この素晴らしき世界にハーレム女王を。   作:鮫島龍義

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この恐ろしいイエティに度胸を

 雪男……もとい。

 私達はイエティに出会ってしまった。

 あれ、イエティって最近どこかで聞いたような……。

 そんなことを思い出していると、イエティは軽く腕を振るだけで大木が真っ二つに折れた。

 

「はっ!?」

 

 信じられない光景を見てしまった衝撃はかなり大きかった。思わず三度も見てしまう。

 そんな仰天な光景とは裏腹に、イエティは日常的な当たり前のように折れた大木を乱暴に蹴り飛ばしてきた。

 そしてその大木は不安な回転はするものの真っ直ぐこちらへ勢い良く飛んでくる。

 

「伏せて!」

 

 私はなんとか咄嗟にイザナミの頭を上から手で抑え、無理矢理にも伏せるように押さえつけた。めぐみんも同様に左手で押さえつけた。

 咄嗟の判断により大木に当たらずに済み、風を切る音と共に通り過ぎた。

 もし、あの大木が当たったらと思うと、ゾッとする。確実に顔がもげるなんて考えちゃいけないし、それで殺されてしまうことも考えてはいけない。

 

「……アスカ、イザナミ。れ、冷静になって聞いてください」

 

 めぐみんはそう言うが、かなり焦っているのがわかる。そこから察するに私達はとんでもない境地に立たされているんだと……。

 

「もしかしたら、私達は今日ここで死ぬかもしれません」

「そんな縁起でもないことを冷静に聞けと言うのかよ」

「あ、いえ、すみません」

 

 そんなツッコミをできるくらいには私はまだ精神的に余裕があるのかもしれない。もっとも、めぐみんは真面目に謝っているあたり本当にそれが事実になることを示されているに違いない。

 隣にいるイザナミは顔が真っ青でいる。冷静を通り越して、恐怖で何もわからない状態でいるのだろう。

 

「本当は今すぐにでも逃げたいところですが……イエティに遭遇してしまった以上、逃げ切ることはほぼ不可能です」

「だ、大丈夫、私のアクセルダッシュを使えば」

「イエティもアクセルダッシュ使えるんです」

「…………嘘でしょ?」

「私も嘘であってほしいです。だけど、イエティが手慣れたアクセルダッシュを使えるって割と有名な話の一つなんですよね」

 

 めぐみんのその補足に私は絶望を感じる。

 そして思う。

 これ…………積んでなくね?

 あの巨体でアクセルダッシュ使うとか卑怯だと思うんですけど。

 あの……これ夢ですよね? 夢を見ているんですよね。そろそろ目を覚めてもいいんですよ、明日香さん? 起きてください、起きないと学校に遅刻しますよ。

 …………現実逃避しても、何も解決にならないのは当然だけどさ、こんな時ぐらい、めちゃくちゃなことを思っていても魔法のように解決できたらいいのになーって思うのは駄目なんですかね。

 

「えっと、あの……どうすれば生き残れる?」

「私も噂話でしか聞いたことないですが…………とりあえず、今は大丈夫ですね」

「今?」

「はい、今はイエティは私達人間にチャンスを与えているんです」

「え、は? ちゃ、チャンス?」

「そうです。奇襲を仕掛けてきましたが、今は襲ってきていないんです。それがイエティが私達にチャンスを与えているという証拠だと思われます」

 

 確かにそうだ。私達を仕留めたいのなら、さっさとアクセルダッシュで距離を詰めて、二つの剛腕で簡単に仕留められるはずだ。

 でもそれをしないのは……イエティが私達をなめぷしているからか。おのれ、なめぷするとかいい度胸をしているな! でも、おかげで私達は助かっているのからそのままでいてください。

 でも、なめぷしているってことはそれは、いつでも私達を仕留められるという自信が確証しているからであるってことになっちゃうのかな。

 ……パッと見ても、そんな感じはしない。なんかその辺に落ちている石でジャグリングし始めちゃったよ。今だったら逃げられるんじゃね?

