「美保鎮守府NOW」(第10部)   作:しろっこ

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青葉の報告を聞く提督たちは美保鎮守府には、いろいろな謎が多いことを知るのだった。



第38話:<蛇の道はヘビ>

「やれやれ……蛇の道はヘビか」

 

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「美保鎮守府NOW」(みほ10)

 第38話:<蛇の道はヘビ>

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「大井といえば、あの伊吹っていう子はブルネイ沖で米軍に救出されたんだろ?」

金城提督は探るように言った。

「そうだったな、懐かしいなぁ」

司令ではなく意外にも副大臣が答える。不思議そうな顔をする提督に彼は言った。

「オレもその『ブルネイ防衛戦』には参加していたんだ……外野だったけどな」

彼は相変わらずニタニタしている。

 

「当時としては最新型の作戦指令車に乗ってミサイルを浴びてスリルあったな。祥高も大活躍したし……血沸き肉躍るっていうのはホント良いよなぁ」

 そういう修羅場をくぐり抜けてニタニタしているこの男は今でこそ政治家だが、その中身は根っからの軍人なんだと提督は思った。

 

「あの戦いがあったから米軍とも縁が出来て今の美保鎮守府の充実した装備に繋がっていくんだから縁ってのは分からないものだよなぁ」

 副大臣はそう言って、お茶を飲んだ。

 

 その時、提督は副長官が珍しく下を向いているのに気が付いた。なぜか彼女の耳は真っ赤だ。どういう理由か知らないが赤面していることは確かだ。美保司令もそれに気付いているが、なぜか意図的に無視している。不自然な下を見たままの格好で彼女は言った。

「大井の夫は、もう死んでいたな」

 その発言は唐突だった。提督は彼女が意図的にブルネイの話題を逸らそうとしている感じがした。

 

 ただ何となく、ここは彼女の意向に沿った方が良いと思ったので彼もその話題に乗った。

「戦死か?」

 すると、それを助け舟とばかりに美保司令が続く。

「いえ、彼は病死しています。確か退役して自営業か何かをやっていましたが。それまでも苦労していたように聞いています」

「へえ」

 

大井の旦那か……やっぱり軍人なんだ。そう思った提督は、あれ? と思った。

「大井は一度沈んで『深海棲艦化』していたんだろ? どういういきさつでケッコンしたんだ? いや大井はケッコンしてから沈んだのか? それって矛盾してないか?」

「……」

なぜかそこで提督以外の全員の口が重くなった。彼は悟った……緘口令が敷かれているぞ。

 

 ようやく副大臣が応える。

「大井の旦那は彼女が『復活』したことも知っていたよ。ただ彼女自身は記憶が途切れていたし旦那のことも忘れていたようでね。旦那も結局、本当のことは言わずに終わったようだ」

 それに続ける副長官。

「そうだったな。それでも大井が軍に戻るまでは密かに経済支援はしていたらしい」

やはりこいつら詳しいなと提督は思った。

 

 そして司令も続く。

「彼女は『復活』してからも精神が不安定でね。海の底に居た期間が長かったことも一因らしいけど。もともと軍に居た頃から精神的ダメージを受け続けていたようで根は深いんだ」

彼はハァッとため息をついた。

 提督には大井の経歴は正直、分からなかった。

 

 ちょっと間を置いてから司令は再び語りだした。

「それでも私たちと養子縁組をしてからの彼女は、かなり精神的にも安定しましたね。私も日増しに安定していく彼女の姿にどれだけ安堵したことか……だから彼女も努力して、何とか海軍にも復帰出来ました」

淡々と、しかし珍しく嬉しそうに説明する彼。

 

「実はさっき彼女自身から聞いたのですが……夫のことは、もう知りたくはないらしいです」

「ふーん、夫のことを嫌っていたのか?」

「いや、それは無いようです」

 ぼやかしたような答えだが提督も敢えてそれ以上は突っ込まなかった。だが気になったことがあった。

「確か艦娘とケッコンして夫の方から一方的に離婚した場合は、艦娘の精神がヤバくなるって聞いたことがあるが彼女は大丈夫だったのか?」

 

