「指揮官になる人は皆、それなりのものを」
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「美保鎮守府NOW」(みほ10)
第48話:『見舞いと再会』(改)
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金剛の見舞いのために、金城提督たちは美保鎮守府本館にある医務室の扉をノックした。
「はぁい」
女性の返事が聞こえた。金剛っぽいけど……美保の彼女かもしれない。
「おい、入るぞ」
そう言いながら入室すると、窓際のベッドに嫁艦・金剛が上体を起こしていた。
そして、もう一人の金剛と話をしていた。ああ、美保の彼女か。
その金剛が立ち上がって敬礼をしようとしたので提督は制した。
「良いよ、挨拶は……オレの嫁艦みたいなものだしな」
彼がそう言うと、彼女は笑った。
ブルネイのメンバーは金剛のベッドの周りに集まった。
ここは規模が小さい鎮守府だから医務室と言っても、こじんまりしている。
しかも医師が常駐していない。艦娘が百人程度であれば、そんなものか。
提督は部屋を見渡しながら思わず言った。
「こりゃまるで学校の保健室だ……いよいよ美保司令が校長先生に思えるな」
「保健室?」
川内が不思議そうな顔をする。そうか、艦娘は人間の学校なんか知らないか。
だが、さすがの青葉が説明を加える。
「人間の学校には、もうちょっと立派な医務室があるんですよ。ブルネイぐらいの鎮守府になると本格的な医務室になりますけどね。でもここは、それらよりは小さいな…… ってことですよ」
「ふうん」
別に、そんなことはどうでも良い。そう思いながら提督は美保の金剛に差し出された椅子にゆっくりと腰かけて言った。
「何だ、意外と元気そうだな」
ニコニコして金剛は応える。
「ウン……さっきまで入渠させてもらって、直ぐ元気になったヨ。でも夕張さんが念のために休んだらって言うから」
彼は改めて金剛を見詰める。
「そういう格好も良いな」
「でしょ? ……美保の彼女に借りたんだ」
金剛は両手を少し開いてみせる。普段、着ないような可愛らしい寝巻きなので、かなり印象が違う。
当然サイズは同じだが……同型艦でも微妙に趣味は違ってくる。そこは固体差か。
川内が言う。
「やっぱり長旅とか環境の変化が原因かな?」
「うーん、そうかも知れないね」
そう言う金剛は、よく見たら頭の電探を外している上に寝巻き姿だから、もはや普通の少女にしか見えない。グッと来るな。
友軍とはいえ外地で他所の鎮守府にいると、さすがに若干の不安と緊張が続く。そんな中に居続ければ精神的に疲れてしまう。それが金剛だって言うのは、ちょっと意外だったな。
ただ同じブルネイの仲間が居るだけでも心強く感じることも事実だ。それが艦娘となれば一層の安心感がある。提督にとってそれは改めて感じる不思議な気分だった。
特に今回は川内との距離が縮まったように思った。独り善がりかも知れないが、これが終わってから改めてケッコンを打診すれば、きっと彼女の本当の気持ちが分かるだろう。
「darling」
「あ……」
ヤバイ、ちょっと妄想したから叱られるか? ……と思ったが、さにあらず。意外にも穏やかに微笑んでいる金剛。
「今ネ、美保の金剛といろいろ話をしていたんだ……そしてブルネイでは提督とケッコン出来る艦娘がたくさん居るんだヨって話をしたら、スッゴク羨んで居たんだよ」
「そうか」
あまり外地で『重婚』をひけらかして貰うと、さすがにちょっと気恥ずかしいなと提督は思った。
彼女は窓の外に広がる青い日本海を見詰めて言った。
「でも私たちはサ、急に生まれてきて……艦娘として、どこの前線基地に配属されるか選べないんだヨ。その先で出会った指揮官に全てを委ねるしかないんだって……そう思うとネ。私はブルネイで良かった。darlingと出会えて良かったんだヨ」
「……」
提督は無言だった。
すると金剛は、急に美保の金剛を見て慌てて手を振った。
「あ、でもね、美保が嫌だとか、そういうんじゃないヨ……ここの皆もとっても、とっても優しいから……どっちが良いとかじゃないんだヨ」
