「美保鎮守府NOW」(第10部)   作:しろっこ

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 ゲストたちを前にして夕立によるライフル銃のデモ射撃が行われる。だが、その姿を見た美保司令が……。


第43話:<パン○とライフル>

「彼女は今日も白……ですな」

 

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「美保鎮守府NOW」(みほ10)

 第43話:<パン○とライフル>

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 夕立が長いライフルを背負ったまま皆が集まる軍用車のところへ向かう。そしてそこに居たケリーに近づくと軽く挨拶をしている。彼女もまた笑顔で応える。何かの報告だろうか? 二人は意外にも笑顔で談笑している。

 それは客観的に見ると軍服の女性士官と銃を背負った金髪の艦娘……妙な構図だな。

 ライフルを背負った艦娘の登場に周りも少々ざわつく。だが当のケリーや美保鎮守府のメンバーは平然としてる。

 

 提督は美保司令に聞いた。

「何で皆、そんなにざわつくんだ? あんな銃はどこでもあるだろう?」

「そうですね……まぁ恐らく海軍の艦艇である艦娘が、わざわざ対戦車ライフルを持っている姿が珍しいからでしょう」

 美保司令が答えると提督は少々驚いたような表情を見せた。

「あれって……対戦車ライフルなのか?」

 

 するとベンチの近くに立って居た美保の青葉が応える。

「あれはセミオートマチックライフルですよ」

「ライフル? 狙撃銃か?」

 

 提督が返事をすると彼女は続ける。

「ええ、そういう用途もありますけど。射程は1500m以上。他の同タイプのライフルよりも反動が少ないので艦娘にも扱いやすいです。移動中の敵車両や地上に近づいたヘリも狙えます」

 

「ヘリ?」

今度は川内が驚いたように言った。

 

 だが彼女の反応を無視するようにして提督は改めて美保司令に聞いた。

「美保は過去に何度か敵の上陸を受けたって聞いたけど……それこそ艦娘の艦砲射撃じゃダメなのか?」

 

 それを聞いた司令は苦笑した。

「ええ……実は一度、一旦上陸した敵を境水道から狙い撃つ格好で艦砲射撃をしたことがありましたけど。ある程度は撃破するも岸壁をボコボコにしてしまいました」

「あー、そうか」

「まあ、有事の被害ということで自治体や海軍省からのお咎めは、ありませんでしたけど」

 

 美保司令に続いて、青葉も付け加える。

「境港の市街地は人口密度も多いです。それに敵に一回上陸されて市街地に入り込まれてしまうと、もはや艦娘だけでは攻撃にも限界があります」

 

 提督は青葉に質問する。

「でも地上戦って本来は陸軍の仕事だろ?」

 

 彼女は微笑んで淀みなく答える。

「はい。でも海岸線の多い山陰では、陸と海で戦闘区域を厳密には分けられません。それに艦娘は海から陸へと継続して攻撃を続けることが出来る存在ですから戦術的な位置付けをすると、まさに海兵隊にうってつけなんですよ」

 なかなか的確に答える青葉だなと彼は思った。

 

 すると少し離れて聞いていたのだろう。副大臣が割って入る。

「……で、今から夕立ちゃんは何をするんだ?」

 

 それには美保司令が答える。

「対戦車兵器はいくつかありますが特に夕立は今からお見せする長身のライフル銃が、お気に入りなのです。本人も撃ちたがっていますから今日はデモを兼ねて披露します」

「なるほど」

 本人が……ねえ。

 

司令は改めて補足する。

「ただ、この銃を他の鎮守府でも艦娘用に導入しているという事例は、他では皆無です。あくまでも美保だけの特殊事例ということを参考程度に含んで、ご覧下さい」

 

 やがて夕立とケリーは軽く敬礼をする。話は終わったようだ。夕立は改めて銃を背負い直すと、そのまま芝生の広場へと向かう。いよいよ試射をするのだろう。

 案内をしていた不知火が見学者たちに何かをアナウンスする。その場に居た者たちは芝生の広場に現れた夕立に注目する。

 

