「美保鎮守府NOW」(第10部)   作:しろっこ

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艦娘たちは美保鎮守府の小さな食堂に入った。そこは大山の良く見える眺望の良い場所だった。


第24話:<『自然』な彼女>

 

「……アタマをニュートラルにしてみたら?」

 

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「美保鎮守府NOW」(みほ10)

 第24話:<『自然』な彼女>

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 ブルネイと米軍の艦娘たちは1階の食堂に入った。そこで直ぐに声が上がる。

「わぁ、ここも小さいネェ」

「ダメだよ、うちと比べちゃ」

 

ブルネイの艦娘は口々に感想を言う。POLAとケリーも『アメリカンネイビー』だの『カフェテリア』とか言っているから米軍のものと比べているのだろう。

 

狭いとは言っても美保鎮守府の食堂からの眺望はなかなかである。足元まである大きなガラス戸の外側はウッドデッキと芝生になっていて、そのまま中庭を通って埠頭へ出る事が出来る。

 

埠頭から先には鎮守府港湾部の海面が見え、更に向こうには堤防と簡易灯台。そして左右に広がる大山(だいせん)は青い日本海の上に浮かんでいるようだ。美保鎮守府はそのコンパクトさから箱庭を髣髴とさせる。

 

 最初は食堂の小ささを気にしていた艦娘たちも窓の外に広がる眺望を見た途端、感嘆の声を上げて静止してしまう。だいたい皆、同じような反応を示すのが面白い。米軍の二人も同じだがPOLAは盛んに『ボーキフジィ』と繰り返している。

 

「皆さんようこそ……そちらの窓際のテーブルにお座り下さいね」

鳳翔さんがやってきて案内をする。霞も英語で米兵に案内をして、それぞれテーブル席へと着席した。

会議に参加していた美保の艦娘たちも金剛は同じテーブルに、青葉と大井は隣のテーブルに着席をした。二人の金剛は早速、近況報告のような雑談を始める。当たり前だが外見も性格も良く似ている二人だ。

 

 改めて食堂の壁を見ると時間割のような一覧表が張ってある。ここでは食堂は部隊や班ごとに時間差で利用するようになっているらしい。確かに、この広さで一度に利用することは難しいだろう。お昼の時間帯だが視察メンバー以外は半分程度しか利用者が居ない。

 

「あまり凝ったメニューはお出し出来ませんが……」

鳳翔さんは、そう言いながら和風サラダと幕の内のような和定食を出してきた。ここでも第六駆逐隊のメンバーが配膳を手伝う。提督はメニューを見ながら『まあ普通かな……』と思っていた。

 

 米軍メンバーたちは和食というだけでとても喜んでいるようだがブルネイの艦娘たちにとっては提督のBarがあるから舌は肥えている。

 

「特に号令はかけませんから、和定食が配膳された方から順次召し上がって下さいね」

鳳翔さんの言葉を霞が英訳し、各自昼食となった。よく見ていると艦娘なのに手を合わせたり『頂きます』と唱和したりそれぞれだ。艦娘ではないケリーは手を組んでいる。クリスチャンなのだろう。同じように手を組んでいるPOLAが微笑ましい。

 

そういえば司令と祥高の姿が見えないなと提督は思った。どこかで打ち合わせでもしているのだろうと、あまり気にかけなかった。

 

「ねえdarling、食べないの?」

「ああ……」

 

ついついジイさんの『宿題』ではないけど美保鎮守府について考えてしまう。まあ良いか。あまり根を詰めるとメシが不味くなる……そう思いつつ軽く手を合わせてから食事に箸をつける提督だった。

 

するとブルネイの艦娘たちが『意外に美味しい』という感想が聞こえてくる。そりゃ鳳翔さんだから基本は美味しいだろう……お世辞も入ってるのかな?

