どうしても我慢できずにやりました。
仮病の電話を切った後の、未央と藍子です。
短いですが、とても幸せになります。
「もしもし、凛ちゃん?ごめんね!今日私たち行けなさそう……」
私が言うのもなんだかおかしいけど、あーちゃんのこういう時の演技力は大したものだと思う。
多分、どうしたの?なんて聞かれたんだろう。というかそれしかなさそう。
「未央ちゃん、熱があるみたいで、今ベッドに無理矢理寝かせたところなの」
ベッドに無理矢理……ちょっと魅力的な響きだけど、ニヤニヤを噛み殺す。
ここであーちゃんがハンズフリーに切り替えてくれるから、ここで私の出番。
「この未央ちゃんが行かなくて誰がしぶりんを助けるんだ~」
不自然になりすぎない程度に、苦しそうな声を出してみる。心配かけてごめんね、しぶりん。
『大丈夫なの?今からそっち行くよ、何か必要なものある?』
自分の一世一代のデートなのに、やっぱり優しいなぁ。でも、これは作戦なので来てもらうわけにはいかない。
「ううん、こっちは大丈夫だよっ!寝てればすぐ元気になるし、多分今日の凛ちゃんがこっちに来ちゃったら、未央ちゃんすっごく気にすると思うの」
流石はあーちゃん。気遣いの方向を少しだけ逸らして、来ないように誘導してくれる。
「……ね?凛ちゃん」
で、ここでダメ押しの一声。優しい声に私も思わずきゅんとしてしまう。
『……わかった、確かに藍子がいれば安心だしね』
「うん、楽しんできてねっ♪」
「しぶりんすまぬ~私の分もどうか楽しんで……ばたり」
ここで無言なのも変かな?と、あんまり心配かけ過ぎないようにちょっとだけ、ふざけてみる。
「縁起でもないことしないのっ」
「あいたっ」
ぺちん、とあーちゃんの手のひらが小気味良く私の額を打った。
「ふぅ……これで上手くいくといいね?」
しぶりんにダブルデート欠席を伝えた電話を切って、あーちゃんがこっちに向き直る。
本当ならしぶりん、しまむー、あーちゃんと私の四人で遊びに行く予定だったけど、あの鈍感たちを二人きりでデートに行かせるために、私は仮病、あーちゃんはその看病ということで欠席をした。
あとは二人で上手くやってくれることを祈るだけだ。
「大丈夫だよ!あの二人、あんなにお互い大好きなんだし」
「ふふ、そうだね。どうして二人とも気付かないのか、不思議なくらい」
確かに。どっちも一年中お互いを見てる割には、鈍感だよねぇ。
あーちゃんがスマホをテーブルに置いて、風邪気分を出すために置いておいたスポーツドリンクで乾いた喉を潤す。
私の親友二人が幸せになってくれるよう祈る。
あーちゃんもきっと同じことを考えてて、目が合って微笑み合う。
仰向けに寝転んで、ふと、しぶりんとしまむーが付き合い始めた後の事を考える。
ニュージェネレーションズとして今まで一緒に居た仲間で、大親友。
それはきっと二人も同じように思ってくれていると思うけど、二人が恋人同士になった後はどうなんだろう?
恋人同士はやっぱり特別な存在で、割って入るようにそこに居る私は、今までと変わらずに居られるのだろうか。
「未央ちゃん?」
気付いたらあーちゃんがベッドに腰掛けていて、心配そうに顔を覗き込んでくる。
「……さみしくなっちゃった?」
何も言ってないのに、心の中が見透かされてるみたいだった。
「うん、ちょっとだけ。やっぱり少し嫉妬しちゃうよね」
おどけるように言ってみたら、小さく笑ってくれた。
あーちゃんの右手が私の髪を梳く。
「だいじょうぶだよ、きっと全部いい方向に進んでいくから」
純粋に二人の幸せを祈っていたはずなのに、ちょっとしたノイズが邪魔をする。
それを払ってくれたのは、私の大好きな人だった。
そう言い切れる理由なんて無くたって、あーちゃんの言葉ってだけで信じていられる。
「ねぇ、あーちゃん?」
「うん?」
「……だいすき」
「うん、私もだよ、未央ちゃん」
倒れこんでくるあーちゃんを抱きとめながら、今度はちゃんとダブルデートしたいなぁ、なんて思った。