「えっと、あのライフルの形式は……何だっけ」

美保司令は腕を組んで銃の名称を思い出そうとする。

 するとベンチの横から女性の声がした。

「AS50……あれはフィリピンの米軍海兵隊から提供しましたよ」

いつの間にベンチの横まで来ていたケリーが説明した。

 

「あ、そうでした。スミマセン」

直ぐにベンチから立ち上がって彼女に向かって軽く頭を下げる美保司令。

 

 ただ、こういうやり取りは珍しくないのだろう。彼女は、それは気にせず話を続けた。

「夕立から聞きましたが、あのライフルは、ほとんど彼女ばかりが使っているようですね」

「はい」

 ケリーと美保司令は、お互いに話し始める。

 

 その時どこからともなく長髪の秋雲がベンチの近くの芝生の縁にやって来た。手にはトレードマークとも言うべきスケッチブックを抱えている。今日の制服はいつものオーソドックスなタイプだった。

 

 しかし今の彼女はオフなのだろうか? それとも任務なのか? 芝生の脇に座った秋雲はスケッチブックを広げて当然のように鉛筆を持ってサラサラと描き始めている。

「気楽なもんだ」

 提督は彼女を責めるわけではないが、何となく呟くように言った。

 

 その秋雲から少し離れた道路をダブダブの袖の艦娘が歩いて来た。ストリング付きの小さな銃を肩から掛けているから一応、巡回しているようだ。それは眼鏡をかけた巻雲だ。警戒している割にはのん気で、しかもペアは居らず単独行動だった。

「おい」

 提督は彼女に声をかけた。

 

「ふにゃ?」

……何だその返事は?

 

 ワンテンポ遅れて彼女が振り返る。肩から提げてる銃が泣くぞと思いながら提督は気を取り直して彼女に聞いた。

「秋雲があそこで描いているスケッチ……あれは趣味か? 任務か?」

「はにゃ?」

 この艦娘は、いちいち気が抜けるなぁと思いつつ我慢して返事を待つ。巻雲も改めて秋雲に気付いた様に芝生の秋雲を見ている。大丈夫か? こいつ。

 

「あはぁ、あれはね……任務かなぁ? うんとぉ、分かんない」

彼は思いっきり脱力した。

 

「分かった。もう良い」

力なく手を振って、行けと合図する。

「はぁい」

一応、敬礼をした彼女はゆっくりと立ち去る。ワザとやってるのか?

 そうして数歩、歩いた彼女は案の定、秋雲に声を掛けている。直ぐに雑談が始まる。そうか。この二人も仲が良いんだな。

 

 提督は再び芝生の夕立を見る。さすがに艦娘が地上でライフル銃を撃つという構図は珍しい。せっかくの機会だ。

「やれやれ」

軽く背伸びをした提督は重い腰を上げると芝生の広場に少し近づいた。

 

 夕立は片膝をついて芝生の上で銃を組み立て調整に入っている。

 それを見ていた提督に副大臣が近づいて言った。

「彼女は今日も白……ですな」

「あン?」

一瞬、彼の言っていることが理解不能だった。

 

 副大臣は声のトーンを少し下げて続ける。

「緑の芝生に金髪の少女が白い○ンツ……うん、見事なコントラストだ」

「……」

 今、分かった。真面目腐った顔でコイツ何を言っているんだ? ……ったく。こんな時でも副大臣の性格は変わらないんだ。しかも話しかける相手をしっかり選別している。提督としては夕立の○ンツが見えようが見えまいが、あまり気にしてないのだが。

 

「うぐっ!」

 突然、悶絶する副大臣。見ると横から副長官の強烈な肘鉄を食らったらしい……当然だ。

 彼は直ぐに副長官に詰問されている。

「お前は美保に何しに来ているんだ?」

「……ご、ご存知でショ?」

 

