ぬらりひょんの娘 〜半血の継承者〜   作:こーはいくん

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遅くなりました……


第13話 ヴァンパイアの能力

 

 

 

 傍から見ると完全に数の暴力だ。ミュウを取り囲むように奴良組の面々が位置取っていた。

 

「これはフェアじゃ無いと思うが……」

 

 不平を口にしたミュウにぬらりひょんが言葉を被せる。

 

「ふぇあ、ってなんじゃい。いや、今はそんなことはいい。人とウチのもんを殺した罪は受けてもらうぞ」

 

 その言葉が合図になったのか、囲んでいた妖怪達が一斉にミュウに襲い掛かった。するとぬらりひょんは空を見上げた。

 

「なに余裕ぶってんのよ」

 

 雪麗が少し不満げに言うが、ぬらりひょんはいたって冷静に答えた。

 

「羽で飛んどるわ、アイツは一体なんなんじゃ」

 

「えっ!?」

 

 言われて気付いた雪麗は慌てて空を見る。そこには蝙蝠の様な羽で空で滞空して、こちらを見下して笑っているミュウの姿があった。

 

「それじゃあこっちも、下僕出そうかな」

 

 などと言ってミュウは指をパチンッと鳴らした。するとどこから沸いてきたのか、ミュウを囲んでいる奴良組を更に囲む様にフラフラと人間がざっと二十人くらい歩いてきた。

 

「あ? なんだ? こいつ」

 

 奴良組の妖怪が一人の人間に近づいた。警戒もせずに……。手を伸ばせば届く距離になった時、人間は妖怪に抱き着き、首筋に噛み付いた。

 

「うわぁぁああ! なななな、なんだコイツゥゥゥ!?」

 

 その悲鳴が奴良組全員の視線を集めた。妖怪は人間を引きはがそうとするが、とても人間とは思えない腕力でしっかりとしがみつき、全く離れる気配がない。

 時間にすると数十秒……妖怪が膝をつき、人間の口が首筋から離れる。そのまま妖怪は倒れた。声も発せずに。

 

「人間に近付くな! 何かの術で操られているかもしれん!」

 

 ぬらりひょんはすぐにそう伝えるがもう他にも何人か人間に捕まり、先程と同じように首筋を噛まれていた。

 

「ちっ! 早く離れろ!」

 

 全員人間から距離をとろうとした。詩翠も離れようとしたが、さっきミュウにやられて倒れていた男が詩翠の足を掴んだ。

 

「!?」

 

 振り払おうとするが、腕力が人間離れしていて折れそうなくらい握ってくる。

 

「痛っ!」

 

 顔を歪め、どうにか攻撃を加えずに抜け出そうとしていると、後ろから両肩を鷲掴みされ、振り返ると中年の男の顔が目と鼻の先にあった。そしてその男は口を開き、詩翠の首筋に噛み付……く寸前まで行った。が、その全ての行動は蓮によって止められた。いや、生命活動さえも奪われた。背後にいた男は後ろから爪で背中をえぐられて心臓を潰され、足元にいた男は頭を踏み潰された。

 

「……っ、蓮!」

 

 一瞬何が起きたのか分からなかったが、状況を把握して蓮を呼ぶ詩翠の声色には驚きと多少の怒りが混じっていた。

 しかし、蓮は平然としていて詩翠の足と肩を掴んでいる手を外し、詩翠を抱き抱えてぬらりひょんの元に運んできた。

 

「どうして殺したの!?」

 

 降ろされた詩翠は蓮の方を向いて一歩前に出て言った。

 

「詩翠様、お忘れですか? 私はまだどちらかと言うと神の使いです。人は見れば分かります。アレはもう……人ではありません」

 

 そう言われた詩翠はさっき蓮によって命を絶たれた男二人の方を振り返る。すると二つの死体は灰となり、形すら残らなかった。

 

「……え? どういうこと……?」

 

 一同呆然とした。人が、灰になって跡形もなく消えたからだ。

 

「おい蓮、何だか分からねぇが人間じゃねぇんだな?」

 

 ぬらりひょんが蓮に問い掛けると蓮は頷いた。それが合図となり、ぬらりひょんの号令により、人間まがいなモノ達を殲滅していった。

 乱戦している内に詩翠は鴉天狗に頼み、ミュウの後ろから更に上空に運んでもらい、ミュウの真上で離してもらって勢いを付けながらミュウにこん棒を振り下ろした。

 

「はぁぁぁぁああ!」

 

 しかし、寸のところで気付かれてしまい、手でガードされた。しかしそれだけでは勢いを殺しきれず、ミュウを下敷きに二人とも地面に穴が開くくらいのスピードで落下してきた。

 砂埃が舞い上がり、凄い音が鳴ったが人間が出てくる気配はない。蓮が辺りに結界を張り、防音と家が潰れるのを防いだからだ。

 砂埃が収まると未だ詩翠がこん棒を押し付け、ミュウがそれを手で防いでいるところだった。

 

「おーおーおー、私の腕力でさえ返しきれないなんて詩翠、貴女も随分と馬鹿力なのね?」

 

 状況だけ見ればミュウの方が押されているはずなのに余裕の笑みすら浮かべている。

 

「アンタも、私の力に押し潰されないなんて女としてどうかと思うよ?」

 

 詩翠もまた笑みを浮かべている。これは余裕の表れか、それとも楽しんでいるのか分からない。

 

「一つ聞きたいんだけど」

 

 受けたままミュウが問い掛ける。

 

「何?」

 

「貴女はどうして人間を守るの?」

 

「守りたいから」

 

「……」

 

「アンタはどうして人間を襲うの?」

 

「憎いから」

 

