何だよ? あのジジイは。
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「美保鎮守府NOW」(みほ10)
第28話:<武官来日の背景>
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2階の会議室は午前とはうって変わって満員御礼の状態だ。
13:15からの開始予定は当然遅れて13:30となった。午後のレクチャーには海外武官や艦娘たちの参加は義務ではない。しかし皆ヒマなのか? 何なのか知らないがほとんど全員が入室していた。
例外といえばU-511とリベッチオ及びPOLAくらい。
前者は疲れを考慮したことと美保の伊号たちが手放さなかったから。
後者はいつの間にか酒が入っていたらしくイタリアの二人があっという間に食堂で轟沈していたという謎の理由から。リベが果たして未成年かどうかは艦娘であるため不問である。
多人数のため空調機の効きが少し悪くなっているのだろうか? 室内はやや暑苦しい。副大臣が言った。
「オイ窓は全部、開けてしまおうぜ」
直ぐにイタリア武官が同調する。
「そうねぇ。どうせここには砲弾なんか飛んで来ないでしょ?」
それはどういう理屈か分からない。彼らは率先して空調を切ると窓を全部解放した。さらにご丁寧に会議室の扉と廊下の窓まで全開した。すると気温は高いが海からの風がストレートに入るようになった。
「おお! 海軍はやはり海風の中に身を置くべきだな」
副長官『石見』は腕を組み美保湾を見詰めながら、しみじみと言う。彼女は普段、東京の本省に詰めているから、なおさらそう思うのだろう。
確かに窓を開け放つと美保鎮守府では十分過ぎるほど海風が通る。潮の香りが心地良い。今日は晴天だから大山も良く見えて眺望的にもグットである。
「……」
ただ会議室が満席になった状況には、さすがの祥高も戸惑っていた。
そこで助け舟で美保司令が後ろの席から案内をする。
「えっと皆さん、今日の午前中にはブルネイメンバーへ美保鎮守府に関わる様々なレクチャーを行っていました。基本的には自由討議形式ですが午後も同じ流れで良いでしょうか?」
「異議なし!」
副大臣即答。
本当にお前は副大臣なのか? いや逆に日本人の官僚にしては珍しく軽いノリだ。この中で一番硬そうなのはドイツ武官辺りで次がケリーだろうか? いや美保司令か。
「では早速、良いかな?」
金城提督が挙手をした。
祥高が指名する。
「どうぞ」
彼は座ったまま質問をする。
「オレはブルネイの提督だが今日は本省だけでなくイタリアやドイツの武官まで集っているので聞きたい。何度も耳にするが十数年前にブルネイで起きた攻撃に対する艦娘の『連合艦隊』ってのは具体的にどんなものだったんだ?」
「それは私がお答えしましょう」
祥高が演台で応える。
「当時の資料がどこかにありましたが……霞ちゃん直ぐ出せる?」
彼女が問いかけると霞が端末を操作した。やがて『ブルネイ沖海戦・対シナ』と記した資料がプロジェクターに表示された。当時の簡単な海図と演習の構成から敵のミサイル攻撃を中心とした攻撃の流れと反撃のフローチャートが図示されている。
「ざっと申します。当時のブルネイで量産化技術が確立したことを受け海軍省ではドイツやイタリア等、友好国へ艦娘のデモンストレーションを実施しました」
武官たちは軽く頷いている。
「この際に量産型艦娘への脅威を感じた深海棲艦及びシナが手を組んでブルネイを急襲。一方、帝国海軍の艦娘と視察に来ていたドイツとイタリアの艦娘は協力してこれを打破しました」
今度は美保の青葉たちが頷いている。彼女たちは当事者である。
「実はこの時海外から参戦した艦娘が今日、美保に到着したU-511とリベッチオです。また当時の担当武官も同行していますね」
祥高は一気に説明した。事情が分からないのはブルネイメンバーだけだから仕方がない。
「なるほど……その戦いでドイツやイタリア海軍とパイプが出来た訳だ」
提督が応えると後ろの席から美保司令が続ける。
「厳密に言うと敵には、かなり押されたんですけどね。決定打となったのは急きょ日本から派遣されてきた『戦艦武蔵』の攻撃でした」
「oh! やっぱり武蔵ネ」
ブルネイ金剛が反応する。やっぱり武蔵は連れてきた方が良かったかな? と提督は思った。
美保司令は思い出すようにして付け加える。
「今では武蔵の量産型も増えましたけど……私たちは当時から彼女には何度も助けられています。今日、その武蔵が来られなかったのはちょっと残念ですね」