そう思いつつ提督も和定食の天ぷらに箸を付けてみる。よく見ると野菜の天ぷらだ。カボチャやナスを、そのまま揚げている。シンプルだな。

 

普段の提督はブルネイに居る時は自分で調理することが多い。だから今回のように遠征や出張があると食事時は妙に落ち着かなくなる。

 

 つい素材を見たり自分だったらこうするかな……と考えてしまう。

 

だから天ぷら一つを見ても箸で表から裏へひっくり返してみたり分析してしまうのだ。

 

 今回も穴の開くほど天ぷらを見つめてからゆっくりと口に入れた。すると彼の横に座っていた金剛が対面の金剛との会話を中断して彼を小突く。

「darling」

「なんだ?」

 

「たまにはサ……アタマをニュートラルにしてみたら?」

「お……」

 

『オレはこれが楽しいんだからさ……』と言いかけて止めた。こいつの言うことも一理あるかも知れない。見ると対面の金剛も軽くうなづいてる。

 

「そうだな……」

そう言うと彼は努めて心を白紙にして残りの天ぷらを口の中へ放り込んだ。他の艦娘たちは楽しそうに談笑しながら食事を進めている。それを見ながら提督は金剛の言うとおり、たまには非日常的な環境で『素』の自分を見詰めることも悪くは無いかなと思った。

 

 最初に口にしたカボチャの天ぷらにしても、奇をてらったことは何一つしていない。ただ地の野菜なのだろう。素朴ながら地の香りを伝えてくるような、生命力のようなものを感じた。地産池消と言うが天ぷらも本来は現地で取れたものを現地で食べるのが一番だろう。

 よく見ると他にも小魚やイカリングの天ぷらが添えてある。これは近くの境港という漁港で取れたものを直ぐに持ってきたのだな。そう思えばこの食事も、ここで戴くから最高のものとなり得るのだ。他所へ持って行けば、その生命力が失われる。

 

 なぜかその瞬間、あの元帥の『宿題』という言葉が思い浮かぶのだった。

 

「そうだよdarling」

「え?」

横に居る金剛の顔を見ると、いつになくそこには『自然』な彼女が居た。

 

 戦場に赴くでもない、呆けているのでもない。そこにいるのは部下であり兵士であると同時に自分の最愛の妻である一人の女性の姿だった。純粋に自分に寄り添い心配し、時には耳の痛いことでも躊躇無く指摘できる壁の無い関係。普通の人間と違って艦娘は純粋であるがゆえに、すべての内容がより強調されるのだ。

 

「どうしたのdarling? 私は天ぷらじゃないヨ」

あまりにも凝視したためだろう、そんな冗談めいた返しをしてきた彼女。対面の金剛を始め、それを聞いた周りの艦娘たちも笑う。意外にも食事の場が急に和やかな雰囲気になった。

 

まずい……思わず気分が高揚して金剛を思いっきり抱擁したくなってしまった。すると彼女は人指し指を立てて左右に振りながらなおも言った。

「darling、Noだヨ。時と場所をわきまえようね」

 

これでまた大爆笑になった。ケリーがPOLAに通訳して時間差で彼女は手を叩いて喜んでいる。そのとき彼はフッと感じた。こういう雰囲気になるのはやはり、ここ美保鎮守府を大きく包む美保司令と副司令のゆえでは無いか?

 

 まさかとは思うが元帥の言う『宿題』の一つはこれか? 違和感を感じたのは美保鎮守府ではなく、そう思い込んでいた自分自身ではなかったのか? 何となく金剛に教えられたような気がした。

 

違和感……特にそれを感じたあの美保司令も、ひょっとしたら彼が変なのではなく自分の方が単に構えていただけなのかも知れない。

 

そう考えた瞬間、美保司令と祥高が食堂に揃って入ってきた。敬礼をする他の艦娘たちに軽く手を上げながら彼らは近づいてきた。

 

「お待たせしました。司令部にいるといろいろ連絡や報告が多いですからね」

かれは苦笑しつつ、祥高と共に着席した。

 

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
(ごません様とのコラボ企画作品)
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ10」とは
「美保鎮守府:第拾部」の略称です。
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