神様転生なんて大っ嫌いだ! 作:名無しの魔砲使い
安藤勝喜。
見た目は普通、家庭環境もごくごくありふれた一般家庭、成績も全国偏差で見れば上の方だろうがこの学校だと平均より少し上ぐらい。
人付き合いは比較的悪めだが他二人の転成者と違って全くないわけでもなく、見下すような態度をしてないため嫌われてるわけではない。というかそれに関しちゃ私も人のこと言えねーか。
と、ある意味で転生者と一目で分からんスペックをしている。正直今日の昼まではまだ『転生者疑惑』だった。まあ、カマをかけたらあっさり引っかかったから今は断言できるけどな。
そしてこれまた他2人と違って、これまでの観察から推測するに少なくとも下心があるわけではなさそうだ。でも高町たちを気にかけてたから原作知識はあるはず。
そんなわけで、現状、こいつが唯一協力体制を築けそうな転生者だ。この先のことを考えると、今このタイミングで接触するしかねえ。
「んで? なんの用事? まさか告白とか!」
「はぁ、分かってんだろ? あんな……ひとりでに携帯のメール作成画面が立ち上がってここに来るように書かれたんだ。お前が
それに呼び出し文章には私の名前は書いてなかったんだ。それを、さもここにいるのが当然かの如く対処できるやつなんて、私の能力を“マンガ”で知ってる……転生者しかいねぇ」
スッと、安藤の目が細くなった。本性を出すと目が細まるとか、長瀬と逆だな。
「なんだ、やっぱり長谷川もそうだったか。的確な行動をしてる割には普段の会話があまりにも自然だったから、もしかしたら違うのかと思い始めてたんだぜ」
「それは私に原作とやらの知識がないせいだろうな。それと、たぶんお前の想像してる転生者とは少し違う。私は、お前たちが知ってる『長谷川千雨』本人だ」
「……はっ?」
ポカンと口を開けてる安藤に、カミサマに言われたことを適当に掻い摘んで説明する。ついでに、私の世界が漫画になっていることを神城や宮守の携帯から聞いたことも。
「と、盗聴かよ……さすがちうっち「あ゛?」なんでもないですハイ」
「やべぇマジで本物だ」とか言ってるけど、あんたらの認識で私はどんなやつなんだよ。これでも理性的……ではなかったかもしれんな、うん。
「んで、だいたい予想はついてるだろうが、今回呼び出したのはその屑二人のことだ。私は原作知識なんてないから知らねーけど、あと1年後ぐらいなんだろ?」
「……すまん、まだ起きてない、正確には体験していない“原作”に関しての情報は他人に言えないようになってるらしいんだよ。独り言なら大丈夫だけど、他人に聞かれる可能性に思い当たった瞬間に口を開けなくなる」
げ、マジか。こいつからの原作知識は少し期待してたんだけど。
だが、なるほど、あいつらの独り言が不自然に止まったとかいう話もそれで説明がつくな。家族か……それとも私の存在に思い至ったか。どうりでぼんやりと掴むのにすら1年もかかるわけだ。
「まあそれならそれでいい。あいつらの独り言からある程度その辺は推測を立ててるからな。
もし仮にだ、私の予想してる原作の開始時期が正しいなら、そろそろ奴らが過激な行動に出てもおかしくねぇ。お前は高町たちに欲情してるわけじゃなさそうだし、出来るなら手を貸して欲しい」
「……俺な、普通の男女関係じゃ欲情しないのよ」
「……は?」
い、いきなり何言い出すんだこいつっ!?
「まあちょっと聞いてくれ。んで、まあ20年ぐらい俺は悩んで悩んで、その結果この世の真理にたどり着いた」
「し、真理?」
「ああ——男は男同士、女は女同士で恋愛するのがいい」
「〜〜〜!?!?」
ズササーッ、と3メートルぐらい離れる。ま、まさかこいつ……
「俺な、男が好きなんだわ。あと女×女を見てるとほっこりする。だからあいつらのやろうとしてることは許せねぇ!手伝うぜ長谷川ァ!」
「結局お前も変態かよ!?」
しかも一時期のネギ先生と違って性的な意味で男しか頭にねぇ! そのうえ自分の欲望で女同士のカプまで手を伸ばしてやがる!? 手のつけられなさじゃ他二人なんて目じゃねぇぞ!?
