今回は珍しくシリアス回となります。
一風変わったこの作品をお楽しみください。
『事件です。先日廃工場から変な音がすると言う通報を受けた警察が現場を調べると、獣の爪のあとのようなものが多数発見されました。警察は調べを続けるとともに周囲の住人に注意を呼びかけています。』
『今話題の【あの】ニュースに進展がありました。現場に残された毛から犯人は異種族でもあることが判明しました。これに対し、警察は重装備の警官をスタンバイさせるなどして対策に出ています。』
『新着情報です!現場付近の防犯カメラに犯人の姿が映し出されていることが判明しました。こちらがその映―。』ピッ
1人の少女が朝から同じニュースばかり報じるテレビを消した。そして、誰も居ない部屋で1人こうつぶやいた。
「さて、どう動いていこうか。その動きによって誰が不幸になるかが違ってくる。そう、誰かが不幸になるのは絶対。誰かを【失う】のは当然。」
自分に言い聞かせるようにそう言ったあと少女は、少し早足に部屋を去っていった。
「最高で最低のゲームだね。」
と一言残してから―。
「んー。どうしたものかな?」
最近クリンさんの調子がおかしい。体調が優れないというわけではなく、何か考えているようなことが多くなった。前なら呼んだらすぐ飛びついて来るくらいだったのが今では飛びつくどころか反応すら示さない。そして、何より【夜外出】する事が多くなった。どこに行くかも知らせずにみんなが寝静まった頃を見計らって家を出ていく。そして、みんなが起きる前に帰ってくるのが【日常】になった。
「クリンさん、散歩にでも行きますか?」
「・・・。」
「クリンさん?」
「あぁ、ご主人様。今日はいいよ。」
「この前も同じ返事でしたよ?」
「そうだっけ?まあ、いいじゃん。」
最初は僕には言えないようなことかと思い墨須さんに聞いてもらっても無意味。セントレアやミーア、 パピに聞いてもらっても何も話さなかった。近々何か大変なことが起こるという僕の考えは見事に当たってしまった。
次の日起きて見ると机の上に1通の置き手紙があった。そこには達筆でひと文【迷惑がかかるので探さないでください】と書いてあった。
「ダーリン、クリン今日も帰ってこなかったね...」
「はい、今どこで何をしてるか墨須さんたちですらわからないことですからね...」
「主殿、最近うるさい【あの】ニュースとこのクリンの家出には関係がやはり...」
「違うもん!クリン、そんな事しないもん!パピわかる!」
「しかし...な...」
先日から報道されている獣の爪痕事件。ちょうど始まった時期がクリンさんがおかしくなった時期と一致しているのである。だから墨須さんからもセントレアが言ったような話はされた。もしも、人に危害が加わった場合にはその異種族は最悪【射殺】されることも。しかし、僕自身もクリンさんがそんなことをするなんて思ってはいない。しかし、一致する事が多すぎて否定しきれないのだ。そんなこともあり、家の雰囲気はどんどん悪くなっていった。
クリンさんがいなくなってからしばらく経ち、新しい家族が2人増えた。ひとりはスライムのスー。保護したと言うか、強制的に押し付けられた。もうひとりは、アラクネのラクネラ・アラクネラである。新しい家族が加わったことにより、しばらくはみんな楽しく暮らしていた。そう、このニュースが報道されるまでは―。
『速報です!30代男性が体に複数の獣の爪痕を負って死亡していたことが判明されました。これを受け警察はSWATなども加え、犯人を【射殺】する方針を決定しました。周囲の住人の皆様は外出を控えるなどして充分注意してください!繰り返します―。』
とうとう墨須さんが言っていた通りになってしまった。人に害を与えてしまったのだ。一気にみんなのテンションが下がる。新しく来た2人にも事情は説明してあるので2人も険しい顔をしている。
「なんで...なんでみんなクリンがやったって決めつけてるの!クリンがやるわけがないよ!」