 

「ちなみに、油断していると思って逃げようとした矢先に瞬殺されたと言う噂があるので、今逃げるのはやめた方がいいかと」

「だったらいっそのこと、さっさと攻めればいいじゃんか。なんで希望を持たしてから絶望に落すのかな?」

 

 そんな話を聞いてしまったら、易々と逃げられないじゃない。

 あくまでも噂だからめぐみんが言った通りにならないかもしれないけど、噂通りなのが一番問題なんだよ。

 これ前に戦った魔王軍の幹部だったベルディアよりも命の危険が迫っているんですけど。

 真のボスはイエティだったのか?

 

「こ、これでもイエティはチャンスを与えているの?」

「そ。そうだと思います。あ、先ほどチャンスと言いましたが、もう少し正確に言えば私達の度胸を試しているのです」

「ど、どういうこと?」

「それは私にもわかりませんが、噂ではあのイエティは性別がオスなのにも関わらず、男が好きだそうです」

「……はい?」

「つまりアスカさんと一緒ですね」

「ちょっと待った! 同性が好きなのは一緒かもしれないけど、一緒にしないで!」

 

 そこだけは時間をかけてでも理解してほしいし、なんなら一日かけても説得したい。でも流石にイエティはそこまで待ってはくれないだろうから帰ったら語ってやる。

 

「そしてあのイエティは魔王軍の幹部並に恐れています。いろんな意味も含めて」

「さらっと強さの基準を教えないでくれるかな? それ本当にヤバいじゃん」

「もう今更ですし、この際、生き残る方法を考えた方がいいかと」

「いや、その通りだけどさ……オカマだった後で言わないでよ」

 

 ベルディアよりも命の危険が迫っているのはあながち間違いではなかったね。イエティそのものが魔王軍の幹部並の強さだと証明されたからね。

 

「他に特徴と言えばイエティは男を無理矢理でも拉致る力があるところと、女性の冒険者を確実に殺すという意気込みがあるくらいですね」

「男を拉致るって、その後は?」

「わかりませんね。ただ、噂では拉致られた冒険者は帰ってくることはなかったので、おそらく女性よりも悲惨な結末を迎えているんじゃないかと思いますね」

 

 ……いろいろとキャラとして濃すぎませんかね。

 本当になめぷしてもらっているのがありがたいよ。つか、イエティ寝そべっているからそのまま寝てていいよ。いっそのこと、やる気がないなら帰ってくれないかな?

 

「イエティがキャラ濃いのはわかった」

 

 イエティのキャラ解説にちょくちょく恐ろしいこと言っているのはこの際、ツッコまないでおこう。確実に殺すとか希望も夢もないじゃない。

 

「それで、私達の度胸を試せば生きていられるの?」

「それは……私もよくわかりません」

「…………おい。わかったことは、イエティがオカマだという、生存に関してはどうでもいいことなんですけど!?」

「だって私も噂ぐらいでしか知らないんです! わずかながら生きて帰って来られたのもいるようですけど、本当に度胸を見せつけて帰れたのかわからないのです! それにアスカさんは思考がおっさんなので、可能性はあるかと思います」

「そこはせめて男って言って、性別は違うけど全くの別物なんだよ!」

 

 一方、脅威となる敵は未だにこちらを見つめながら、だらけるように寝そべっている。あ、欠伸した。もう帰ってよ。帰らせてよ。

 本来だったら、命の危機があるんだから緊張感と警戒心を持って対峙しなければいけないんだろう。

 でも、今はそんな緊張感が薄れている気がする。このままいつものノリでいけば、帰らしてくれるんじゃないかと思うくらいに。

 まあ……だからと言って、気楽ではない、むしろかなり焦っている。私もめぐみんも足がカグブル震えているのが伝わってくるくらいに不安でいっぱいだ。 

 めぐみんも冷静でいるようで、たまに不安そうな顔を隠しきれていない。本当は今すぐにでも泣きたいのかもしれない。

 まあ、私が勝手に思っているだけだけどね。

 

