書いてる最中にPと藍子がいちゃつくだけの似たようなやつ、しかもとても良いやつを他所で読んでしまってめちゃへこみました。
でも書きたいものを書けたのでとりあえず満たされました。
ここは……そうだ、あーちゃんの部屋だ。
「んー……おはよーあーちゃん……」
「うふふ、全然起きてないね?」
目は開かないけど、あーちゃんに鼻をつつかれてるらしいことはわかる。
ベッドの揺れから察するに、隣でうつ伏せになって両肘をついているんだろう。
「あーちゃんが寝かせてくれなかったんじゃんか……」
「……恥ずかしい言い方しないっ」
今度はおでこをぺちん。少しずつ意識が覚醒してくる。
どうやら昨日のあーちゃんは発情期を迎えてたらしくて、意味深な方の意味で寝かせてもらえなかった。
「もうちょっとだけごろごろしよ……?」
目を開けないままあーちゃんの肩におでこを擦り寄せる。
この体温と匂いはどんなものより元気になれるし、落ち着く。
「今日はせっかく二人ともオフだからって、新しく見つけたカフェ行く約束だったでしょ?」
そうだった。でもなぁ……眠いし、カフェは逃げないし、なによりここでもう少しいちゃいちゃしてたい。
「んー……そうだけどー……」
ぐりぐりとおでこを押し付ける。多分次にあーちゃんは『もー、しょうがないなぁ』って言う。
「もー、しょうがないなぁ……」
ほらね。
ついでに頭も撫でられてるっぽい。
多分寝癖で跳ねてるんだろう私の髪を、くしゃりと撫で付ける優しい手。
「ん」
左腕を持ち上げて、おいでおいでをする。
「ん」
私の真似をしながらあーちゃんが腕の中に入ってきた。
右腕を枕にする形で迎え入れて、挨拶代わりの最初のぎゅー。
「腕重くない?」
「あーちゃんを重たいなんて言ってたら、アイドルはできません」
「ふふ、未央ちゃん力持ちだもんね」
一応私、女の子なんだけど、「力持ち」って褒めてるのかな?
「おりゃーっ」
「きゃーっ♪」
抱きしめたまま、ごろっと真上を向く。
仰向けになった私の上に、うつ伏せのあーちゃんって状況だ。
ちょうどお互いのほっぺをすりすりしてる形。
「……重くない?」
「もっと重くてもいいぐらい」
あーちゃんの髪が顔にかかる。
髪に埋もれながら、いい匂いがするなーとか思ったあたりで、しぶりんの匂いフェチが感染ったのかと心配してしまった。
「もっと重たくても……」
なんか落ち込んでるあーちゃん。具体的に“どこが薄い”せい、とか言ったわけじゃないんだけど……気にし過ぎだよねぇ。
「あーちゃん、だいすきー」
とりあえず話をごまかすように抱きしめる。
「私も、だいすきー」
うわ、耳元でそれ囁かれるのすごい。脳が蕩けるってこういうのを言うんじゃないかな。
多分、今の私は世界で一番……
「私、今、世界で一番幸せかも」
……あーちゃんに先に言われちゃった。
同じことを思っててくれたことに嬉しさで、言葉にできない感覚に満たされる。
「今同じこと思ってた」
言葉にできないなら、その分ぎゅーってすればいいよね。
「…………」
「…………」
二人共何も言わないし動かないまま、時々どっちかが忘れた頃にきゅって抱きしめるだけ。
十分かそこらを過ごした頃、一つの事実に気付く。
「……さすがに暑いね」
「うん……」
ころん、と私の上から落ちて腕枕の形まで戻る。
密着して熱くなってた部分に空気が触れて気持ちよかった。
でもその気持ちよさも一瞬で、すぐに離れてしまった事に寂しくなる。だってさっきの距離に比べたら腕枕なんて、ねぇ?
「がおー」
今度は私が覆い被さる形で抱きつく。
「えっと……にゃー?」
なんでそうなったのかはわからないけど、可愛いから全部オッケーだった。
みくにゃんのアイデンティティがクライシス。
あー……癒される。
……この癒し成分、口から摂取できないかな?
「がおー」
試しに首の根元あたりに噛み付いてみた。とは言っても歯を当てる程度だけど。
「ひゃっ!? なにするの未央ちゃん!」
「……あおー」
噛みついたまま、これでシラを切り通す。
「もー……かわいい猛獣さんだね」
あーちゃんは意外と早い順応をしてくれて、私の頭を抱き寄せる形になる。
「よーしよしよし」
わしゃわしゃっと髪を撫でられて、いつの間にかただの愛玩動物みたいに扱われてた。
「私、食べられちゃうのかな?」
「がう」
答えるようにとりあえず噛みつく。
「ふふ、かわいい」
またわしゃわしゃされて、完全に手懐けられてしまった。
……正直、悪い気はしない。あーちゃんに飼われるのも幸せそうだなぁ。
あ、でもペットじゃ恋人にはなれないか。
しぶりんが『卯月のママになりたいけど、恋人じゃなくなるから諦めた』って言ってたのを思い出す。
あの時はしぶりんやべえ……としか思わなかったけど、今なら後半だけちょっとだけわからなくもないかも。 でも『ママになりたい』はちょっと私にはレベルが高すぎた。
ふと気付く。
「なんか私、甘やかされてばっかりだ!」
「よしよーし」
「わうー」
ゆるふわ癒しオーラには勝てなかったよ……
じゃなくて。
「私もあーちゃんをかわいがる!ねこっかわいがりする!」
「にゃー?お願いしますにゃー」
またそれだ。みくにゃんのアイデンティティは完全にクライシス。
にゃーにゃー言いながらまた並んで寝転んで、そのまま背中を向けて私の腕の中にぐいぐい入ってくる。
寝たままであーちゃんを後ろから抱きしめる感じ。確かウサミンが「あすなろ抱き」って呼んでた気がする。よくわかんないけど、後ろから抱きしめるのをそうやって言うらしい。
「これ、安心しますにゃー」
「安心なんだ……私はこんなにどきどきしてるのになー」
「うん、未央ちゃんのどきどきも聞こえる…… 私もどきどきしてるけど、それ以上になんか安心しちゃう」
「油断しおってー!がおー」
今度は後ろから噛み付いてみる。バンパイアってこんな気持なのかなぁ。
パッと舞ってはいないけど、ガッとやって、チュッと吸って、はーん。
完全にあーちゃんのか弱いオーラに惑わされている。細くて真っ白な首筋を、一目見たら釘付けになってしまった。
「……未央ちゃんになら、食べられちゃってもいいよ?」
危うく理性がどっか行っちゃいそうだったけど、無理矢理押しとどめてどうにかこうにか、ぐっと。よく我慢した……未央ちゃん、えらい。
「……カフェ、行くんでしょ? そろそろ支度しよ?」
肩越しにわかるぐらいむーっとむくれて、あーちゃんがベッドを降りた。
「未央ちゃんのいくじなしー」
ベッドに取り残された私は、一人うつ伏せになる。あーちゃんが行きたいって言ったんじゃんかー!
「うがー!!」
帰ってきてから覚えとけよー!
そう誓ったその夜、結局食べられたのは私でしたとさ。