちはログインした。
いずれ絶望の満ちた世界になるであろう仮想世界に…
「ユーザーネーム、パスワードを設定してください」
俺はβのキャラで使ったユーザーネームとパスワードを入れる。
「βバージョンで残ったキャラが使えます。使いますか?」
なんのためらいもなく「はい」のボタンを押し、ネームをsouに変え、俺はログインした。
俺がログインすると真横に深い青色の長髪をした、俺と同じくらいの身長の女性がいた。
プレイヤー名は…
「natsumi…夏海なのか!?」
「あなたは…創輝?」
「本当に会えるとは…」
こんな序盤にお互いの個人情報である名前を大声で言っているアホ2人は偶然出会ったことにすこし感動していた。
「じゃあ、行こうか。最初はちょっと狩りに出て俺の知っている鍛冶屋に行くのがいいんだ」
「わかったわ」
ナツミとソウは始まりの街を出て、西フィールドに向かった
「ぐあぁ!?」
「へぶし!」
飛び交う無数の初心者の悶絶がこだまする中、βテスターとリアルが天才な少女は西フィールドに小遣い稼ぎにやってきた。
「なんか…2回目だけど見慣れないな。こういうのは」
「殺伐としてるわね」
「まぁ初心者の方が多いんだし、仕方ないだろ。それより、夏海は自分の心配をしないとな」
だまる夏海の表情は明らかにバカにされて怒っている状態だ。早くモンスターと戦って空気を換えなければ…
イノシシ型のモンスター「フレンジーボア」は俺たちを見るやいなや、突進してきた。
イノシシの突進は基本的に小回りが利かないので俺は少し横にステップすると、居合の要領で刀を抜き、ソードスキルが発動した証の刀が光るのをわき目で見た後、頭の右目から尻までざっくりと切る。
イノシシのHPはまたたくまに無くなり、しまいには青い光になって消滅する。
「ま、ざっとこんな感じだ」
ソウの使用している武器は刀、それも結構長いので太刀といったところだろう。それを左腰にぶら下げてる鞘にしまう。
だがこのイノシシはド○クエで例えるとスライムLv2級、次のイノシシがまた突進してきた。今度の標的はナツミだ。
ナツミは腰からレイピアを抜くと、イノシシに向かって走っていき、目にも見えない光線が走るとイノシシのHPはごっそり減り、そしてついにはまた青い光となって消滅した。
「……ナツミってβテスターだっけ」
「こんなの慣れと勘でしょ?」
「いやまぁそうなんだけど。初めてでここまでやるの凄いぞ?」
そうかしら?とナツミは言いながらレイピアをしまう。
「さて、ここで稼ぐのよね?」
「ああ、しばらくは狩り続けよう。あとスイッチも教えてやる」
「楽しみだわ」
ナツミは生き生きとした顔で言った。こんなに生き生きとした表情を見るのは久しぶりだ。海に行った以来だろうか?
そんな事を考えながら、2時間、俺たちはイノシシ狩りに没頭した。おかげでレベルが1上昇して、ステータスの割り振りなんかを教えた。
ちなみに俺は攻撃と素早さに特化させている。あとは全部ちょびっとだけ振ったバーサーカータイプだ。
ナツミは割り振りを教えてくれないため、わからない。気になる。
「さて、レベルも手っ取り早く上がった。なんか短いような気がするな」
「2時間かけてやっとレベル1上がるのがゲームなのね。最初のうちは速いと聞いたけれど」
「このゲームは難易度高いからな」
俺たちははじまりの街へ戻り、商店街の裏路地の奥のさらに曲がったところにある雑貨屋へ入った。
「いらっしゃいませ」
店員のNPCは礼儀正しく頭を下げて迎えてくれた。
「最近のNPCって結構高性能なのね」
「ああ。俺も最初見た時は驚いたぞ」
俺たちはそこらへんお商店街に売ってある薬草や食料をより安く買い、雑貨屋に置いてあった刀を俺は3本、夏海はレイピアを1本買った。
「いくら初期でも2時間やって貯めたコルが全部消えるなんてやっぱりこれ結構鬼畜だよな?」
「私はあまりゲームをしないからわからないわ」
「言うなれば2時間アルバイトしてコンビニでおにぎりを4個買ったのに所持金が全部死ぬ感じだ」
「そんなものかしら?」
「さて、買ったはいいものの装備をしないと意味がない。だからこれをこうやって…」
俺はナツミに武器や防具の装備の仕方を教えた。
「これって1つしか装備できないのね。でもソウは3本買ってたよね?なんで?」
「後々わかるさ」
そういってソウは左腰に太刀、普通の刀、普通より少し短い刀を下げた。
「…もしかしてファッション用?」
