神様転生なんて大っ嫌いだ!   作:名無しの魔砲使い

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「目には目を、歯には歯を。変態には変態を」


004

「う〜す」

 

ガラガラと扉を開けて教室に入る。小学生らしく騒がしい教室は昔懐かしの3ーAを思い出してなんだかんだで居心地のいいもんなんだが、なぜか今日ばかりは違和感を感じた。

 

「来たわね。ちょっとこっちに来なさい千雨」

 

……ああ、普段なら真っ先に声がかかるバニングスが、教室の角で笑顔で手招きしてるからか?

つーかなに?なんかやな予感がすんだけど。私なんかしたか?

 

「なんだよ、って引っ張んじゃねー月村!お、おい!」

 

マジでどうしたんだこいつら!? 普段だったら大人しい月村まで力技に出るって相当だぞ。

……はあ、付き合うしかねーか。ったく、今日はこれからデカイ仕事があるってんのに。

 

「ありがとすずか。さ、キリキリ吐きない千雨、主に昨日の放課後なにやってたのかとか!」

「は?昨日の放課後、って……!」

 

まさかアレを聞かれてたのか!?

やばい、とにかく誤魔化せ!

 

「い、いや、別になんでもなかったっつーか、アレだ、世間話っつーか」

「ハ!あれがただの世間話なわけないでしょ! いいわ、じゃあ聞き方を変えてあげる」

 

まずっ、マジで聞かれてた!

なにやってんだ私!盗み聞き対策ぐらいしとけよ!

 

「千雨!あんた、安藤と付き合うことにしたの!?」

「…………。……はあ?」

 

付き合う?私が?安藤(ヘンタイ)と? なんであの会話からそんな勘違いをして……まさか。

 

「もしかして、見てただけか? 話は聞いてねーのか?」

「そうよ!だけどそれで充分! 男子と女子が倉庫裏で密会してて、赤くなって頭下げたりすることなんてそれぐらいしかないじゃない!」

 

う、ん?そんなことしてたっけ……してたな。で、こいつらはそれをどっか遠くから見てた、と。

 

「勝手に見ちゃったことはごめんなさい、アリサちゃんたちが『こいつは怪しいわ!』って無理やり……」

「とか言ってすずかもしっかり見てたでしょ!千雨が安藤と手を握るとこも!」

 

は、はぁ……。よかった、ただのマセガキの早とちりか。これならまだ誤魔化しようがある。

 

「ちげーよ。私とあいつはそんな関係じゃねー」

「嘘言うな! じゃああの手に持ってたカードはなんなのよ!」

「……余り大きくは言えない話だけどよ、寮に住んでるやつにラブレター渡してくれって頼まれたんだよ。そいつが誰かは……まあそこはあいつのプライベートだから言えねーけど」

「へぇ、そうなんだ」

 

言い訳が通じたのか、月村は得心したように頷いてる。まあ、単なる告白にしちゃ長話だったからな、どこか違和感はあったんだろ。

……さて。爆発3秒前、2、1……

 

「うがーーっ!それならそーと早く言いなさいよーーっ!? 勘違いって、ああ恥ずかしい恥ずかしい!」

「いや、弁明する時間もなかったんだけど」

「うっさい! ていうか勘違いさせるような行動してた千雨が悪い!」

「それは仕方ねーだろうが!盗み見てたお前らが悪い!」

 

バニングスが顔を真っ赤にしてズビシと私を指し、私がそれに反論して、月村が苦笑しながらバニングスを宥める。一年続いたいつもの光景に、チラチラとこっちを向いていた教室の視線がなくなったのを感じる。

とりあえずこれでよし、っと。安藤の名前が出たけど……まあ一応こいつらも気を使ってたのか小声だったし問題ないだろ。どっかから漏れてたら精々いい案山子になって貰おう。

 

「お、おはよ〜……。な、なんとか間に合ったの……」

 

お、来たな今日の主役。予鈴2分前、寝坊した時の登校時間ジャストだ。バニングスたちと一緒じゃなかったから風邪の可能性も考えてヒヤヒヤしたぜ。

 

「あ、なのは〜!聞いてよ昨日のアレ、私たちの勘違いだったんだって!」

「にゃ!?そうなの千雨ちゃん!?」

「あーはいはい、休み時間に詳しく話してやるから先ホームルームな。ほら、先生来たぞ」

「うー、わかった!約束だよ!」

 

……さて、これからだ。

私の席は教卓から見て左寄りの奥、高町の席は右寄りの前側だ。高町の席は私からはよく見えるし、神城と宮守の席からも見えるはず。気が付けよ……!

