友ヶ島より   作:コーレア

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 南方作戦。

 そう命名された史上何回目かの反攻作戦では、軍や政府の中では何時もより勝ち星が期待出来る作戦という空気が漂っていた。

 

「馬鹿め、と言って差し上げますわ!」

「ぱんぱかっぱーん!」

「……戦艦撃沈確認。敵影なし」

『…………』アゼン

 

 巡洋艦が、戦艦を、叩きのめす。

 そのあり得ないはずの光景を目の前で見せつけられた和歌山鎮守府の駆逐艦達は口が開きっぱなしになるが、同じ鎮守府で友ヶ島から妖精の要望で移ってきた『加賀』はたんたんとしている。

 

『よし。友ヶ島の方まで戻ってくるように』

「了解です」

 

 加賀が旗艦の戦隊は、結局1つも怪我を負う事なく室戸岬の沖合いの海域での威力偵察を終える事となり加賀は冷静に、高雄型戦艦1番艦の『高雄』と 番艦の『愛宕』は陽気げに、和歌山で育った吹雪型駆逐艦1番艦の『吹雪』、2番艦の『白雪』、3番艦の『初雪』は未だ少し呆けながら鎮守府へ進路をとる。

 室戸岬と潮岬を底辺とした正三角形の頂点の海底にある深海悽艦の日本部隊の本拠地からの奇襲に備えるために、その底辺を潜水艦達で監視している部隊の横を通りすぎ、高雄と愛宕の会話をメロディにひたすら友ヶ島へと進む。

 

「あっ、高雄さーん!」

 

 だいぶ左右の陸地の幅が狭まってきた所で、霞がかり始めた前の方から声が響いている。

 

「パーフェクト勝利おめでとうございます!」

「ありがとう、青葉ちゃん」

 

 今風の制服にショートパンツという何時も通りの出で立ちの青葉は、笑顔のままポケットから手帳一式を取り出して海上でインタビューを始める。

 それに加賀ら3人は普通に答え始め、青葉が属する戦隊の艦娘達も慣れた様子で呆れつつもそれを見ていた。

 

「む、厳雲ちゃん」オソルオソル

「何かしら?」

「これが普通なの?」

「……そういえば3人とも和歌山一筋だったわね。ええ。これが『大異動』前の友ヶ島艦隊の日常よ」

 

 半年前にあった、妖精の要望による3つの鎮守府を巻き込んだ『大異動』以来、どこか沈んだ感じがしていたので、吹雪達はなるべく厳雲やその後ろの『磯波』や『綾波』に友ヶ島の事は聞いていなかったが、ここまで異常だとは思ってなく、そしてこれが日常と言う厳雲はどこか懐かしげな物言いだった。

 

「確か史上最強レベルだったんだよね」

「ええ。今でも呉の艦娘達を巡洋艦と駆逐艦だけで倒せたのは、私たち『旧艦隊』の自慢よ」ニヤリ

「呉の艦娘さん達を!? あそこは巡洋艦も最高レベルなんじゃないの!?」

「あら。誰が巡洋艦相手って言ったかしら?」

「…………えっ?」

 

 意味がわからず、というよりかはわかりたくないので固まる吹雪達3人にサッと近づく影が1つ。

 

「私と妹、赤城さん、大淀さん、そして響さんの艦隊が倒されました。夜戦より前に」

「………………ほ、本当ですか? 大和さん」

「はい。あの戦いで我が身の弱さを思い知り、最高に達するために友ヶ島に移りました」

 

 清々しい笑みが逆に真実だという事を、吹雪達に実感させ、そしてやっと驚きの声が上がる前に「ありがとうございました!」と声が響く。

 

「いやあ、加賀さんとは久しぶりでしたから話が弾みました」

「では、行きますか? ()()殿()

「その呼び名を止めてくださったら行きます!」

「いえ。私達の慢心を完膚なきまでに壊してくださったあの艦隊の()()であり、快く教えてくださった教官殿ですから」

「むー…………でしたら名前で呼んでください!」

「最大限努力いたします」

「それ、駄目な奴ですよね?」

 

 漫才をしながら戦場へ行く青葉達を見送った吹雪達が、普通になるのは1日の時間を要する。

 そんな具合にーー特に元を含んだ友ヶ島の艦娘がーー最強レベルなので、最近の弱り具合から見ても、一部では楽勝という雰囲気さえ漂っていた。だが、戦争全般の教訓として『慢心はダメ絶対!』というのがあるので、大多数は勝ち星を目指して闘っていた。

 

「相変わらず大きいな、ここは」

「俺達の所は町に近いしな」

 

 それは、ここ頻繁に民間人が巻き込まれにくい友ヶ島にやって来た2人の提督も一緒だった。

 知ったる顔で から提督の執務室まで、時折友ヶ島の艦娘の挨拶にも応じながら歩いていき、ほぼ1日椅子に座りっぱなしの彼の部屋のドアを開ける。

 

「ノックをーーこれは失礼しました!」

「良いよ良いよ。座らせてもらうよ?」

「はっ!」

 

 呉の元提督と、横須賀の元提督。それが今の和歌山と徳島の鎮守府の提督であり、若いながら中将になっている友ヶ島の提督の後見人役だったりする。

 

「敵の具合は短期的に見ても、長期的に見ても変わらない。だから、このまま進めて良かろう」

「本部への問い合わせの具合はどうじゃ?」

「変わらず『戦力に偏りが生じるため容認出来ない』だ。本気の戦をする気があるのかないのか今一わからん」ハア

「万が一にも和歌山と徳島が襲われれば、勝っても痛み分けになるでしょうし、全滅論が主流になるかもしれないので妥当だと思いますよ」

「じゃが、それでは火力が足りないじゃろう?」

「それが、この作戦が発令される1ヶ月前に、密かに状況が大きく変わる事がありました」

『……気になるのう』

 

 ほとんど友ヶ島のサポートのために現役を続けている2人の老将は、孫のように思っている若き提督の話を聞いて時代の進歩を感じた。




 少し補足すれば、友ヶ島の巡洋艦は中レベルの深海悽艦の戦艦までなら普通に倒せるぐらいの強さです。
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