一瞬、何かを言いかけた美保の金剛は、直ぐに笑顔になって応えた。
「大丈夫。私も美保司令は尊敬しているし……」
そこで彼女もまた日本海を見ながら言った。
「私は、ここに配属されてネ。美保司令も最初は得体が知れなくて距離を置いてた……うん。最初は良く分からなかったンだ」
少しうつ向いた美保の金剛は両手を合わせてソッと唇に添え、しばらく考えていた。
そして、ふうっと息を吐くと、ゆっくりと話を続ける。
「でも赤城さんの轟沈を通して、たくさん苦しんだ。皆、一緒に泣いたンだよ。そして、いろいろ感じた。いろいろ……。そう、指揮官になる人は皆、それなりのものを持っているんだって思った」
その言葉に一同は頷いた。
彼女は再び考えるような仕草をした。そして窓の外を飛び交う海鳥を見ながら言った。
「艦娘が苦しんでいるとき指揮官はその何倍もの重みに耐えているンだヨ。目に見えない苦しみは戦闘が終わっても途切れないって……」
ベッドの金剛も、深く頷く。
二人は、お互いに目を合わせつつ頷く。何かを交わしているのか? そして美保の彼女は続けた。
「美保の司令官も、私達が戦う前から艦娘に心を砕いて心配し祈って下さっている。それを知ったから……私、仮にケッコンしなくても最期まで、ずっとこの人を支えよう。命懸けで護ろう。そう思ったネ」
「……」
そこで彼女は恥ずかしそうに言った。
「あ、ゴメン! こんな話、詰まらないよねぇ」
「いや……」
提督は何かを言おうとしたが言葉が続かなかった。美保の金剛は戦場ではないところでも、ずっと戦い続けているのだ。健気さを通り越して崇高さすら覚えてしまう。
ちょうどその時、誰かがドアをノックした。
「はぁい」
美保の金剛が返事をすると同時に、比叡、榛名、霧島が入ってきた。
「お姉さま……またおサボリですかぁっ!」
「比叡、ここは病室よ」
「体調はどうですか?」
……と、そこでブルネイメンバーに気がついた姉妹たち。慌てて敬礼をしようとしたが、それを制しながら提督は席を立った。
「良いよ、ここでの挨拶は」
それでも軽く会釈をする姉妹たち。
彼は改めて嫁艦金剛を振り返って言った。
「ブルネイに戻ったら休む間も無いからな……しっかり療養しろ」
「うん」
軽く手を上げながら病室を出る提督たち。彼らは美保の金剛姉妹たちに別れを告げ食堂へ向かった。
美保鎮守府の食堂。
昼食はバイキング形式だ。駆逐艦たちがせわしなく給仕をする。窓辺の席に陣取った提督たちは雑談をしていた。
提督は言う。
「今日のジイさんの代理は誰だろうな?」
「多分、日向ですね」
青葉が即答する。
「良く分かるな」
「ええ……」
彼女は得意のメモ帳を取り出して説明する。
「元々美保に居たという彼女は、事あるごとに、美保へ来たがっていたようですから。それに横須賀から呉に、わざわざ教えに行くくらいの射撃の名手といえば、ほぼ決まりでしょう」
それを聞いた川内が言う。
「日向か……どこの艦娘も、大体同じ傾向になるんだな」
提督も応える。
「そうだな。量産化が進んでも、基本的な性格や性質がほぼ同一というのはオレたち指揮官にとってはあり難いが」
そこで彼は一呼吸置いた。
「お前たちはドウ思うんだ? 自分と同じ名前・顔・性格の艦娘が各地に居るという気分は」
二人は顔を見合わせてから、まず青葉が言う。
「人間世界では、そういうのをドッペルゲンガーって言って恐れるそうですが。私たちにとっては、普通に『姉妹』という感覚ですね」
続けて川内。
「そうだな……まあ、お互いに所属する環境が違うから練度とか性格は違ってくるよね。私もここの神通と話はしたけど……ブルネイとは微妙に違うよな」
「そうか」
「うん。でも艦娘によっては、遠くの同型艦と情報とか経験値をシンクロさせることも出来るらしい」
「えっ!」
……と驚いたのは青葉。
「それは初耳ですネェ。どこで聞きました?」
そう言いながら目をキラキラさせてメモ帳を取り出す。
だが川内はちょっと肩をすくめて言う。
「そんなの覚えちゃ居ないよ」
「あはぁ、残念……」
そう言って青葉もメモ帳を閉じる。
