神様転生なんて大っ嫌いだ!   作:名無しの魔砲使い

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「幼少期が飛ぶのは転生モノのお約束だろ?」


002

さて、私がこの世界に生まれて早8年、小学2年になった。

……なに?飛ばしすぎだって? しゃーねーだろ、今がまとめるのに最適なんだよ。待ち人がなかなか来なくて時間もあるし。

 

 

 

生まれた家は、まあまずまず普通の家庭だった。父親がいて、母親がいる。戦争真っただ中ってわけでもない平和な国、日本の首都に住む一家だった。父親……ああもうむず痒い!親父がそこそこ大きな家電メーカーの役員やってて金には困らなかったけど、それにしたって社長でもなけりゃましてや億万長者ってわけでもない、上流階層と中流階層の中間ぐらいの、どこにでもあるような家族だ。

両親に対する心境も、周囲に違和感を与えないためっていう“定着”が私にも効いたのか、特に違和感なく“本当の家族”として認識できてる。多少大人びてるとは周囲からそれなりに言われてきたけど、それでも子供の範疇を逸脱してない範囲でだ。記憶に曳かれてない、肉体年齢相応の部分の魂とやらのおかげ様なんだろう。家族仲も良好だ。

 

そして、6歳になりそろそろ年末に差し掛かろうかという頃、ほぼ記憶が定着してきた私のもとに、両親が転機を運んできた。

いま私が通っている小学校、『私立聖祥小学校』の入学試験の案内という、一大転機を。

 

聖祥小学校は、首都圏からは少し離れた、しかしそれなりに大きな都市『海鳴市』にある学校である。

この学校、こっちの世界では結構な有名校だ。小学校にして男女学生寮完備、施設も充実していて、小1から本格的な英会話の授業があるなど学力面でも優れてる。

その高い偏差値とセキュリティーの高さから政界、経済界の重鎮の孫や子供が通うのだが、独特なのが地元枠が設けられ私立としては比較的安い授業料で通えるという特徴だ。なんでも、閉じられたコミュニティーの中だけでなく一般市民の感覚と協調することでより優れた人材の育成を目指す……っーことらしい。

まあ、ようはエリート校だ。コンセプトのおかげか偉ぶってるやつは数えられるぐらいにしかいないけど。

 

私の両親は、純度100%の善意でそこへの入学を進めてきた。実際、私の学力は高卒以上は確実にある。受験など余裕でクリアできるし、将来のことを考えたら断るっつー選択肢はなかった。

……たとえそこに危険なフラグが立っているのが分かっていたとしても。

 

そして受験なんだが、特に言うことはないな。せいぜい、親父に(むりやり)連れてかれたパーティーで知り合っていた金髪ツーサイドアップ娘、アリサ・バニングスとばったり顔を合わせたぐらいだ。少し話した限りだと、海鳴が地元でもあるらしかった。

試験自体は特に詰まることなく合格、晴れて聖祥小学校で寮生活を送ることが決定した。両親は会社の都合や一軒家ということもあり地元に残ったが、引っ越し前日のパーティーで親父がそれはそれは泣きわめいて恥ずかしくて……思えばあの日からだ、『親父』と呼ぶようになったのは。

 

 

ところで。気にはなっていたのだが、私にも一応特典というものがあったはずなのだ。

こっぱずかしい思いをしながら色々やってみたが、残念ながら何かしらの特殊能力なんてものはなさそうだった。社会的立場、というのも少し弱いように思う。つまり、与えられるのは武器だと考えていた。

それは正解……?まあ正解なんだろう、たぶん。とにかく、それは引っ越し当日に私の新居においてあった。

 

……実に見覚えのある仮契約(パクティオー)カードが。

 

いや、嬉しいよ? たしかに私が使い慣れてたもんだし、ネギ先生の本契約と同時になくなったからもう二度と使えないと思ってたし、なんだかんだ言って便利は便利だし、まさかのあいつらもいて記憶そのままってのも懐かしかったよ?