 提督の質問には副長官が答える。

「ケッコン相手が離婚した場合は気が振れるって奴だな。安心しろ、病気や戦死の場合はその限りではない」

「だが……」

副大臣が口を挟む。

「それでも統計的には艦娘が一人で残されると精神的に不安定になることは確かだぜ」

 

すると司令も口を開いて、ため息をついた。

「あの子は舞鶴や佐世保で私と一緒だったらしいのですが逐一、私に反発していたようなのです。結局それが精神的トラウマになったのかも知れません」

 彼の言い方が気になった提督は口を挟んだ。

「さっきから『らしい』……てのは、どういうことだ? お前は彼女と近い位置にいたし直接何度も話したんだろ?」

 

すると司令は答える。

「私には当時の彼女の気持ちは分かりませんから……最近、彼女自身や周りの証言で初めて知りました」

「ふーん」

その答えに納得は出来ない彼だったが取り敢えず大井の件の先を聞きたかったので、その場は大人しく収まった。

 

 そこで逆に質問をしてみた。

「お前はイヤかも知れないが彼女の精神的な安定を図るためには、やっぱケッコンって選択肢は無かったのか?」

 イジワルな質問かもしれないが敢えて聞く。司令は答えた。

「いや私は重婚はしたくない。それでも大井を放置できないから……この件で主導したのは祥高でしたけどね。彼女と相談して大井を養子に迎えることにしたのです」

「へえ、なるほど」

 

司令は少し間を置いて改めて言う。

「結果的には良かったと思いますよ。『娘』という位置を与えたことで彼女は精神的に安定しましたから」

 そこで彼は、お茶を飲んだ。他の三人は話の続きを注目する。

 

司令は遠くを見るような目で言った。

「彼女自身もケッコンよりは養子縁組で良かったと……ある程度は私との距離があった方が『暴走』しないからってね。これも彼女らしいですよね?」

 そこまで聞いて提督は少々恥ずかしくなった。彼なりに、いや大井自身もきちんと考えていたんだなと。

 

気まずく思った提督は話題を変える。

「しかしオスプレイとか米軍とか、ここはすごいな」

司令も返す。

「やはり米軍の兵器は質が高いです。実は美保の小火器類も米軍が使っているものを一部、入れて貰ったりしています」

「そこだよ、そのブルネイ防衛戦とかが縁になってってことか?」

提督の質問に彼は微笑む。

「そうですね。それが大きいです」

「なるほど」

 

司令は続ける。

「かなり以前、境港からシナと深海棲艦に上陸されて我々が翻弄されたことを踏まえて軍令部や海軍省とも、いろいろ検討していたのですが、それを聞きつけた米軍が提案をしてくれたんです」

 そこで副大臣と副長官が口を挟む。

「待ってました! ……って奴だな」

「ああアレは全国、いや全鎮守府でもここにしかないだろう」

二人の反応に取り残されたような提督は思わず聞く。

「え?……何が?」

 

司令は答える。

「米軍から提供されたテロやゲリラ戦にも耐えられるという高性能の装甲車が2台あります。対地雷装甲車……M-ATVという車両です。真下で地雷が爆発しても大丈夫らしいですが……幸か不幸か、まだ実際にそういうことはありませんけどね。オスプレイはそれらを支援したり、美保鎮守府を総合的に俯瞰できるようにと、それらを含めて包括的に貸与されたものです」

 

 それを聞いた提督は少し驚いたようだったが半分呆れたように苦笑して言った。

「おいおいマジか? 美保ってホントに海軍なのかよ?」

それに司令は答えた。

「よろしかったら明日にでもお見せしますが……アレがもう少し早く入っていればって電チャンや神通に良く言われるんです」

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「電……って、何で?」

 

今度の提督は不思議そうな顔をした。他の二人は何度も頷いている。司令は答える。

「彼女も運転するんですよ。装甲車」

信じられないといった表情の提督。

「まさかぁ、だって彼女は身長が足りないだろ? それを軍用車の運転なんて……」

司令も苦笑する。

「あの子は頑固に『私が司令をお守りするのです!』って聞かないんですよ。夕張さんも呆れていましたけど……きっと過去に何かあったんでしょうね」

 そのひと言に引っ掛かった提督。急に顔を真っ赤にすると、いきなり立ち上がった。

 