……ふぅ。まてまて、落ち着け私。情操教育的な問題を除けば、手を出す可能性がない協力者というのは満点に近い。うん、ここは諦めろ、できるだけあいつら三人との接触時間を減らせばいいんだ。それで解決する話だ。
「……よし、分かった。手を組もう。ただし、あいつらに布教したり洗脳したりってのはナシだ」
「それは大丈夫だぜ、俺がユー、あのキャラを貰えば自然とそっち方面に行くはずだからな。カプ厨も出ねえ完璧な結果だ」
「……魔法少女モノの常ってことか」
哀れ、あの三人娘は普通の恋愛が出来ないらしい。ノーマルの女としてはあいつらの行く末に泣けてくる。
「はあ。じゃあ、まずは今後のこと、特に変態ハーレム願望男二人について対策を立てるぞ」
「作戦は任せるぜ、本物のちう「ん゛?」長谷川千雨ならそう言うのはお手のもんだろ」
ったく、その名前で呼ぶんじゃねえっつーの。もう恥ずかしくてネットアイドルは引退したんだ……コスプレはたまにするけど。
「んじゃ、まずはお前の転生特典を教えてくれ。私のは平穏な家庭環境と、まあ『コレ』だ」
「ん?なんだっけそれ……ああ、魔法(科学)のステッキか。持ってなかったっけ? というか二つ?」
「これ以上の特典はいらねーって押し付け返してきた。コレに関しちゃ……まあ仮だったもんが切れたせいだ」
「……そいつは聞くべきじゃなかったな、すまん」
いや、頭下げられて謝られても困るんだけど。もう遠い昔に吹っ切れたことだし。
「ほら、頭上げろ。私はもう気にしちゃいねーよ。アレだ甘酸っぱい初恋の思い出ってやつだ。後悔なんてもう全くねーんだ」
「まあ、長谷川がそう言うなら……。
それで、俺の特典だったか? 原作知識と、防御系とかサポート系の……っ、すまん。まあそっち系の能力だ」
言えない、ってことは今後起きる物語に関わることなのか。まあ魔法少女モノなら十中八九魔法だろうけど。
「あとは死者蘇生だな」
「なるほど…………?」
ん……? “死者蘇生”っ!?
「んだよそれ!? ありえねー!?バグも良いところじゃねーか!?」
「い、いや、そんなに使い勝手は良くない、っていうかかなり制限が厳しいんだよ。使用は1回のみ、対象は特定のキャラクター1人だけ、使用後は3ヶ月間ふたつ目の特典が使えない、使う日時も指定されてる上に強制発動。その他諸々、細かい条件とかが沢山ある。ふたつ目の特典がオールマイティーじゃなくて特化してるのも、こいつの容量を空けるためでな」
……なるほど、確かにそれは厳しい。カミサマの言ってた制限とは、どうやらマジでかなり厳しいものだったらしい。いや、運命干渉系の最上位に近い死者蘇生でその程度で済んでるならまだ軽い方なのか? ……よく分からん、私は神様じゃねーんだから当たり前だけどよ。
そして、結構頭を使うタイプっぽい安藤がそんなデメリットだらけの特典を望むっつーことは……原作通りに行けば誰かが死ぬ自体に陥るということか。安藤の口ぶりだとこれでもかなり条件がパンパンだったようだから、下手したら2人以上が死ぬ可能性もある。
……それが高町たちの誰か、もしくは全員である可能性もだ。
「……つまり。お前は何かしらの悲劇を回避しようとしていて、その為にサポート系の能力ばっか寄り集めたっつーことか」
「いや、実……これも言えないみたいだな。
とりあえず、今の俺は戦闘が出来ないってのは確かだ。防御系の能力も万全の状態じゃないし」
その言い方は引っかかるものがあるが、どうせ聞いたところで制限に引っかかるのが見えてる。時間をかけるだけ無駄だな。
「じゃあ、あのゲス転生者二人の力は分かるか?」
「えっと、神城の方は多分『
「
分かるどころじゃねえ! そのままの物なら最強最悪の能力じゃねぇか!?
