「美保鎮守府NOW」(第10部)   作:しろっこ

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 美保司令が永い眠りから醒めたように復活する。それが果たしてどのような影響を及ぼすのだろうか? しかし提督は、ある考えが浮かぶのだった。


第44話:<美保司令復活>(改)

 

「お帰りなさい作戦参謀……」

 

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「美保鎮守府NOW」(みほ10)

 第44話:<美保司令復活>(改)

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 寛代と共にやって来た副司令が、司令に声を掛ける。

「司令?」

「……ああ、祥高さん」

 

 彼は問いかけに対して、いつもの『副司令』とは呼ばなかった……その呼び方に一瞬ハッとしたような祥高。思わず寛代と顔を見合わせた。

 

「あの呼び方は、いつもご自宅で……呼ばれています」

電チャンが呟くように言う。

 

「何? 自宅? ……何で電チャン、知っているの?」

こういう話題に敏感に反応するのは、やはり副大臣だ。

 

 しかし、さすがに今この場で美保の艦娘たちが軒並み涙ぐんでウルウルしている状況下では、あまり個人的な意見を言うのも微妙な状況だ。

 

 そんな副大臣や金城提督が周りを見ると、他の海外武官たちも同様に感慨深い表情をしていた。要するに美保司令と縁のある者たちは、ほとんどが彼の記憶喪失という事情をよく知っていたのだ。

 

 聞くだけ野暮かと思ったが金城提督は念のために金剛に聞いた。

「一体何が起こっているんだ?」

「darling……美保司令が遠いトコロから戻って来たんだヨ」

 意外にも詩的な表現をする彼女……こいつも美保司令の事情を分かっていたようだと彼は思った。美保の金剛に聞いたのだろうか?

 

「ホラ……」

彼女に促された提督が見ると美保司令がこちらに近寄って来る。

二人は握手をした。

「金城提督、いろいろ御心配をお掛けしました」

 

提督は言う。

「本当に、お前か?」

「はい。霧が晴れたように、記憶がほぼ戻った感じです」

「そうか、それは良かった」

 

 提督には、まだ正直言って状況が良く掴めていなかった。社交辞令的にそう応えるのが精一杯だった。

 

 その時、向こうから艦娘が凄い勢いで走って来るのが見えた。疾風の如き島風……ではない。あの茶髪は?

「大井か」

 

「司令ぇ……」

 全力で駆けて来て息切れをした彼女。そのまま衝突するのではないかと思われたが、さすがに一旦、美保司令の前で立ち止まった。

 

「はあはあ……」

一瞬、間があって司令と大井は見つめあう。この二人も因縁深い関係だ。周りの者も固唾を呑んで見守っている。

 

 思えば数奇な運命を辿った大井である。主要鎮守府の提督はもとより海外の武官たちの間にも美保の彼女のことは薄っすらと知られ始めていた。

 ただ今もなお彼女の詳細な情報は伏せられているために、美保の大井は『東洋の神秘』とか『隠れた秘宝』と揶揄されることも多い。

 

 どちらが先に切り出すかと思われたが美保司令が先に口を開いた。

「大井、久しぶりだな」

「……」

大井は感極まっている。

 

美保司令は懐かしそうな顔をして言った。

「今度こそ、お前の名前を忘れなかったぞ」

「はい……」

ついに彼女は口を押さえて涙を流し始めた。

 

 美保湾から吹く風と、日本海の蒼い海と青い空。それまでの二人のわだかまりを全てを洗い流してくれるようだった。

 

 少しの間、静かに嗚咽していた彼女はハンケチで涙を拭くと敬礼をして言った。

「お帰りなさい作戦参謀……いえ、美保司令」

 

 司令も返礼をした。それに従うように場の全員が敬礼をした。当然、金城提督と金剛もそれに倣った。

 

 敬礼を解くと美保司令は帽子を取って全員に言った。

「皆様、いろいろ御心配をお掛けして申し訳ありませんでした。ただ本日は公式行事が続いています。細かいことは追って説明する場もあるかと存じますのでひとまず、この場は納めて予定を消化しましょう」

