深海悽艦の本拠地の1つの殲滅を目標とする南方作戦。
これまで何度にもわたり激戦が繰り広げられてきた首都南方沖海域での戦いに終止符を打たんとする作戦が発動されたのは、出雲・磐手・アイオワが続々と着任してから1ヶ月も経っていない頃だった。
『こちら葛城。後1分で本拠地の真上に到着するわ』
「『目覚まし時計』の方はどうだ?」
『……妖精さん曰く「異常なし」だそうよ。気にしてちゃ開発妖精さんに怒られるわよ?』
「お前達の命と引き換えになら怒られるさ」ドヤ
『……馬鹿』
『夫婦漫才を無線でしてるお二人さんは置いといて、潜水艦達はどうや? 龍孃から……でっちへ』
『でっちじゃないでち。ソナーでも目視でも影は無いでち。大人しく引きこもってるみたいでち。伊58から時雨へ、そっちはどうでち?』
『こっちも綺麗な青空が広がってるだけさ。君達の所には“大雨”が降るかもしれないけどね。時雨から山城へ、戦艦さん達の様子は?』
『みんな意気軒昂よ。特に大和さんが。戦果が減るわね……青葉?』
『ひっ!? 私ですか!?』
『また彼女に
『……嫉妬ですか? 嫉妬ですね?』
『…………愛宕、高雄、由良、武蔵、加賀さん。後で』
『『よーそろー!』』『『おう!』』『気分が高まるわ』
『提督~』
「……武運長久をヴァルハラから見ておく」
『うわーん!』
『お姉様が燃えてます!』
聞いている者達のほとんどが苦笑いを浮かべる中。
『バー『投下&着水確認』ッ!』ドンッ!
最初に大音量の金剛の、次いで少し尖った葛城の声が、そして砲撃音が響き渡る。
「金剛さんが発砲!」
「……着弾場所は?」
「…………和歌山鎮守府の対岸の半島の岬、です」
「……金剛?」ユラッ
『…………すーー』
『こちら和歌山の鳳翔。着弾とそれによる
『こ、これが私の実力ネ!』
「作戦終了後、執務室に来なさい」
『……ハーイ』
予想外に接近されていた事に和歌山と徳島の鎮守府が騒ぎ始める中、葛城が投下した『目覚まし時計』が、深海棲艦の鎮守府の直上で鳴らし始める。
『雷雲の中にいるような音ねっ!』
『海が震えているのがわかるね』
『お魚さん浮いてこないかしら』ワクワク
『赤城さん……』ハァ
深海鎮守府の直上で破裂した音量特化の爆弾。その効果は、その影響が過ぎ去るとすぐに現れた。
『多数の敵が出てきたね! ……数は……500!』
「内訳の解析を頼む! 川内、天龍、那珂、北上、球磨! そっちの方は!?」
『ソナーにがんがん反応来てるよ~。んー、久しぶりに血がたぎってきたよ』
『これより私達の作戦を始める。しくじるなよ?』
『もっちろん!』
『俺の怖さを見せつけてやるぜ!』
『はーい! 何時ものように目立っちゃうよ!』
『全力でヤらしていただきます』
『黒い屍が浮かぶ夜空を作っていこー』
怒り狂う深海棲艦は、自身の感知能力で鎮守府群とここの間の海上に5人が立っているのを察知し、圧倒的な数で持ってそいつらに向かう。
『『『『『戦闘開始!』』』』』
だが、史上最強レベルの巡洋艦の中でも青葉と互角に渡り合う5人は、鎮守府の方へ向かいながらも迎撃する。
駆逐艦は一撃で、巡洋艦と低レベルの戦艦は何発かで倒していき、その他は攻撃を避ける事に徹底する。明石からひっきりなしに撃沈報告が伝わってくるが、減ったという感じはしなかった。
だが、そんな状況でも5人の表情は変わらなかった。
「良いねえ! 感触があるねえ!」
「ああ! あいつの役に立ってるぜ!」
「どれだけ屍をステージの上にぃ!」
戦闘に集中するために通信は切っているが、もし提督に聞こえていたら逆に心配するほど、5人は笑っていた。笑いながら、時には歌いながら沈めていく。
「カイブツ……ヤッパリ、カイブツ」
「本家さんに言われたくない」
「その通りです」
大人しげな球磨と神通は、淡々と敵に恐れられながら、時には殴って沈ませていく。
怒りに身を任せ出てきた深海棲艦達が思わず歩みを止めかけるが、それはいささか遅い判断だった。
「みなさーん! 私達の分も残していてくださーい」
死神達が、青空の下にやって来る。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
艦娘1人に対して深海棲艦4人。
それは、艦娘が1人大破したり補給などで撤退するまでに深海棲艦は4人沈むか戦闘不能になる、という意味の比率だ。
しかも、友ヶ島の他の2つの鎮守府を分けて比べてみたら圧倒的と言えるほど前者の方がよく、それは後者の者達なら誰でも実感していた。
ある和歌山鎮守府の駆逐艦は語る。
「私達4人は上下からの攻撃に比較的弱い戦艦の護衛任務につくことになったんだ。護衛する事になったのは、私達が6駆として第1艦隊に入った時に一緒だった扶桑さんと山城さんで、2人の同僚だった暁姉さんと色々話してたね。
そして、いざ戦闘が始まるとそれは圧倒的だったさ。それぞれの水偵で自分の獲物の場所を確認して主砲を唸らし、半分ぐらいを
一方で、向こうも膨大な数の艦載機を飛ばしてきたから、これは私達の持ち分になる。だから、懸命に迎撃したんだけど、暁姉さんは格が違ったよ。私達にあれこれ完璧な指示を飛ばしながら、時には主砲で私達の総数の6割は落としていったんだから。私達に譲ってくれた分も含めれば8割になるね。それよりも、投下されたりした魚雷の迎撃が百発百中だったのが驚いた。
もう、司令官のあんな顔は見たくないの……て、暁姉さんの目の前で敵の飽和魚雷攻撃で避難船が沈み、友ヶ島の司令官さんの両親だけが亡くなった悲劇を繰り返さないように、友ヶ島では過酷な自主練をしてたらしいけど、その腕は衰えてなかったよ」
と。