「……このまま死ぬのですかね」

 

 ボソッとめぐみんが言った。

 

「まだ……何も成し遂げていないのに……」

 

 もう一度ボソッという。誰かに聞いてほしい言葉ではなく、思わず口に出してしまった独り言。

 …………めぐみんの言ったことを解釈するのなら、生き残るために必要なのは度胸。そして男好きであることが意外と重要なのかもしれない。

 男じゃない時点で私達はアウトかもしれない。でも度胸と男が重要なら、男にも負けないくらいの男気を出せば見逃してくれる可能性はあるかもしれない。

 なんて考えるのは勘違いしているだけの妄想かもしれないし、私がこうなってほしい願望だけかもしれない。

 ともかく、やることは決まった。

 これでいいのかと言われればいいわけではないんだけど、今の中ではこうするしかない。

 運はそこそこだけど、結局は二分の一でだいたいできている人生だ。生きるか死ぬかの二択。それは今日だけじゃないから今日も明日もその先も生きていられるさ。

 

「イザナミ、聞いて!」

「あ、はい、なんでっ!? ゆ、雪男がいる1?」

 

 今までずっと気絶していたのかよ。しかも器用に立ったまま。

 そしてその反応をするってことは、さっきまでの会話を全く聞いていないのね。

 別にいいし、もう一度説明する時間はなさそうだから、このまま実行に移させてもらうよ。

 

「イザナミ、悪いけど私の代わりにめぐみんをおぶってくれる?」

「え、で、でも……」

「頼む」

「あ、はい……」

 

 私はめぐみんを下ろして、イザナミにおぶってもらうようにしてもらう。

 

「イザナミ、何故私をイザナミに移したのですか?」

 

 めぐみんに訊かれたけど、申し訳ないがそのことに返答はしなかった。

 理由は止められるのが嫌だったから。変に嘘つくくらいなら、強引でも自分のやりたいことを貫き通したい。

 よし! めぐみんのことはイザナミに任せておいて、腹括って挑みますか。

 

「おい、聞けイエティ! つか、取りあえず立てよ!」

 

 寝そべっているイエティに向かって叫ぶ。するとその声に反応して素直に立ち上がった。どうやら、人間の声はわかっているようだ。

 

「いいかイエティ! 私のイザナミとめぐみんはね…………さい――――っこうに、可愛いぞ!!」

「「なっ!?」」

 

 隣にいるイザナミとめぐみんがびっくりしているがわかる。この場面で自慢するとはイザナミもめぐみんも、そしてイエティさえも思わないだろう。

 

「どうだ羨ましいだろ! なんせ私の自慢の嫁だからな! アハハハハハハッ!」

「い、いつからアスカの嫁になったんですか!? 勝手な事実を作ったところで後で虚しくなるだけですよ!」

 

 そ、そんなことわかっているわい! でもいずれはそうして見せる。めぐみんよ、今のうちに反抗しているがいいさ。

 ……で、こう言う時は真っ先に反抗するのがイザナミなのに、何も反応がない。無視しているだけかもしれないけど、イザナミなら言う前に制止させるのは私の思い込みか?

 それとも、目論見がバレた?

 イザナミなら理解されそうだけど、それでも私は引く気はないからね。

 

「イエティ! 何が言いたいかって言うと、イザナミとめぐみんは私の命同等、命をかける価値が十分にあるわけなのよ! 言っている意味わかるよね!」

 

 そして私はイエティに向かってもう一度叫ぶ。

 

「もし傷つけたり殺したりすれば、あんたを呪ってでも神様を利用してても絶対に殺す! 私が死んでからも蘇って殺す! 地獄に堕ちようが、異世界に転生されようが、人間じゃなくなったとしても、どんな手段を使ってでも殺してみせるからね!!」

 