 

 全体に拍手が広がる。同時にウルウルしていた美保の艦娘たちも互いに頷き合うと改めて各自の持ち場に戻っていく。

 

 美保司令『復活』の報は直ぐに全軍に伝達されるだろう。そこで提督は少し心配に思うことがあった。

 今までは一部記憶に障害があるということで彼は不完全だった。それを副司令の祥高や他の艦娘たちが補佐をしていたのだ。だから今回もそうだが彼はいまひとつボーっとした感じであった。

 それが元の姿に戻ったとしたら?

 

 金城提督が知っている美保提督は過去からタイムスリップしてきた若い姿だ。まだまだ経験も浅く、いかにも新米であった。

 もちろん今だって10年近いブランクが生じるわけだが、その間も彼は完全に記憶が失われていたわけではない。むしろ今まで繋がらなかった部分がこれで完全に繋がることで彼自身にどういった変化をもたらすのか? ひいては美保鎮守府全体に、どういった影響が出るのか? 

 

 恐らく彼は様々な相手から今もなおマークされているに違いない。それがあの厳重な警備体制になっているのだ。この事実が本部に伝えられる過程で情報が漏れるだろう。そして再び怪しい者たちが動き出すのだ。

 

 その時、美保司令の携帯が鳴った。彼も携帯を持っているのだと思うと提督はちょっと不思議な感覚になった。

 司令はチラッと着信画面を見てから、やや緊張して電話を受けた。

「閣下……」

 

 やはり相手はタヌキだった。直ぐに美保司令は周りに会釈をしながら物陰の方へ行く。聞かれては困る内容を話すのだろう。

 

 そうこうしているうちに遠くからオスプレイの飛行音が響いてくる。

「お! 来たなっ」

 嬉しそうに反応するのは副大臣だ。直ぐに不知火と時雨が次の搭乗メンバーの案内を始める。

 

 彼女たちの姿を見ながら副大臣は独り言のように言う。

「司令の復活も嬉しいが、その煽りで飛行が中止に成らないかと冷や冷やしていたんだ」

「……」

その言葉に、やはり副長官は白い目で見ていた。

 

 オスプレイは美保鎮守府の上空を大きく旋回した後、着陸地点上空でホバリングをしながら徐々に降下する。

地上ではインカムを付けた艦娘が数名、着陸を誘導している。その様子はフッと空母の甲板をイメージさせた。

 

 その他に地上では強い風を避けるため、やや遠巻きにしながら皆が待機している。着陸地点はアスファルトと芝生なので、さほど砂ほこりは立たない。

 

 着陸誘導の艦娘たちはオスプレイの風圧に備えて予め長ズボンをはいている。

だが、それ以外の艦娘はスカートである。しかも艦娘はデフォルトでミニが多いから……あとは想像通り。

 

「ウム、絶景だなあ」

 強風で聞こえにくいが副大臣は相変わらず着眼点が怪しい。

 ここまで来るとエロ親父を通り越して、もはやエロ職人だ。

 

 ただライフル銃を担いだ夕立もミニスカートなのだが彼女はオスプレイからの強風に煽られるままでスカートがまくれようがパン○が見えようが全く気にしていない。

 彼女自身が大胆なのか鈍感なのか。さすがと言うしかない。

 

 そんな夕立を大淀がいちばん気にしているのだが彼女も自分のスカートを抑えるのが精一杯で夕立を構っている場合ではない。

 

 やがてオスプレイは無事に着陸。ハッチが開いて真っ先に出てきたのは早苗だった。彼女は一人ひとりの足元に注意を促しながら盛んに何かを気にしていた。時おり見せる視線の先は、彼女の父親である美保司令だ。

 

 恐らく美保鎮守府の誰かがオスプレイにも『司令復活』の連絡を入れたのだろう。元帥との電話を終わった美保司令は副司令の祥高と何かを話している。

 

