「艦娘がわが国にもっとも多く出現し、定着している理由は」
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「美保鎮守府NOW」(みほ10)
第33話:<質疑応答>
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改めてオスプレイの前に集合する武官や艦娘たち。その機体を背にしてオスプレイの操縦士である早苗が立った。彼女は艦娘だ。
金剛が言う。
「あれが美保司令の娘デスか?」
「そうだな」
金城提督は、そう応えつつ二人を観察する。早苗は『ほんわか』した雰囲気。逆に伊吹は、ちょっと『きりっ』とした感じだ。
まずは最も熱心に調べていたドイツ武官が挙手をして質問をする。しかもドイツ語訛りの英語なのだ。それでも始めのうちは早苗もニコニコしながら質問に応対していた。すごいな、やっぱり英語はペラペラか。
だがドイツ武官が難しい質問を矢継ぎ早に投げ始めると彼女は徐々に、しどろもどろになってしまって返答に詰まり出した。どうやら専門的なことは弱そうだ。気が付くと東洋人独特の『笑って誤魔化す』パターンになった。
すると今度は彼女の横に立っていた伊吹が『それについては私がお答えします』と言いながら代わって応対し始めた。真面目顔のドイツ武官が浴びせる細かい数値や、かなり専門的な質問にもスラスラと即答している。やや無愛想な印象の彼女だったが数値的なことは強いらしい。よく見れば知的な雰囲気のある子だ。
『以上だ。ありがとう』
しばらくするとドイツ武官の質問が終わった。改めて二人の艦娘は軽く礼をした。質問の嵐を何とかクリヤーして早苗はホッとしたような表情をしている。感情の分かり易い子だな。そんな彼女は伊吹に向かって頭を下げている。伊吹は相変わらず固い表情だが少し笑顔になって「どういたしまして」と返している。
性格は違う感じだがオスプレイのクルーでもあり仲は良さそうだ。
何気なく彼女たちを見ていた提督はふと『あれ?』……と思った。このコンビの感じって誰かに似ている……すると金剛が言う。
「この二人ってサァ赤城と加賀に似てるよね」
「あ、そうか」
それを聞いた提督は思わず反応した。川内も腕を組みながら感心したように言う。
「へえ、それは確かに言い得て妙だね」
青葉がメモを見ながら確認するように言った。
「早苗は司令夫妻……えっと祥高さんの娘ですね。そして伊吹は美保の大井さんの娘。うーん、そうですねぇ、何となく二人とも母親と似ているんでしょうかねぇ? ……いや、父親似なのかな?」
それを聞いた提督は大井の父親が誰か気になった。青葉は補足する。
「美保の大井さんって確か少し前のブルネイで轟沈から『浮上』した組ですよね」
「なんだ? 『組』って」
提督の質問に青葉は応える。
「えっと……美保鎮守府が過去のブルネイ遠征で防衛戦をした時、複数の艦娘が轟沈したのですが、どうも『復活』しているらしいんです」
その言葉にぎょっとする提督。
「『復活』って……それは美保の赤城や大井だけじゃないのか?」
彼が聞くと彼女は周りを気にするようにしながら小声になって言う。
「もちろん公式記録ではありません。ブルネイや各地の記者仲間に片っ端から聞いていたら、そんな噂があることを知りました」
「……」
彼女は改めて二人の艦娘を見ながら続ける。
「あの伊吹って子はシナのタンカーに囚われていたところを米軍の特殊部隊によって救出されたという話で……これはブルネイの警察関係OBから聞き出しました」
提督は感心した。
