「美保鎮守府NOW」(第10部)   作:しろっこ

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夕立は見事な腕前で次々と標的を撃ち抜く。だが提督は川内が気になるのだった。


第47話:『金髪のスナイパー』(改)

「金パッ! と白ぉ……」

 

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「美保鎮守府NOW」(みほ10)

 第47話:『金髪のスナイパー』(改)

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「なるほどぉ。落下傘を付けていれば、ここから後ろに向かって勢い良く飛び出すわけだなぁ」

 副大臣は、のん気に言う。

 

 漣が聞く。

「あのぉ、落下傘ってなぁに?」

「ああ……パラシュートのことだね」

副大臣は笑顔で答える。最初っからそう言えって。

 

 すると副長官も反応する。

「今なら、その出口にお前を立たせて後ろから押してやっても良いぞ」

 

その言葉に副大臣は頭をかく。

「いやぁ……遠慮を」

と言いつつ、開口部から日本海を見る。

 

「でも、そっかぁ。この高度なら落下傘無しでも日本海に『着水』できそうだな。あっはっはぁ」

 おいおい、そこで笑うのか?

 

 さっきから夕立が床に張り付いて真剣に標的を狙っているに脇ではギャラリーはバカ話か。 ……ったく役人は気楽で良いなと提督は思った。

 

 しかし、これ見よがし的に、あんな人形の標的にしなくても良いのにと彼は思った。全部で7体。それが仮にブルネイへの当て付けでなかったとしても艦娘たちにだって決して気分の言い標的ではないだろう。

 

 ところが彼以外の人間も艦娘たちも、その『人形の標的』については全く気にしていない様子だ。いや『ブルネイ以外のメンバー』と言いかえるべきか。

 さっきは『当然』と言いつつも、やはり川内にとっては射撃の様子は気になるらしい。真剣な表情で夕立や標的の状況を見詰めている。

 

 夕立は微動だにせず、ずっと標的を狙っている。微妙に機体が揺れるから照準が合わせ辛いだろう。もっともオスプレイから狙撃をするという攻撃は現実的ではない。あくまでもこれはショーだ。

 

 提督がそう思った瞬間ライフルの発射音がして夕立の肩が小刻みに軽く揺れる。同時に機内にライフルのカートリッジが転がる。慌てた彼が双眼鏡で標的を覗いた瞬間、更にライフルの発射音が続いてカートリッジがカンカンと機内を飛び跳ねる。同時に堤防の上の人形が左から順番に粉砕されていく。

 

「連射?」

 提督が呟く間もなく堤防の上の標的の3体まであっと言う間に命中していく。その直後、夕立が「チッ」と言って顔を上げた。どうやら一発、外したらしい。

 

 副長官が眼を凝らして呟く。

「なるほど速いな。セミオートだけはある」

 

 副大臣も夕立を眺めて言う。

「うん、銃身の大きさに比べて反動は少ないね」

 

「そっかぁ、私もライフルの練習しよっかなぁ」

 漣がボソッと言う。それはちょっと身長的に無理が……。

 

 ギャラリーが対話しているうちにも夕立は再び銃を構えてスコープを覗き込んでいる。金髪のスナイパーか。夕立は長身でスリム体型だから案外、絵になる。

 

 彼女のスカートは意外に、めくれないが副大臣は上機嫌だ。

「金パッ! と白ぉ……」

 それは金髪のことか? さっきから彼はわけの分からない鼻歌を歌っている。絶対この大臣は変人だと提督は思った。

 

 機体の揺れが収まった次の瞬間、再びライフルの連射音が響いた。機内には発射した弾丸の青白いガスと独特の硝煙の匂いが充満する。床には次々とカートリッジがいくつか転がる。

 

 漂う銃のガスを扇子で扇ぎながら副大臣は言う。

「ゴホッ……オレは絶対に戦車隊には、なりたくないなぁ」

 

 副長官が突っ込む。

「何だ? お前、戦車に乗ったことあるのか? 海軍なのに」

「いやぁ、オレ一応政治家だからさ。ちょっとだけ陸軍で体験乗車して。あとは想像だよ」

 扇子で額を押さえながら、おどけたように答える副大臣。

 

 やがて「ほう」……っとため息をついて夕立は上体を起こした。続けてインカム越しに「ミッション終了」とだけ伝える。さすがに彼女は、ちょっと疲れたような表情をした。夕立って、いつも能天気で元気な印象があるだけに、その落差には意外な感じもあった。こういう素の姿を見ると艦娘を守ってやりたいという気持ちになるから不思議だ。

 

