「私たちには守るべき絆があるんだ」
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「美保鎮守府NOW」(みほ10)
第34話:<消し難き絆>(改2)
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時刻は夕方。桃色に染まった大山と、その色を薄っすらと映し出す美保湾を望んだオスプレイの格納庫の前ではBBQ(バーベキュー)が始まっていた。
チョコマカと配膳やサービスで動き回るのは第六駆逐隊を中心とした駆逐艦メンバー。そこに数人の軽巡や重巡が加わっていた。
早々に肉を大盛りにした皿を片手にブルネイの金剛が言う。
「意外に美保のメンバー少ないネ……こんな感じ?」
「全員参加じゃないンだろう」
金城提督もまた辺りを見回してから応えた。
それでも気になった彼は美保司令に近づいて聞いてみた。
「なあ、このBBQは全員参加じゃないのか?」
「はい、そうです」
「あ、そうなんだ」
チョッと拍子抜けした。
「これがブルネイなら『来るな』と言っても次々と押しかけて来るぜ」
「それはブルネイらしいですね」
美保司令が笑ったので提督は更に続ける。
「ああ、ブルネイじゃオレがBarに居ようが居まいが、まったく関係ない」
「はい」
「オレが執務室で秘蔵の品を出そうとすると決まって嗅ぎつけてくるんだ」
「なるほど」
するとブルネイの川内が皿を持ちながら近寄って言った。
「その索敵能力を実戦で生かせ!……ってボヤきたくなるくらいだよな」
小柄な割りに良く食べる川内を見ながら『お前が言うか?』と提督は苦笑していた。
美保司令は思い出したように言う。
「今でもBarでは美味しいメニューを提供されるんでしょうね」
「え? ああ……そうだよ」
応えながら提督は『彼は覚えていたんだな』と思った。
「オレから美味いものを取ったら何も残らないぜ」
「大将らしいですね」
美保司令も笑った。その場の雰囲気が和んだ。何だか良いな、これ。
改めて提督は確認するように言った。
「お前はオレにも艦娘にも腰が低い。それでいて、ここの命令系統は中央一点集中だろ? オレのところは横一列でフラットだけど」
「そうですね」
ニコニコしている美保司令の反応を見ながら続ける。
「ここの艦娘たちの動きを見れば分かるが……これもジイさんの意向なのか?」
すると司令はチョッと表情を変えた。
「いえブルネイもそうだと思いますが閣下はアレコレ注文はつけません。鎮守府の様子を見て、お互いに自然な形で方向性を決めておられます。ブルネイはフラットに美保はピラミッド型で、お互い特徴的で良いのでは?」
「まあな」
提督は皿を置いて続ける。
「美保は司令が出した指示……このBBQにしても参加メンバーを決めておけば本当に、その艦娘しか来ないんだな」
「そうですね。まあ美保の場合は中央一点集中っていうか『秩序』でしょうね」
「あ、そうか……いや中央って言う表現が悪かったらスマン」
頭を下げようとする提督に司令は頭を振った。
「いえいえ、別に気にしませんよ」
そして美保司令も小皿を置くと周りの艦娘を見ながら言った。
「軍隊である以上、最低限の秩序は必要です。ただ艦娘も感情がありますから美保でも、あまり理不尽な命令には彼女たちは反発しますよ」
「そうだな、それは分かる」
美保司令は言った。
「しかし独りで何百人も応対するんじゃブルネイも苦労が絶えないでしょうね」
「ああ。でもオレや艦娘同士で互い心にスキマやズレが出来ると疑心暗鬼が生まれる……それは問題になるからな。もっとも何事もリアルに直接会って話せば何てことは無いのになぁ」
「それは在りがちですね。個人から世界情勢まで……」
その時、美保湾からの風が通り抜けた。
提督は続ける。
「ブルネイはここより大所帯だが、ほとんどオレが独りで仕切って艦娘たちに対応している。さっきも言ったが隙を作らないのがオレのやり方だ」
美保司令は頷く。
彼は再び提督を見た。
「ここは小さいから管理はし易い。でも上からの一方的な指示や命令はしません。それに実務面は、ほとんど祥高や大淀さんが担当しています。だから私自身が艦娘と直接向き合うことは少ない」