 オスプレイを降りた武官や艦娘たちを確認して改めて「お疲れ様でした」と笑顔で出迎える美保司令。

 降りて来たメンバーのほとんどは美保司令の『復活』を祝福しているようだった。

 

 パ○ツをきっかけに始まった美保司令の意外とも言うべき『復活』劇。これも艦娘のパワーなのだろう。

それまでは少し緊張気味だった視察メニューも司令の『復活』を通して全体的にお祭りのような祝賀ムードで一杯に成っていた。

 

 その時、提督にはある考えが浮かんだ。そして川内の方を見た。偶然かテレパシーなのか彼女と目が合う。恐らく二人揃って同じことを考えて居るに違いないと思った。

 そう、この祝賀ムードを利用して美保鎮守府の謎を調べるのだ。ちょっと火事場泥棒のようで良心の呵責を覚えるのも事実だが、これも戦いの一種だ。チャンスがあれば最大限利用するのが軍人だろう。

 提督はかつて、当時の技術参謀がお祭りに乗じて機密情報を狙った騒ぎを思い出して苦笑した。まさか自分が逆のことをするようになるとは。

 

 それでも自分の計画を確認したいと思った提督は美保司令に近づいてさり気なく問いかけた。

「さっきのジイさんからの電話は何の用件だ?」

「ああ……あれですか」

 

警戒すると思ったが、彼はスンナリ応えてくれる。

「私のことを閣下にお伝えしたら直ぐに代理の者を送るから丁重に迎えよと」

「代理……まさか三笠でも来るのか?」

「さあ。ハッキリと誰とは仰いませんでした」

 

 誰が来るのか気になったが代理というからには年寄りではないだろう。いずれにせよ時間がない。決行するなら今夜辺りか? 

 

「第二陣、搭乗を開始しします」

 時雨が案内を始める。第二陣は提督と金剛、副大臣に副長官という重厚な布陣だ。

 川内とは後から話しをするか……と思いながら提督もオスプレイに向かおうとして傍と気づいた。

「あれ? 金剛は何処へ行った?」

 

その時、誰かが後ろから声を掛けてきた。

「あの……提督?」

「ん?」

 彼が振り返ると朝潮だった。彼女は、やや大きい銃のストラップを肩から担いでいる。

 

「奥様の金剛さんですが……ちょっと体調を崩されまして美保の金剛さんが医務室までお連れしています。ご本人からは『darlingだけ搭乗して良いからネ』との伝言をお預かりしています」

 朝潮は大きな瞳を見開いて緊張し、頬も赤くなっている。金剛の真似なんて恥ずかしいよな。

 

「分かった、ご苦労だったね」

 提督がそう言うと軽く敬礼をして逃げるように立ち去る朝潮。

 

「アイツめ……他所の駆逐艦に何を言わせるんだ?」

 さっきの灰皿といい今回の伝言といい、やりたい放題だな。少しは慎みってモノを知らないのか。

「そうやって、はしゃぎ過ぎたからバテたんだよ」

 

 そう言いながらもオスプレイへと向かう提督。すると搭乗者の点呼をしていた時雨が提督に向かって言う。

「ブルネイの提督だね。金剛がキャンセルになった代わりに、川内を搭乗させても良いって司令が言っているよ」

「そうだな……」

 

 提督自身はオスプレイにはあまり関心はないが、せっかくの機会だ。いずれブルネイにも導入されないとも限らないだろう。

「川内?」

 

 提督が振り返って彼女を探そうとすると、不知火が半ば強引に川内を引っ張っていた。さすがにその意外すぎる光景に苦笑する彼だったが彼も川内に声を掛けた。

「おい、せっかくだから乗ろうぜ」

 

 不知火には抵抗していた彼女だが

「……提督がそう言うなら」

そう答えて提督の言葉には従うのだった。

 なぜ不知火がそこまで積極的なのか謎だが職務に忠実なんだろう。

 