それを聞いた提督は腕を組んだ。そういえば艦娘の量産化の情報そのものは『現代』のブルネイから持ち出したんだよな。しかもそれを見逃したのがまた武蔵……あいつは金剛以上にラフで本能で生きている所がある。もしこの場に居たら感動のあまり収拾が付かなくなっていたか? いやそれは拙い。やはり連れて来なくて正解だろう。
「何だ、武蔵は来なかったんだァ」
いきなり誰かが廊下を通り過ぎつつ言った……見ると島風だ。そんな彼女は少しニヤリとしたまま金色の髪を翻して何処かへ行ってしまった。
「なに? あのバニーは?」
ちょっと驚いたようにケリーが日本語で聞く。
「あれは駆逐艦島風です。脚が速くて武蔵とは縁が深い子です」
司会の祥高が説明した。
「艦娘も想像以上に個性豊かなのね」
メモを手繰りながら意外に感心しているケリー。
そんな彼女の姿を見て最初に食いついたのは副大臣だった。
「貴女は? ……日本語が堪能なようですが艦娘ではないですね。ええっと米国の武官でしょうか?」
階級章や軍服を見ているのだろう。彼女は直ぐに応える。
「はい。フィリピン米軍所属のケリーです。今は退席していますがPOLAという艦娘を引率してきました」
まあ星条旗と白頭鷲のエンブレムを見れば誰が見ても米軍だと分かるだろう。
「ひょっとしてあの米軍機も?」
副大臣の問いかけに彼女はうなづく。
「はい。私が持ってきたわけではありませんが、あの機体は私の居る部隊のもので、現在は操縦士も含めて美保に貸与されています」
「へえ」
するとイタリア武官が追って説明する。
「そのPOLAは元々イタリアの艦娘なんだけどねぇ。事情があってフィリピン米軍のお世話になっているのよ」
「だがあまり効果なかったようだな」
ドイツ武官が割って入る。
「効果?」
美保司令が問いかけるとドイツ武官は少し微笑んで応える。
「あのPOLAっていう子は相当な飲兵衛らしいぞ。それを治す意図もあるらしい」
さすが諜報部だ。今度はケリーが苦虫を潰したような顔をしている。
だがそれを聞いてもイタリア武官はあっけらかんとしている。
「別にイイのよぉ。アタシは彼女たちには自由に生きて欲しいからぁ」
あくまでもフリーダムな武官だった。提督は再び挙手をする。
「次の質問は……答えるのが無理だったら別に良いんだが」
「どうぞ」
祥高の指名を受けた彼が言う。
「今回、海外の武官が来られたのは日本海軍の招請なのか?」
その質問には、お互いに顔を見合わせる海外武官たち。これには副大臣が挙手をした。
「副大臣、どうぞ」
司会の指名を受けて副大臣が応える。
「えっと……まあそういう所ですよ。言いだしっぺは元帥閣下らしいけどね。その後のお膳立ては実務担当であるオレたち周辺の功績かな?」
『元帥』と聞いてなぜか嫌な予感がする提督だった。あのジジイはきっと何か大きな企(たくら)みがあるに違いない。だが彼は直接は答えてくれないだろうからな。ちょっとカマを掛けてみるか。
「もう少し良いかな?」
提督は挙手をした。
「どうぞ」
祥高が指名する。
「武官の皆さんは細かくは知らないかな……来日するに当たって何か目的とか意図、大義名分は聞いているだろうか?」
再び顔を見合わせる武官たち。
イタリア武官が言う。
「アタシは米軍の新型機のことは聞いているわ。どう? 他の皆さんは」
ドイツ武官も言う。
「私も米軍機のことは聞いている。あとドイツは強制ではなかったが指示されたデータを取りながらUボートで来日して欲しいという意向もあった」
「データ?」
提督が言うと副大臣が割って入る。
「申し訳ない。それ以上は提督と言えどもダメだ」
「ええ?」
訝(いぶか)しがる彼に副大臣は苦笑しながら答える。
「済まないがブルネイの貴殿には閣下からの直接指令で『箝口令』が敷かれているんだ」
「はあ?」
ここで提督は脱力した。何だよ? あのジジイは。こんなところまで?
「大丈夫よ。有能な指揮官ほど悪戯好きなモノよ。アナタ気に入られているのよ」
イタリア武官がそう言うが、これは慰めなのだろうか?
「はあ」
見ると副大臣はニタニタしているし……そうか彼も元帥の仲間だな!
「darling、ダイジョウブ?」
金剛が彼の肩に手を乗せる。
「ああ……、大丈夫だよ」
ここで凹んでも仕方がない。ジイさんだってヒマなんだろう。ジッとガマンして付き合ってやるか。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
(ごません様とのコラボ企画作品)
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ10」とは
「美保鎮守府:第拾部」の略称です。