「へえ、そうなんだ」
それは意外だなと提督は思った。
「やっぱりブルネイと逆ですね」
美保司令は苦笑した。
美保は少数だが命令は段階的……両指揮官の性格からすると逆になりそうなのに面白いなと提督は思った。
「つくづく二つの鎮守府って対照的だな」
「そうですね。でもどの鎮守府も同じっていうのは面白くないですよ」
「ああ、それも同感だ」
会話をしながら提督は不思議だった。両鎮守府は対象的ながら互いの指揮官の価値観は分かりあえる。指向性や考え方が対照的であっても上手く噛み合えば協調することは可能なんだ。
その時だった。急に時雨と夕立は顔を見合わせて食事を切り上げると鎮守府の本館へ向かう。その先には神通と不知火が待って居た。時雨たちと神通は互いに敬礼をして当番の交代をする。
それを見ていた提督は言った。
「へえ、こんな食事時間にまで、きっちり交替するようになっているんだ」
「そうですね。杓子定規ですが、うちは小さいので逆にこのくらい管理しないと……どの子も個性豊かで一途ですからこそピシッとね」
司令は笑った。
二人が会話をしていると引継ぎが終わった神通と不知火がやってきて敬礼をする。
「初めまして。教育隊隊長の神通です」
「同じく副隊長、不知火です」
提督も敬礼しながら思わず言う。
「おお! うちの子たちより精悍だなあ」
すると神通は恥ずかしそうな顔をした。
「いえ、そんな……恐縮ですわ」
良いなあ、この反応はまさしく神通だ。ただ隣の不知火がジッと見詰めてきて威圧感を覚える。
「……」
思わず苦笑した。この不知火も、どこに行っても同じ感じなのだろう。
美保司令が二人の艦娘に言う。
「交代直後に食事会……申し訳ないね」
「いえ、とんでもないです。光栄ですわ」
「……同じく」
その時の二人の笑顔は自然だった。提督への社交辞令的なものとは明らかに違っていた。
特に不知火が意外な感じだ。無口な彼女だが、美保司令の前では、明るくて素朴な少女に見える。
最初は『教育隊?』って疑ったが、このギャップ感は何だろうか?
その時の彼女たちに応対していた美保司令は急に何かに気付いたような顔をして提督を振り返ると軽く礼をした。
「ちょっと急用が入りましたので……失礼します」
「えっ? ああ」
提督は足早に去る美保司令を目で追っていた。司令官には緊急呼び出しは有りがちだよな。
神通は会釈をして司令を見送っている。しかし不知火は、とても寂しそうな表情をしていた。へえ、あの鉄仮面のような不知火がねえ。その変化を見た提督はやっぱり美保司令に対するこの子の気持ちは特別に深いぞと思った。
案外、美保司令って『ムッツリ』タイプか?
だからこの不知火にもきっと、あんなことや、こんなことをしてンだろ?
もう既に神通にも手出ししてたりね? アッハッハ……
提督は美保の艦娘を前に、いろいろ想像してしまうのだった。
「darling……」
「うわっ!」
いきなり背後からのドスの効いた声に思わずビクッとする提督。
さっきまで美保の金剛と楽しそうに話をしていた嫁艦が突然背後からにじり寄ってきたのだ。
「何か善からぬ想像を逞しくしてませンか?」
どうしてこいつは、こういった類の妄想にはセンサーが敏感になるんだろうな? さすがわが嫁……と言いたいところだが。
チョッと周りを見回してから嫁金剛に顔を寄せて小声で話す提督。
「何を言うか? いくらオレでも美保鎮守府の艦娘にまでは手は出さないぜ」
やや上目づかいで疑いの眼(まなこ)で見上げる嫁金剛。
「aha?」
ダメだ。直ぐ観念した提督。軽く頭を下げて言う。
「ああ、分かったよ! ちょっと下心がありました! ゴメンなさい……これでどうだ?」
そういうと彼女は腰に手を当てるとフフンといった表情を浮かべた。
「そうダヨ。軍隊には秩序が必要デース」
何を美保司令みたいなこと言ってるんだよ。
「でもさ」
急にブルネイの川内がやってきて言う。
「この鎮守府って命令系統とか艦娘同士の関係が、ちょっと妙だよね」
「だろ?」
川内にも美保の独特の雰囲気は感じるらしい。同意をした提督に対して嫁金剛は相変わらず「?」といった表情で、よく分かっていない。
