「美保鎮守府NOW」(第10部)   作:しろっこ

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武蔵の意外な出現。だが意外なのはそれだけではなかった。



第49話:『武蔵の告白』(改)

「……私は日向が羨ましいのだ」

 

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「美保鎮守府NOW」(みほ10)

 第49話:『武蔵の告白』(改)

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 突然の大戦艦の出現に、食堂内もざわついている。

特に海外武官たちは「アレが武蔵か」と、興味津々と言った雰囲気だ。

 

 その時、美保司令は気づいた。

「武蔵様……腕が?」

 

 彼女は

「ああ……」

と眼鏡を押さえつつ司令に言った。

 

「司令殿、もう私に『様』を付けるのはやめてくれ。私のことは呼び捨てでで良い」

「はあ……」

 意外に、はにかんだような表情の彼女。そして自分の腕に手をやりながら言った。

「最近、危うく沈みかけてな……そのときの名残だ」

 

 美保司令は思った。彼女がその場に居るだけで引き締まる。独特の威圧感もあるし実際、駆逐艦にとっては彼女は、やや『怖い』存在なのかもしれない。

 もちろん島風のように武蔵と相性の良い艦娘もいる。だがなぜかどの鎮守府の武蔵も美保司令に特別な感情を持つことが多いらしい。

 かつてのブルネイの武蔵もそうだったが……横須賀の武蔵もそうなのか?

 

「ねえ日向……いつまで抱っこしているんだい?」

 伊勢が首を傾げながら言う。

 

 その呼びかけにハッとしたような日向と美保司令。そうだ、武蔵に注目するあまり司令がずっと日向に抱っこされていることを皆、忘れていた。

 

 慌てて離れる二人。そして、お互いに照れくさそうに会釈しあう。何となくこの二人はサイクルが似ているよなと提督は思った。

 

 腕を組んだ副大臣が、これ見よがしに呟く。

「良いよな、美保司令は」

「何が?」

 副長官が答えると、彼は彼女を見て言った。

 

「オレが女子を愛でようとすると皆、キャーキャー言って逃げるのに、その気も無いムッツリ美保司令には可愛い女子のほうから近づいて来るんだよな」

「……」

 

なぜ副長官が黙ったのかと言えば、反論できないからだった。

 

 考えてみれば艦娘の司令官と言う位置を除外しても彼の周囲には美人が多い。一般的な艦娘はもちろん、特殊な祥高、寛代、伊吹に早苗。どの艦娘も美人だ。

 そして副大臣が言うように、引き寄せられるようにして女子が集う傾向にある。それはまた美保司令を毛嫌いしている艦娘が少ないことのバロメーターでもあった。

 

「そりゃね、艦娘の尻を追いかけなければ嫌われないだろうケドさ。彼の場合は放置していても逆に女子が近寄って来るんだよな。放置プレイか?」

 何を観察しているんだ?

 

「まあ、彼の場合は、そういう傾向があるのだろう」

 あっさり言うなと思ったら、いきなりドイツ武官が乱入してきて驚いた。

 

「そうね……美保司令って、芸術方面に造詣が深いからビーナスが微笑むのよ」

 イタリア武官の説明は抽象的過ぎてよく分からない。だがさすが諜報部員たちは相手のどんな些細なことでも意識して見ているようだ。

 

「……」

 美保司令は否定も肯定もしない。何でこういう流れになった?

 

 気を取り直したようにマイクを持ち直した美保司令。誰もが釈明をするのだろうかと一瞬、期待をした。

「えっと……午後は、予定通り、オスプレイの飛行と兵器類の見学を続行します」

 その時、食堂全体に『がっくり』という擬音が踊った。

 

「おいおい、予定だとレクチャーの時間もあるよな?」

 当然の如く副大臣が突っ込みを入れる。

 

「はい。質疑応答も、その時間にまとめて行いますよ」

それを聞くと何度も頷く副大臣。

 

「何でも良いんだよな? ……質問って」

 意味ありげにニタニタして質問をする副大臣。

 

「はい、皆さん情報漏えいの覚書にも署名は戴いていますから海軍絡みであれば何でもお答えしますよ」

「海軍……りょーかい!」

 何を聞くのか想像できる。アホだけど憎めない副大臣だと提督は思った。

 

 美保司令は再びマイクを取った。

「え……、急きょ、本日は横須賀鎮守府よりゲストもお迎えしております。戦艦武蔵と航空戦艦日向です。お二人の紹介はまたレクチャーの時間に改めて行います。引き続き昼食の時間をお楽しみ下さい」

 彼は簡単にまとめた。

 

 直ぐに彼と副司令はゲストと会食をするようだが……場所を食堂にするか執務室にするか確認している。武蔵の性格からすると……と提督が見ていると予想通り、このまま食堂で食べるようだ。

 

 直ぐに窓際の席が準備され、そこに司令と副司令、大淀、そして武蔵と日向。なぜか寛代も座った。

 

 さほど機密情報も無さそうだが当然気になる……と思った金城提督。 

 だが武蔵たちの挙動が気になるのはドイツやイタリアも同様だった。何しろ武蔵は横須賀から来た大戦艦。そして航空戦艦まで従えている。さらに元帥の名代ともなれば当然、ただ事ではないと思うだろう。

