「やっぱり人間との出会いが大きいわ」
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「美保鎮守府NOW」(みほ10)
第50話:『告白と緊急事態』
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金城提督たちブルネイメンバーの席に副大臣と副長官が共に近寄り声を掛けてきた。
「よぉ……ちょっと良いかな?」
「どうぞ」
一応、政治家といえども軍の関係者だ。そもそも『副』とはいえ大臣、つまりわが国の軍の指揮権を持つ人物なのである。それがどんなにエロ大王だろうが、道化だろうが関係ない。
また副長官も同様で彼女は今や軍令部の作戦参謀局のトップ代理である。命令されれば川内が仕入れた情報は提供せざるを得ない。その内容がたとえ武蔵の個人的なものだとしてもだ。
取りあえず川内を中心に、青葉が補佐をしながら二人に説明をすることにした。提督自身としては二度も聞くほどの内容ではないなぁ……と思いながらふと見る。やはりドイツやイタリアの武官が遠巻きにチラチラとこちらを見ている。
おい、そっちだって前半の情報は知って居るだろう? それに結局、後半を聞いても武蔵の養子縁組の話ばっかり。マジで聞くに値するものではない。敢えて連中に教える必要もないと思い放置する。
だいたい艦娘の心情吐露した内容は、艦娘関係者には資料的な価値もあるかも知れないが……思わず提督は席を立った。
「後は任せた。ちょっとタバコ吸って来らぁ」
副大臣を目の前にして中座する不届きモノはオレくらいだろうなと思いながら彼は食堂を後にした。目を丸くしていた副大臣の顔……滑稽だったな。
食堂から歩いて直ぐの埠頭に着いた彼は、適当な木箱に腰をかけてタバコに火をつけた。あ……灰皿が無い。そう思っていたら、誰かが「どうぞ」と言って灰皿を持ってきた。振り返ると大井だった。
「……ああ」
意外な艦娘の登場に、少し驚いた提督だったが、相手が誰であれ艦娘は艦娘だ。
「座るか?」
そう言って少し場所をずらした。
「ええ……」
ちょっと意外だったが彼女は彼の隣に座った。ほほうと内心、感心する提督。
「悪ぃな灰皿……お前はタバコの煙は嫌いじゃないか?」
「はい、いろいろあったから……慣れましたわ」
それを聞いた提督は、ああそうか。彼女はいろんな修羅場を……戦闘というよりも人生の辛酸を舐めてきたんだと思い出した。
そういう意味では艦娘の中でも極めて『人間的』ではないか? 案外オレみたいなアウトローとも付き合い易いタイプかも知れないなと彼は思った。
「お前……美保と、いろいろあったんだってな」
直球過ぎるかな? だがオレが睨んだ通りなら、この程度でビクつくタマじゃ無いだろう?
「ええ……」
そう言いながら彼女はクスクスと微笑んだ。意外な反応だな。
「ゴメンなさい、貴方って噂通りの方……」
「そうか?」
彼女は少し座り直してから、笑顔で言った。至近距離で見ると大井だって十分可愛い。
「良いのよ、自然体で……私もその方が気が楽だわ」
「ああ、だろうな」
なんだ、大井ってざっくばらんな良い奴じゃないか? 噂で聞く印象との違いに新鮮な驚きを覚える。だから彼女から何かを聞き出そうとか、邪(よこしま)な思いは消えてしまった。純粋に対等に話がしてみたい相手だと思わせた。
「お前……酒は飲まないか?」
ブルネイのBarにこいつを呼べたら楽しいだろうが現実的ではない。しかし純粋に聞いてみたかったのだ。
「そう、私ね、一時期、お酒に溺れたこともあったのよ」
「あ……そりゃ悪かったな」
提督はちょっと反省した。そこは彼女の黒歴史か?
だが彼女は続けた。
「ううん気にしないで。私も遠慮なく話せる相手のほうが良いから」
「……」
彼はホッとしてタバコをふかした。ちょっとは気を遣ったのだが、彼女は平然としていた。いや、むしろ何かを懐かしんでいるような表情だった。
しばらく無口でお互い、美保湾の向こうにある大山を見ていた。
やがて大井が口を開いた。
「私、記憶喪失とか言われているけど……実はもう、ほとんど思い出しているの」
「……」
いきなり来たぞ。
「死んだ夫もタバコが好きだった」
「……」
彼女は髪を掻き分けた。
「本当は私、美保司令が好きだったみたいだけど……それに気付いたのは、ホントごく最近だった。きっと意固地になっていたのね」
「……」
もはや艦娘とは思えない、あまりにも人間的な大井。だが多くの苦労が彼女をここまで成長させたのだろうか?