 

(ん、なんだろ?)

 

よし!まず第一関門突破!

あとはそれを机の引き出しから取り出して、中身に気付くかどうかだ。出来れば神城たちも気がつけば文句なし……さてどうだ?

 

「……にゃっ!?」

「高町さん?どうかしましたか?」

「にゃ、にゃんでもないですっ!」

 

いよっし、完璧!これでクラス全員に印象付けられた!

あとは小芝居を打つだけ、そこでボロを出さなけりゃミッションクリアだ!

 

「……はい、皆さん居ますね。それじゃあ、今日も1日頑張ってくださいね。じゃあ明智さん、号令をお願い」

「きりーつ、れーい、ちゃくせーき」

『よろしくお願いしまーす』

「あ、アリサちゃんすずかちゃん千雨ちゃん! ちょっと来てなの!」

「なによー、何か変なものでも入ってた?」

 

さも呼ばれたから席を立ったかのように、慌てた様子の高町の元へと向かう。ここまではいつも通り、誰が見ても自然だから問題ねー。

そしてこっちもいつも通り、バニングスはからかい半分に話しかけてるが、それビンゴ。ただし、高町がおずおずと持ち上げたそれ、引き出しに入ってた物は不審物なんかじゃなく……白い便箋(ハートのシール付き)。

 

「な、なっ、なっ、ななななな……!」

「あの、や、やっぱりこれって……」

「ラブレター、だな」

「なんでよーー!千雨が違ったと思ったら次はなのはかーーっ!あたしは結局抜け駆けされる運命なのかーーっ!?」

「あ、アリサちゃん落ち着いて!」

 

いや、小2だろ?抜け駆けとか気にするには早すぎるんじゃねーか? アラサーとかならともかく、私らはピッチピチの一桁だぞ?

 

「それで、なのはちゃんは中身は読んだの?」

「う、ううん、まだだけど……」

「うー、さっさと読みなさいよ!あたしたちで壁作っとくから一人彼氏持ちのリア充になればいいんだ!」

「バニングスの意見はともかく、私もさっさと読んだほうがいいとは思うぞ。もしかしたら呼び出しの手紙で、気がついたら時間過ぎてたとかあるかもしれねーし」

「う、うん。そうだね!」

 

手紙を隠すように固まって、高町が封を開ける。バニングス、あと意外と耳年増な月村も興味津々にそれを覗き込むが、私は一人盗み見ようとするバカを警戒するように周囲を見渡した。あれだけ騒いでたから今や注目の的だ、もちろん神城たちターゲットも含めて。

 

「……うっへぇ!なにこれ気持ち悪っ!」

 

静まり返った教室で、バニングスのオブラートを剥がしてカプセルを割ったような苦い悲鳴はよく響いた。当然、クラスメイト全員がすわ何事かと一斉に視線を強くするわけで、ここの機を逃さずに私が代表して聞きだす。

 

「ん? どうしたんだ?」

「ちょっとこれ見て見なさいよ」

「ん、つってもただのラブレターじゃ……?『あなたをいつも見守っております』……『危険があればすぐに駆けつけ敵を薙ぎ倒しましょう』……『私は最強です、決して誰にも負けません』……『全員幸せにしてみせます』、だあ? なんだこれ、妄想癖のストーカーか何かか?」

 

まあ、実際のとこは安藤にそれっぽく書かせたもんなんだけどな。予想以上に気持ち悪く書けてて、知ってた私でさえ鳥肌が立ったぞ。

 

「でしょでしょ!?きっもち悪い! なのは!心当たりはないの!?」

「え、うぅん、ちょっと分かんないかも」

「でも明らかにヤバイわよこいつ!しかも自分で神に愛された男って書いてるのよ!?絶対に危ないって!」

「うん、これはちょっと心配かな。恭弥さんたちにも相談したほうがいいと思う」

「そうよ!なんならパパに頼んでボディーガード雇おうか!?っていうかそうしなさい!」

 

もはやこいつらにとって一大事だ。机に入ってたラブレターがまさかのストーカーからの手紙だったんだから。これでこいつら自身の警戒心も上がる。それは高町たちだけじゃなくてこのクラスの転生者以外全員同じ考えだ。これならいくら力があっても迂闊に近づけねーはず。

それと、神城たちからしたら他の転生者が送った可能性に思い至るだろう。わざとそうした文章にするよう指示してるからな。安藤は容姿の特典を貰ってないから気付かれてない、女の私を除けば男の転生者と見た目で分かるのはあいつらだけ。こんなことがあったら、お互いがお互いを牽制し合って高町たちに手を出すどころじゃなくなるはずだ。