 おまけに海外武官たちは諜報部員だ。何らかの手段で武蔵たちの会話を聞きだすのは、お手の物……早速、彼らは妙な動きを始める。

 

 こっちも負けられるか! そう思った提督は言った。

「おい、川内」

「了解」

 さすがニンジャ、命令する前から察しが良い。軽く敬礼をすると静かに動き出す。あまり近くも無くて遠くも無い、絶妙な位置に席を移動する川内。

 ……だがドイツやイタリア、そして米国のケリーまでもが同じような動きをしているぞ。

 

 それを見て、なぜかニタニタしている副大臣。当然彼らは微動だにしない。中央の連中だからな。直接、手を汚さない積もりか? ……いや別に人道に反するほど汚い内容でもないと提督は思ったが。

 

 以下、諜報記録。台本のようになる、悪しからず。

 

武蔵

(身を乗り出すように)

「水臭いぞ美保殿! なぜ日向だけが、お前の娘なんだ?」

 

美保司令

「はぁ?」

 

武蔵

(一瞬、変な表情をして)

「はあ? ……じゃないぞ、美保殿!」

 

祥高

「武蔵さん落ち着いて……あの、司令が何か失礼をしましたか?」

 

武蔵

(再び席に深く腰をかけて)

「聞いてくれ祥高殿……私は日向が羨ましいのだ」

 

一同

「……」

 

大淀

「羨ましいとは?」

 

武蔵

「つまりだな……そのぉ」

(明後日の方向を見て恥ずかしそうに顔をポリポリしている)

 

一同

「……」

 

寛代

「武蔵は、強いじゃん」

 

武蔵

(少し和やかな表情)

「言ってくれるな、寛代」

 

祥高

(たしなめるように言う)

「寛代ちゃん……」

 

武蔵

「フフフ、良いよ。それが普通の意見だ。だが……司令に見せたこの傷だが」

 

美保司令

「それは……最近のものですか?」

 

武蔵

「ああ……ほんの二ヶ月ほど前かな。これは久々の激戦だった。敵の雷撃に潜水艦、そして接近戦……どこかの鎮守府に影響されたのか敵の中にやたら肉弾戦の強いのが居てな、さすがの私も参った」

 

一同

「……」

 

武蔵

(思い出すような表情)

「何とか勝利は掴んだ。しかし結果は惨憺(さんたん)たるモノだった。気がつけば、敵味方共にほぼ全滅……いや、かろうじて私と随伴していた駆逐艦くらいしか残らなかった。その最後の一隻も途中で力尽きた」

 

祥高・大淀

「……そう」

 

武蔵

(腕を組む)

「私も大戦艦とか煽てられては居るがな。だが心の大きさなんて艦娘で、そうそう変わるもんじゃない。私だって単独で大海原に放り出されれば、時に心細くなることだってあるさ」

 

一同

「……」

 

武蔵

「やっと鎮守府にたどり着いて入渠したときは、ああ生きているな! と思ったよ」

 

一同

「……」

 

武蔵

(腕を解いて身を乗り出す))

「実は入渠中に一緒になった日向と話をして聞いたのだ。何でも養子になると心情が落ち着くと言うが本当か?」

 

大淀

(やや引き気味に)

「そうですね。そういう話は良く伺います」

 

武蔵

「大淀も……やはり司令と?」

 

大淀

「はい。恥ずかしながら親子になりました」

 

武蔵

「いや別に恥ずかしがることは無い。立派なことだ。それに武人たる者には精神の安定は不可欠なのだ」

 

祥高

「そうね……貴女は昔から禅とか瞑想に熱心だったわね」

 

武蔵

「ああ。それに美保司令も近代思想とか宗教学には造詣が深いと聞くが」

 

美保司令

「……」

 

武蔵

「私もそういう世界は好きだ。そしてお前たち夫婦は不思議な力を持っていると聞き及んで、もう居てもたっても居られなくなった」

 

美保司令

(笑いつつコーヒーをすする)

「別に……大げさですよ」

 

武蔵

「いや、日向に聞いたぞ。司令は普段は大人しいが実は、ひょうきんだと聞いた」

 

美保司令

(苦笑)

「まあ……でも親しい親子の間でしかやりませんよ」

 

武蔵

(それ見たことか、と言う表情)

「そこだ! それが艦娘には癒しになるんだ。おまけに祥高殿は艦娘を彼岸の際から何度も救い出していると聞く」

 

祥高

「あれは……まぁ、そうですけど。私個人の力ではなく艦娘の意思も大きいです」

 

武蔵

(軽く首を振る)

「いや誤解するな。別に私は命が惜しいとか無敵艦隊になるのが望みではない。それよりも……軍とか組織を超えて信用できる確かな絆が欲しいのだ」

 

一同

「……」

 

武蔵

「別れる可能性があるケッコンではない。もっと純粋で……永遠に続く動かしがたいもの。それは何だ?」

 

寛代

「武蔵は、強過ぎてケッコン相手が居ないじゃん?」

 

武蔵

(少しムッとする)

「言ってくれるな、寛代め!」

 

祥高

(たしなめるように言う)

「寛代ちゃん……」

 

 この段階で既に海外武官たちは諜報活動を中断した。武蔵の個人的な真情を聞くのは興味深いが結局は、それ以上でもなければ以下でもない。

 

 ただ川内は最後までしつこく留まっていた。何か思うところがあるのだろうか?