パピがそう叫ぶ。そして、テレビでは監視カメラの映像が流れる。そこに映っていたのは―。
低身長に大きな胸、そしてくびれたウエスト、紛れもないクリンさんだった。その夜僕達は墨須さんに呼び出しを受けた。犯人の周りを武装警官が囲み、犯人がほぼ捕まったのである。その呼び出しを受け、みんなはテレビの前で待機させ、自分だけ現場に行った。
現場に着くと、「お前がこいつの主人か」と怒りの目を向けられる。そして、警官達の間から囲んだ中を見てみれば深くフードを被った犯人と思われし人物が見える。そして、犯人は僕の顔を見てニィっと笑って見せた。その顔を見た時は、今まで生きて感じたことが無いほどの寒気がはしった。すると、警官がメガホンを使い、
「フードを取れ。繰り返す。フードを取れ。」
犯人はそれに素直に応える。それにより、犯人の姿が明らかになる。それはクリンさんと同じ見た目だが、全く別人のような禍々しさを放っていた。そして犯人は一通り周りを見渡した後に―。
武装警官に向かって走り出し、それを殺した。次々と武装警官が倒されて行く。全員首から大量に出血しているため助からないであろう。武装警官も必死に銃を使って応戦するもスピードがまるで違う。そうこうしているうちに、生き残ったものは僕と墨須さんぐらいになってしまった。そして、犯人はこちらに近づきますこう言った。
「会いたかった【ワタシノ】ご主人様。これからはいつも一緒だよ。ほら、こっちにおいで。」
そう言ってどんどん近づいてくる。僕と墨須さんは恐怖で動くことが出来ない。そこに応援に来たSWAT部隊が銃撃を行う。すると、犯人はだるそうに後ろを振り返り
「邪魔だから。空気読めよ。みんな殺してやる。」
そう言って、SWAT部隊を全滅させに行った。普段から様々な戦闘に対して訓練を行っているSWATだが、二分も持たなかった。
恐怖しか感じさせない微笑みを作りながら犯人が一歩、また一歩と距離を詰めてくる。僕は勇気を振り絞って犯人に質問をした。
「どうして貴方はこんなことするのですか?何も人を殺さなくても...」
「私気づいたの。どれだけご主人様と一緒に居たくても、一緒になりたくても、周りがいればそれは難しい。だから周りが居なくなればいいの!どう?!すごいでしょ!?あ、そうだ!ご主人様もバラバラにしちゃえばいつも一緒にいれるね!その方がご主人様も嬉しいでしょ?!ね!!」
そんな意味のわからない理屈を言いながら犯人が近づいて来る。どうやら墨須さんには目がいっていないみたいだ。だからといって墨須さんひとりでは到底かなわないだろう。警官はすべて倒され、応援もまだ。上空にはテレビ局のヘリと警察のヘリが飛び交っている。だが、この状況では何も出来ないだろう。つまり僕は【詰んで】しまったのだ。今の僕にはこのまま殺されることしか道が残っていない。どうやらここまでのようだ。そう思っていると犯人がいつの間にか目の前に来ており、刃物のような爪を煌めかせている。
「じゃあ、そろそろフィナーレだよ!ご主人様。これでいつでも一緒にいられるんだよ!大丈夫、痛いのは一瞬だから―。」
そう言い切って犯人が爪を天に掲げる。そして月の光に照らされ、犯人の顔がしっかりと見えた。その顔は―。
「じゃあ、バイバイ!」キィン!
振り下ろされたはずの爪は僕には届かず同じぐらいの硬さのものにはじかれた。そして僕の目の前にはマントを被った人物が立っていた。
「困るな。人のご主人様を勝手に殺そうとするなんて。さあ、最高で最低のゲームを始めようか?」
そう言ってマントを取った彼女は最高に輝いていた。
今回もご覧いただきありがとうございました。
スーとラク姐の扱いが雑ですいません!
どうでしょうか?いつもとちょっと違う感じは?え?前の方がいい?そんな事は知らんな!ごめんなさい。次からは日常に戻ると思います。(多分)
感想、評価いただけると嬉しいです。
次のお話でお会いしましょう。