「まさか“リライト”まで使えるわけじゃないよな!?」
「いや、たぶん大丈夫、だと思う。元ネタの原作主人公はその力のせいで自分は超常的な力が使えなかったからな。ただ……」
「
「……腕を切り落とすとドラゴンが生えてくる」
思わず天を仰いだ。
なんだその、超緊急時にしか使えない隠し能力。意味あんのか? いや、ないわけじゃねーだろうけどどんな状況なんだそれ。腕切られるって、何があったらそうなるんだよ。
「……まあ、神城の方はそれで良い。じゃあ宮守の方は?」
「かなり記憶が怪しいけど……自分の目で見た刀剣類を解析、コピーして蓄積する世界を作り出す能力、の筈だ。なんか用語とかが沢山あったせいでよく覚えてないけど」
「世界を……作り出す?」
なんだそのチート、フェイトガールズのドラゴン娘の同類か?
「なんだっけな……『固有結界』って名前で、一定範囲内の世界を別の法則で塗りつぶす……?的な感じだったはず。ただ、それはすごい燃費悪くて、基本的には中にある剣を取り出すみたいな使い方をしてたはずだ」
「ふーん。結界か、なら範囲内に近づかなけりゃ対処はできるな。取り出すのも剣なんだろ、距離をおけばまだ何とかなるか」
まあ、桜咲並のスペックだったらそれも簡単じゃねーんだけど、対処法があるだけマシってもんだ。
……は? なんで首を振るんだ?
「いや、そっちの方が間違いなんだよ。そのキャラ、弓に剣を番えて矢みたいに撃つんだ。もちろん百発百中。
しかもその剣自体にも特殊な能力があって、空間を抉り取ったり、マッハ3でどこまでも追い続けたりする。しかももれなく全部爆発するオマケ付き」
「……なあ、それ剣なのか?」
「剣だ。盾とかも入ってるみたいだけど、それは剣。ついでに言うと近接戦自体も好んでる」
「……まー随分なチートを選んだもんだな」
もちろん、この話は外見と能力が一致していることが前提にある。だがまあ、敢えて別々のキャラからとったりすることはないだろ。他に転生者がいることを事前に知ってればまた違うのかもしれねーが、少なくとも私は違ったし安藤も違うみたいだ。なら、公平性を期す為にあいつらにも知らせてないだろう。
その場合、自分のイメージに近づく為に能力と容姿は同じにする可能性が高いはず。それに、もし違うのなら既に他の転生者を襲ってなくちゃおかしい。確実に不意をつけるんだから。それをしないということは、見た目から自分の能力を推測されて返り討ちに遭うことを恐れているということ。私と同じだ。
「……ん、まあ簡単にまとめると、あいつらはバトル系の能力を貰ったってことで良いんだな?」
「ああ。それともう1人、転生者を見つけてる」
「なんだって!? 結構気を張って警戒してたけどそんな素振りをする奴は1人も……いや、そうか。私と同じで原作知識がない可能性があんのか」
その場合は危険性はまずないから放置してた。というか自覚ないやつなんて見つけられん、原作知識がある奴が比較して初めて気がつくことだ。
「俺が見た限りでも、多分そうだと思う。とりあえず危ない人じゃなさそうだ」
「で、誰なんだそれ」
「翠屋の社員で、
「さくら?」
「それそれ、元木さくら」
翠屋ってのは高町の両親(見た目メッチャ若い)がやってる喫茶店だ。私やバニングスたちもよくお邪魔してる……たしかに主人公の高町に近い立場ではあるな。小学生だからといってコミュニティーは小学校だけとは限らねーわけか、意識から抜け落ちてた。
んで、そこで働いてる女性が元木さくらさんなんだが……まあ、怪しいところなんてひとつもないような人だ。料理が上手で厨房のNo.2(No.1は高町の母親)、性格も普通に優しく普通に厳しく、裏表がある感じではない。
高町の母親と同じく、というかこっちは行きすぎてるほどに見た目が若くて身長も低い、いわゆる合法ロリで、たまに中学生に間違われると愚痴ってた。あと、高町兄の
