「美保鎮守府NOW」(第10部)   作:しろっこ

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最初に美保鎮守府の概要が説明され、続いて質疑の時間となるが、そこに呼ばれたメンバーは……


第20話:<説明と隔たり>

「オブザーバーを呼んでも宜しいでしょうか?」

 

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「美保鎮守府NOW」(みほ10)

 第20話:<説明と隔たり>

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 鳳翔さんが退出した後、美保司令は相変わらず後ろの空いた席の横に立ったままニコニコしている。彼のホームグラウンドたる美保鎮守府での自由さは、このレクチャーの進行具合からも見て取れた。

 

まずブルネイの青葉が挙手をした。

「美保司令、質問宜しいでしょうか?」

 

「どうぞ」

「美保鎮守府ご紹介との事ですが、どのような進行形式でしょうか? たとえばスライドか視覚資料を使うのか、板書なのか、あるいは直接講義形式でしょうか?」

 

美保司令は微笑んだ。

「えっと、どれが良いですか?」

 

 その言葉に一瞬ギョッとするブルネイの艦娘たち。『決まっていないんだ』と呆れたような肩透かしを食らったような顔をしている。それはケリーも同じだった。

 

 金城提督にとっては今までに多種多様な提督や司令官たちを見てきた。今さら美保司令がどんなタイプのレクチャーをすると言っても別に驚かない。ただブルネイの彼女たちには他の提督のタイプは知り得ないから想像を絶するだろう。

 

「darling、どうスル?」

気を利かせた金剛が小声で耳打ちしてくる。ここはオレが口を挟まないと話が前に進まないよな。提督は軽く手を上げて、そのまま聞いた。

「時間は、どのくらい取れる?」

 

美保司令は相変わらず笑顔で答える。

「そうですね……いま午前11時ですから午前中は1時間ってところです。もちろん不足するでしょうから午後も数時間、取りましょうか?」

 

意外に美保司令もアバウトな性格だな。海軍の指揮官はそんなタイプが多い。提督は言った。

「それなら各自が自由に質問を出し、そちらで答えてもらうという自由討議形式で構わないだろうか?」

 

「はい、それで行きましょう」

即答だが安易だな。

 

 その時ドアをノックして「失礼します」と入ってきたのは鳳翔さん。響と雷が補佐的にコーヒーを配って回る。こういう動作は得意そうな第六駆逐隊だ。

 

それを見ながら美保提督は言った。

「まずはうちの副司令からざっと美保鎮守府の概要を説明して貰いましょう」

 

 彼の目配せを受けて祥高が立ち上がると何かのリモコンを操作する。天井のプロジェクターが点灯し前の壁にはスクリーンが下りてきた。同時に霞が手際よく資料を配り始める。

 

 第六駆逐隊と鳳翔さんが会釈をして退出すると同時にカーテンが自動でスライドし部屋が暗くなる。祥高がレーザーポインタを持ってスクリーンに映し出された年表に説明を始める。

 

「手元の資料に概要は書いてございます。当鎮守府は海軍・第三次:鎮守府再配置計画に基づき設置されました」

 

見ると早くもユラユラと『舟を漕ぎ』始めたのはPOLA、続いて金剛。祥高は意外と『癒し系』の緩い喋り方をするので、なおさら危ない。

 

「日本海西方、特に舞鶴鎮守府の艦娘だけでは航続距離の関係でカバーし切れない鳥取県西部から島根県の沿岸部が中心です。ここの守備を担当しています」

 

 祥高はスクリーンの地図を示す。だが米海軍のケリーもやや微妙な情勢になってきた。さすがに青葉はメモ取りながら必死に聞いている。提督も……ちょっと微妙。

 ここで意外なのは川内。夜戦が得意な為か知らないけれど薄暗い室内で目を爛々と輝かせて聞いている。良いぞ。

 

「設置当初この鎮守府において山陰海岸特有の入り組んだ海岸線や遠浅の地形が多いこと考慮し大型艦や重巡よりは装備運用面で軽巡、さらに運動性能で小回りの利く駆逐艦が重点的に編成されてました」

ここで設立当初の艦娘の一覧……50人も居ない表が示される。

 

