ぬらりひょんの娘 〜半血の継承者〜   作:こーはいくん

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以前に書いてたデータが消えたのですが、何故かバックアップが見つかったので、まだ少しは連続投稿できそうです。


第5話 魑魅魍魎の主へ

 

 

 

 大阪城に着くと、上の方から大量の妖気が感じられた。

 

「……蓮、頼める?」

 

「お任せを」

 

 詩翠の言葉に二つ返事で返し、蓮は変化した。体に異様な文様がはいった二メートルはあるであろう白銀の犬に。

 

「頼むぜ狛犬さんよ!」

 

「うるさい、さっさと乗れ」

 

 黒が軽口をたたくと、蓮は少し怒ったように返す。そして、詩翠、黒、咲は蓮の言うとおりに、蓮の背中に跨がった。

 

「行きます。しっかり掴まっててください」

 

 そう言うと蓮は大阪城の壁を登りだした。またたくまに最上階に着き、壁をぶち抜き戦闘の真っ只中に乱入した。

 両軍とも何が起きたのか分からず、戦闘を一時中断し、第三者の乱入に目を奪われてしまった。

 華麗に蓮の背中から降り、詩翠は高々と宣言した。

 

「私の名は詩翠! 一宿一飯の恩義と諸々の私情で奴良組の加勢に来た! だから奴良組の妖怪は私達に攻撃しないでね」

 

 笠で表情までハッキリと見えないが、笑っているのは誰にでも分かった。

 全員が凍りつき、奴良組の面々は呆気にとられ、羽衣狐一派は蔑む目で詩翠とその後ろの妖怪を見ていた。

 

「……ハハハハハッ! バカな奴じゃ! しかし、詩翠! おまえ達の"力"もワシに貸してくれ!」

 

「ま、そのために来たからね」

 

「面白い……面白い余興じゃ……ここまで魅せる役者も珍しい」

 

 不敵に笑う羽衣狐には余裕しか見えない。まるで最初から勝負になどなっていない様な笑みだ。

 

「ワシの女に触んじゃねぇ!!」

 

 ぬらりひょんが羽衣狐に一直線に向かって行った。

 

 

 

 ぬらりひょんが羽衣狐と戦闘している間も、後ろでも激しい戦闘が繰り広げられていた。

 顔半分に卒塔婆をはめた茨木童子と雪女の『雪麗』が対峙していた。

 雪麗は吹雪を華麗に避けていき、着実にその距離を詰めていく茨木童子に苦戦を強いられている。

 一気に距離を詰められ、茨木童子の剣が雪麗を捉えた。

 

「くっ!」

 

 反射的に瞼を閉じてしまった。しかし、次に聞こえてきたのは茨木童子の苛立ちの声だった。

 何が起きたか分からず、目を開けてみると、茨木童子の剣が白い糸に絡めとられていた。

 

「助太刀するわ」

 

 優しい声に導かれ右を見ると雪麗の隣にはいつの間にか咲が立っていた。

 

「まさかあんたに助けられるとはね」

 

「……小癪な!」

 

 次はすんなり糸が切られた。すぐさま横薙ぎの一閃で身長がほぼ同じの二人は服をごと下腹部を浅く切られた。深くない傷だが血が垂れた。

 後退しつつ茨木童子の猛攻に二人は避けるので精一杯なのだが、ところどころで茨木童子の剣に捉えられ、傷が増えていく一方だった。

 そして、しまいには壁に背をつけていた。

 

「終わりだ」

 

 容赦のない声と共に剣を振るう茨木童子。しかし、その剣はまた空中で動きを止めた。

 

「なっ!?」

 

 何が起きたのか分からずただ驚愕の声をあげた。それとは対照的に妖艶に笑う傷だらけの咲の顔が茨木童子の目に映った。

 先程の様に切ろうとしても次は剣だけでなく体が動かない。

 

「何を……した!」

 

 むしろ動けば動くほどきつく縛られていくようだ。

 

「それは私特製の糸、私の体内で作った蜘蛛の糸。そう簡単には抜け出せないわよ」

 

 また見せられたその妖艶な笑みに茨木童子は苛立ちを覚えた。

 

「こ……の!」

 

「雪麗さん、今よ。私の糸を凍らせて」

 

「え? あ、うん」

 

 咲に言われるがままに雪麗は"糸"を凍らせていく。すると凍った糸が弾けるように別れ、凍った所が氷の針の様になった。

 後はもう思った通りだった。茨木童子の体を絡めた糸が牙を向き、その体は氷の針で蜂の巣状態になってしまった。

 

「え、エグイことするわね貴女……」

 