「良くそんな細かいことまで調べたな……」
青葉は恥ずかしそうに笑ってから続けた。
「いえ……ただ、そういう縁があるから彼女たち米軍と関係があるのかなって……これは記者としての私の直感なんですけど」
それを聞いた提督と川内は思わず納得した。確かにそういう流れだと説明が付いてしまうが……。提督の想いを知ってか知らずか彼女は呟くように言う。
「ニュースとか事件の裏側って、結局は人間のドラマなんですよね」
「ドラマか……」
思わず提督は顎に手をやりながら早苗たちを見る。
オスプレイの前では副大臣と副長官が交互に質問をしている。主に早苗が答え伊吹は再び少し後ろに下がって時おり補佐に入っている。その姿を見詰めているのはケリーと美保司令夫妻。
彼らの姿を見ていると確かに自然に連携しているようだ。つまり美保と米軍は、かなり長期間、協力関係が維持されているのだろう。その背後には一体、どんなドラマがあったのだろうか? ……この場で聞く質問ではないが、いつまでも悶々としているのも辛い。
そう思っていると提督のでん部に痛みが走った。
「痛っ!」
金剛につねられた。思わず振り返ると彼女は口をすぼめて指を立てて左右に振っている。
「No no darling、考えすぎは毒だよ」
さすがの提督もちょっとムカついた。
「それじゃオレが昼行燈みてぇに、いっつもボーっと呆けても良いのか?」
ちょっと考える金剛。
「それは困るネ」
「だったら黙って見てろ」
ちょうどその時、早苗が言う。
「ご質問は以上でしょうか?」
提督は、これ幸いと挙手もそこそこに切り込みの質問を入れる。
「君たちは艦娘の2世だろう? ……全部は答えられないと思うが一点だけ良いか?」
一気にまくし立てる。明らかに引いている早苗。
「艦娘なのに、なぜ米軍に組みしている? オレは全然、理由が分からんから簡単に説明して欲しいな」
瞬間的に場が凍りつくのが分かった。この質問が唐突なのもわかる。だが彼はいい加減ジイさんとの『お遊び』は終わりにしたいと思っていた。どうせ機密保持の確約書にはサインしているんだ。早々に疑問は解消して貰わないと気分が悪い……そう思う提督はかなり強気だった。
早苗は何か答えようにも完全にアタマが真っ白になっているようだ。ゴメンな虐めるつもりは無いが結果的にそうなる。すると案の定、伊吹が前に出て来た。実は提督は、これを期待していた。
「その質問にはちょっと……」
瞬間的に伊吹は美保司令の顔を見た。司令は意外にも腕を組んだままうなづく。それを受けて伊吹はちょと表情を引き締めると再び正面を向いた。
「簡潔に言えば私がかつて、米軍の特殊部隊に救助されたことがまず第一原因です」
「それは知っている」
提督は即答した。その反応の速さにケリーや祥高たちも驚いたようだ。それを見て提督はこれは有利になったぞと思った。何事も先手必勝、攻める時にはグイグイ行くぞ。
「オレは別に米軍が嫌とか言っているンじゃない。ただ事実を知りたいだけだ。皆、友軍であり仲間だろう? いつまでオレを蚊帳の外に置くつもりだ?」
後半はほとんど感情的になっている。軍隊の指揮官としては微妙だが……良いさ。オレは自分のやり方で道を開く。提督の勢いに伊吹も沈黙している。
「隠すつもりはありませんよ……大将」
美保司令がようやく口を開いた。やっと出たか。『大将』か……彼が呼ぶ懐かしい名だな。この瞬間を待っていたぞ。
ところが美保司令は続けて意外なことを言った。
「実は大将が『その気』になるタイミングを計っていました」
「は?」
その言葉に、提督はいきなりガックリ来た。何だよ、結局お見通しなのか?