「さっきから何だ? お前は艦娘を他人事のような言い方ばっかりしやがって! 昼間から気になっていたが、ボーっとしたり焦点がずれたり……本当にお前、美保司令なのか?」

 彼は今日、美保司令と出会ってから既に違和感を覚えていた。執務室に入ってからも彼の言い方が気になって居はいたが、ずっとガマンをしていたのだ。だが今のひと言で、とうとう堪忍袋の緒が切がれて爆発したのだ。

 

「まあまあ」

 そこで副大臣が割って入る。そういえば彼は何か知っているようだが……。

 同時に副長官も何かを言いかけた提督を制しながら口を開いた。

「金城提督はあまり詳しく知らないようだな。まあ落ち着け。美保司令はいろいろ事情があったのだ」

 

 ちょうどその時だった。執務室のドアが開いて祥高が入ってきた。

「大きな声がしたようですが……どうかしましたか?」

彼女はチラッと室内を見て直ぐに状況を察したようだ。

「提督、もし美保司令のことで不快感を覚えたようでしたら私からも、お詫び致します……えっと、もう事情は聞かれましたか?」

 彼女は副大臣たちに目配せをするが彼らが「いや、まだ」といった感じで首を振ったので改めて提督を見て取り成した。

「取りあえず座りましょう」

「……」

その言葉に提督も一旦は腰をかけた。

 

 彼女は彼の目をジッと見ながら続ける。提督は少々ドギマギした。美人なだけじゃない、この重巡祥高は静かながら人を射抜くような眼光を備えている……伊達に副司令の位置に居るわけじゃない。

「もし可能でしたら、美保司令の事情も説明したいのですが」

そう言いつつ時計を見た彼女。既に22:30を廻っていた。

「大変申し訳ありません。これから私は司令や副長官に報告と打ち合わせがあります。提督も長旅でお疲れでしょうし、この場は一旦、お開きということでご理解頂けませんでしょうか?」

 そう言いつつ微笑む彼女。

「……」

 

 正直言ってリアル祥高さんはとても美人である。そして眼力以前に美人のオーラに弱い彼は渋々承知するポーズをとった。ただ彼女が言ったように彼自身、長旅で疲れていることもあった。確かに、それもまた気が短くなった原因かもしれない。

「まあ……時間はたっぷりある」

 自分に言い聞かせるように呟いた彼は照れ隠しのように残ったお茶を飲み干した。

「祥高さんの言うように、この場は一旦、下がることにしよう。ただ……」

彼がそこまで言うと彼女も笑顔になって言った。

「分かっています。明日……お時間を取って説明致します。直ぐにお部屋まで案内させます」

 

 そう言って彼女はどこかに連絡をするような素振りを見せた。直ぐにドアをノックして霞が入ってきた。

「霞ちゃん、金城提督をお部屋までご案内して下さい」

「ハッ」

 彼女は敬礼をして「では、こちらへどうぞ」と言った。

立ち上がった提督。

「大声を出して失礼しました」

彼はその場に居る副大臣や副長官に軽く頭を下げて言った。何だかんだ言っても彼らは上官である。

「なに、気持ちは分かるよ」

「そうだな……いろいろあったからな」

意味深なことをいう二人。

 

 提督は美保司令にも声をかけた。

「済まないな……オレの知っている『お前』とは、あまりにも雰囲気が違っていたからな、つい」

 すると彼も立ち上がって言った。

「いや……こちらこそ、誤解を招く言動があったことをお詫びしますよ」

 彼のあくまでも謙虚な態度に提督は内心『やはり彼は本物なのだろう』と思い直した。彼は何らかの理由で……少し、変わってしまったのだろう。

 

「では、失礼致します!」

 敬礼をして執務室を後にする提督。廊下に出ると霞の案内で宿所に向かう。歩きながら彼は時の流れが美保司令をあんな風に変えてしまったのだろうか? と考えた。

 ただ変わったのは美保司令だけで他の祥高さんや美保の金剛などは以前彼が出会った雰囲気そのままだと感じた。

 もっとも美保の大井には彼自身、初めて出会うので比べようが無い……彼女の場合は一般的な『大井』とも雰囲気が違っている。彼は思わず苦笑した。

 