「それもあるんだが…なんせこのゲームはPKができるからな」
「PK?」
ナツミはいかにも初心者なのでPKと言われても仕方がない。なので顔を横に傾げた
「プレイヤーキルだよ。プレイヤーを殺っちゃうの」
「そうなの?」
「βの時にもPKは少し流行ったんだ。少しの間で助かったけどね」
「でもそれと3本の刀は意味があるの?」
「実際に見た方が早い」
ナツミは3本の刀を不思議そうに見つめてからもう一度聞こうとするが答えをにごすとわかっていたのか、何も言わなかった。
「さて、また西フィールドに来た。もうそろそろ見飽きた」
「そうね」
と西フィールドの地平線を見る2人。
「装備も買ったしちょっとLvの高いイノシシ相手にしようか」
俺たちは最初に狩りをしていた場所の少し奥にある平原へ来た。
「ここのイノシシはさっきよりLvが高い。デスペナルティを貰わないためにも気を引き締めていこうね」
「わかったわ」
俺たちはイノシシを狩り、確実に経験値とコルを稼いでいった。
午後4時55分、早めに沈む夕日を見て俺たちはモンスターのいない平原で腰を落としていた。
「久しぶりね。こんなに体を動かすのも、ソウと一緒に遊ぶのも」
「そうだな。今年は台風で海に行けなくてそこまで遊べなかったもんな」
2人はふふ、と笑い顔を合わせた。
「さて、そろそろログアウトするか」
「そうね」
2人は指を振って、メニュー画面を開いた。アイテム欄、装備欄、スキル欄etc…
そして最後にログアウトボタン。
が、無かった。
…おかしい、ここにログアウトボタンがあったはず。なぜ?
「ねえソウ、ログアウトボタンってどこ?」
「こ、ここにあった。βバージョンではあった。あったはず」
だが欄の一番下のログアウトボタンがあった場所には何もなく、ただ空欄が空いているだけ。
「ログアウトが…できない?」
「それってつまり…」
この仮想世界に住むということ。
「これってログアウトボタン押す以外になにか方法はないの?」
「いや、ない。ナーヴギアは脳から発信された信号を脊髄に届くよりも早くにその信号をキャッチしてゲーム内に信号を送る装置。どんなに頑張ろうと絶対に現実世界の自身の体を動かすことはできない」
「大丈夫なの?」
ソウはナツミの顔を見る。ナツミの顔には不安という感じを表情に表したような、そんな表情をしていた。
「大丈夫、運営のミスだ。運営が何とかしてくれるだろう」
俺はどこからともなく出てきた自信…いや、ナツミを不安がらせないという心が勝手にその言葉を発した。
ナツミの表情は変わらず、いつものクールな顔を忘れている。このゲームの表情設定はすこし大げさだ。なのでどんなに無感情にとらえようとしても無意味なので普段見れない顔が見れる。
突如、鐘が鳴った。響く鐘の音を俺たちは聞いて、そして転送された。
「これは…強制…?」
うずめく俺の思考回路
まずログアウトボタンが無いこと自体、運営が気づいていない筈がない。気づいていたとするとサーバーを強制シャットダウンしてプレイヤーたちをまず現実世界に返す、もしくはアナウンスで知らせるであろう。だが、それが無かった。ならばこの状況は…?
「warning」
「System Announce」
無数にある2種類の赤いパネルが俺たち…アインクラッド内で楽しんでいて強制テレポートされたSAOプレイヤーを囲む。
パネルとパネルの隙間から赤いドロッとした液体が漏れてきて、それは形を変えていく。
俺たちの数十倍の背丈のフードが形を整え、中には人はいない。まるで死神のように。
ざわざわとするSAOプレイヤーの声を遮って死神は喋る。
「プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ。私の名前は茅場明彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ」
茅場明彦
量子物理学者、そして天才ゲームデザイナーの名前を持つ。そしてナーヴギア、SAOを開発した張本人であり、ゲーム好きからしたら神のような人物だ。
そんな天才がここにきてなんの通知が来るのやら。
「プレイヤー諸君はメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気づいていると思う。しかし、これはゲームの不具合ではない。繰り替えす。これは不具合ではなくソードアート・オンラインの仕様である」
ソードアート・オンラインの……仕様…だと?
