「修羅場ってどんな戦場デスか?」
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「美保鎮守府NOW」(みほ10)
第40話:<美保司令の娘たち>(改2.5)
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早苗は続ける。
「他に質問はございませんか?」
アタフタしたように青葉が何かを言い掛ける。
「えっと、えっと……オスプレイの伝送プロトコルって状況によって切り替えとか……」
それを聞いた提督は思わず制止した。
「おい、何マニアックなこと聞いてんだよ?」
その言葉にハッとしたような青葉は、真っ赤な顔をして下を向いた。その青葉をなだめるように肩に軽く手を添えながら金剛が早苗に言った。
「もうダイジョウブね。後は乗ったときに直接、聞くヨ」
「分かりました」
軽くニッコリ笑った早苗は立ち上がった。
「では皆さんのご搭乗、お待ちして居ります」
彼女は敬礼をして、その場を離れた。
その後姿を見ながら提督は言った。
「意外にしっかりした子だな」
「そうだね……」
提督の言葉に同意する艦娘たち。
ケッコンという制度は以前からある。しかし提督自身、艦娘の2世に間近に接するのは初めてだった。
ここで言う『2世』とは、量産型をさす『第2世代』とは違う意味である。パッと見は確かに普通の人間のようにも見えるが、やはりどこかに『艦娘らしさ』も感じるのだった。
ケッコンによって生まれた2世。人間と艦娘の混血という存在には果たしてどんな力や能力が秘められているのだろうか? それは提督自身も少々興味があった。
メモを見ながら青葉が言う。
「噂では、わが国の艦娘2世は、結構な人数が居るとも言われています」
「へえ」
これは川内。
「やっぱり艦娘の2世って優秀な子が多いデスか?」
金剛の問いかけに困惑した表情の青葉。
「そうだと良いのですが……何しろ情報がないですからねえ。ちょっと記者仲間にも聞いてみましたが残念ながら軍隊ということもあるのでしょう。誰も分からないという返事でした。統計的データもありませんし」
川内も言う。
「まあ一般論としては混血の方が優秀だってのはあるけどな」
「ねぇねぇ、帰国子女も優秀ダヨ?」
自分を指差して言う金剛の発言に思わず他の艦娘たちも苦笑する
提督も窓から見える海を見詰めながら言う。
「なるほど……美保に早苗や伊吹が居るということは全国の鎮守府にも、それなりに2世の子は居るだろうが海軍内で認知されるほどの数じゃないンだろう」
「2世か……子供って良いな」
金剛も腕を伸ばしながら提督と同じ美保湾の方向を見つめて呟いた。
「ブルネイもさ、そういう時代が来たら良いよね」
川内も言う。
その時提督は金剛がジッとこちらを見詰めているのに気がついた。まぁ、何を言わんとしているのかは分かる。
……ところが彼女は何も言わずに再び海を見ながら呟いた。
「darlingが頑張っているのは分かるんだヨ。私だって敵との戦いだけじゃない。『オンナ』として闘って目に見える結果を残したいんだヨ」
彼女のその小さな呟きが他の艦娘に聞こえたかどうかは分からない。ただ川内も青葉も今の金剛の気持ちは十分に理解しているようだった。
その時、提督は思った。
いつも大勢の艦娘に囲まれているから分かり難い艦娘たちの想い。それは時に人間以上の繊細さも見せる彼女たち個々人の気持ちを今日これほどまでに間近に感じたことは無かった。
それもこれも結局はジイさんからの一枚の指令書に始まったわけだ。
「ここに居るとドンドン元帥爺さんの術中にはまっていくようだ……参ったな」
頭をかきながら言う彼の言葉に思わず苦笑する艦娘たち。
「でもdarling? 私ネ、たまにはコンパクトなムードも大好きダヨ」
いつも以上に今朝は落ち着いた雰囲気の嫁艦だった。いつもと違う場所で愛し合うと何かが変わるのだろうか? ふとそんなことを思った。
やがて隣の副大臣たちが立ち上がる。他の武官たちも同様だ。そろそろ集合の時間か。
「じゃ、行こうぜ」
提督たちも立ち上がった。
昨日の夕方からバーベキューをやったときには暗かったから、少し分り難かったことだが鎮守府本館からオスプレイの格納庫までは少し距離がある。
美保湾から吹き付ける潮風は心地良い。ただブルネイの夏に慣れてしまった彼らには日本の夏は湿気が多くて暑苦しい。しかもここは埋立地だ。
それでも日本海側の日差しは太平洋側よりは心持ち優しい感じがする。
彼らは美保湾や大山の青さと近くの山の緑のコントラストを楽しむように格納庫へと向かう。
「あぁ、暑いわね」
白い帽子を被ったイタリア武官は扇子でバタバタと扇ぎながら言う。一応、彼もイタリア海軍の制服を着ているが、その帽子は、とてもお洒落だ。
『ペラペラペラ』
……と恐らくイタリア語で盛んに会話をしているリベッチオとPOLA。イタリアの艦娘だけあって制服からして、お洒落だ。武官同様、彼女たちの帽子も可愛らしい。
「イタリアか……さすが伝統ある陽気な国だな」
提督は呟く。彼らの着こなしも陽気さと、お洒落さが満ちている。
それと対極的なのがドイツ。見事にジャーマングレイ。しかも武官も艦娘(U-511)も真一文字に口を閉じている。イタリアが陽ならドイツは陰だろう。
そういえば帝国海軍の艦娘たちは彼らの中間くらいだろうか?