すると今度はブルネイの青葉までやってきた。
「青葉が調べた範囲では美保司令は副司令としか公式的にはケッコンしてないです」
「ウン?」←(嫁金剛)
青葉は周りを見ながら説明する。
「この鎮守府の艦隊娘たちの表情を見ましたか? ちょっと普通じゃないですね」
「どういうことネ?」
すると川内が言う。
「さっきの神通と不知火の表情だよ。特に不知火は明らかに美保司令に特別な感情を抱いている」
嫁金剛は即答する。
「ソレきっと不知火は司令とケッコンしているネ」
「だから公式的にはケッコンしてないんだって」
川内が応える。
嫁ながら金剛は思い込みが激しいと提督は思った。青葉は続けて説明する。
「ここではブルネイで提督とケッコンしている艦娘のストレートさとは、ちょっと違いますね」
「だよな」
「何が……デスか?」←(嫁金剛)
金剛はまだ分かっていない。難しいなぁニュアンスを伝えるのって。痺れを切らしたように提督は説明する。
「ブルネイだとオレとケッコンした子たちは遠慮がなくなるだろ?」
「うん」
「その無礼講さが、この美保鎮守府には親しい間でも感じられないんだよ。壁とも違う何かが……遠慮みたいな」
「そうなんデスか?」
まだ分かってない……もう勝手にしろ。
嫁に理解させるのは一時諦めて提督は再び美保の艦娘を見る。司令は居ないのに一途な目をしている不知火がやっぱり不自然な印象を受ける。不知火って、そんなに情熱的な子でもないだろう?
その一途さの中に、やっぱり何かを押さえている感じがする。それは、あの赤城や大井にも感じた。
一途さと遠慮……何か初恋のようなもどかしさ。甘酸っぱいような『縛り』みたいなものがある。
この美保鎮守府の段階的な命令系統が一因か。ひょっとして司令は独自の洗脳を施しているのか? いやぁ、まさかぁ。
そこに追加の肉の大皿を抱えた電チャンがやってきた。そうだ! この素直そうな子に探りを入れるのが一番だ! だがオレが話し掛けると警戒するかも知れない。そう思った提督は言った。
「おい、青葉!」
「はい!」
近寄ってきた彼女に提督は言った。
「あの子に美保鎮守府の艦娘たちが美保司令にどういった感情的を抱いているのか探ってこい!」
「ラジャー!」
彼女にとっても絶好の取材対象なのだろう。嬉々として電チャンに向かう青葉。
しっかし我ながらナニやっているんだ? と思う。だがこれも重要な索敵だ。元帥ジイさんがオレたちに帝国海軍鎮守府の未来を託すつもりなら喜んで乗ってやろう。だがそのためにも美保鎮守府の様子をもっと深く知るべきだ。
ジイさんから来るお膳立てだけ期待してはダメだ。オレからも積極的に攻めよう。
彼は電チャンに向かっていく青葉の後姿を見ながら、やっぱり川内の方が良かったかな? と思ったりもした。
「どうもぉ、青葉です……ブルネイのぉ」
「あ、どうも初めまして、こんにちは青葉さん」
電チャンはペコリとお辞儀をする。どこの鎮守府の電チャンも素直だな。青葉はそう思いつつ話しかける。
「駆逐艦娘は、いろいろ使われて大変でしょう?」
「いえ……これも任務ですから。小回りが利くのが私たちの特性です。むしろいろいろと重用して頂いて感謝なのです!」
ああ! ……その健気さに、仰け反りそうになる青葉だった。
「作業しながらで良いからインタビュー良いですか?」
「良いですよ……」
そう言いながら電チャンはクスッと笑った。やや訝しげな表情をする青葉。
「あ、スミマセン。いえ、青葉サンって、うちの青葉さんとそっくりだなあって」
電チャンは笑いながら説明してくれた。ああ、電チャンって可愛過ぎて思わず抱擁したくなってしまう……ハッ! ダメダメ任務を忘れてはいけない!
青葉は慌ててメモ帳と鉛筆を取り出すと、さり気なく質問を始める。
「端的に、美保司令をどう思われますか?」
「尊敬しています……そして、命懸けでお支えしたいです」
「い、命懸けぇ?」
ちょっと大げさだな……と青葉は思った。
ただ彼女の表情を見ていると、それは決して社交辞令ではなく心の底からそう思っているのが感じられた。何でこの子はこんなに純粋なのだろうか!