「……どうして?」

 

「人間は自分勝手よ……自分の為に他の生物を殺す。自分を守る為に平気で嘘をついたり他の人を陥れたりする。同族のはずなのに平気で売ったり、殺したりする。そして……」

 

 そこでミュウの表情に変化が出た。今までの笑みではなく、どこか悲しげで、遠い目をしていた。

 

「自分達と違うモノには恐怖を抱き、最後には殺すんだよ……話なんて聞いてくれない。ううん、それどころか話すらさせてくれない」

 

「ミュウ……それは、実体験?」

 

 詩翠が問うと、ミュウは一瞬表情を隠した。

 

「……さぁね」

 

「ねぇ、何があったか知らないけど、人間は悪い人ばかりじゃないよ。実際私は人間と暮らしていたし、恋もした。父様も人間を愛し、結ばれて人間との子供だっている。だから、もし仮に今の話が貴女の体験談だとしても……」

 

 詩翠が言葉を紡いでいると、ミュウはそれを拒むように怒号で掻き消した。

 

「うるさい! お前に私の何が分かる!? 望んでもないこの"力"のせいで妹が人間に殺されたんだ! しかも私達がヴァンパイアだと分かった瞬間貴族共は目の色を変えて私達を捕え、変態共を連れて来ては散々私達を犯し回した! 最後には妹を口から槍で串刺しにした! ……ハハハ、愚かだよ私は。それを見ていることしか出来なかったんだ……妹は泣きながら死んだ……でも最後の最後まで希望を捨てずに堪えてた。でも、そこで分かったんだ……世界が簡単なことに……自由になりたいなら私が人間共を支配するか、殺せば良いってね。簡単だろ?」

 

 地面が震え、威圧感だけで体がビリビリする。

 狂気の笑み、真紅の瞳が畏怖となり詩翠の体を駆け巡る。

 一瞬、ほんの一瞬だけ力が緩んでしまった。それを待っていたかのようにミュウは詩翠を押し返した。

 すぐに体勢を立て直してミュウを見るが、もうミュウも立ち上がって詩翠を睨みつけていた。

 

「ミュウ! 話を……」

 

「聞く必要ない! 貴女の綺麗事なんて! 私は現実を見たんだ! 残酷なこの世界を!」

 

 ミュウの気は完全に詩翠にとられていた。だから気づくことが出来なかった。ぬらりひょんが背後にいることに……。ぬらりひょんは遠慮などしない。妖刀"祢々切丸"を振るってミュウの首を捉え、頭を切り飛ばした。

 

「ミュウ!」

 

 詩翠が叫ぶ時にはミュウの頭は体と永久の別れを告げ、ゴロンと地面に転がった。

 

「父様! 何てことを!」

 

「一時の感情に任せてしまえば被害が大きくなる。もっともっと人間が殺される。それはお前も望んじゃおらんだろ? 詩翠」

 

 冷たく言い放つぬらりひょんに何も言えなくなった詩翠はその場にへたりこんだ。黒が詩翠に支えるように近づいてきた。

 

「詩翠様、アイツは救って欲しかったんだと思います。俺には何となく……その人の言いたいこととか感情とかが伝わって来るので……アイツは……ずっと泣いてました」

 

「黒……でも、もう……」

 

「もう、何よ?」

 

「「「!?」」」

 

 その声にミュウの最期を見たモノ達が全員驚いた。

 見るとミュウは何事も無かったかのように立っていた。嘲笑を浮かべて。

 

「な……に?」

 

 さすがのぬらりひょんも驚きを隠せないでいる。

 

「いきなり首をはねられるとは思わなかったから驚いたじゃない。ま、おかげで落ち着いたけど」

 

 などと先程の事が無かったかのように話すミュウ。

 首は切られた事など無かったかのように傷が見当たらない。

 

「お前……なんだ?」

 

 ぬらりひょんは表情を変えないが、明らかに驚愕、動揺しているのは伝わって来る。それもそのはずだ。今まで首はおろか、切り伏せてきた妖怪達に死ななかったモノなどいなかったのだから。

 

「言ったでしょ? 私はヴァンパイア。ほぼ不死身で、満月の夜は私に死の概念はないわ」

 

 ミュウの視線がぬらりひょんに向いている隙に、狒狒と牛鬼が後ろから斬りかかり、ミュウの両腕を斬り落とした。

 

「……痛い」

 

 不機嫌そうに言ってミュウはゆっくりと振り返る。落ちた腕は灰となって消え去り、ミュウの両腕は何事も無かったかのように付いていた。

 そしてミュウは二人の額に手を出し、デコピンをした。ただのデコピン……しかしそれだけで狒狒と牛鬼はぶっ飛ばされた。

 それを詩翠が二人とも受け止め、ゆっくりと降ろした。

 

「なら、力ずくで止めてみせるよ……」

 

 ゆっくりと歩みを進め、詩翠がミュウに近づいていく。

 

「……なら、やってみなよ」

 

 その詩翠の態度が気に入ったのかミュウは小さな笑みを浮かべて立っている。

 

「鬼の力、見せてあげる」

 

 そう言って詩翠はこん棒を足元に置き、どこからか年季が入った瓢箪を取り出した。

 




見てわかると思われますが、ミュウの見た目及び回復能力は傷物語のキスショットさんから、血を吸われた人間のその後と最期は月姫から、満月の夜の能力も月姫に影響されてます。
それにちょこちょこ独自設定入れさせてもらいます。

お気に入りが100件を超えて自分でも驚いている状況です。
感想もいただいて本当ありがとうございます!!
これからも、よろしければ最後まで付き合っていただけると幸いですm(__)m
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