まあ特筆するべきはそんぐらいな人である。完璧超人っつーわけじゃなくて、虫が嫌いとか、たまに凡ミスしてたりとか普通の人……ってのが私の印象。
「……私も何度も顔を合わせてるし、よく知ってる人だけど……はっきり言って信じられねー。それ本当なのか?」
安藤が嘘をついてると思ってるわけではねーけど、考えるほどにありえないと感じるんだが。だって、人付き合いの壁っつーものが
安藤も普通といえば普通だけど、それでも雰囲気に転生者特有の壁みたいなもんがあるからな。もちろん私も持ってるんだろうし、こいつは転生者特有のもんだと思ってたんだけど。
「俺も直接確認したわけじゃないんだけどさ。原作の翠屋は家族経営で、バイト以外の社員はいないって説明があったんだよ。『社員』ってだけで原作にいない人間、転生者なのが確定してる」
ん?それ原作知識なんじゃねーの……ってああ、翠屋を“体験”してるから話せるってわけか。
うぅん、安藤がこんな嘘をつくメリットはねーし、原作知識ってもんがあるならそうなんだろうな。はぁ、これでまた私の周囲から一般人が1人消えた。
「まーいい。仮に転生者だとしても関わるつもりはない、っていうかあの感じからして原作知識も貰ってないだろうから完全に二度目の生を楽しむ方向の人なんだろ。無理に巻き込む必要はねー、それとも何かそれでトラブルがある可能性があんのか?」
「……いや、すぐにはないかな。“もしかしたら危ないかも”ってぐらいの可能性はあるけど、それは俺たちじゃどうしようもないし今すぐどうこう出来ることでもない。最低でも原作が始まるまで待たないと」
じゃあ元木さんはしばらく放置でいいな。というかあの人に関しちゃ他に選択肢がない。
「ってなるとやっぱりあの性欲男二人の対策が最優先ってことだな。ちょっと待ってろ、いま作戦を考える」
こっちは非戦闘系頭脳労働担当の私と、防御・サポート系の能力者の安藤。その安藤も何かしらの事情で防御系能力は完璧じゃない。この状況でバトルを挑むのは馬鹿のすることだ。
となると、使うのは絡め手。それも、出来るならあいつらがお互いを牽制し合うような物を……よし、これで行けるはずだ。
「とりあえず思いついたけど、私は原作を知らねえ。何か気が付いたことがあったら言ってくれ」
「早くないか?」
「これぐらいしか取り柄がなかったもんでな」
これでも英雄一味の頭脳労働担当だ。作戦立案や方針の変更を瞬時に判断しなくちゃならねーからな、自然と鍛えられたんだよ。
それはそれとして。今回の作戦の内容、安藤にやってもらうことなどを簡単に告げる。詳細な中身はあとでメールかなんかでやり取りすりゃいい。いつ人が来るかわからねー今は、大まかな全体像を手早くだ。
「……それなら大丈夫そうだな。少なくともあの2人は警戒して手を出せなくなると思うぜ」
「そうか、ならこれで行くとして……できるだけ早く動きたい。明日までに準備できるか?」
「まあ、そのぐらいなら」
「じゃあよろしく頼むぜ」
少し気恥ずかしいが、まあ礼儀だ。手を差し伸べる。安藤もその意味はわかったのか、笑顔で握り返してきた。
……うう、やっぱ恥ずかしいなコレ、さっさと分かれて寮に帰っちまおうそうしよう。
「じゃ、明日」
「おう、任せておけ!」
さて。協力者も手に入れた。これで万が一変態が組んでも人数的には対抗できる。
明日、予想外の方向に転がらないことを祈るばかりだ。
「こ、こんなところで男と女が密会してて、顔を真っ赤にして、安藤のやつが頭を下げて、千雨も笑顔で手を握って——!? うそ、あたし千雨に負けたーーっ!?」
「や、やっぱりそういうことなんだよね!?」
「それ以外にないでしょ! ああ、まさかの千雨が一抜けって。あいつが一番男に興味ないって顔してたのにぃ……」
「す、すごい敗北感なの……」
「二人とも、だからやめようって言ったじゃない……」