もともと人数が多いこともあるが彼女たちの制服は実に多様だ。山紫水明な日本の気候風土や多様な文化も反映されているのだろうか?
やがてオスプレイのある区画に近づくに連れて、その一帯が明らかに機体導入を機に格納庫や離着陸場が設置されたことが分かる。
そしてオスプレイの発着場までやってきた。さすがにここまで来ると警戒が厳重になる。パッと見ただけでもペアで巡回する艦娘がオスプレイの周辺に3組は見える。
それだけではない。到着の時には気がつかなかったが美保鎮守府の本館の頂上は展望台のような部屋があり、そこから周囲360度を監視している。ただ鎮守府の敷地内には大きなレーダー施設は無いようだった。
その時、金剛が言う。
「あの山の上にあるのはレーダーサイトね?」
それを聞いた彼女の周りの艦娘たちは山……島根半島の上にある建物を見詰めた。確かにそれはレーダーサイトらしかった。
「なるほど……海軍の施設かどうかは分からないが、あそこから監視すれば日本海のかなりの範囲をカバーできそうだな」
海外の武官たちも山の上を興味深そうにそれを見詰めていた。
もしあのサイトまでリンクシステムに組み込まれていたら……美保鎮守府はコンパクトな姿とは裏腹に相当な情報収集能力と有機的な攻撃能力を持っていることになる。
「少数精鋭か……」
思わず呟く提督だった。
既に離着陸ポートにはオスプレイが文字通り羽根を広げて待機していた。
格納時にはキレイに折畳まれていた翼は既に飛行状態に準備されている。その機体からは、かすかな動作音が聞こえてきた。
提督や武官たちがオスプレイの前に集っていると後ろの方から声がした。
「大体、揃ったようだね」
その声の方を向くとバインダーを持った見覚えのある艦娘が立っていた。
彼は思わず呟くように言った。
「時雨……か」
ちょっと意外な感じがした。一般的に量産型でも沈着冷静な印象のある彼女だ。ただ美保の時雨はオリジナルなのだろうか? ちょっと幼い感じがした。
ただ提督は何となく美保の彼女には幼いながらも『影』を感じた。もしオリジナルなら、それも納得出来る。
幼く見えるからだろうか? 彼女の存在感が希薄に感じられた。そんな時雨でも小さな美保鎮守府では使わざるを得ないのだろう。
提督の印象を悟ったのか時雨は言った。
「そうか……提督にとってボクは役不足なのかな?」
単刀直入に言う彼女に正面から見詰められた提督は思わずドッキリした。
「ん……あ、いや悪かった、そんなつもりじゃ……」
彼は思わず頭をかきながら弁解する。
その時、彼のでん部に痛みが走った。
「あ痛っ!」
提督の後ろから金剛がお尻をつねっていた。
「……!」
振り返ると金剛が「チッチ」と言って指を立てて振っていた。
「darlingは、まだ艦娘を馬鹿にしているよネ!」
「いや、そんなことはない!」
すると彼らの会話を見ていた副大臣が腕を組んでニタニタして言う。
「いや、さっきの提督の台詞はナ、ちょっと時雨を小ばかにしていたぞ」
隣に居た副長官も続いて発言する。
「ああ……私にもそんなニュアンスで聞こえたな。だいたい時雨に『役不足か』と言わせた時点でアウトだろう」
彼らの言葉を受けて少し硬直したように立ち尽くしている時雨……さすがに、これには立つ瀬が無くなった提督だった。
彼が謝ろうとすると時雨は直ぐに気を取り直したように硬直した微笑を浮かべて言った。
「別に良いんだよ。そう見られるから悪魔も素通りするんだ……だからボクは必ず最後まで生き残るんだよ」
「……」
その淡々とした感情に提督は鳥肌が立った。やはり『影』を持った少女だったか。
「そうだよ、ボクはきっと頼りないから独りじゃダメなんだ。だから、こういう組織で無いと生きられないんだよ」
独り言のように呟きながら時雨はバインダーの書類をめくり始める。自虐的な物言いに提督は胸が痛くなった。
すると、その緊張を解くようにブルネイの青葉がメモを開きながら聞く。
「あのぉ、ひょっとして時雨さんも美保司令のアレですか?」
青葉の質問は焦点がぼやけていたが時雨は直ぐ悟ったように即答する。
「うん。ボクも司令の娘さ……」
そう答える彼女の表情が意外にもパッと明るくなった。なるほど普段は心を閉ざしている時雨。だが彼女にも美保司令との関係は心の拠り所なのだろう。その事実に少し安心した提督だった。
「皆、ケッコンばかり言うけどさ……あれって、しょせん他人のつながりだよね」
時雨の言葉に、青葉も苦笑する。
「でも親子関係ってのは血縁関係だからさ。単なるケッコンより結びつきが強いんだよ」