美保司令は少し微笑みながら……若干、気の毒そうに言う。
「今回の訪問では最初から大将が乗り気でないことも元帥から伺っていました」
「ああ、どうせ、そんなことだろうと思ったよ」
吐き捨てるように言う提督。苦笑する美保司令。
「まあ、そう仰らずに」
周りの武官や艦娘たちも、二人のちょっとした『バトル』に戸惑っているようだ。
美保司令は言う。
「だいたい、お分かり頂いていると思います。ブルネイと美保は閣下がとても意識され育成している鎮守府です。そして両者の性格も敢えて正反対のままです」
「そうらしいね」
提督は金剛たちをチラッと見ながら応える。美保司令は続ける。
「いろいろなパターンでのベストな鎮守府のあり方を探るためのモデル鎮守府です。一種の雛形ですね。私たちは共に先駆的な鎮守府なのだとお考え下さい」
「へえ、そりゃジイさんらしい言い訳だな」
結局、オレは老人の手玉に取られたのかと思うと悔しくて投げやりになっている。
美保司令は言う。
「でも閣下は私たち……艦娘も含めて、両鎮守府を信頼して下さっています。その点は、ご理解頂けますよね?」
悔しいが、それは認める。提督は制帽を取ると「ああ……」と頷いた。それを見て美保司令は改めて言った。
「どんなに指揮官が優秀でも兵隊がきっちり動かなければ作戦は遂行できません」
「まあ、それもそうだな」
やや落ち着いた提督を見て、その場では安堵したような空気が流れた。
美保司令も一瞬、制帽を持ち上げて……被り直した。
「先ほどの大将の質問ですが、まず米軍との縁が持てたのは、伊吹が話した特殊部隊に『助けられた』という遠い理由もあります」
ふんふんと、ブルネイの青葉が感心したように言う。司令は続ける。
「またそれが縁でフィリピン米軍と交流が始まったことも大きいでしょうね」
「それは何となく聞いた」
提督の反応に美保司令は頷く。
「その米軍特殊部隊の隊長との縁で、うちの娘と大井の娘が共にアメリカに留学したことがありました」
「ほう? この戦時の状況下で」
この内容には、ちょっと興味が湧いた提督。その娘たち本人はもちろん、その『母親』たちも二人のやり取りをジッと見ている。美保司令は続ける。
「もちろん元帥閣下に内々に許可を戴きました。何しろ艦娘は特別ですから」
それを聞いた提督は顔をしかめた。彼は内心(くそ、あのタヌキめ)と呟いていた。……ったく陰で、どれだけの悪企みしてやがンだ? ……もっともそれは提督が知らなくても問題が無いことではあるのだが。
その彼の姿を見ながら司令は続ける。
「そのアメリカで彼女たちは特例として米軍での軍事訓練を受けるようになりました」
「聞いてないぞ」
この反応はやや理不尽だと思ったが、タヌキ爺さんのことを思っていたからつい、言葉を発してしまったのだ。
「まあまあ……」
やはり美保司令は苦笑した。
「これは、この子たちが『艦娘』という特殊事情もあります。米軍も艦娘には興味がありました。『素』の状態でも強い彼女たちを敢えて訓練することで、米軍としても、さまざまな兵器開発の基礎データを得たい思惑もあったようです」
提督の表情が変わった。
「おいおい……それって一種のモルモットというか、人体実験じゃないのか?」
その場の空気も一瞬変わった。提督が心配するのも無理は無い。ただ当の艦娘たち本人は、別に気にしていない、涼しい表情だ。もちろん司令も表情を変えない。
「そうですね。もちろんそういう心配もありました。私も彼女たちは機械ではなく人間と同等であるという意識ですから」
「だよな」
提督は同意する。この点では二人に相違は無い。美保司令は言う。
「特殊部隊の隊長がかなり親身になって米軍と人権的配慮……艦娘にもあるはずですが、その調整をしてくれました」
「……」
提督だけでなく、他の武官たちもジッと聞いている。美保湾からは潮風が吹いてきた。司令は続ける。
「わが帝国海軍も世界最高水準である米軍の訓練や整備運用ノウハウは得たい。また彼らも艦娘を通して兵器開発がしたい。そこで、お互いに利するべく手を結んだというわけです」
「へえ」
美保司令はオスプレイを振り返る。
「兵器や戦略システムというのは単に機械や単一のノウハウを入れたらオッケーというものではありません。それこそ2、30年。下手したら二世代くらい時間がかかることもあります」
「それが、これだというのか?」
提督が聞くと司令は改めてこちらを向いた。
「いえ、オスプレイはその一環です」
「ほお……それは壮大だな」
全容は良く分からないがなぜか、そう感じた提督。司令も頷く。
「更に言えば、人間に近い艦娘を軍隊に導入するとなると、二世代、もしかしたら三世代ぐらいは覚悟しなければならない可能性がある、ということですよ」
この発言に、武官たちもざわつく。ただその言葉には重みがある。また美保司令が祥高とケッコンして娘が居ること。その子もまた両親と同じ軍人の道を歩んでいる。その二世代にわたる道程は実は極めて壮大な計画に基づいているのではないか?