 雪麗が引き気味で咲を見た。それにまたアノ笑みで咲が返してきた。

 

「あら? 私がしたのは準備だけ。攻撃したのは雪麗さんよ?」

 

 私は悪くない。とでも言いたげな表情に雪麗はまた引いていた。

 

 

 

 

 

 狛犬の蓮と、ぬりかべの黒も息があったコンビネーションで京妖怪を着実に1匹ずつ倒していった。

 

 

 

 ぬらりひょんが羽衣狐に駆けた。愚直なまでに一直線に猛進していた。

 案の定羽衣狐の尻尾により迎撃され、膝をつく。

 羽衣狐がぬらりひょんに気を取られている内に詩翠は羽衣狐の真上まで忍び寄り、こん棒を振り下ろした。

 

「見えておるぞ。小娘」

 

 ぬらりひょんに伸びていた尻尾は瞬時に羽衣狐の元へ戻り、そのまま詩翠に向かって伸びてきた。

 

「くぅ!」

 

 何とか大部分をこん棒で防ぐことは出来たが、脇腹や足、肩などにかすり、傷が増えていった。

 そのまま飛ばされ、ぬらりひょんの横へ落ちた。

 

「ほう……この女に惚れているのか……この芝居は本当(ほん)に奇想天外じゃ」

 

 詩翠とぬらりひょんは膝をつきながらも立ち上がろうとしている。

 

「この姫、妖をたぶらかす力を持っておるのか。ますますその生き肝、喰ろうてみたくなったわい」

 

 羽衣狐は珱姫の顎をクイと上げ、自分の口を近づけながら言った。

 

「珱姫えぇぇぇぇぇーーーー!!」

 

 ぬらりひょんは叫ぶと同時にまた羽衣狐に猛進していた。

 

「はぁ……少しは冷静になんないとダメでしょうに」

 

 ため息をつきながら詩翠はぬらりひょんの後を追ったが、また目の前でぬらりひょんは羽衣狐の尻尾に躍らされ、強烈な一撃により、畳に伏せられた。

 

「ガ……」

 

「芸が無いのう一方的に向かってくるのでは。少しはやるかと思っていたらお前もそこらの凡百の妖と一緒か、これは『余興』じゃぞ……楽しませてみろ」

 

 不敵に笑う羽衣狐の表情は余裕しかない。突っ伏されたぬらりひょんを見下げ、尻尾を振りながら羽衣狐は言葉を続けた。

 

「お前にこの尻尾の数が見えるか? わらわも数えてはおらん……わらわの『転成』した数と同じじゃ。歯向かってくる血の気の多い妖に反応するようになった」

 

 そこで急に立ち上がったぬらりひょんがまた羽衣狐に向かって行った。

 また羽衣狐の尻尾が反応し、ぬらりひょんに容赦なく襲い掛かる。しかし、次に傷ついたのは詩翠だった。

 ぬらりひょんの前に現れ、庇うようにして尻尾の攻撃を受けた。

 

「痛っ!」

 

 対象は違えど羽衣狐は攻撃をやめなかった。

 

「お前でも良いぞ。踊れ、死の舞踏を。妖の血肉舞うのが演目ならそれもよかろうて」

 

 しかし、その尻尾はやがて詩翠の後ろのぬらりひょんにまでおよんだ。

 

「妖様あぁあー!」

 

 珱姫が捕まっている羽衣狐から逃れてぬらりひょんの元へ行こうとするが、羽衣狐に押さえられた。

 

「おっと……だめじゃ能力は知っておるぞ……そういうのはつまらん」

 

 珱姫は捕まりながらも叫んだ。ぬらりひょんに。

 

「なぜ!? こんな無茶を!! 私は……妖様が分かりません!! こんなになるまで……男の人は皆そうなのですか……!?」

 

 珱姫が涙を流しながら訴える。心の叫びの様に。

 

「カワイイことを言うのう珱姫……いいかぇ? 世の中は人でも妖でも『カシコイ男』は大勢いるのだ」

 

 羽衣狐の言葉が耳に届いているのかいないのか分からないが、珱姫お視線はぬらりひょんから動くことはなかった。

 その様子を見てか、羽衣狐が分かったように言った。

 

「男を知らんな。初めて知った男があんなバカで愚直で……カワイそうに。そして……それが最後の男なんじゃからな」

 

 羽衣狐が言い終わるとぬらりひょんが再び立ち上がった。その傷だらけの体に鞭打って。

 

「珱姫……ワシはお前の目に……今どう映ってる? やはりそいつが言うように、バカに映るか……?」

 