それを提督は敢えて止めなかった。

 

武蔵

「日向を見て思ったのだ。もともと落ち着いた艦娘だったが去年だったかな? しばらくソワソワしていた時期があったのだ。それが急に……ある日を境に突然シャンとして落ち着くようになった」

 

日向

「……」

 

寛代

「分かるの? 武蔵」

 

武蔵

「フフフ、お前には分からないだろうな寛代。私だって艦娘を見る目はあるぞ。日向の変化はな……恋愛とかそういう類ではない。もっとしっかりしたものだ」

(ここで武蔵はコーヒーをすする)

 

武蔵

「日向は明らかに何か変わった。そこに何か永遠に通づるものを感じたのだ。それはどうやったら得られるのか? とても気になってな」

 

一同

「……」

 

武蔵

「だから日向に『壁ドン』をして問い詰めたさ」

 

日向

(ポーカーフェイス)

「……」

 

寛代

「武蔵が……壁ドン?」

 

武蔵

「ああ。もはや恥も外聞も無いな。そして聞き出した。それが養子縁組だった。だから私は今日はこれを持って来たんだぞ!」

(胸のサラシから何かを取り出す)

 

美保司令

(サラシに突っ込んでいた行為に半分呆れた顔で)

「はあ?」

 

祥高

「何ですか? それは……あぁ、養子縁組の申請書ですか」

 

武蔵

(しわしわの紙を伸ばしながら突き出す)

「そうだ。海軍省発行の正式な養子縁組申請書だ。既に元帥と三笠殿の署名入りだぞ!」

 

美保司令

「はぁ……(苦笑)」

 

武蔵

「後は、お前たち夫婦の署名があれば良いんだろ?」

 

美保司令

「いや、しかし急に言われても」

 

武蔵

「何を言うか?(バン!)手紙で何度も養子のことに触れたぞ! 忘れたのか?」

 

美保司令

「え?」

 

寛代

「武蔵、司令に恋文書いた?」

 

武蔵

「違う!(頭を掻きながら)寛代には分からないかも知れないが、大人の真面目な手紙だ!」

 

大淀(クスッとしながら)

「あの……武蔵様って、筆まめなんですね」

 

武蔵

「そうだ、こう見えても私は手紙魔だぞ」

 

寛代

「メールでしないんだ?」

 

武蔵

(首を振る)

「メール? ダメだ。やはり直筆が良い。だが結果については今すぐ返事が欲しい……というか、ここまで来たのに今さらダメとは言わせないぞ」

 

寛代

「脅し?」

 

武蔵(笑いながら)

「こら寛代、人聞きの悪いことを言うな」

 

祥高

「ほら、ダメでしょ?」

 

武蔵

(真剣な表情。少し目が潤んでいるかも)

「もう一度言う。これは……私の願いだ」

 

司令夫妻

「……」

 

武蔵

「頼む司令、私に頭を下げさせないで欲しい」

(と言いつつ、頭を下げる)

 

美保司令

「どうする?」

 

祥高

「そうですね……武蔵さん、ホントに私たちで良いのですか?」

 

武蔵

「ああ。美保殿には縁があると言ったことがあるだろう?」

 

祥高

「最後の艦長……ですか?」

 

武蔵

「そうだ。だがそれだけではない。もっと広くて深い何かが繋がっている。それが私と美保殿とは強いのだ」

 

(少し間が空く)

 

武蔵

「こういう話をしても誤解をしないで真摯に受け止めてくれるのは、お前たち夫婦しかいない……あ、いや、元帥夫妻も理解はして下さるだろうが、さすがに年齢がな……まあ案の定と言うか、この話を相談したときも彼らは直ぐに書類に署名をしてくれたんだぞ。分かるか?」

 

(美保司令は深く頷く)

 

祥高

「でもせっかくだから、執務室で書きましょうか? 武蔵さん」

 

武蔵

(嬉しそうな笑顔が眩しい)

「かたじけない。そして戴けると嬉しい」

 

祥高

「大淀さんと日向さんも立ち会って下さる?」

 

大淀と日向

(頷く)

 

寛代

「……」

 

祥高

「ああ、寛代ちゃんも、もうオトナですものね」

 

 ここで一堂は席を立って、執務室へと向かった。

川内の諜報もここで終わった。

 

 彼女が席に戻ると案の定、副大臣がやってきた。まぁ彼は一応大臣の位置にあるわけだから……提督は川内に命じて一部始終を報告させようと思った。

 

 いろいろ起きる美保鎮守府の午後のひと時である。

 

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
(ごません様とのコラボ企画作品)
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ10」とは
「美保鎮守府:第拾部」の略称です。
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