友ヶ島より   作:コーレア

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 和歌山県北部、徳島県東部、そして兵庫県淡路島南部と太平洋に囲まれた紀伊水道には3つの鎮守府がある。

 その1つが友ヶ島の鎮守府で、ここには()()防衛を任された艦娘の内の戦艦、空母、そして巡洋艦の者達がいる。和歌山鎮守府には他の空母、軽空母、そして駆逐艦達がいる。最後に徳島鎮守府には他の戦艦、巡洋艦、そして潜水艦達がいるという配置になっている。

 相互に借りあいながら、主に南方からやって来る深海凄艦達に対抗し、また資源調達に行っている。

 

「なん、だと?」

 

 この日、その3つの鎮守府に艦娘を出している神戸建造鎮守府は、朝イチの建造で新しい艦娘がいきなり出てきた事で、上から下から大わらわになっていた。

 報告を逐次受けている京都の海軍本部は、夕方までの緊急会議の末に彼女の配備を決める。

 

「さて、明日には君は鎮守府に配属される事になった。場所は友ヶ島だ。ここには『川内』がいる」

「はっ。誠心誠意勤めさせていただきます」

「うむ」

 

 この決定事項は、小さな戦いが無かった3つの鎮守府に夜になってもたらされ、こちらもてんやわんやになる。

 特に徳島鎮守府と友ヶ島鎮守府の()()は、共に急な受け入れ作業に職員や艦娘達が動き回る事になる。

 

「徳島に出向、ですか」

「すまんな」

「いえ、この鎮守府の拡張工事が終わるまでですし、あそこには姉もいます」

「そうだったな」

「……ですけど、たまには提督と連絡を取ってもいいですか?」

「俺で良いなら」

「ありがとうございます」

 

 そんな会話もあったが、翌日には異動が実行される。

 

「お初にお目にかかります、提督殿」ビシッ

「ああ、友ヶ島鎮守府へようこそ」

「改めて自己紹介を。出雲型装甲巡洋艦1番艦の『出雲』です」

「出雲さーん! ひっさしぶりー!!」バッ

 

 上海で一緒に戦った事のある川内が飛んで、出雲はそれを抱き止め、それを見た天龍と球磨、そして那珂も笑顔で先輩艦に駆け寄る。

 執務室でのその光景を微笑ましく見ながら、提督は一夜でなんとか覚えた『出雲』の艦歴を思い出す。

 

「建造は1900年にイギリスで。日露戦争では日本海海戦の勝利に貢献し、第一次世界大戦ではアメリカと地中海に派遣され、1932年からは中国に派遣された」ボソボソ

 

 そして、呉軍港への空襲によって転覆。終戦まで1ヶ月を切った時、だった。

 日露戦争での活躍があったからか白を基調とした軍服を着こなす出雲。落ち着いた雰囲気が全体から出ていて、神通とはまた違う言い知れぬ威圧感がありそうな感じがするというのが、提督の第一印象だった。

 

「じゃあ、案内してくるね!」

「ああ」

 

 和歌山の鳳翔さんの髪を短くして、それにウェーブをかけ、服はロシア風の軍服に変えたという感じの出雲を見届けてから、提督は同時に送られてきたマル秘文書を読む。

 

「大規模作戦、か」

 

 最近は深海凄艦からの攻撃も全体的に減ってきており、未確定だが数も減ってきたと見られる。よって、四国南方沖に広がる拠点を攻め、戦意高揚もはかることにした。和歌山、友ヶ島、徳島の各鎮守府は準備し、また神戸への準備も進めるように。

 大雑把に略してそんな感じの中身の文書を読み更けていた提督は、部屋の各所から来ている無機質な瞳と、その奥で(もだ)えている艦娘達に気付く事は無かった。

 

「案内してきたよー!」

 

 読み終えて数分後ぐらいに、川内達が友ヶ島の半分くらいを占める鎮守府の案内から帰ってくる。

 

「どう…でした、出雲さん?」

「良い所です。警備や整備の人達も良い人達ですし」

「それは良かった。それじゃ行こっか」

「あいさー!」ダキッ

『なっ!?』

「?」

 

 出雲の隣にいた川内がサッと提督の右腕に抱き着き、それに天龍と球磨が声をあげ、出雲は首を傾げる。一方、まだ慣れれていない提督は、突然の柔い感触に戸惑う。

 

「顔真っ赤っかじゃん♪」

「う、うるさいっ。早く離れろ」

「ええ~、このまま行こうよ~。提督は私の柔らかな胸を感じれて良いじゃん」

「たしかーーごほんっ」

 

 上目使いで見てくる川内に落とされかけながらも、2人からの重さがこもった瞳に戻せた心を落ち着かせながら、提督はどう乱暴ではない手段で離すか考える。

 そして、北上が「これをやらられば動けないよ~」と言っていた事を思い出し、それを実践してみる事にする。

 

「川内」

 

 彼女の正面に立ち、空いている左腕で彼女を抱きよせ、彼女の耳元に唇を寄せる。

 

「離れて、くれるか?」

「ッ!?」

 

 右腕の柔い感触は無くなった。だが、それは自分の胸板に場所が変わっただけで、しかも川内の白々とした両腕が素早くまわされ身動きがとれなくなる。

 それだけなら提督も避けようとしただろうが、一連の動作の前に彼女の体が大きく震えたので、心配が先に働きなすがままになった。

 

「だ、大丈夫か?」

「…………提督……」

 

 普段からは想像のつかない弱々しい声を出しながら、川内は顔を上げ、提督は彼女の表情を見て思わず喉を小さく鳴らしてしまう。

 虚ろげな瞳と赤らんだ頬。普段の時とも、戦いの時とも、また違う妖艶さがともなった初めて見る表情。

 

「……提督」

「……川内」

 

 そして、引き寄せられるように2人の顔は近付きーー。

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