 

「ち、千雨ちゃんもそう思う……?」

「ったりめーだ。コレ、誰が見たってそう言うぞ。最低でも送り主が分かるまで一人で帰るの禁止な、バニングスたちもだ」

「え、わたしたちも?」

 

そうするために安藤に入知恵してるからな。

 

「この手紙には『全員幸せに』って書いてあんだろ。高町たちを含む全員ってことは……」

「あ、アリサちゃんとかすずかちゃん、千雨ちゃんもってこと!?」

「だろうな。私は寮住まいだから行き帰りの防犯もしっかりしてるけど、街中歩くお前らはそうじゃねえ。家の人間について貰うに越したことはない」

「……そうね。お昼にでも鮫島に連絡しとく」

「わたしもお姉ちゃんに電話しておかなくちゃ」

 

やっぱりお嬢様二人は行動が早い、慣れっつーのは恐ろしいな。高町なんて未だに混乱した顔してるぞ。

 

「ねーなのはちゃん、それ机に入ってたんでしょ?」

「え、うんそうだよ」

 

ん?えーと、こいつの名前は……そ、そ、左右田(そうだ)だったっけ? クラス替えなんて初めての経験だからまだ覚えきれてねーんだよ、文句言うな。

 

「私見ちゃったんだけど、今朝、安藤君が机の中を覗いてたっていうか……」

「えっ!?」

 

はぁっ!? 朝イチで入れさせたの見られてたのか!? ヤバイ、安藤に疑惑が集まってる!どう言い訳すればいい……!

 

「あ、安藤くんは違うと思うよ!」

 

つ、月村……?

 

「すずかちゃん?」

「あのっ、理由は言えないけど、でも安藤くんはなのはちゃんにこんなことしないと思う!」

「……そうね、千雨もそう思うでしょ?」

「え、あ、ああ」

 

そうか。こいつらの中だと安藤は『寮に住んでる誰か』に恋い焦がれてんだ。高町をストーキングするワケがねえのか。

 

「じゃあなんで安藤は高町の机を見てたんだよ!」

「そ、それはだな……」

 

っ! 神城のやつ的確なとこをついてきやがる、これじゃあ私らがいくら言っても意味がねえ。

バニングスたちが擁護してんのは、私のついた嘘がこいつらの中でうまく噛み合っただけだ。内容的に言い振らせるもんでもねーし、もし話せてもウラを取られりゃすぐバレる。

頼むぞ安藤、うまく誤魔化してくれ!

 

「……朝、先トイレ行くために教室の前を通ったんだけどよ。誰かが高町の机になんかしてたから、気になってちょっと見ただけだ!」

 

! 上手い!それなら確かに覗いててもおかしくねえ!

 

「誰かって誰だよ! っていうかならなんでその時どうにかしなかったんだ!」

「……それは無理じゃないかな」

 

左右田も気付いたか、神城の指摘には無理がある。

 

「この部屋、朝早くに扉から見ると太陽がすごく眩しいの、人の顔なんて分かんないよ。私も教室に入ってからやっと安藤君だってわかったし。

それに、その封筒に入ってたらラブレターだと思ってしまい直しちゃうよ。中身なんて分かんないんだし」

「うっ、そ、そうだな」

 

よし!神城も引き下がった。被害者の親友の月村と目撃者の左右田から擁護されたおかげで、安藤への疑念も100%じゃねーけど殆どなくなってる。結果的にだが『誰か分からない男』の存在を印象付けられて良かったのか?

 

「って、もう授業じゃない! 何も準備できてないっ!?」

「アリサちゃん落ち着いて、まだ間に合うから!」

「まあ、そんなわけで今はここまでだ。高町、これ先生に見せても良いか?」

「う、うん。大丈夫」

 

なんかまだ混乱してるみたいだけど、今は時間がねえから後回しだ。次の休み時間にでも昨日のこと話せばなんとかなるか?

 

……はぁ。疲れたけど、一応目的は達成できたか?

あと一年、何も起こらなけりゃ良いんだがな……。




「ねぇ、なんでなのはだけだったんだろ? 私たち全員の机に入ってなくちゃおかしくない?」
「……さてな、一番与し易いと思ったんじゃねーか?」
「一番組安い? 何それ」
「……押しに弱いってことだ。子供にゃ早かったか」
「千雨も同い年じゃない!」
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