 ぬらりひょんの言葉に無言で首を横に振る珱姫。

 

「あんたのことを考えるとな……心が……綻ぶんじゃ……」

 

 ぬらりひょんの言葉に珱姫は意外そうな表情を浮かべた。

 

「例えるなら『桜』、美しく……清らかで……はかなげで、見る者の心をやわらげる。あんたがそばにおるだけできっとワシのまわりは華やぐ。そんな未来が……見えるんじゃ。なのに……あんたは不幸な顔をしてた。ワシがあんたを幸せにする……どうじゃ、目の前にいるワシはあんたを幸せに出来る男に見えるか?」

 

 珱姫の瞳からまた涙が流れる。

 

「フハッ……見えんだろうな……ワシはあんたにカッコイイとこを見せつけて、ほれさせにゃーいかんのにな……あんたに溺れて見失うとこじゃった」

 

 雰囲気が変わった。それは先程までの愚直な男ではなかった。

 

「そろそろ返してもらうぞ。羽衣狐」

 

「(これが……私の父様)」

 

「妖……様……?」

 

 珱姫の表情は一辺し、少し怯えるような顔になっていた。

 

「行くぞ。ここからが闇────妖の…………本来の戦じゃ」

 

 羽衣狐の尻尾が反応を示さない。そこに"敵"がいるのに……居るのに、見えない様だ。

 ぬらりひょんが目の前まで来て、やっと尻尾が反応し、持っていた剣を弾き飛ばした。

 しかし腰に忍ばせていたもう一つの刀をぬらりひょんは鞘から抜いた。

 

「同じことを!!」

 

 また羽衣狐の尻尾がぬらりひょんを襲う。だが、次は違った。その刀は尻尾をものともせず、そのまま切り裂き、羽衣狐の顔までを切り裂いた。

 

「やるね。さすがだよ」

 

 ぬらりひょんの畏を目の当たりにした詩翠が感嘆の声を漏らした。

 切られた羽衣狐は何が起こったのか分からないみたいだった。

 

「な、なんじゃ……? その、刀は……?」

 

 羽衣狐が驚愕の言葉を漏らした時、異変は起こった。

 切られた傷口から大量の血と妖気が吹き出したのだ。

 

「おおおおおぉぉおおぉ! ぬ、ぬけてゆく……ワラワの妖力が! 抜けてゆく!?」

 

 それは天井を突き抜け、京の空へと飛んでいった。

 

「ま、ま……待て! どこへ行く……? 戻りやあああぁぁぁ! 何年かけて集めたとおもうとるぅー!!」

 

 羽衣狐もそれを追いかけ、天井をぬけて行った。

 

「珱姫ー!」

 

 羽衣狐の行方よりも珱姫のことを心配し、周りを確認するぬらりひょん。それに答える様に牛鬼が叫んだ。

 

「総大将!! ここはオレ達に任せろ!! あんたはあいつを追え!! とどめを……刺しにいけー!!」

 

 下僕(しもべ)の言葉に不敵な笑みで返し、

 

「牛鬼……!! まかせたぞ!!」

 

 ぬらりひょんは開いた穴から上へ上へと登って行った。

 

「待て!! 行かせんぞ!」

 

 ぬらりひょんの後を京妖怪達が追い掛けようとする。

 しかし阻まれた。傷を負いながらも瞳の輝きが失うどころか、増している奴良組のモノ達に。

 

「おっと。あんたらの相手は……俺達だぜ?」

 

 駆け上がる。羽衣狐を追いながら、魑魅魍魎の主への階段をもぬらりひょんが駆け上がる。

 

「そのまま魑魅魍魎の主へと、駆け上がれ!」

 

 牛鬼の声が聞こえた様な気がしたが、今更足を止める訳にはいかない。

 屋上に着き、てっぺんまで登ったとき、気が付いた。いや、気が付いたが遅かった。

 羽衣狐の尻尾が、ぬらりひょんの左胸を狙い、一直線に伸びてきていた。

 しかし、その直後にまた気付いた。それよりも気が付いておかなければいけなかったことに……。

 貫かれたのはぬらりひょんではなく、彼を庇う様に抱きついてきた詩翠の背中だった。

 そしてその衝撃で詩翠の笠が空を舞い、その端麗な顔があらわになった。

 頭から生えた小さな2つの角。大きく、クリッとした黄色い瞳。

 どこかしら珱姫にも似ている様な顔。その顔を、ぬらりひょんは知っていた。

 

「翡……翠……?」

 

 尻尾は詩翠の背中から抜けたが、その先には肝が握られていた。

 