その時食堂の雰囲気が少し変わる。案の定、美保司令が入ってきた。だがここの艦娘たちは、軽く会釈をするだけで司令には敬礼をしない。そういう「しきたり」に、なっているのだろう。
どうやら簡単に司令が挨拶するらしい。軽くお辞儀をした後に彼は霞からワイヤレスマイクを受け取ると話し始める。
「午前中はオスプレイが二回、飛びまして、その間に主に米軍提供の各種車両や小火器類について、ご見学頂きました」
その時、何かが廊下を激しく突進してくる気配がした。いや、それは最初は敏感な者にしか分からなかったかも知れない。何か大きなものが空気を乱している感じ……
「何か来るよ」
そういったのは島風だった。
「ええ?」
那珂ちゃんが振り返った瞬間だった。大きな足音と共に食堂の入り口に熊のような艦娘が現れた。
「美保司令!」
その雄たけびに近い大声には、何かを話そうとしていた美保司令も一瞬止まる。
いや、食堂の全員が硬直した。その威圧感のある風貌で眼鏡をかけた熊は……明らかに戦艦武蔵だった。
那珂ちゃんが叫ぶように言う。
「な、何で武蔵が?」
誰もが唖然としている中、武蔵はズカズカと食堂に入ってきて、
「司令!会いたかったぞ」
……と言うなり美保司令を太い腕で抱きしめた。
「あ……」
と言ったのは大淀と祥高。
だが時、既に遅し。気がつけば既に司令は戦艦武蔵の豊満な肉体にガッシリと埋まっていた。それは男性として羨ましいのだろうが、クソ真面目な美保司令にとっては逆に地獄なのかも知れない。
なぜ、こうなっているのか? 誰にも皆目、分からない。突然、出現した想像を絶する状況に周りの艦娘たちは、ただ唖然とするばかりだった。
そもそもクソ真面目な司令同様、真面目な美保鎮守府では、この突発事態は想定外であろう。取りあえず司令の生命に危険はなさそうだが相手は戦艦武蔵である。骨折の危険が……いや、どう対処して良いのかお手上げなのだ。
ところが島風と那珂ちゃんだけはケタケタ笑っている。そして二人の青葉は間髪を入れずに競うようにシャッターを切っている。ブルネイの青葉はともかく美保の青葉は薄情だな……おい。
「あの、武蔵様……」
「あん?」
武蔵が振り向くと祥高が敬礼をしながら問いかけた。
「私は美保鎮守府、副司令の祥高と申します。取りあえず司令を……」
それを聞いてハッとしたような武蔵。
なぜか一瞬、目を丸くして絶句したような表情を見せた。だが直ぐに穏やかな目に変わった。
「あぁ、そうだな祥高殿……つい取り乱してしまった」
そう言うと少し照れくさそうに美保司令を開放した。
武蔵は向き直って敬礼をした。
「横須賀から参った。武蔵だ……そうか、祥高殿は噂どおり、美保に居られたか」
すると祥高も改めて敬礼をした。
「うふ……相変わらずね、貴女は」
その場に居る多くの者が、この二人の関係を不思議に思っただろう。
だが確か祥高は、かつて中央……横須賀に居たことを一部の者は思い出していた。
「はぁ……」
ため息とも何とも言えない吐息を吐きながらフラフラと武蔵の腕から離れた美保司令だったが、足元がおぼつかない。
「危ない!」
比較的小さな叫び声……を上げながら美保司令を後ろから抱きかかえたのは、もう一人の艦娘だった。
「日向?」
伊勢が叫ぶ。そこには紛れもない、かつて美保に所属していた日向が居た。
美保司令もまた彼女に抱えられながら言った。
「日向か?」
彼女は恥ずかしそうな表情を浮かべながら、いつもの淡々とした口調で言った。
「お久しぶりです、美保司令……お痩せになりました?」
彼女のそのひと言で、ようやく場が和んだような気がした。そうか、やはり彼女たちがジジイの代理かと提督は思った。
「くっそ、羨ましい」
そう言ったのは副大臣。だが、すぐに副長官の肘鉄を食らってたので、それ以上は何も言わなかった。
美保鎮守府……小さいのに、いろいろ起こりそうな午後。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
(ごません様とのコラボ企画作品)
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ10」とは
「美保鎮守府:第拾部」の略称です。