 ブザーが鳴って後部の扉がゆっくりと閉じ始める。ギャラリーの面々は慌てて双眼鏡で標的を覗くが結果は明らかだ。堤防の上の7体の標的を完全に破壊していた。周りには破片が飛び散って妙に生々しい。

 

 副大臣は満足そうに言う。

「やっぱり夕立ちゃんは上手だよね。センスが良いというか」

 

「……ぽい」

 床に散らばったカートリッジを拾い集めながら夕立は恥ずかしそうに答える。

 

 漣が言う。

「では当機は美保鎮守府の発着場へ戻ります。皆様、ベルトはそのままで今しばらくお待ち下さい」

 

 翼の方から何かが動く音がしてオスプレイは徐々に水平飛行を始める。ただ鎮守府までは、さほど距離は無いようで、あまり加速をせずにゆっくりと飛んでいる。窓から見ると透明な日本海が見える。

 

「やっぱり日本の海もキレイなんだな」

 窓の外を見ていた川内が呟くように言った。それは本心から言ったのか、それとも不安を紛らわそうとしているのかは定かではなかった。

 

 しかし提督は悩み始めていた。意外に繊細な感性を持つ川内。だからこそ索敵能力にも長けているとも言えるのだが彼女はまだ美保鎮守府の『残された謎』を調査する気で居るのか?

 

 もちろんそれは提督の直感だ。彼は鎮守府に戻り次第、時間を見て彼女に言うつもりだった。『もうこれ以上の調査は止めだ』と。

 いやこの際ハッキリと命令だ。それなら彼女も言うことを聞くはずだ。そうだ。万が一にも立派に成長した川内を失ってはならない。

 

 いや、待て『失う?』 ……彼は内心、反復して苦笑した。ここは友軍じゃないか? さすがにそこまでの事態に発展することは無いだろう。

 

 もし仮に川内が独りで突っ走ったとして果たして美保鎮守府の誰と戦うのか? 提督は考え込んだ。

 それは今見た夕立なのか? 或いはオスプレイか? もしくはM-ATVに乗った電チャンや神通だろうか? 

 近接戦なら川内に分がある。しかし相手は最新の米軍兵器をカスタマイズしている連中だ。その武器の能力はハッキリ言って未知数。それに今の夕立の腕を見れば他の美保鎮守府の艦娘達だって兵器の扱いには優れていることは予想できる。

 

 やれやれ……彼は肩をすくめた。友軍なのに戦う心配をするとは情けない。

 

……そのときだった。

「提督?」

 

 川内の方から声を掛けてきた。

「提督は、やっぱりあの標的を見て気分を悪くしたのか?」

 

 至近距離で少し下の方から心配そうな顔を寄せてくる彼女。また、あのお香のような気品のある香りが漂って来る。その表情と香りの相乗効果に、さすがの提督も少しドギマギしてしまった。

 

「ん……あぁ。あれは趣味が悪いよな」

 半ば照れ隠しをするようにして視線を逸らし窓の外を見詰める提督。

 

すると彼女も微笑んだ。

「そうだね……あれはちょっとね。でも……」

 

そして川内もまた提督と同じ窓を見ながら言った。

「でも近接戦なら人形の方がイメージしやすい……仮に自分がライフルを撃つ方だったら、やっぱり、ああいう標的もアリかなって思う」

 

 提督は、川内は精神的にもタフなんだなぁと思った。根っからの軍人。それは伊達に『夜戦』を連呼するだけではない。

 

 彼は改めて川内を見て言った。

「お前は、本当に軍人……いや、『ニンジャ』なんだな」

 彼女は少し顔を傾けて悪戯っぽい表情を見せる。

「フフフ、それは褒め言葉として受け取っておくよ」

 

 窓からの光が彼女の顔にハッキリとしたコントラストを描く。まさに川内だよな、この雰囲気は。そう、この艦娘は根っからのニンジャだ。諜報と戦闘のプロだ。それはまた同時に自分の闘い方に誇りを持っている何よりの証と言えるだろう。

 そこが彼女の魅力でもあるが……提督には今回に限っては何処か不安がよぎるのだった。

 

 彼は思った。この川内と、もっと早くケッコンしておけば美保鎮守府の最新兵器にも余裕を持って戦えたはずだったと。

 

 少し後悔をした提督は思わず言った。

「済まねぇな川内、お前を連れてきて」

 