「フン……良いところで邪魔ばかりしよって。お前の肝ごときで"力"が幾分も戻るとは思わんが」

 

 そう言いながら羽衣狐は詩翠から抜き取った肝を食った。

 詩翠は優しく微笑みながらぬらりひょんから少し離れ、こん棒を持ち直し、羽衣狐に対峙した。

 その瞳に見られた羽衣狐は形容しがたいナニカを感じた。

 

「お前……ナニモノじゃ?」

 

「私は……」

 

 詩翠は高々と宣言した。目の前の"敵"に向かって。

 

「私は、西南の鬼……」

 

「鬼……じゃと?」

 

「翡翠が忘れ形見……詩翠。いざ、参る!」

 

 詩翠が名乗りと共に羽衣狐に向かって一直線に向かう。すぐに尻尾が反応……しなかった。

 

「(コイツもか!? そこに居るのに……見えなんだ)」

 

「鬼とぬらりひょんの血を継ぐ私を、そこらの凡百の妖怪達と一緒に思ってもらっては困る!」

 

 ギリギリで動いた尻尾は詩翠の一撃を防御するので精一杯だった。

 

「ぐぅ!」

 

 重たい一撃。これが鬼の力……。

 そこに間髪入れずにこん棒を振り上げる詩翠。だが次は羽衣狐の方が速かった。クルッと回転を加え、尻尾で詩翠のノーガードのボディに一発。さすがに吹っ飛ばされ、ぬらりひょんに受け止められた。

 

「確かに。しかし、いくら潜在能力が強くても幼なすぎるわ!」

 

 すぐさま尻尾の追撃が来る……はずだったのだろうが、止められた。

 

「式神、破軍」

 

 開花院13代目党首、秀元によって。

 

「ぬらちゃん、ええとこ持っていき」

 

 ぬらりひょんはチャラい笑みを浮かべながら言う秀元に舌打ちをしながら、少々苛立った様に返答する。

 

「ち……お前に借りを作ることになんのかよ……」

 

「ま、またんか!!」

 

 会話の内容を理解したのか羽衣狐が焦りながら言ったが、もう遅かった。刹那、ぬらりひょんは羽衣狐を一刀両断していた。

 

「お……おの……れぇええ!」

 

 依代からはい出た羽衣狐が恨めしそうに叫んだ。

 

「おぬしら……ゆるさん、絶対にゆるさんぞ! 呪ってやる!! 呪ってやる!! ぬらりひょん!! わらわの悲願を潰した罪……必ずや償ってもらうからな!! おぬしらの血筋を未来永劫呪ってやる! 何世代にもわたってな……おぬしらの子は孫は!! この狐の呪いに縛られるであろう!」

 

 そうして大阪城に背を向け、彼方へと消えて行った。依代は力を無くし、屋上からそのまま地面まで落ちていった。

 

「君がこれで魑魅魍魎の主や」

 

 秀元が落ちた依代を見つめながら言った。

 

「けほっけほっ」

 

 可愛らく咳込む詩翠にぬらりひょんが歩み寄った。

 

「今やったら、鬼とぬらりひょんの血を継ぐその娘も倒せるかもしれんなぁ」

 

 秀元の軽口に本気でイラッとしたぬらりひょんは秀元を強く睨んだ。

 

「おお怖、もう何も言わんとくわ」

 

「なあ、おまえ……」

 

 ぬらりひょんが再び詩翠に視線を戻し、質問しようとすると詩翠が言葉を重ねてきた。

 

「そう。さっきも言った通り、私は貴方と翡翠の娘……母様のいいつけで貴方に会いにきた」

 

「その瞳……翡翠に瓜二つじゃな」

 

「母様を覚えてるの?」

 

「忘れたくても忘れられるものか、以前ワシが一番愛した女じゃからな……しかしまぁ翡翠にも騙されたの」

 

「? どうゆうこと?」

 

「あいつ、娘がいるなんて一言も言わんかったぞ」

 

「あ……じゃあ私のことは全く知らなかったんだ?」

 

「そうなるな。ところで翡翠は元気か?」

 

「……母様は死んだよ。50年ほど前に」

 

「……そう……か」

 

「ねぇ、貴方があの姫さんに惚れた理由って母様に似てるから?」

 

 そう言われて頬を赤く染めたぬらりひょんは全くもってらしくない反応だった。

 

「いや、まぁ……それも……ある」

 

「やっぱり、初めて見たとき私も思ったもん」

 

「そ、それはもういいだろ! ところでおまえ……あー、詩翠って呼んでいいか?」

 