 こんなのが政治の中枢に居るから、わが国は深海棲艦に対して旗色が悪いのじゃないか? そう思わざるを得ない。提督はさすがに呆れた。こんなのに比べたらタヌキ爺さんの方が、まだマシだ。

 

 夕立は脚を広げた銃を地面に安定させると芝生に腹ばいになった。どこに持っていたのか頭にはヘッドフォンのような耳栓をはめている。

 

 海からの風が吹く度に夕立の短いスカートがピラピラして……確かに目のやり場に困る構図だ。だがこの夕立自身も余りそういうことには頓着しないタイプのようだ。

 

「あの子には何度もパ○チラには気を付けろって注意するんですけど。なかなか直りませんね」

 いつの間にか提督の側にやって来た美保の大淀が呟くように言う。

 

「いや大淀さん、別に無理に直す必要はないって……ごふっ!」

彼がそう言うそばから副長官のボディーブローを受けている。そのうち倒れやしないか?

 

 ギャラリーの『どつき漫才』をよそに夕立は淡々と射撃体勢を整える。

提督は改めて大淀に聞いた。

「標的はあるのか?」

「リモコンで車を走らせます」

 

 同じことを不知火も他の見学者に案内している。そのうちに芝生広場の反対側にリモコンカーが入ってきた。提督はちょっと驚く。

「何だ? リモコンって言うから、もっと小さな車かと思ったぜ」

 

 彼が言うまでもなくそれはフルサイズの軍用車を見立てた張りぼての車両でノコノコとやってくる。夕張が作ったのだろう。

 不知火が説明する。

「通常の上陸戦では、あのサイズの車両が複数台やって来ます。普段の訓練では、もっと単純な標的ですが今回は特別に実戦に近い条件設定で皆様には、ご覧頂きます」

 

 不知火の説明はそこで終わる。

実戦の設定が良く分からない提督は思わず呟く。

「実戦に近いって言うのはどういうことだ?」

 

 すると近くに居た神通が微笑みながら応えてくれた。

「あれが敵の車両だと仮定して見てください」

「つまり?」

 提督の問いに彼女は標的を指しながら丁寧に説明する。

「実際に上陸してくる敵の車両は弾薬や燃料を積載していますよね?」

「あぁ……」

「それを想定して、同量と思われる弾薬に見立てた火薬と、車両の燃料を積載して標的にします」

正直まだ良く分かっていない提督。

 

 すると見かねたのか今度は電チャンまで加わってくる。

「あれを敵の装甲車だとして、少し厚い鉄板で覆っているのです。でもあれに弾薬を積むと訓練では危険なので……今日はガソリンタンクだけを実車同様に組み込んで敵車両を想定した構造とガソリンの容量になっているのです」

 電チャンにしては妙に詳しい。美保鎮守府で何度も訓練している賜物だろう。

 

「へえ……手の込んだ訓練をするんだな?」

いつの間にか提督の横に立っていたブルネイの川内が反応した。

 

 すると彼女に気づいた神通が話しかける。

「ブルネイの川内……さんですね。美保の神通です」

「あ、ああ……」

川内もドギマギしたように返事をする。

 そういえばこの二人は所属は違うが姉妹だった。でも、お互いぎこちない挨拶をしている。何度もお互いにお辞儀をしている。その様は案外、可愛らしいものだった。

 

 不知火が『安全には考慮していますが万が一に備えて下さい』と注意喚起している。

 

 一瞬の沈黙。

 

 辺りはリモコンカーが動く音のみ響く。腹ばいになった夕立が珍しく集中している。そして次の瞬間、ガン! ……という鈍い音が広場に響き渡りリモコンカーから火花が散った。

 恐らく駆動部分に直撃したのだろう。車両は薄っすらと白煙を上げたまま停止した。夕立は身じろぎせず、もう一発、発射したようだ。いきなり車両が爆発し直ぐに火球に全体が包まれた。