 だが全部言い終わる前に彼女は悪戯っぽい笑顔で口の前に指を立てて彼を制した。

「らしくないぜ提督。武士に二言は無いって」

「……」

 ここにもし変人副大臣が居なければ提督はその場で川内を抱き締めていたに違いなかった。無事にブルネイに戻ったら、こいつとケッコンしよう。だから絶対に、いや万が一にでも美保鎮守府の連中に殺らせてなるものか。オレが身を呈してでもだ。彼は密かにそう決意するのだった。

 

 気がつくとオスプレイは既に美保鎮守府への着陸態勢に入っていた。エレベーターを下がるような感覚と同時に美保鎮守府周辺の海や建物など埋立地の景色が窓の外に見え始める。

 そして軽い衝撃と共に着地。早苗と息吹の艦娘二世コンビは良い腕をしているな。

 

 やがてベルトを外して漣が到着を案内する。

「お待たせしました。当機は美穂鎮守府オスプレイ専用発着場へ到着いたしました。皆様、お疲れ様でした!」

 

 コクピットからやってきたバイザー姿の伊吹が軽く敬礼をすると、ハッチを開ける。案内された提督たちは順番に機外へと降り立った。

 

 空調の効いた機内から外に出ると日本海の夏の日差しが照りつけるようだ。だが昼近くなって湿気は少な目だ。フッとブルネイの陽気を思い出させた。

 

「どうでしたか? なかなか良かったでしょう」

 愛用のカメラを抱えたブルネイの青葉が近寄ってくる。記者らしい帽子をかぶっている。

 

「そうだな……」

 提督がそう言いながら見ると夕立がライフルを担いだままケリーと話をしている姿が見えた。

 そうか、やはり夕立が搭乗するのは今回だけなのか。すると、あのライフル射撃はブルネイメンバーに対する警告的なデモンストレーションという意味が大きい、そう思えた。

 

 だから連中は体調が悪くてキャンセルした嫁艦・金剛の代わりに急きょ川内を搭乗させたんだ。しかも半ば強引に。

 そういう流れに持っていった美保鎮守府側には明らかな意図がある。そうでなければ、あの気難しい不知火が、わざわざ川内を引っ張るはずも無い。

「ジジイめ……俺たちに夕立の射撃を見せたのは、やっぱり警告なのか? それとも挑発しているのか?」

 

 その時彼は声を掛けられた。

「提督……昼食の時間だそうですよ」

しばらく写真を撮っていたブルネイの青葉が言った。

「ああ……」

 悩んでも仕方が無い。少なくともオレは独りではない。

 

彼は振り返った。

「行こうか川内」

「はい」

彼女は明るく答えた。

 改めて提督は思った。金剛はダウンしたがオレには青葉も川内も居る。大きく構えるさ。

 

 その時、遠くからリアルサイズの航空機のプロペラ音が聞こえてきた。その場に居た者たちは目を凝らしたり手をかざして音の方向を見た。

 ちょうど大山をバックにした機体が、ゆっくりと美保鎮守府への着水態勢に入ろうとしていた。

 

 提督は隣に居る青葉に聞いた。

「あれは?」

「えっと……」

 目を細めてジッと、その機体を見ていた青葉が続ける。

「あぁ、二式大挺のようですが多分、定期便ではないですね」

 

 彼女の言葉に提督は思った。

「ひょっとしたら、アレか?」

「アレ?」

 川内が不思議そうに言うと青葉は補足する。

「はいアレ……元帥の名代として来たメンバーでしょう。恐らく艦娘だと思われますが」

 提督が聞く。

「なぜそうだと分かる?」

 

 青葉は頷いて答える。

「先ほど美保司令が説明されたのですが今日、呉で射撃と回避の訓練が予定されていたらしいです。その教官達が横須賀から航空機で向かっていたのですが急きょ、元帥の名代としてこちらへ差し向けられたとか」

 それを聞いた川内は驚く。

「良いのか? そんなことをしても」

 

 青葉はメモを取り出す。

「呉の提督は実は美保司令の知り合いらしくて……予定を繰り延べることで了承したそうです。何よりも、その教官達が狂喜したとか、しないとかで」

 そう言って彼女は笑った。

「きっと美保司令の知り合いですよ」

「だろうな」

 提督も同意した。

 

 周りの武官や艦娘たちは、二式大挺を気にしつつも少しずつ美保鎮守府本館の食堂へ向かい始める。

 

 その時、提督はフッと嫁艦のことが気になった。

「食事前に金剛の様子を見に行くか……」

「そうですね」

「金剛、大丈夫……かな?」

 

 初夏の日差しは徐々に暑さを増していた。二式大挺は大きな水しぶきを上げて着水していた。

 

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
(ごません様とのコラボ企画作品)
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ10」とは
「美保鎮守府:第拾部」の略称です。
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