 提督は前を先導して歩く艦娘に声をかけた。

「なあ霞」

「ハッ」

 いきなり背後から声を掛けられて少し驚いたように歩みを止めて振り返った彼女。

「お前も……美保司令夫妻の『養子』か?」

「……」

一瞬、躊躇した彼女だったが「はい、そうです」と応えた。言いながら珍しく頬が少し紅潮している。

「そうか……」

 

 本当はもっと何か、別のことを聞くはずだったのだが……霞のちょっと、はにかんだような初々しい表情を見た彼は、それ以上質問することが出来なくなった。そこはさすがに何か踏み込んではいけない領域のように感じられたのだ。

「あの……お部屋までご案内して、よろしいですか?」

「ああ……呼び止めて悪かったな」

 彼らはそのまま、別棟の宿所へと向かった。

 

 宿所は別棟の一階と二階に分かれていた。

その建物はゲストハウスのようで、一階に簡単な応接室と宿所、そして二階には二部屋あり今回は一階が提督、二階にブルネイメンバーということになっていた。

 ……当然、彼らがその建物に到着するとブルネイの艦娘たちは寝ずに提督を待ちわびていた。霞は事務的に明日の食事の時間と簡単な予定を案内すると、一礼をして退室した。

 それを見ていた嫁艦の金剛は言う。

「どこの霞も、固いネェ」

すると青葉が言う。

「でも、ここの彼女は『養子』だけあって、微妙にソフトな印象がありますね」

それを聞いた提督は思わず言った。

「何だ、青葉も『養子』ってことを聞き出していたのか?」

すると彼女は「えへへ」と言いながらメモ帳を開いた。

「司令官は当然、直ぐにはお休みにならないですよね?」

「ああ、お互いに知り得た情報を共有しようじゃないか」

それを聞いた金剛や川内も頷いた。彼らは応接セットのソファに腰をかけた。

 

 まずは提督が話し始める。

「見たと思うが、この美保鎮守府には海軍とは思えないレベルのたくさんの兵器があるな」

「そうですね……オスプレイは見ましたが、他にもほぼ実用段階の艦娘サイズのジェット機に特殊装甲車や銃器類がありますね」

 メモ帳をめくりながら青葉が応える。

 

「そういえば、衛兵も変わった銃を持っていたな」

川内が言うと青葉が説明する。

「あれも小さいんですが、やはり対テロ用の軽機関銃です。確かイスラエルのモデルだったと思うんですが、ここでは夕張さんが艦娘仕様として手を加えている可能性が高いですね。だから性能は限りなく未知数と言えます」

 腕を組んだ提督は言う。

「いったい何でここまで兵器を集めるんだ? まあ、真面目な美保司令のことだからクーデターとか何かを起こす気は無いと思うが」

 彼は冗談とも本気とも取れる発言をする。

 

青葉が言う。

「青葉は美保の青葉に直接聞いてみたんですが、ここは環境的にガードも強いし特殊でしょう? それを知った米軍の担当者とか米国の軍メーカーが貸与という名目で、いろいろ持ち込むみたいですよ」

「そんなに簡単に米軍の兵器を国内に持ち込めるのデスカ?」

金剛が質問する。

 腕を組んだ川内が答える。 

「そこは……あの元帥や副大臣の威光で何とでもなるのだろう」

それを聞いて頷く青葉。

 

「そんな感じでしょうね。米軍も結局、自国とは違う場所での運用実験をしたいようです。そういえば、ここの夕立とも話をしたんですが彼女は最新型の対戦車ライフル……これは無反動なんで艦娘でも使い易いからって米軍に押し付けられたって言ってましたけど……でも彼女、その銃を気に入っているみたいでしたよ」

「対戦車ライフル? ……なんでまた陸軍みたいなものを」

提督が言う。

 それを受けて青葉はメモを見て続ける。

「夕立が言うには、たまに二人がかりで海に持って出て深海棲艦相手に撃っているとか」

すると金剛が言う。

「私も聞いたね、ソレ。一度オスプレイからも撃ってみたらしいケドさすがに不評だったって」

川内も加わる。

「ああ……ただ夕立は派手な兵器がお気に入りみたいだな……ここの神通に聞いたら夕立は一人でも根性でそのライフルを背負って出ることもあるらしい。ここの朝潮とか潮がいつもいきなり海上で発射時の支え台にされて嫌がっているって……笑えるよな」

 

 提督もソファに深く腰をかけて言った。

「美保は本当に実験場なんだな」

その言葉には部屋の全員が苦笑した。

 ふと提督は自分で言った『実験』の言葉が引っ掛かった。まさか……とは思うが美保司令はひょっとして彼自身が何かの実験台にされたのではないだろうか?