察しの良い者は薄っすらと、そういうロードマップが見えてくるのだった。そこまでして戦うべき相手とは誰なのか? やはり深海棲艦なのだろうか?
「艦娘がわが国にもっとも多く出現し、定着している理由は、そういった歴史的伝統風土が土台にあることも一因かもしれませんね」
その言葉に頷く者が多かった。
話が長引いてきたので祥高が他の艦娘に伝えて次々とイスが持ちこまれた。少々間を置いて全員が着席したのを見て美保司令は再び話し始める。
「えっと……どこまで話しましたっけ?」
『あの、米軍での訓練の話です』
二人の青葉がメモ帳を見ながらハモッて言う。
「ああ、二人の艦娘が米軍で訓練される話でしたね……」
司令はチラッとオスプレイの側に腰をかけている二人を見ながら言った。
「基本的な軍事訓練を通して、どの分野に適性があるかを見た上で彼女たちは航空機の操縦訓練を受けることになりました」
「艦娘なのに?」
金剛が口を挟む。
「ええ、これは私も意外でしたが……ただ艦娘も航空機は扱いますからね。決して無縁ではないでしょう」
「なるほどね」
そう応えたのは川内。
その時、伊吹が祥高に耳打ちをして祥高が司令に何かを話しかけて確認をする。司令は頷き二人の操縦士たちも頷くと次々と機内へ入る。彼女たちが操縦席に座ってバイザーを付けてしばらくすると何かのモーターが動くような音が響いてくる。
美保司令は言った。
「皆さん、今日はもうオスプレイは飛びませんので、いったん翼を畳んで格納準備をします。ちょうど良い機会ですから、この機体がどれだけコンパクトになるか、しばしご覧下さい」
司令が何か合図をすると夕立と時雨が小走りにやって来た。彼女たちは武官や艦娘たちにオスプレイの周りから離れるように案内をする。彼らが距離を保ったのを確認すると夕立はオスプレイの向こう側に時雨がオスプレイの手前に小走りで移動した。よく見ると二人はインカムのような無線機を付けている。手前の時雨は小さいライトの付いた棒のようなものを持って手で指図をしながら何かを話している。
その指示を確認したようにオスプレイの操縦席に乗り込んだ早苗と伊吹が頷きながら何かを操作をする。やがてローターの付いた主翼が徐々に折り畳まれて行く。自動なんだ。
「おお!」
……といった感じの歓声が上がる。見ると艦娘の中で一番、驚嘆しているのはやはり秋津洲だ。もはや口をあんぐりと開けて、ただ驚愕しているようだった。そりゃそうだ。二式大艇ちゃんが主翼を折り曲げるなんて話は聞かない。
ほんの僅かな時間で主翼とローターがコンパクトになると時雨は前に居るまま、夕立は牽引車でオスプレイの後ろに寄せるとワイヤーのフックをかける。時雨が再び後退の誘導を始め夕立がゆっくりと格納庫へ機体を牽引していく。
「なるほど、見事なものだな」
珍しくドイツ武官が感心している。
「しかし夕立や時雨が航空機の地上誘導員とは、ちょっと違和感があるなぁ」
腕を組んだ川内が言う。
「でも、ここが空母の飛行甲板だと思えば、さほど違和感はありませんよ」
美保の青葉が応える。