「諸君は自発的にログアウトはできない。また、外部の人間によるナーヴギアの停止、または解除もない。もしそれを試みた場合、ナーヴギアの信号阻止が発する、高出力マイクロウェーブが諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる」
………こいつは…一体、何を…?そんなわけ…いや…
「ありえる」
ナツミは横から言った。
「ナーヴギアの説明書を見たけど7割がバッテリー。それが制限、リミッターを解除すると電子レンジの要領で脳を焼くことも可能…」
リアルスペックが天才なだけに俺はその事実を飲むことしかできなかった。
「残念ながら現時点でプレイヤーの家族が警告を無視し、強制的に解除しようと試みた例が少なからずあり、その結果、213名のプレイヤーがアインクラッド及び、現実世界からも永久退場している」
213…10000人のプレイヤーからすれば少ない数だが日本人が同時に213名も殺されたとなればニュースはそれで持ちきりだろう。
「ご覧の通り、多数の死者が出たことを含めあらゆるメディアが繰り返し報道している。よって、すでにナーヴギアが強制的に解除される危険性はすでに低くなっているといってよい。諸君らは安心してゲーム攻略に取り組んでほしい」
「しかし、今後十分に留意していただきたい。今後、ゲームに置いてあらゆる蘇生手段は機能しない。ヒットポイントが0になった瞬間、諸君のアバターは永久に消滅すると同時に」
「諸君らの脳はナーヴギアによって破壊される」
つまりこの世界でのゲームオーバーは現実世界のゲームオーバーでもある、ということだ。
俺はその事実を呑み込むのはそう遅くはなかった。死ねば死ぬ、ただそれだけの事実なんだと思った。だが彼女は違った。その事実を呑み込めないでいる。
「諸君らが解放される方法はたった1つ。このゲームをクリアすればよい。現在君たちがいるのはアインクラッドの最下層、第一層。各フロアの迷宮をクリアし、フロアボスを倒せば上の階に進める。第100層にいる最終ボスを倒せばクリアだ」
かんたんに言う茅場。だがその100層というのは余りにも無理があった。βテストじゃ2か月やってもろくに上がれなかった。つまりクリアには年単位がかかるということ。しかし年単位かかるとすれば生き残ったプレイヤーは何人か…それは想像するのは実に簡単だった。
「それでは最後に。諸君らのアイテムストレージに私からのプレゼントを用意してある。確認してくれたまえ」
俺とナツミはアイテムストレージを開くとそこには「手鏡」があった。
手鏡を自分の手にリポップさせる。手鏡に移るのは仮想世界での仮の自分の姿があった。
しかし、それだけではなかった。俺の周りのやつらはどんどんと青白い光に包まれていく。俺とナツミも青白い光につつまれ、
「ソウ?」
「ナツ…ミ…?」
視線をかわす俺たちが見たのは
現実世界の…
音沙汰夏海の姿と
笹賀創輝の姿だった。
「え…なんで夏海が…」
「…ナーヴギアはヘルメット型の機材、高密度で顔をすっぽりと覆っているわ。だから顔を具現化すことも難しくはない。それに私はナーヴギアとSAOを買って試しにつけた時、体をまさぐった記憶があるわ」
夏海の言う記憶は十中八九合っている事…それなら体の身長差、大きさなどなどそのままゲーム内に作られてもおかしくないはずだ。
「諸君は今、なぜ?と思っているだろう。なぜ、ソードアート・オンライン及びナーヴギア開発者の茅場晶彦はこんなことをしたのかと…」
「私の目的はすでに達成している。この世界を創り出し鑑賞するためにこのソードアート・オンラインを作った。そして今、すべては達成させられた」
「以上で、ソードアート・オンライン正式サービスチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の健闘を祈る」
死神…もとい茅場晶彦は煙のように散り、またドロッとした液体にもどり空へ帰っていった。システムアナウンスのパネルも消え、元の青い空に戻った。
俺は驚愕によって体が硬直し動くことができなかった。
だが俺は数秒たってハッとする。そして隣にいる彼女を見る。
そこには2度と見ないと心に誓った彼女の涙が髪の毛で隠れ見えない目から流れ、頬を伝って落ちる様を
俺は彼女の涙を見た。
俺は思考が停止した。絶対に、2度と見たくない表情、彼女の泣く姿
俺はこの表情を見たくないために頑張ってきたが、それもすべて水の泡になった。
今、見てしまった。そして心をみじん切りにされたにもかかわらず、俺はさらに心をすりつぶされる
「ねぇ、創輝。これは現実なの?これは本当なの?私は生きるの?それとも死ぬの?」
天才からぶつけられてきた4つの質問に俺は答えることができなかった。
「ねぇ、創輝。私はこれからどうしたらいいの?」
この言葉を聞いて俺は決心した。
絶対夏海を守る。絶対に死なせない。例え俺が死のうとも。
だがこの狂気の申告は、絶望の前菜でしかなかった。
どうだったでしょうか?
正直12500字も書くとは思いませんでした。最初のやついらなかったですね。ほんと。
これからの更新ペースは不明ですが飽きない程度には上げていきます。
SAO知識は12巻まで読んだくらいで偶に情報が間違っている場合があります。その点は本当にすいません。
今回12500字でしたがたぶん今回限定なので今後4、5000字だと思います。
ではまた次回に会いましょう。