 そのことを伝えると、全身が白色の毛皮で覆われた顔からニヤッと奇妙な笑みを浮かべているように見えた。

 その次の瞬間、その場からいたイエティが消えた。

 でも私はそれを予想していた。

 やることは一つ。イザナミの手前ですぐ立ち止まって、予め短剣を前に突き出すことだ。

 

「『アクセルダッシュ』ッブッ!?」

 

 その瞬間に私は激痛が走り、視界がぐるんぐるんと回り始めた途端、気がついた時には顔を雪に埋められていた。

 視界が白くなると同時に、頭の中も真っ白になった。それでも私は今、ぶっ飛ばされたという事実を理解できた。

 

「――――っ!」

「――――さんっ!」

 

 誰かの声が聞こえるけど、あまりにも痛すぎで何を言っているのか聞き取れない。でも、なんとなくわかって状況もまだ冷静にいられる。

 信じたくなかったけど、めぐみんが言った通りアクセルダッシュ使いやがった。

 視界がテレビの砂嵐のように何も見えない。

 あ、でも少しだけ見えた。

 イエティの極太な右腕でイザナミを振り下ろそうとしていたのを。

 ……言ったでしょ。

 傷つけたり、殺したりすれば呪ってでも殺すと!

 

「『アクセルダッシュ』ッ!」

 

 アクセルダッシュを使った途端に、死にそうなくらい激痛が走り出した。

 一瞬、自分が何者なのかわかなくなることがある。一瞬だけ、意識が遠のきそうになりそうになった。

 あ……マジでやばい。本気でやばい。

 あれ……何をしているん、だっけ?

 私は…………どこにいる?

 

「――――っ!」

「――――さんっ!」

 

 …………ああ、思い出した。

 思い出さなければ、楽になれたはずなんだけどなぁ……。

 無理矢理でも器用に動かせ。死にそうになっても我慢して体を起こせ。

 恐怖なんて愛で包み込め。

 生きている限り、私のヒロインに傷をつけさせない。

 

「…………言ったで、しょ」

 

 私は立ち上がって、魂を絞り込んで叫んだ。

 

「傷をつけたり、殺したりすれ、ば……呪ってでも、こ、殺すと……っ!」

 

 視界も見えた。片方赤く染まっているけど問題ない。

 いや、問題あり過ぎるか。一瞬でも気を抜くと意識が無くなりそうだ。

 だからこそ、自分を無理矢理でも器用に動かさないと、イザナミとめぐみんを守れない。

 だったら、どんなに痛くても意識が無くなりそうな時でも頑張って守りたい。

 

「かかって、こいよ……私はまだ動けるよ……っ」

 

 すげー腕が痛いけど、構えなきゃ。

 私は無理矢理痛みを我慢して右手を突き出す。これでどうにかなるとは思ってもみないけど、私は示す。

 どんな方法を使ってでも殺すという意志を。

 

「アスカさん!」

 

 イザナミの声が聞こえる。

 あー……とうとう幻聴が聞けるようになってしまったのか。

 ハハッ、末期だな。

 次の瞬間、私の目の前にイザナミが背を向けていた。

 正確に言えば、イエティの前に立ちつくしていた。

 

「い、イザ……ナ、ミ?」

 

 なんでここにいるの? あんたはめぐみんを連れていかないと駄目でしょ。

 

「……雪男、アスカさんをこれ以上、傷つけるのでしたら……私は貴方を許しません。ここからは私が相手です」

 

 い、今なんて言った。

 

「それでもアスカさんを殺すのであれば、死神の名において私は貴方を必ず狩り殺します」

 

 じょ、冗談でしょ。

 イザナミはそんなキャラじゃないでしょ。いつもビクビク怯えていて、勇敢に立ち向かうことなんてできやしないでしょ。

 全く、しょうがない奴だなぁ……私がしっかりしないと駄目でしょ。

 

「い、イザナミ、らしくないじゃない。さっさと、めぐみんを連れて逃げなさいよ。……私が相手をするんだから」

「わかっています」

「だったら」

「でも嫌です。そんなふざけたこと、認めません」

 