『オオ!』

 見学者たちから歓声に近い、どよめきが上がる。見事にミッションクリヤー。夕立は直ぐに耳栓を外すとその場で立ち上がりギャラリーに向かって軽く一礼をした。

 さっきのパン○と言い、今のしぐさといい、やはりこの子も可愛い艦娘だ。

 

 神通が呟く。

「燃料タンクに引火させたのね……夕立、上手いわ」

 

「……」

 川内は無言。

 

 電チャンも補足説明する。

「一回の攻撃では一度に2発撃ちます。最初は先頭車両のエンジンを狙って足止め。次に敵の攻撃能力を奪うために特に燃料または弾薬を狙うのです。あの銃はオートマチックなので速射も出来るのです」

 

 ケリーも続く。

「普通、射撃チームは観測手とペアで行動するのにね……あの子、私が手伝おうかと言ったのに断って、たった独りで良く当てたわね。やっぱり艦娘は優秀だわ」

腕を組んだまま彼女は感心したように言う。

 

 確かに、ここまで本格的にデモをすれば見応えもある。ただ提督には川内が思いのほか衝撃を受けて固まっているのが気になった。

 隣に立っていた神通もそれに気付いたようで改めて川内に声をかけている。ハッとして我に帰ったような川内は慌てて首を振っている。

 

 電チャンも心配したのか美保司令に話しかけている。

「あの……ブルネイの川内さんは、どうかしたのですか?」

「……」

 なぜか美保司令も無言だった。それを見ていた提督は嫌な予感がした。

 

 コレは単なるライフル射撃のデモだけじゃない。明らかにウチの川内が美保鎮守府を詮索しようとしていることに感づいた司令が意図的に示威行動に出たのではないか?

 

……いや、まさか。

 

 だが正直、提督自身も、それは考え過ぎだと思いたかった。しかし何処か引っ掛かるものがあった。それは美保司令が謀ったというより元帥のジイさんだろう。あのタヌキ親父が後ろから糸を引いている。そんな気がする。疑心暗鬼で一杯になった提督だった。

 

 ところがなぜか美保司令も固まっていた。それに電チャンが最初に気付いた。

「司令官?」

「……」

 

続けて神通も声を掛ける。

「司令官、どうか、なさいましたか?」

「……」

 

その次の瞬間、美保司令が意外な発言をする。

「夕立のパン○か……思い出すなぁ」

 

『!』

 このビックリマークは、その場に居た二人の艦娘と、日本人関係者全員の感情だ。副長官は当然だが、良く見ると珍しく副大臣までが目を丸くしていた。もちろん提督もビックリだ。

 

 だが美保司令は、それには反応せずに上の空で何かを次々と思い出しているようだ。

「夕立のパ○ツ……見覚えがあるぞ」

 

 いつもクソ真面目な美保提督が、いきなり錯乱したかと思われた。美保の艦娘以外の全員が引いている。

 司令の言葉に対して副大臣が畳み掛けるように言う。

「おい! その一度リアルに経験したような物の言い方は何だ?」

 そういう自分自身はどうなのか? 何を鼻息荒く……鼻血が出るぞ! 彼はきっと羨ましいに違いない。

 

 だが美保の艦娘たちは違った。全員が一様に心配そうな顔をしている。

「司令官が……大変なのです」

慌てる電チャン。

 

「……」

 神通は何処かに無線を打っているようだ。

 

「繋がった……はい。司令が……とにかく早く来て下さい!」

 必死に叫ぶような声を出している彼女。

 

 美保司令はまだ何かブツブツ言っている。

「そうだ! 日向も……白かったな」

 

 いきなり美保司令が錯乱したことは一大事だが、何となく雰囲気が違うようだ。

 

 やがて直ぐに副司令である重巡祥高が寛代と共にやってきた。

「司令?」

「……ああ、祥高さん」

 

 もはや副司令とも呼ばない状態……だがその呼び方には一瞬、ハッとしたような表情を見せた副司令。

 やはり何かが彼に起きているようだった。

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
(ごません様とのコラボ企画作品)
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ10」とは
「美保鎮守府:第拾部」の略称です。
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