 それでも川内自身あまり気が進まないらしい。だが諜報活動をするにしてもいろいろ見ておくことは悪いことではない。提督は、彼女の機嫌を取るように状況を説明する。

「金剛が体調を崩したらしいんだ。こんな機会は、なかなか無いぞ」

 

「そうですよ。景色も良いですし、意外と乗り心地良いですよ」

振り返るとブルネイの青葉だった。

 

彼女の笑顔に川内も観念したようだ。

「そうか……」

 さすがに、ここまで推されると彼女も断りきれないだろう。大人しくオスプレイへと向かう。

 

 今度の搭乗案内は大井の娘、伊吹だった。

「足元に気を付けて……」

 ポーカーフェイスの彼女は、何となく加賀を髣髴とさせた。

 

「よろしく頼む」

「はい……」

 やっぱり加賀だな。

 

 最初に提督。続いて川内が乗り込んだ。

 

「はい、ちょっと狭いから頭を打たないようにね! 座席に付いたらベルト締めるのを忘れないようにね!」

 機内には漣が居た。何だ案内係はもう一人いたのか。

 

「あれ?」

 ハッチで何かゴソゴソやっているなと思ったら、最後に乗り込んだ伊吹が外から何かを搬入している……それは夕立が持っていたライフル銃だ。

 

「何で今さら?」

 提督の言葉に川内……いや、機内に居る全員が注目する。

 

 伊吹は漣を呼んでライフルを機内に運ばせる。もしかして……と誰もが思っただろう。案の定、ハッチから夕立が「よいしょ!」と言いながら乗り込んできた。

 

「白、白……」

 副大臣!いったい何処を見ているんだ? 彼は完全にエロエロ大王に違いない。さすがに皆、既にベルトを締めているから副長官も副大臣への攻撃態勢が取れずに悔しそうだ。

 

「どうするの? この長いの」

 漣がライフルのことを聞くと、まだベルを締めていなかった夕立は「自分で持つっぽい」と言った。

 

「何だかワクワクするな……機内から撃つんだろ?」

エロエロ大王が聞くと夕立は微笑んだ。

 

「そうっぽい。もうここからは何度か撃っているからね、今日もきっと上手くいくっぽい」

 大した自信だ。

 

「何だ? ……それで機内から撃つと言うのか?」

 川内の呟きつに振り返って応える夕立。

 

「そうだよ。今回はオスプレイからの狙撃を見せるっぽい。でもこれって効率悪いから実戦向きじゃない。この銃はセミオートだから実戦ならきっと、そっちのモードっぽい」

 夕立の顔は完全にマニアだ。

 

「夕立、早く離陸準備を」

 伊吹に急かされた彼女は機内の真ん中の床に小さなクッションを敷くと直にしゃがみ込む。汚れるのを気にする艦娘なら嫌がりそうな場所だが彼女は全く気にしていない。

 きっと機体の後ろ側……彼女の脚の方から見たらパン○が丸見えだろう。だが幸いなことに彼女は後方に座り込んでいるので前方に座ったエロエロ大王には彼女の背中しか見ることが出来ない。

 

「くっそう」

 何が『くっそう』なのか全く分からないが悔しそうな大王を見た副長官は、ほくそ笑んでいる。

 

 夕立は手早く銃を組み立てると一旦、床に置いて仮止めをする。床からはベルトが何本か出ていて夕立はそれで身体を固定する。最後にライフルと夕立を何かのジョイントで数箇所、固定をした。

「ロック確認……良いよ、行けるっぽい!」

 

 伊吹は夕立のベルト類をサッと確認すると、直ぐにバイザーで何かを呟きコックピットへ向かう。

 

 暫くすると、徐々にエンジンの音が高まって、細かい振動が伝わってくる。

いよいよ離陸だ。

 

 この飛び立つ瞬間は、軍でも民間機でもワクワクするな。

 

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
(ごません様とのコラボ企画作品)
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ10」とは
「美保鎮守府:第拾部」の略称です。
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