「何を今更、父が娘を名前で呼んで何かおかしいことでもあるの?」

 

 相当嬉しかったのか顔が自然と綻んだ。

 

「詩翠、行くあては?」

 

「ない」

 

「じゃあワシの組に入れ。これからはワシが、おまえを守ってやる」

 

「ん。よろしくお願いします。でも私一回宮崎に帰る。やること残ってるし」

 

「そうか……」

 

 そこでぬらりひょんは思い出した。

 

「そうだ! 詩翠! 背中の傷は!? 何故ワシを庇った!? 肝まで取られおって……! 女子が体に傷をつけてはいかんだろ……てぇっ!」

 

 いきなり取り乱したぬらりひょんにデコピン一発で黙らせた詩翠は心配されたことに嬉しそうに笑い、

 

「庇ったのもこの傷も、私の意思……父様(ちちさま)が心配することはない」

 

 包み込むような笑顔で言った。それに以前愛した女性が重なったのかぬらりひょんは詩翠に抱き着こうとした。

 

「翡翠~~~……たぁっ!」

 

 またもやデコピンをくらってしまった。

 

「今は母様でも私でもないでしょ! ほら!」

 

 詩翠が指差す方を見ると珱姫が屋上まで登ってきていた。

 

「よ、珱姫!? どうしてここに!?」

 

 ぬらりひょんは慌てて珱姫に歩み寄った。見ていて今にも落ちそうでハラハラする。

 

「お、お怪我を……」

 

 すると珱姫はツルッと足を滑らせてしまった。

 

「おい!!」

 

 ぬらりひょんが一気に駆け寄り、珱姫を抱き留めた。

 

「妖様……珱姫は、心配しました。私にお怪我を治させて下さい。あなたの側で……この先もずっと……」

 

 その一部始終をずっと見ていた秀元は思っていた。

 

「(共生────か。この妖なら、あるいは──な……)」

 

 

 

 羽衣狐が倒されたことを知らない下で戦っていた奴良組と京妖怪の戦闘も終わりが見えていた。奴良組が大分おされていたのだ。

 あの後茨木童子はすぐに復活し、雪麗もろとも咲も立てないくらいにやられてしまい、蓮と黒も膝をついていた。

 

「チッ……京の妖か……徐々に押されてきたなぁ」

 

 小さな姫を背中で庇い、傷だらけになりながら一ツ目が弱々しく言った。

 

「地力が、違うんじゃよ……!」

 

 その時、天井が崩れ、何かが文字通り落ちてきた。

 

「おぅてめーら引き上げるぞ。目的は取り返したぜ」

 

「総大将ー!」

「ば、馬鹿な!」

「なに!?」

 

 奴良組と京妖怪達が各々声をあげる。

 

「羽衣狐様はどうした!」

 

 鬼童丸が声を荒げて言うが、返答は清々しいものだった。

 

「ワシが倒した」

 

 ぬらりひょんの返答に続き、牛鬼が付け足す。

 

「本当だ。下に下りて確認するといい」

 

 ぬらりひょんは目の前の一ツ目に語りかける。

 

「大丈夫か? 立てるか? 一ツ目」

 

 その言葉と先の言葉に一ツ目も喜びを隠せない様だ。

 

「おお……本当にやったんですな……さすが、我が、大将じゃ……!」

 

 しかし京妖怪も黙ってはいなかった。傷はあるがさして支障がないような茨木童子がぬらりひょんに言い放った。

 

「戯言を……ここから一歩も出さん」

 

「やるってのかい? ワシはかまわんぜ」

 

 それを大天狗がなだめ、京妖怪達も引き上げることになった。

 蓮と黒は詩翠に近付きまず驚いた。

 

「詩翠様……その背中の傷は……?」

 

「あ、これ? 肝一つ取られちゃった」

 

 苦笑いする詩翠の返答に蓮は気を失いそうになっていた。

 

 かくして大阪城を舞台に繰り広げられた羽衣狐対奴良組+詩翠達の戦いはぬらりひょんの勝利という形で幕をおさめたのであった。




『ぬら孫』の小説の方は読んでないので、鯉伴の話がほぼオリジナルになってしまうと思われます。
コミックスの方は把握しているつもりなので、そちらの話には出来るだけ近づけ、詩翠を絡ませるつもりです。
自分でも分かるくらい誤字が目立ってました。一応確認はしてるのですが、それでもあった時はすみません。

8話くらいまでのバックアップはあったので、それまでは連投させていただきます。
楽しみにしてくださってる方……いるか分かりませんが(汗)、これからも完結まで頑張りますので、それまでお付き合いください。でわでわ
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