「美保鎮守府NOW」(第10部)   作:しろっこ

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徐々に明らかになる美保鎮守府の位置と、そこに関わる元帥の悪知恵?に驚く提督だった。


第25話:<お釈迦様の掌>(改)

 お釈迦様の掌の上で踊っている孫悟空

 

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「美保鎮守府NOW」(みほ10)

 第25話:<お釈迦様の掌>(改)

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 美保司令たちは提督の向かい側の空いている場所に着席した。直ぐに鳳翔さんと第六駆逐隊の電チャンが司令たちの食事を配膳する。司令は軽く手を合わせると箸を取った。

 

「どうですか? そろそろ慣れましたか?」

開口一番、美保司令が聞いてくる。

 

「ああ……ただ妙に噛み合わない感じはあるけどな」

これは具体性のない答えだと提督は思った。だがそれを聞いた美保司令は軽くうなづいた。

 

「そうでしょうね。実際、初めてこの鎮守府に来た人は皆さん最初は同じようなことを仰いますよ」

提督は適当に答えたつもりだったが意外にヒットしたようだ。そこで彼は急に美保司令に質問したくなった。

「ぶしつけな質問で悪いけど」

 

「どうぞ」

美保司令は箸を動かしながらニコニコしている。

 

「『時間の壁」と言う期間はあったにせよオレが現在のお前を見ていると去年ブルネイに来たときに比べて、かなり違った印象だ。お前って何か……あったのか?」

提督は一気に問いかけた。

 

 少し表情を変えた彼は副司令である祥高を見た。彼女は何かを目配せをした。それを受けて小さくうなづいた司令は答えた。

「その質問には、いずれ必ずお答えしますが……今この場では、お答え出来ません。その辺りは、ご理解頂けますか?」

 

「あ、ああ……」

また肩透かしか。何か事情はあるのだろうが……ま、軍隊なんてそんなものか。

 

提督がそれ以上の質問は諦めたのを見て美保司令は淡々と言った。

「実は先ほどまで私たちは元帥閣下と打ち合わせしてました」

 

「ブホッ!」

提督は思わず吹いた。

 

『きゃー!』

提督が吹いた先の射程距離内には二人の金剛が居て、その食事にも被弾したようだ。しかし二人とも『やだぁ』と言うだけで提督の唾くらいは気にしていない模様。何事も無かったように食事を続けている。おいおい、お前たちってさすが猛者(もさ)だな。

 

提督がダブル金剛に感心していると司令は続けた。

「もちろん、電話ですが」

 

いや、それは分かる。提督はコップの水を含んでから言った。

「じゃ、お前たちはあのジジィ……いや元帥を知っているのか? 当然オレたちのことも?」

 

「はい。もともとこの美保鎮守府の設営から私の司令としての着任、そしてシナ侵攻に伴う一時的な解任と、再び私がここに赴任するまでの流れは、すべてご存知ですよ。そもそも軍令部で計画された作戦には全部、閣下のチェックが入っています」

 

やられた畜生! やっぱりあのジジイめ、とんだタヌキだ。一瞬怒りがこみ上げたが……いや? ちょっと待て。

「つかぬ事を聞くが、この現代の時間で去年『若い』お前がブルネイに来た演習の企画も、もしかして元帥が知っている?」

 

彼は「はい」と、うなづいた。

「ですから全ての作戦行動は把握されている……もっとも私の演習の場合は特殊現象が起きましたけどね」

 

司令はニヤリとした。そのとき彼は初めて人間らしい表情になった。ひょっとして今までのはポーカーフェイス?

 まあそれは置いといて……確かにアレは特殊過ぎる現象だ。意図的に時間移動できたら、どんな兵器にも勝るよ。

 

 しかし……まるで、お釈迦様の掌の上で踊っている孫悟空になった気分だ。どうあがいたところで海軍に居る以上は、あのジイさんの影響から逃れることは出来ないのだ。

 

 そんな提督の気持ちを察したのか美保司令は微笑みながら言う。

「でも元帥閣下がいらっしゃるからこそ私たち美保もブルネイも同じ組織ながら比較的自由に運営出来ているのだとは思われませんか?」

 

その質問に提督はギクリとした。確かに普通の軍隊では、ここまで自由に振る舞うことは出来ないだろう。鎮守府の予算も他よりは多いらしい。そもそもブルネイに来てからは人事がまったく無い。気になった提督は聞いてみた。

「この美保でも……ひょっとして人事異動とかは無いのか?」

 

彼はうなづいた。

「私が着任してからはありませんね。国内外の閣下の影響下にある鎮守府では直轄地として人事権も含め彼の許可なしには何も発令されません。逆に言うと私たち……いや艦娘も含めて美保やブルネイは閣下に守られていると言える訳です」

 

まさか……と提督は思った。

 

「いわゆるブラック鎮守府とは司令官の問題だけではありませんよ。それを任命した軍部が艦娘を理解していないことにあります。現に閣下とは無関係の鎮守府にはブラック傾向が強いと言います。例えば佐世保とか舞鶴とか……」

美保司令は淡々と説明する。

 

「佐世保と舞鶴って?」

位置関係を考えて提督はハッとした。

 