でもさ、これ武器じゃねぇじゃん。少し丈夫で使いやすいプログラミングツールじゃん。ドンパチなんて全くできねえじゃん。せいぜい格闘の補助ぐらいじゃん。

その日一日、喜びやら怒りやらで悶々としてたのは言うまでもない。

……ちなみに、契約主の部分だけ空白だった。魔力は来るから気にしないことにしてる。

 

 

で、引っ越しの主目的は学校に行くためなのであって。翌日が始業式だった。

当たり前だが小学校にはクラスというものがあるわけで。これまた偶々同じクラスだったバニングスと世間話していると、背筋が凍るような視線を感じ取った。

すばやく、だがバレない程度に視線をめぐらす。下手人はすぐに分かった。……まさか二人もいるとは思ってもみなかったけどな。

ここであらかじめ言っておく、40人近くいる教室から特定の視線の主だけを探し出すような特殊スキルは私にはねえ。嫌な視線を浴びたことはなんとなくわかっても、向きすら掴めねーんだ、一般人舐めんなコラ。

じゃあなんで誰か分かったかというと、それが有りえねーもんだったからだ。二次性徴もまだ、一次性徴すらギリギリ抜けきったような6歳男子では絶対にありえねえ……情欲を孕んだ下衆な男の眼。

 

このとき確信した。……こいつら、転生者だ。

 

可能性としてはありえなくもない。私という実例があるんだ、他に居たってなにもおかしくねえ。それがこんな典型的な屑野郎どもでも。

とはいえ、それで物理的にどうこう出来ないのが私のクォリティーだ。非戦闘職は伊達じゃねえ……マジで自慢できる事じゃねえけど。とにかく、その時できる事は観察することだけだった。幸い、私の席は一番後ろだったから、違和感のある奴らはすぐに特定できた。

 

一人目、神城(かみしろ)真斗(しんと)。顔はそこそこだが、ワックスを使ってるわけでもないのにツンツンと逆立ってる髪が特徴的。あと、なんか妙に右手をなでる、キメェ。

二人目、宮守(みやもり)ロイス。中東の方のハーフということだが、はっきり言って異常だ。褐色銀髪っつーのはまだいい、ザジもそうだったし……いや、あいつ魔界のお姫様だったな、やっぱり人間の子供としちゃおかしい。でもそれ以上におかしいのは、顔も体も年齢と不釣り合いなほどに男らしく、それなのに身長だけ普通だから目立ちすぎだ!

それと、もう一人、安藤(あんどう)勝喜(しょうき)。こいつは前二人と違って、下劣な感情がなかったから確信はなかった。見た目も悪いわけではないがあまりにも普通すぎる。だけど、下衆二人が注視してる女子を妙に見てるし、私を見て目を見開いたから間違いないはず。普通に考えりゃハーレム目的以外の転生者ってことなんだろうが、なにを特典に望んだのかや原作がどうなるのかを知らない以上、迂闊に私からは接触できない。上2人には劣るが中レベルの警戒対象だ。

 

そんな奴らに主に見られているのは、私を除いて三人。

まず、バニングス。財閥のお嬢様で見た目もいい、性格もさばさばしてて好感を持ちやすい。いいんちょを可愛くして神楽坂の性格にすればこうなるんじゃないかって感じだ。注目されるのも分からんでもないが、ちょっと異常なほどではある。

次に、光の加減によっては紫に見えなくもない少し薄めの髪をストレートにした少女、月村すずか。見た目深窓のお嬢様候補といったところで、後で知ったが実際に海鳴の大地主『月村家』のお嬢様だった。それと、身体能力が中1頃のまほら武闘派四天王レベルで人間離れしている。普通、隣の席の奴が()()落とした筆箱を落ちる前に拾えねーよ、どうやったんだそれ。

その筆箱の持ち主で、三人娘の中で一番見られてるのが高町なのは。栗色に近い茶髪をツインテにした、成長期前の鳴滝妹(いたずら成分抜き)だ。教室の扉の段差で躓くし、運動神経は切れていると考えていい。見た目が他二人と比べてずば抜けてるわけでもなし、ここまで視線を集めてるということはこいつが主人公なのだろう、正直信じられねーが。

ついでみたいなもんだが、私も視線を集めてる。色欲98%の他三人と違って奇異3割、猜疑5割、色欲2割ぐらいのイメージ。“原作”にいない主要登場人物を警戒しているにしては少々違うような気もする。

 