記者という立場上、いろんな修羅場や泥沼も見ている青葉には、この天使のような艦娘は、まさに天然記念物だと思えるのだった。
「あ……」
ニコニコしながら次の質問を待っている電チャンを見て青葉は一瞬上の空となっていた自分を反省した。
「スミマセンねぇ、ちょっとボーっとしてしまって」
でも電チャンは微笑む。
「そういうところも美保の青葉さんとソックリです」
「あはは」
まずい! なぜか知らないけどマイペースなこの子に呑まれるぞ! そんな想いすら抱いた。最初はブルネイの電チャンとさほど変わらないと思っていたのだが何だろう?違う。
青葉は自分の経験から、この取材対象である美保の電チャンには何かとてつもなく深いものを感た。いや、そもそもこの保鎮守府自体が曲者だ。
小さい鎮守府だから得れる情報も少ないだろう……だから簡単に取材して終わるとばかり思っていた。ところが見事に裏切られた。
そうだ、ここは諜報戦の最前線なのだ。しかも美保司令の知り合いはドイツもイタリアも諜報部員である。彼らと応対できる内容を美保司令は持っているのだ。ヤバイぞ。
そんなことを悶々と考えていたら
「青葉」
あれ? と思ったら、いつの間にか川内が側に来ていて青葉の肩に手を置いていた。
「代わるよ」
ハッとして提督を見ると……腕を組んで頷いている。ゴメンなさい提督、青葉は失敗ですねぇ。彼女は自分の少し落胆した気持ちは悟られないようにして何食わぬ顔で電チャンに言った。
「ゴメンね電チャンうちの提督が向こうで呼びなので、また今度お願いしますぅ」
「はい」
素直に頷く電チャンを川内に委ねて青葉は退散した。
いつの間にか場内にはアルコールも振る舞われているようで副大臣は早速グイグイ行っている。一方の副長官や諸外国の武官たちはアルコールは嗜まないようだ。ほとんどが諜報部だからだろうか?
ただドイツ武官は近くにいた暁に何かを聞いている。そのしぐさからタバコを吸いたいらしい。暁は無線で誰かに確認をして直ぐに響が灰皿を持ってきた。響はオスプレイの近くで吸わないように注意をしている。軽く頷いたドイツ武官は懐から煙草を取り出すと火をつけて一服している。彼はもともと渋い感じだからタバコを吸うと、なかなか絵になるな。
その姿を見ていた提督もウズウズしてきた。
「オレも吸いたいな」
それを悟ったのか嫁金剛は直ぐに美保金剛を呼んで事情を伝える。ダブル金剛も絵になるなと提督が妄想していたら美保金剛が彼の方を向いた。
「ブルネイのテイトクさんはタバコ吸うんだ?」
「ああ、ずっと我慢していたが、さすがに限界でね」
嫁艦とは雰囲気が違う美保金剛に笑顔で聞かれた提督はドキドキしながら返事をした。美保金剛は軽く頷くと、どこかに無線で連絡を取っている。すると直ぐに暁が灰皿を持ってきた。彼女は提督のそばに灰皿のスタンドを置くと、いきなり指を立てて左右に振りながら諭すように言う。
「いいこと? 危ないからオスプレイのそばで吸っちゃだめよ」
「ああ、分かっているよ」
いよいよ吸えるぞという安堵の思いと共に提督は自分の懐からタバコを取り出す。そしてライターで火をつけて「ふはー」っという声とともに白煙を吐き出した。ここは海辺なので吐いた煙は直ぐに流れ去っていく。
「ああ甘い香りネ。テイトクさんは料理をするからタバコもおいしそうだネ」
美保金剛が言う。提督はタバコをふかして少しリラックスしたので彼女と話がしてみたくなった。
「ちょっと良いかな?」
「いいヨ」
……この感じは嫁艦と瓜二つだ。
「オレのブルネイでは結構タバコを吸う艦娘が多いんだが、ここはどうかな? 禁煙エリアも多いし、かなり少ないだろうな?」
その言葉に金剛は微笑んだ。
「フフ、ここでは誰も吸わないんだヨ」
「え?」
「ゼロ。誰も吸わないネ」
何となく美保司令は吸わない雰囲気はあった。副司令も同じだろう。それでも数人は吸うと思っていた提督に、その数字は意外だった。
嫁金剛がカットイン。
「でもサ、灰皿はあるよね?」
提督やドイツ武官の前にある灰皿を見て言う。
「ああ、これネ。うちは来客も多いからお客さん用だヨ」
美保金剛はニコニコして、さも当然という雰囲気で答えている。
提督には俄(にわ)かには信じられなかった。だいたい軍隊は人の出入りも多い。兵士とタバコといえば切っても切れない関係にある。本当にゼロなのか?