美保司令が再び話し始める。
「まあ、こんな感じで格納します。出動するときは基本的に、この逆ですね。
「美保司令、聞いて良いかな?」
提督が軽く手を上げる。
「どうぞ」
「今、誘導していたのは時雨と夕立だったが、彼女たちは専属なのか?」
美保司令は微笑んで言う。
「いえ、いくつかの班に分かれているので専属ではありません。大井とか不知火も時々、誘導していますよ」
「へえ」
「基本的に航空機を扱う艦娘なら、上手く出来そうだね」
金剛が言う。それもあるかも知れない。
やがて完全に格納庫へ収まったオスプレイ。二人の操縦士と時雨、夕立はそれぞれ敬礼をしてお互いに点呼をして、最後に祥高に報告をしている。
その姿を見ながら司令は続ける。
「あの二人は意外と米軍での訓練期間中の操縦成績が優秀でした。それは艦娘の特長なのか彼女たちの個性なのか正確には分かりませんが……」
武官たちは感心したような雰囲気になる。
「その結果を受けて、さらに米軍と内々に交渉が持たれ、合わせて閣下や副大臣が尽力した結果、オスプレイの試験導入が決定しました」
すると副大臣が胸を張る。ただ隣に副長官が居るので、あまりハメは外さない。
ドイツ武官が問いかける。
「それは両国政府も関与したのか?」
「いえ、政府は見て見ぬ振りをする形です」
司令の説明に彼は不思議そうな顔をした。
「見ない振り?」
「はい」
美保司令は意味ありげに笑う。
「いろいろシナや、わが国周辺には難癖をつけてくる国が多いですから。極秘裏に軍だけでの話し合いでという形で進めました」
「なるほど」
バイザーを外して戻ってきた二人の娘を見ながら司令は言う。
「幸いこの子たちが、そのままスライド的に優秀な操縦士として着任できましたから機密保持も万全です」
すると提督が口を挟む。
「なるほど……それで、こういうことになったのか?」
「はい、そういうことです」
艦娘の操縦士二人も微笑んでいる。この内容は提督はもちろん、その場に居合わせたドイツやイタリアの武官たちも初耳だったようだ。もちろん米軍のケリーは知っている。というか伊吹もケリーとは縁があるようで、時おり彼女や母親である大井と雑談をしている。
あの二人の艦娘は、やはりただ者ではなかった。美保司令の単なる娘には留まらなかった。
その彼は言う。
「ですからオスプレイも、この視察も、そしてこの子たちも、わが帝国海軍や同盟国海軍の重要な作戦のごく一部だとお考え下さい」
理屈では分かるが……美保司令もいつの間にジイさんの配下に収まったのか。提督は複雑な気持ちになるのだった。
提督は改めて美保司令に問いかける。
「美保司令」
「はい?」
「この場では聞きにくいこと、つまりお前に対する疑問点もたくさんあるんだ……そういうことも含めて(ブルネイに)帰るまでに確認する時間はあるかな?」
「そうですね……」
間を置いて少し考え込む美保司令。なぜ、いちいち考えるんだ?と提督は思った。
「大将がそれを望めば、そうなります。別に、どうでも良いと思われたら、そうなります」
「はあ?」
何だよ、まるで禅問答か?