 いや仮にそうだとしても、あのジイさんだって、そこまで酷いことはしないだろう。

 

 その時不意に青葉が言う。

「美保司令の経歴が気になったので軍のサーバーで調べたらですね……」

それを聞いた提督は言う。

「おいおい、軍のサーバーって……そんなことして大丈夫か?」

青葉はウインクする。

「ちゃんと事前に断りましたよ。ここの秘書艦に。とても親切で優しい大淀さんでした」

「まさか……脅して無いよな?」

さすがに彼女は少し脹れた。

「何てことを!……人聞きの悪い」

「ああ悪かった、ゴメンな……それで?」

 

彼女は改めてメモを凝視する。

「あの提督、経歴に空白部分があるんですよ。ちょうど、あの演習の当時の年齢に相当する過去の時代に」

 提督はチョッと肩透かしを食らったような顔をした。

「そりゃそうだろ? 例のタイムスリップしていた時期じゃないか?」

青葉は首を振る。

「いえ、実はブルネイへの遠征記録はきちんと残っていました。問題はその1年位後に美保司令ご自身が失踪していたらしいんです」

「失踪? そりゃ穏やかでないな」

提督の言葉に金剛と川内も顔を見合わせている。

 

 青葉は続ける。

「もちろんシナや深海棲艦に襲われたって言うこともあるのですが『らしい』というのは裏の情報で……実は海軍の公式記録には彼の失踪記録そのものがないからなんです」

「そりゃそうだ。事実だとしても軍部には恥部みたいなものだろ?」

提督の言葉を予想したのか彼女は直ぐに頷いて続ける。

「ですから、後から情報操作されている可能性があります」

提督は腕を組むと改めてソファに沈み込んで言った。

 

「仮にそれが事実だったとして、何か問題があるか?」

「ソウダヨ青葉、考えすぎじゃないノ」

金剛も加勢するが青葉は怯まない。

「いえ、そういうところに真実があるんですよ」

 

 疲れたのか川内も軽く会釈をして少し離れたイスに座った。角度がズレていたので危うくパン○は見えなかった……残念!

 青葉は、なおも続ける。

「さっき電話で記者仲間に聞いたら、この美保は僻地なので、いろいろな軍の実験が行われている……って、これはもう知っていますよね」

 全員、無言で頷く。彼女は続けた。

「ただ、オスプレイは違うと思いますが、ざっと見聞きした範囲でも正式登録されていない新兵器も多いようです」

「そういえば艦娘サイズのジェットもあったよな」

これは川内。

 そちらをチラッと見てから青葉は少し強調するように言った。

「また公式記録と不一致する点が多い艦娘も数名確認できました」

 さすがにこの指摘には少し驚いたような提督。

「なんだそりゃ? ヤバくないか?」

「はい。あの大井と秋雲、それに赤城2号もしばらく姿が見えなかった時期があるんです。もちろん今は登録データは修正されていますが……」

「よくそこまでチェックしたな?」

「ええ……実は」

 

ここで青葉は声を潜める。思わず全員、固唾を呑む。

「ここの司令部の霞をチョッと捻(ひね)れば……ね?」

「おいおい……お前も良くやるな」

苦笑する提督。

「あの子……いろいろ鎮守府とか司令に後ろめたい思いを持っているらしいんです。ちょっと調べたら何となく分かったので」

 この行動には川内も苦笑して言った。

「やれやれ……蛇の道はヘビか」

「他所の子を、あんまり虐めちゃダメだよ?」

金剛までたしなめている。

「ええ、最後は半分べそかいてましたから……ちょっとやりすぎました。ただ……」

 彼女はイスに座りなおして改めて言う。

「大井たちは救出されて美保に来て、ちょうど司令が失踪した頃に極秘裏に長期間鎮守府を出て何処かへ行っているようです。それがどこなのかは、まったく謎でした」

「ソレ以上は霞情報も限界だよネ」

割と今度は悟りの良い嫁艦。

 