「おいおい、それじゃ美保って、もしかして?」

「やっと気付きました?」

司令は微笑んだ。

 

「両者の中間ですよ。ここは一種のクサビです。実はかつて私が舞鶴で大井を轟沈させたのも……」

そこまで言いかけて彼は口を閉じた。その本人がこちらを見ている。彼は急に話題を変えた。

 

「知り合いの官僚がよく言います。中央は派閥争いで嫌になると。祥高の姉と妹は、そんな場所で艦娘を守るために閣下と協力して頑張っています」

寛代の母親の技術参謀も、そうだったなと提督は思い出した。

 

美保司令は続けた。

「でも元帥閣下も普段は報告をチェックするだけで、あまり細かいことは仰いませんよね。ああ見えて私たちのことだけでなく我が国の行く末や様々な敵対勢力との効果的な戦い方も含めて常に熟慮されていますよ」

 

「そうかなあ……」

ジイさんの人となりを知る提督には、それはにわかには信じ難い内容だった。

 

司令は続ける。

「私のような者を取り巻く個人的な事情もよく把握されていて今回のフィリピン米軍との交流も閣下の後押しがなければ、とても実現しなかったでしょう」

 

「そういえば、そこだよ」

提督は思い出したように言った。

 

「ジイさんの後押しがあったとは言え、あの米軍の特殊な飛行機だって、そう簡単に借りられるモノじゃないだろう? どういういきさつがあったんだ?」

 

するとブルネイの青葉も割り込んできた。

「それはぜひ聞きたいですね。それに司令は……いえ美保鎮守府では、なぜドイツやイタリア海軍とも強いパイプがあるんですか?」

 

「ええ? 米軍だけでなくドイツやイタリアまで? ……って、それはどういうこと?」

青葉に続いて川内も驚いたように話に加わる。

 

彼女たちを見つつ美保司令は少し考えるような表情を浮かべた。

「そうですね……まぁこの場でそれを話すと長くなりますし、その件については美保の組織なども交えて午後の時間、説明しましょうか?」

 

「ああ」

 その時、提督はふと元帥の言っていた『諜報の最前線』という言葉を思い出していた。何かの情報が集まるからこそ国際的なつながりもまた、この美保では生まれるのだろうか? そしてこの山陰という僻地にあるからこそ生まれるメリットもまたあるに違いない。

 

「そうそう、南シナ海のブルネイもシナへのクサビですから」

司令はさらりと言ってのけた。

 

「え?」

「フィリピンとブルネイと、その先まで結んでシナの海洋侵出を食い止めます。敵は深海棲艦だけじゃないのです」

美保司令は淡々と語る。

 

気のせいか元帥の高笑いが聞こえて来るようで目まいがした。悔しいが元帥は本物の軍人だ。

 

「darling、大丈夫?」

金剛が心配する。

 

「ああ、事実は小説より奇なり……だな」

提督は少し放心したように答えた。

 

「darling」

金剛が彼の腕を軽くつかみながら言う。

 

「どうした?」

「ウン、darlingってさぁ、さっきよりすっごくイイ男の顔に成ったヨ……」

 

「やめろ、恥ずかしい」

そう応えながらも悪い気はしなかった。日本海から爽やかな風が食堂に入ってきた。

 

その時だった。司令が急に表情を変え祥高に目配せをした。副司令である彼女は直ぐに失礼しますと言って中座する。

 

「どうしたんだ?」

提督は司令に尋ねた。もしこれが機密事項だったら無視されるかと思ったが彼はあっさりと答えた。

 

「新しい子の着任ですよ。急きょ……副大臣も一緒に来るようです」

「副大臣も?」

「ええ、艦娘好きの変わった人です」

彼は微笑んだ。そう言う割りには嫌がっていない。

 

「本当は明日の便で来る予定だったのですが……早まりましたね」

「このタイミングで?」

提督は腕を組んだ。二人の青葉とケリーは盛んにメモを取っている。

 

「冗談抜きでブルネイの皆さんや、あのオスプレイを早く見たいようです」

「誰が?」

「その副大臣と新しい艦娘ですよ」

副大臣とはまた……ちょっと緊張するな。

 

ブルネイや美保の自由な雰囲気は結局元帥を始めとした多くの人の努力で守られているのだ。そして我々はわが国と周辺海域の自由を守るべきなのだろう。

 

「はあ」

自分が軍人であることを再確認して思わずため息。戦略系は正直、苦手だな。

すると金剛が聞く。

 

「大丈夫? darling」

「ああ、大丈夫だ」

軍隊は組織体、そしてオレには艦娘が居る。急に艦娘たちが頼もしく思えるのだった。

 

その時、海の方からレシプロ機のエンジン音が響く。

 

「私たちの機体?」

川内が言うが……微妙に違う感じだ。

 

すると美保司令が付け加えた。

「ドイツも予定より早く来るようですね」

「はあ?」

 

聞いてないぞ。

何となく美保鎮守府全体が急に慌ただしくなる。美保司令は何かを呟いた後で立ち上がって言った。

「ドイツ浮上します」

 

「浮上?」

一体どうなっているんだ?

 

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
(ごません様とのコラボ企画作品)
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ10」とは
「美保鎮守府:第拾部」の略称です。
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