「何か理由があるのかな?」
「うーん」
美保金剛はチョッと考えたが直ぐに答える。
「きっと司令夫妻が吸わないからだよネ」
提督は、なおも食いつく。
「昔から美保はそうなのかな?美保司令が若い頃とか彼がここに着任する前からそうなのかな?」
彼は自分がタバコを吸うから……という訳でもないが気になってつい質問をしてしまった。
「司令は若い頃から吸わなかったヨ。別に私たちも強要されないけどサ。きっとここでは皆が司令を尊敬しているから自然にそうなるんだヨね」
「ああ、そうか」
美保金剛はその質問を楽しんでいるようにも見えた。彼女の言葉には妙に説得力があった。
「やっぱり司令を尊敬しているのか?」
「うん、もちろん」
艦娘と司令官がギクシャクする鎮守府も少なくない。それでトラブルが起きることも珍しく無い昨今だ。
だが美保では上下関係は良好なようだ。もともと中央集権的だから自然にそうなるんだろう。
「それは違うと思うヨ」
いきなり提督の心の内を透かしたように美保金剛は言った。
「え?」
目の前の金剛にちょっと気を遣いながらタバコをふかした提督は、彼女に顔を向けた。
「今美保に居る艦娘の全員、司令のことを想っているから命令とは違う……私もそうだけど、ここの艦娘たちは一人ひとりが司令との思い出を大切にしているんだヨ。それは絶対に失ってはいけない。忘れてはいけない大切なもの。『消し難き絆』って副司令はよく言うんだケド。それを思ったら、お酒もタバコも私たちにはノイズでしかないんだ。私たちには死守すべき絆がある……あ、ゴメンなさい。タバコのことで提督たちブルネイを悪く言うつもりは無いからネ」
「ああ、分かるよ……何となく」
あやふやな答えをした提督に嫁金剛が付け加えた。
「darling! 美保の『命令と違う』っていうのはサ、ここもブルネイと同じってことだよ!」
「ええ? どこが?」
「もぉ!」
ちょっとご機嫌斜めになる嫁。
「命令されなくても喜んで付いていくってことだよ!」
嫁金剛は、ちょっといきり立って言う。
「darlingも知っているでしょう? 不知火や時雨は結構、難しいところがあるンだよ」
「ああ、確かに……オレには、ここの大井が意外だった……」
意に適ったりという表情をする嫁金剛。
「デショ? 上から命令をしたら反発しそうな艦娘たちが、ここでは何でもするし司令官を本当に尊敬して従っているんだよ」
「いや、オレには艦娘たちの本当の気持ちは良く分からんが……」
「ウソ! darlingは私たちのことを良く分かっているンだヨ!」
おいおい、いきなり何をウルウルしているんだ?
「……だから私はdarlingに変わって欲しいって言うンじゃないンだよ。ブルネイは大きいから大変だと思うけど……今まで通り私たちを変わらずにずっとずっと……愛して欲しい! それだけだよ!」
「ああ……そりゃもちろん」
普通ならここで抱擁でもしてやろうと思うんだが、何しろ人目がある。副大臣に副長官に海外武官たち……さすがにまずい。彼がそう思っていたら美保金剛が嫁金剛を軽く抱擁してくれた。
お互いに抱擁しあっている金剛だったが嫁の方はしばらくすると大人しくなった。そして二人の金剛は、ゆっくりと近くの席に腰を掛けるのだった。
チョッと間を置いてから美保金剛は提督を見ると小声で言った。
「少し……酔っているみたいだネ」
「え? ああ、やっぱりそうか」
何となくそんな感じはしていた。彼は声を掛けた。
「悪いね」
「ううん大丈夫だヨ」
嫁ではないが同じ金剛。やはり不思議な安心感を覚える。しかしこんな良い金剛を嫁にしないのは美保司令も勿体無いよなと思う。
すると向こうからブルネイの川内がちょっと脱力した表情でこちらに歩いてくるのが見えた。そういえば電チャンと話をしていたが……美保司令のことを何か聞き出せただろうか?
「おい、どうだった?」
「……」
あれ? あまり芳しくなかったのか、うちの川内にしては珍しいなと彼は思った。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
(ごません様とのコラボ企画作品)
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ10」とは
「美保鎮守府:第拾部」の略称です。