 提督は腕を組んで言う。

「でも司令は本人だろ? その大井や秋雲も本人が居るし……何が問題だ? 不正をするような連中にも見えないし」

「はい……これ以上は青葉の、記者の勘ってやつです。もちろん仰るように彼女たち、いえ美保鎮守府が不穏な動きをとるようには感じません。もちろん国家に反逆することも美保には、ないでしょうけど……表に出せない何かが隠されている気がするんです」

 

 それを聞いた提督は思った。

美保司令は大人しいが知らず知らずのうちに軍部の勢力争いに巻き込まれた可能性もあるな……祥高型三姉妹は、真ん中の祥高だけは温厚な性格だが上と下の姉妹は血気盛んな印象だ。その二人が今も中央に居る。

それに加えてあのジイさんだって叩けば幾らでも埃(ほこり)が出そうな奴だからな。

 考え込んでいる提督を見て金剛が心配そうに声をかける。

「どうしたのdarling?」

「あ……いや、何でもない」

一瞬、重苦しくなりかけた応接室だった。

 

 その雰囲気を破るように青葉が言う。

「あの大井さんの娘……伊吹って、私の非公式情報によると深海棲艦から救出されたらしいんですよ。それを実行したのが米軍の特殊部隊だとかで」

「ああ、それは何となく聞いているな」

頷く提督と、ほかの艦娘たち。

 

「その部隊長と今日来ている米軍のケリーさんって実は夫婦らしいんです」

「え?」

少し驚く提督。

「だから……何ネ?」

嫁艦は相変わらず。

「いや、ちょっと完全には裏が取れていないんですが」

青葉は慌ててメモ帳をめくる。

「青葉、少し気になってたんですよ……ここの大井さんと伊吹って討議のときもケリーさんと妙に親しい印象で。だから彼女って救出されたことで、それを恩義に感じているんじゃないかなあ? って」

 

 まとまっていない感じの青葉に川内が助け舟を出す。

「だから大井と伊吹が縁で美保鎮守府は米軍と縁が出来たってことだろう?」

「そうなんですが……普通、それだけでここまで密接な関係は築けないですよ?」

「なるほど」

策略の裏を読むのが得意な川内。ニンジャだからな。ただ、どことなく納得していない青葉。

 提督も口を挟む。

「そりゃ、美保司令だってフィリピンの元帥と顔見知りらしいから、そういうことも含めて緩やかに関係が作られて行ったんだろう?」

そう言いながら彼も美保司令への親書を託されていたことを思い出した。

「そうですが……もしそうだったら、今のブルネイだって、もう少し早い段階でフィリピンとか近くの米軍と懇意になっても良いと思うんです」

そういう青葉に提督は言った。

 

「何だ? 青葉、お前ひょっとして美保鎮守府と米軍の関係を嫉妬しているのか?」

「いえ……そうじゃなくて」

少し恥ずかしそうに顔を赤らめている青葉に提督は言った。

「そんなことオレにゃ、どうでも良いことだ。少なくとも艦娘が何百人も居ればハッキリ言って地上最強の海軍部隊だろう? もちろん深海棲艦には手こずることも多いがな」

 その言葉に一同は何度も頷くのだった。

 

 提督の言葉を受けてイスに座っていた川内が言う。

「私がちょっと調べてやろうか?」

「ああ……お前ならそう言うだろうと思ったが……大丈夫か?」

心配する提督に彼女は手の関節をポキポキいわせながら答える。

「青葉にばかり手柄は取らせないよ……それにここは友軍だ。仮にしくじっても命まで落とすことは無いよ」

「ああ……問題にならない程度に上手にやれよ」

『命』という言葉がチョッと気になった提督だったが許可を出した。

「ハッ」

 イスに座りながら敬礼をする川内も可愛いなと提督は思うのだった。ただ何となく胸騒ぎも覚えるのだったが……。

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
(ごません様とのコラボ企画作品)
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ10」とは
「美保鎮守府:第拾部」の略称です。
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