とりあえず、気を狙ってヤバそうな二人の携帯に「た゛いこ」と「はんへ゜」を直接潜り込ませた。残念ながらネット接続はしてなかったので常時連絡はできないが、たまに出して必要なことだけ聞けばいい。情報を得るにはこれで十分……盗聴は犯罪だって?電子精霊の存在を警察が知ってたらこんなことしねーよ。

 

 

まあ、そこからの情報はそうすぐに集まるわけではなかった。独り言をかき集めて全体像を捉えるのはそう簡単じゃねーんだ。特にこぼしやすい風呂場が聞き取れないとなおさら。

ただ、ひとつだけ分かったことがある。こいつらは、すぐに接触してこなかった。つまり入学はあくまで“フラグ”であり、まだ“本編”までにはしばらく猶予があるということだ。たぶん、1年以上は先のはず。

幸い、私にはほかの奴らにはないアドバンテージがあった、同性というアドバンテージが。それを利用して友人関係に持ち込んで近くで守る、これを基本方針として決めた。……経験はあっても力のない私が守れるかは考えないようにした。少なくとも人が増えるだけでやり辛くはなるはずだ。

私らしくないといえばそうなんだろうが、私も女だ。あんな発情丸出しの男どもに8歳の女子が狙われるってのはさすがに見逃せねえ。特にバニングスとは、まあ、友人と呼べなくもないくらいの仲ではあったからな。

 

そんなわけで今後の見通しもできて、転生者(推定)をそれなりに監視しつつ、目下最大の問題はどうやって三人をまとめるかだったんだが……それは気が付いたら解決していた。

いや、まさか私が風邪で休んだ日に話し相手のいなかったバニングスが暴走、月村のカチューシャを取るというちょっと笑えないイタズラを仕掛けたところに高町が乱入、大ゲンカからの友情とかさすがに予想できねーよ。どこの少年マンガの主人公だ、あ、高町は主人公ではあったか、たぶん。

で、その次の日にバニングス経由で私も合流し(バニングスが引っ張り込んだとか言うな)、なんとか当初の目標通り“仲の良い4人組”になることが出来た。危険転生者2人の顔が嫉妬に歪んで、すぐに色欲に歪んだ理由は考えない、身の危険を感じる。あと、安藤はなぜかすごく目を輝かせてた。

 

バニングスが笑顔で引っ張り、

高町が運悪くそれを悪化させ、

私が頭を抑えてツッコミを入れ、

月村が宥める(たまに怒る)。

 

昔懐かしのまほら中等部の頃を思い出す、騒がしい日常だった。煩くて煩くて仕方ないのに、なくなったらなくなったでなんだか寂しいもんだなんだ、また味わえたことだけはカミサマとやらに感謝しなくちゃな。

 

……ちなみに高町で思い出したが、あいつの家。あそこは人外魔境だ。

一度、高町の強い勧め(という名のバニングスの力技)で三人娘と一緒に高町家に泊まったことがあったが、あの家には道場があった。それだけならまだ「珍しい」で済んでいたんだけどな。寝つきが悪くて早朝に目が覚めて、聞こえてきた音に釣られてそこを覗いたら……神楽坂とか桜咲レベルのガチバトルを高町の兄姉がやってた。目を疑ったがどう見ても事実だった。

ただ、そのあとずっと心の中にしまってる、調査もしていない。いざとなったらアソコに逃げ込めばいいとは考えてるんだが……明らかに魔法少女モノに相応しくない刀とか使ってたし、なんか余計なことにまで足を突っ込みそうなので出来るだけ避けてるのが現状だ。

飛んでくる虫は叩き落とすが、夏の火には飛び込まないのが私の生き方なんだよ。

 

 

 

そんなこんな、入学から1年が経った頃。「た゛いこ」と「はんへ゜」、「しらたき」と「こんにゃ」をひと月ごとに交代させて集めていた情報が新展開を迎えた。

とは言っても、まだ“原作”と思われる情報は断片的なものしか集まっていない。不自然なタイミングで止まることが多かったらしいが、理由はよく分からん。取り敢えずまとめておく。

 