 気を抜けたら死にそうな状況の中、私はイザナミに対して辛辣だなーっと素直に思った。

 あー嫌われているのね、私。命かけてやっているのに、なんで思い通りに逃げてくれないのかなー。これじゃあ、私がバカみたいじゃない。

 私はね、自分の命と同様に好きな人もそれくらい大切なんだよ。

 命をかけてでも生きていてほしい人がいるんだよ。

 

「そんなことよりも、さ……どうしたの、イエティ。相変わらずのなめぷですか? さっさと私の相手をしなさいよ」

 

 でもそれでイザナミに攻撃してこないのは私は十分にありがたいんだけどね。

 

「何回も言うけど、さ! イザナミと、めぐみんに傷をつけたら、どんな方法を使ってでも、死んでも殺すからさ」

 

 イザナミを追い越そうと一歩前に出すと、イザナミが右手で道をふさいできた。

 

「逃げなさいって言っているじゃない」

「私は逃げません。アスカさんを絶対に死なせませんので」

 

 イザナミの声はどこか冷たく、そしてどこか力強く、

 

「アスカさんを傷つけたり殺したりしたら、死神の名において狩り殺しますから」

 

 私を守ろうとしていた。

 私と同じように、命をかけて守ろうとしているのがわかった。

 臆病で卑屈で自分を貶すような死神が、私を守るために恐ろしい死神として立っている。

 ……なんて、そんなわけないか。やっぱり末期かな、私。こんなこと考えるなんてね。

 今は、今だけは何としてでもイザナミとめぐみんを守る。

 もう一歩、足を前に出すとイエティはいきなり右腕を上げた。

 

「アスカさん、下がって」

「イザナミ、こそ」

「下がって!」

 

 私はイザナミの必死な声に聞き分けず、突き飛ばして両手で自分を守るように重ねる。

 だがしかし、イエティの右腕が私に対して振り下ろすこともなければ殴ることもなかった。

 ただ、私の目の前で親指を出していた。

 

「…………え?」

 

 理解できない私は頭がこんがらがる。

 それでもイエティは不気味ながらもにっこり笑みを浮かべる。

 それが普通に怖くて、でも何をしてくるのかわからず混乱してしまう。

 

「あ、あの……」

 

 イザナミもどうやらこの状況を理解できていないようだった。

 いや、えっと……どうすればいいの?

 その瞬間、イエティは左手に持っている小枝で積もっている雪に文字を書き始めた。

 

 ――仲間想い素敵だわ。

 

 あ、ありがとうございます?

 ……えっと、えっと…………これはあれか、度胸を認められたってことかな?

 そう思っていると、イエティは雪に書いた文字を消してから、また左手で持っている小枝で文字を書く。

 

 ――――でも仲間想いなのはいいことだし、仲間を守ることもいいことだけど、守ろうとする気持ちが強すぎて、仲間の力を信じないのは良くないわ。

 

 なんかダメ出しされた。しかも思った以上に書いている。

 

 ――――わかった?

 

「あ、はい……」

 

 とりあえず返事はした。訊かれているのだから、返事をしないとまずい気がするし。

 

 ――――次逢った時は容赦しないからね。あたい、基本的に女嫌いなの。

 

 そしてイエティは最後に、

 

 ――――でも貴女のことは、嫌いじゃないわ!

 

 あ、わざわざご丁寧にクエスションマークも書いてくださった。

 最後に告白みたいなことを書いたイエティは森の奥へと走り去っていった。

 …………えっと…………助かった…………んだよね。

 イザナミもめぐみんも死んでないよね。

 

「……ハハッ、ハハ……」

 

 安心した。生きていることに安心した。

 

「良かっ……た…………」

 

 そう思った瞬間、目の前が真っ暗になった。

 何か声が聞こえたような気がしたけど、それがなんなのか私には理解できなかった。

 それもそうだ。

 私はこの異世界で二度目の死を迎えてしまったのだから。

 イザナミの声もめぐみんの声も聞けるはずもなかった。

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