ふと見ると副大臣はニヤニヤして面白がっている。
「そうだなあ『大将』が願えば道は開く。ウンウン、そういうことらしいぜ」
「……」
チョッとアタマにきたが、さすがに相手は海軍省の副大臣だと思うとムゲに反抗することも出来ない。このネチネチさ……絶対こいつもジイさんの仲間だと確信する。
隣に居た副長官が詫びる。
「提督、悪く思わないでくれ。コイツは昔からひねくれた奴だ」
「えぇ?現職の副大臣を捕まえてそういうことを言うかなあ?」
もはや、この二人は漫才師だと提督は思った。
「それはそうとさぁ、遊覧……じゃなかった、オスプレイの体験飛行みたいなのは無いのかなあ?」
……ったく何処までも無邪気な副大臣だな。
美保司令は応える。
「明日、その時間を設けてあります」
「おお、それは楽しみだな……」
そう言いながら彼はハッとして隣の副長官を警戒する……また突っ込まれると思ったのだろう。だが意外と彼女は何もせずに腕を組んで呟くように言った。
「オスプレイか……わが国には必須の機体だな」
そう呟く長官を見た副大臣は、急に笑みを浮かべて言った。
「だろ? だろう? 山が多くて平地が少ない狭い国土の、わが国には必須だよ」
だが副長官はちょっと首を振って言った。
「いや、私は艦娘も含めてだな……運用面で」
何かを言いかけて彼女はちょっと考え込むようにして改めて言った。
「まあ良い。実は私もオスプレイにはチョッと興味が出た」
その言葉に一瞬、笑みを浮かべた大臣は直ぐに残念そうな顔をする。
「なぁんだ? そう言う副長官様は、やっぱりオスプレイなんか眼中に無かったんだな?」
副長官は腕を組んでチョッと反論する。
「当たり前だ……私は艦娘だぞ。海に興味があっても空にはない」
「だがオスプレイの基本性能の高さと汎用性の高さは特筆すべきだ」
急にドイツ武官が言う。
「あらぁ、ドイツもお気に召して?」
イタリア武官も加わってくる。ドイツ武官はそれに応える。
「コンパクトにして格納する様は、かつて山岳部に航空機を隠したわが国を連想する」
ちょっと遠い目をする彼。
「さっきも質問したのだが、この機体の現場での応用力や展開の柔軟性は特筆すべきだ。このフレキシブルさはアメリカらしいな……」
「そう言って頂けると嬉しいですね」
ケリーが応える。ドイツはそれを受けて噛み締めるように話し始める。
「正直、実機を見るまではアメリカの技術など取るに足らないと思っていた。だが今日、実物を間近で見て実際に操縦しているパイロットから説明を受けて考えが変わった」
そこで彼はホッと一息つくと隣に居るU-511を見ながら続けた。
「不思議なものだな。もし私がアメリカと一対一で説明を受けても受け入れなかっただろうが。艦娘が関わると、どんなことでも謙虚に耳を傾けたくなるらしい」
それを聞きながらU-511は無言で彼を見詰めている。
「そうねえ……アタシは割りと柔軟な方だけどサァ」
今度はクネクネしながらイタリアが応える。
「やっぱり艦娘と交流すると何かが変わるのよね。それは分かるわよ」
「へえ」
……と言いながら副大臣は言う。
「オレは自分の軍のことだからなぁ、帝国海軍がどうなのかは正直よく分からないけど……ただ艦娘に人を引き付けたり対立するものを緩和する効果があるのは感じるな」
その意見に同意するようにうなづく海外武官たち。
それを聞いていた提督は、ふと金剛に聞く。
「お前も、そう思うか?」
「えぇー? 自分じゃ分からないネ」
そりゃそうだな。
気が付くとかなり日も落ちてきた。意外に長時間、オスプレイを見学していたようだった。
「しかし、確かに僻地だと機密保持にも有利かもしれないなあ」
改めて提督が言うと、ほかの武官たちの同意していた。
ドイツの武官も言う。
「私はUボートでその沖にある埠頭に着岸していますが、あれだけでもかなり機密保持になりますね」
「そうね。オスプレイが飛んでいても、たった一機ですし、さほど大きな音を立てるわけでもないから住民たちもほとんど気にしないわね」
イタリア武官も感心したように言う。
「仮に諸外国のスパイがいても、この地域では逆に目立ちますからね……では」
美保司令は腕時計を見る。
「今夜はバーベキューということで、この場にセットを準備します。オスプレイを見ながら夕食にしましょう」
司令が合図をすると第六駆逐隊を始めとした艦娘たちが一斉に準備を始める。
「私たちも手伝いましょう」
祥高の言葉に、その場にいた艦娘たちも準備に動き始める。ふと美保湾を見ると大山が赤く染まっていた。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
(ごません様とのコラボ企画作品)
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ10」とは
「美保鎮守府:第拾部」の略称です。