淡々と言う彼女。この時雨は弱いどころか、意外に芯が強いじゃないか? もしかしたら、これが養子縁組の効果なのかも知れない。
提督は独り言のように呟いた。
「時雨……さっきは悪かったな。お前も大井のように幾つもの修羅場をくぐりぬけて来たんだろう?」
「……」
時雨は無言で頷いた。
代わって嫁艦の金剛が応えた。
「修羅場ってどんな戦場デスか?」
提督は腕を組んで答える。
「そうだな……砲弾の飛んで来ない戦場みたいなものかな?」
「ふーん。そういうのも……胸が痛みそうだネ」
その言葉に彼は意外に思った。彼女の感想は必ずしも間違いではない。
ブルネイメンバーの会話の様子を伺いながら時雨が書類を見ながら言った。
「えっと……ブルネイの皆さんの中では青葉が一番最初に搭乗だね」
「了解!」
青葉がわざとらしく敬礼をする。時雨は微笑むと海外武官の方へ向き直って搭乗メンバーの案内を続けた。
その後姿を見ながら青葉が言う。
「美保には『オリジナル』と呼ばれる『第一世代』の艦娘が多いんですよ」
そこに金剛が口を挟む。
「それって私たちと何か違うデスか?」
すると青葉ではなく川内が答える。
「量産化が確立する以前はオリジナルしか居なかったからね。海軍もそんな艦娘に対しては手探り状態だったのさ」
青葉が続ける。
「ええ……ですから今の私たちには想像も出来ないような極限状況を経験をした艦娘がたくさん居ます。私もそんな艦娘の取材をした事がありますから」
提督は腕を組んで応える。
「へえ、相変わらずお前、いろいろ調べてンな」
その言葉に恥ずかしそうに笑う青葉。
彼は続ける。
「まあオレも最初はそうだったが、艦娘と人間なんて最初は、お互い事情が分かンねェからな。初期の海軍も手探りで苦労が絶えなかっただろうな」
すると金剛が呟く。
「そっか……それは、お互い修羅場だネ」
彼女の言葉にブルネイメンバーだけでなく、その周りの武官たちまでが苦笑した。
ドイツ武官が言う。
「そうだな……わが国でも艦娘に対する誤解は多い。それに、この子はオリジナルだからな」
それを聞いたイタリア武官やケリーもしきりに頷いている。
「深海棲艦と何が違うんだって陰口を叩かれることも多いわ」
ケリーは吐き捨てるように言った。
現在の帝国海軍では艦娘が多くなっている。だが海外ではまだ艦娘の絶対数が少なく、かつての日本と同じような状況が続いているのだ。
時雨は他の武官たちにも一通りオスプレイ搭乗の案内を終えたようだ。
すると……不知火がやってきて敬礼をした。
「オスプレイには時雨がご案内します。そのほかの皆さんには地上設備のご案内になります。不足ながら私、不知火がご案内致します」
時雨に不知火か……こういう難しそうな子たちがゲストの接待をするのもレアなことだと提督は思った。ただそんな彼の想いに対して不知火自身は時雨の時のように敏感には反応しなかった。それは果たして不知火の方が『オトナ』なのか、どうなのか? それは彼にも分からない。
ただ提督は彼女もまた美保司令の娘だったことを思い出した。
するとその瞬間、不知火が提督の顔を見て僅かに微笑んだ。その何ともいえない表情を見た彼は思わずドキッとした。
そうか……不知火も時雨も美保司令の娘という位置に居るからこそゲストを案内する任務も厭(いと)わないのだろう。
ブルネイの艦娘たちが、盛んに不知火が妙だと言っていたのは、このことかも知れないな……提督はそう思った。
思い出したように副大臣が言う。
「なるほど、養子縁組というのも新しい考え方だな」
直ぐに副長官が突っ込む。
「おい、鼻の下が伸びているぞ」
「ええ?」
この二人のやり取りは、もはや漫才である。
しかし彼女は美保の副指令でもある祥高の妹であるが同じ姉妹でも、こうも性格が違うのだ。艦娘も奥が深い。
ブルネイとは対極にある美保鎮守府。最初は彼も違和感も感じていたが、ここに居る美保の大井や時雨、そして不知火は美保司令の娘という位置を与えられて幸せなんだ。それもまたアリなんだろうと提督は思うのだった。
「ジイさんの宿題の解等の一部はこれかな?」
彼は我知らず呟いていた。それを見ていた嫁艦金剛は、かすかに微笑むのだった。
「きっとソウだよ」
「え?」
「ウウン、何でもない……」
何か金剛も急に変わったな……彼はそう思った。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
(ごません様とのコラボ企画作品)
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ10」とは
「美保鎮守府:第拾部」の略称です。