「美保鎮守府NOW」(第10部)   作:しろっこ

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提督は艦娘たちのいでたちに度肝を抜かれる。しかし陸軍司令は意外にも……。


第11話:<壁の無い世界>

『めでたいんですかぁ』

 

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「美保鎮守府NOW」(みほ10)

 第11話:<壁の無い世界>

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 提督が来賓室の窓から見たものは浴衣を着て敷地内を散策する艦娘たち。その先頭は金剛、そして次がちょっと手馴れた感じの青葉。続けて、あまり着慣れない感じで恥ずかしがっている川内だ。

 

 ざわついているのは女性隊員たちがその周りにぞろぞろと出ていること。

 

提督が心配するのは、男性隊員がこれを見たら騒ぎになるぞ……と思ったら時既に遅し。別棟でも騒ぎになっていた。

 多少のことではビクともしない提督だったが、さすがに陸軍で騒ぎを起こしたらまずい……真っ先に元帥の顔が浮かぶ。

 

 だが提督がどう考えても、あのジジイが鼻の下を伸ばして大喜びしている絵しか思い浮かばない。今は緊張する場面なのに顔がニヤけてしまう。

 

 彼が必死に頬を押さえていると陸軍司令の姿が下に見えた。提督は取り急ぎ階下へすっ飛んでいくと陸軍司令のもとに近寄った。

 

「いやぁ、その……済まない」

 

 頭をかきながら慌てて近寄ると陸軍司令は腕を組んで……意外にもニコニコしていた。提督の姿を認めた彼は和やかに言った。

 

「やはり大和撫子は和装ですな」

「はぁ?」

 

陸軍司令もまたラフな格好だったが、彼は艦娘たちを指して言った。

 

「あれは別に制服ではありませんよね?」

「まぁ……そうだが」

 

冷や冷やしていた提督だったが陸軍司令が意外と喜んでいるのでホッとした。

 

 しかし解せないのは金剛たちだ。何で浴衣なんか持ってきているんだよ? おまけに今、ここでそれを着る必要があるのか?

 

「hey! darling」

 

 悶々としていた提督に金剛が手を振る。彼は思わず脱力した。気楽な奴め……そこで彼は再び度肝を抜かれた。

 ケリーとPOLAまで浴衣着ているぞ。おいおい、いったい浴衣を何着持って来たんだよ!

 

 半分呆けた顔の提督に、金剛が近寄ってきて説明する。

 

「ケリーは私のスペア、POLAのは近所の人に借りたんだヨ」

「はぁ? 何だよ『借りた』ってのは?」

 

だが提督の気持ちを察したのか金剛は口を尖らせて言う。

 

「女子は浴衣大好きなんだヨ! チョッとでも着るチャンスがあったら、何処だろうと逃さないヨ!」

 

 いや、それはお前だけの価値観であって川内辺りはどう見ても金剛に巻き込まれているとしか見えない……提督は呆れた。

 

 それでも女子、特に艦娘が浴衣を着てしまえば似合うのは事実である。当の川内もケリーたちも、そこそこ嬉しそうだ。

 

『あれは何ぃ、ライトですかぁ?』

 

 突然POLAが素っとん狂な声を上げる。見ると……蛍だった。ケリーが説明をする。英語なのでよく分からない。

 

『それは蛍よ……この季節、日本の地方では良く見かける昆虫ね』

『へぇ、ホターリーですか? 美味しいのかなぁ』

『食べるものじゃない、愛でる物よ』

『めでたいんですかぁ』

 

ケリーとPOLAがなぜか英語で漫才をしているようにしか見えない。だが艦娘たちの周りを徐々に蛍が舞い始める。それは幻想的な光景だ。

 

「まあ、こちらに座ってはどうですか?」

 

誰かが持ってきたのだろうか。陸軍司令のそばにイスが二つ置いてある。直ぐに女性職員が団扇(うちわ)まで持ってきた。

 

「や、こりゃすまんな……」

 

少々気恥ずかしかったが、提督は司令と並んで腰をかけた。

 

 艦娘たちも団扇を持ちながら蛍を扇ぐように追いかける。それはまるで一種の舞踏のようでもあり、彼女たちの容姿と相まって幻想的な雰囲気をかもし出していた。

 

 それまでざわついていた陸軍の訓練生たちも軒並み静かになる。艦娘の近くまで出ていた女性兵士たちも次々と腰をかけ始める。

 

 いつの間にか司令と提督のそばに小さいテーブルまで置かれて、お茶が準備されていた。それを手に取りながら陸軍司令は言った。

 

「良いですな……こんな静かな夜は久しぶりです」

 

 見ると遠くの山には月が登り始めていた。その中を蛍が舞い浴衣を着た艦娘たちが団扇で追いかける。何ともいえない風情のある構図だ。陸軍司令が提督に聞く。

 

「艦娘について、どう思われます?」

「どうって言われても……困るなぁ」

 

突然の質問で困惑する提督を見て陸軍司令は笑った。

 

「野暮な質問でしたな……実は私は今日、実際の艦娘たちと初めて間近で出会いました。本当に不思議な兵士たちですな」

 

「そうだね……」

 

司令は、お茶をすすりながら言った。

 

「私は陸軍の中でもかなり放任主義ですけどね……それでも今夜ほど訓練生たちを自由にさせたことはありません。それはきっと艦娘たちの雰囲気がそうさせたのでしょう。それでいて嫌な感じが無いから不思議です」

 

 それは提督も同じ心地だ。艦娘は軍人でありながら何者にも捉われない自由闊達さがある。そして今は月夜に舞う蛍と踊っているように見える。

 

 かと思えば昼間の川内のように獰猛(どうもう)な姿を見せることもある。艦娘とは日本人の感情を更に極端にしたような存在なのだろうか?

 

 陸軍司令は呟くように言った。

 

「今宵のわが部隊のように指揮官が艦娘を受け入れたら、その下の者も自然に彼女たちを受け入れるでしょう。たた逆もまた然りです」

 

提督はうなづいた。

 

「ああ、そうだろう」

 

「ですから気を付けて下さい。艦娘の自由な雰囲気を嫌う人種も世には、まだたくさん居るでしょう。それは陸軍や海軍の別を問いません」

 

「……」

 

提督は相変わらず洞察力の鋭い司令だと思った。

 

「艦娘は日本の魂そのものだと思います。出来れば海軍だけでなく陸軍とも交流をしていただければ……ああ、これはあくまでも私見ですが」

 

 司令は頭をかいた。ただ彼のその壁の無い性格が、まさに艦娘を受け入れることが出来た一因だったのだろうと提督には感じられた。それは彼自身もまたそうだと言えるのだが。

 

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
(ごません様とのコラボ企画作品)
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ10」とは
「美保鎮守府:第拾部」の略称です。
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