だが気が付くと提督も徐々に意識が遠のきつつあって危なかった。彼が最後に覚えているのは

「当地は埋立地を開削したため水深が浅く一般的な艦艇が入れないため、かなり規模の小さな鎮守府となっていますが逆に、それがメリットでもあります」

 

というくだり。その後しばらく呪文のような講義の言葉が、まどろむ者たちの脳内を漂っていた。彼らが気が付いたのは「……以上です」という祥高の締めの言葉だった。

 

 人間(艦娘)は、なぜか居眠りをしていても聴覚神経はどこか覚醒しているらしい。潜在意識か何か知らないが区切りの良い単語には敏感に反応する。

 POLAと金剛を除いたメンバーはそこで『覚醒』した。未だ『浮上』しない二人について、それぞれの『相方』が慌てて起こそうとしすると意外にも美保司令は手を振って『良いよ、そのままで……』と言った。

 こういう場合、激怒する指揮官と、そうでないパターンに別れる。美保司令は後者であるらしい。

 

 説明が終わってもカーテンはそのままで部屋のライトだけが点灯された。講義の間も立ったままで座っていなかった美保司令。後ろの方から言った。

「概要は以上です。これから質疑に入ります。ここでオブザーバーを呼んでも宜しいでしょうか?」

 

もちろん誰も異議は無い。司令が副司令に合図をすると直ぐにドアをノックする音がして数名の艦娘が順次入ってきた。その姿を見て提督はギョッとした。

 

 部屋に入ってきたのは美保の青葉と金剛、赤城と大井だった。

 会場の雰囲気と提督の心情を察したのか轟沈していたブルネイ金剛は、ここで再浮上。口から半分流れたモノを手で軽く拭いながら辺りをキョロキョロと見回す。

 彼女は直ぐに美保の金剛を発見して小さく手を振る。美保の彼女も同じく手を振っている。この二人はどの鎮守府でも同じような性格だから不思議だ。

 

 オブザーバーの最初の二人、青葉と金剛については、どの鎮守府においても『生き字引』であり『重鎮』とも言える立場が多い。オブザーバーとしても納得できる。

 

 ただ提督が気になったのは赤城と大井だ。それでも赤城は主力空母としての位置も多いから分かる。問題は大井だ。

 

 気になる『彼女』が来たか……まさか『娘』のことに触れるのだろうか? 仮にそうだとすれば、それ以前に美保司令と祥高も自分の『娘』について言及するに違いない。提督は鳥肌が立った。艦娘の2世?

 

 提督の静かな緊張の高まりを敏感に察した金剛は、美保の金剛に手を振っていた手を慌てて降ろした。

 

「ごめんね、darling」

小声で謝罪する彼女。

 

だが提督は金剛の顔を見ながら低いトーンで言った。

「いや気にすンな。美保司令も『自由討議形式で構わない』って言ってたろ? 彼の雰囲気だと深刻な内容もサラリと言ってのけそうだ。そういう『心の準備』は、しておけよ」

 

「oh」

分かったのか分かっていないのか微妙な反応を返す金剛。

 

「これは……戦いだね」

川内が呟く。この子は妙に鋭い。その表現はアレだけど言葉の本質は間違っていない。ケリーも慌ててメモ帳を取り出している。青葉はとっくにスタンバイOKだ。なおPOLAは未だ轟沈中。

 

 これは現代と過去を埋める重要な情報交換の場になるのだろうか? あるいはまた適当に、はぐらかされてしまうのか? そんな戦いであると提督には感じられた。

 そして元帥の顔が改めてチラチラと浮かぶ。

 

『ジイさん、あんたの意図は何だ?』

彼は心で問いかけた。もちろん返事は無い。

 

美保司令は相変わらず立ったまま全体を見渡している。ほぼ全体が落ち着いたなというタイミングで彼は、おもむろに言った。

「では、自由討議形式で始めましょうか?」

 

時の壁はオレに何を悟らせようとしているのか? 提督は思わず自問した。

 

その時だった。美保司令が言った。

「祥高さん、アレ持ってきているかな?」

 

「アレ?」

提督は気になった。祥高が頷くと霞が何かを持ってきた。

 

 

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
(ごません様とのコラボ企画作品)
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ10」とは
「美保鎮守府:第拾部」の略称です。
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