①“原作”の名前は「リリカルなのは」「リリなの(たぶん略称)」。魔法とか言ってたらしいからたぶん魔法少女モノ。

②1年後(小3)の時に「PT事件」というのが起きるらしい、口ぶりからしてそれが最初の事件。他「ジュエルシード事件」や「闇の書」などの単語が出たそうだが、そちらに関しては詳細不明。

 

うん、①の情緒的な(リリカル)に盛大にツッコミたい。ツッコミたいが……それ以上に下の情報がヤバイ。

 

③神城は宮守のことを「エミヤ」、宮守は神城のことを「カミジョー」と呼んでいる。2人が共通して知ってる“元ネタ”の知識なんだろうが、私は知らんからどうしようもない。だけど二人とも安藤はノータッチということだ。

④“長谷川千雨”は、「ネギま」という漫画に登場するキャラクターだそうだ。私も転生者仲間と思われてる。

 

④ってなんだ!?私がマンガの住民!?ふざけんなガチ廃人だったけどちゃんと人生全うしたわっ!転生者は転生者だけどそうじゃねぇ!

 

……まあ、その時はそんな感じでメチャクチャ混乱したけど、あとで冷静に考えりゃありえないことでもない。「創作物は別世界を無意識に観測した結果」とは魔法探偵で似非哲学者で読書家な元クラスメイトから受け売りした思考実験だが、可能性としてはないわけではねーんだ。むしろ、あいつらの前世が私の知ってる創作物のキャラクターという可能性だってある。

それと、タイトルからしてその漫画はネギ先生が主人公だ、となれば間違いなく私も出てくるはず。これは自慢じゃなくて、結果としてそうなってるのだから自信がある。恥ずかしい場面とかも見られてるのかもしれねーけど、記憶をなくすまでぶん殴るぐらいしか方法ねーし、それは今すぐできることじゃねえ。

 

そんなわけで、割と早く、二週間ほどでアイデンティティを取り戻した私だが、それ以上の問題が④に含まれていることに気がついた。

 

——私の能力がバレてる可能性がある。

 

この世界に転生するにあたり、私という人間は特典らしい特典を望まなかった。

それはつまり、前世でできたことはできるが、出来なかったことは出来ないということに他ならないっつーこと。その漫画から、私が戦闘能力が皆無なことを知られてる可能性は否定できねえ。

唯一、特典と呼べるであろうアーティファクトも、ネギ先生の人生において最も鮮烈な時期に私が使っていたものと全く同じだ。こいつの力もバレてる可能性も十二分にある。これに気がついた時ばかりはあの白の世界にいた私をぶん殴りたくなった。

今は奴らがありもしない転生特典を警戒して手を出してこないが、たぶん戦闘系の能力を貰ってるだろう下衆どもが襲ってきたら、私じゃまず勝てない。

 

じゃあどうするか、かなり悩みに悩んだ。

まずはじめに考えたのは、高町が力を手に入れたら参謀役になって、ギブアンドテイクで互いに守り合うことだ。

裏の世界に巻き込むのは昔の私を思い出して気が進まねーが、案外魔法少女モノってのは放置しとくと世界の危機に陥る可能性99.9%の危険地雷地帯だ。しかも適性がかなり絞られてる場合も多い、高町には悪いが盛大に巻き込まさせてもらうしかなかった。

だけど、それは“原作”とやらが始まってからの話。それまでの約1年をどうするか。それが欠けている。

奴らにとってもここは事前に接触できる最後の期間だ。始まってから正体を明かすパターンもあるけど、それでも前もってある程度の仲になっていた方がインパクトがある。先手を打っとかないと押し切られる可能性が高い。

 

 

 

「……来たな」

 

というわけで冒頭に戻る。

今わたしが居るのは、あまり使われていない備品倉庫の裏手。放課後のそんなところなんて告白スポットとも勘違いするかもしれないが、ここは体育倉庫の裏みたく告白に使える場所じゃない。つーかちょっと汚いわ虫も多いわでムードもへったくれもねーし。

 

そして。倉庫の陰から出てきた相手。それは……

 

「よう長谷川、こんなとこに呼び出して何の用だ?」

 

 

——転生者三号、安藤勝喜。




「ちょっと!ぜんぜん聞こえないじゃない!」
「でもこれ以上近づくと気づかれちゃうかもしれないの」
「ふ、二人ともやめようよー」
「「嫌(なの)!!」」
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