「提督も、いろいろ、お有りでしょう?」
突然振られた。ちょっと驚いた彼は、時間稼ぎでタバコをふかしてから答えた。
「まあな……だが正直、艦娘と出会って良かったぜ。そうだな、もし普通の生活をして普通の人間しか相手にしてなかったら、今のオレは無かったな」
彼が言うと大井は笑った。
「それは私も同じね……私の場合は艦娘というより、やっぱり人間との出会いが大きいわ……いろんな人。いい人も、悪い人も、それこそ万華鏡のようね」
そこで彼女は提督を見た。
「……一本、下さる?」
さすがにビックリした。だが彼は無言で箱を差し出した。彼女は慣れた手つきで一本、抜き出す。提督はタバコをくわえた彼女に火を貸した。彼女は海風から火を守るようにして着火させると、はあーっと煙を吐き出す。
またしばらく無言の二人。時おり海風に乱される髪の毛を気にする大井だったが……気がつくと薄っすらと目に涙を浮かべていた。
やがて彼女は短くなったタバコを摘んで言った。
「もう……今日、これで最後ね。最後……」
それ以上言葉が出ないようだった。じっとタバコを見て静止している。もしかしたら美保鎮守府では堂々と吸えないので隠れて吸っていたのかも知れない。
「お前も……大変だったんだな」
提督には、それしか言えなかった。
灰皿に吸殻を入れた彼女は立ち上がって大きく背伸びをした。
「はあ……スッキリした」
「そうか」
彼女は振り返ると微笑んだ。
「さすがに美保司令夫妻の前では、こういう告白は出来なかったの」
「良いさ。誰にでもそういう面はある」
彼の言葉に、静かに頷く彼女。海からの風が……急に止んだ。なんだろうか? 妙な感じが漂う。
そのときだった。提督と大井の携帯がいきなり変わった音を立てた。
「何だ?」
「……これはっ」
二人が言う間もなく、ゴーっという轟音と共に大きく揺れ始める埠頭。
「地震だ!」
思わずタバコを吐き出して大井を庇う提督。彼女も埠頭にしゃがみこむ。ふと見ると警備をしていた艦娘たちも、お互いに抱き合いながら何かを叫んでいた。
「慌てるな……ジッと待て」
「はい」
提督は自分に言い聞かせるように大井にも語りかけた。そんな最中ではあったが、彼女から川内とは違った微かな香りが漂ってくる。この非常時に不謹慎だなと自分で思いながらも、なぜかその香りに妙な安堵感すら覚える彼だった。
『やっぱり女性は良いなぁ……』
当然、心の声である。ただ彼女にはリアルで発声しても笑って受け入れてくれそうだったが。
揺れは、かなり長く感じた。どちらかといえば横揺れか? 海面にも幾筋かの白波が立っている。震源は何処だろうか? ……海だったらヤバイな。そう思っていると徐々に揺れが収まってきた。
取りあえず埠頭には倉庫くらいしか見えないが、さほど被害は出ていないようだった。町は見えないが、サイレンが鳴り響いている。
直ぐに放送があった。
「出雲方面の内陸部を中心とする地震が発生。津波の心配はありませんが余震の可能性があります。各自は第二種緊急体制にて待機。各リーダーは被害状況等を知らせよ!」
「取りあえず戻ろう」
「はい……」
二人は立ち上がった。
彼が食堂に戻ろうとすると大井は
「ありがとう、提督」
そう言いながら敬礼をしていた。
「ああ……」
彼も軽く返礼をしながら、食堂へと急いだ。
食堂は騒然としていた。午後の予定は全てキャンセル。数組の艦娘が海へ出るらしい。
美保司令は指示を出す。
「空軍の高尾電探が一時ダウンしている。オスプレイが哨戒に出るから緊急チャンネルを開いて回線を確保。装甲車も全て待機。あと……」
そこで提督に気づいた司令。
「お怪我はありませんか?」
「ああ、ダイジョウブだ」
「ちょっと失礼……」
彼は祥高を呼び寄せると、何か小声で指示を出している。彼女は軽く頷くと、寛代と大淀に指示を出す。二人は敬礼をして直ぐに散って行った。聞かれたらまずい内容かな? 提督は思った。
「オレたちも手伝えることがあれば、言ってくれ」
提督の言葉に微笑む司令。
「助かります……とりあえず敵の上陸に備えてください」
「地上戦か?」
「その可能性があります」
それを聞いた川内が言う。
「そりゃ、腕が鳴るな」
言うなり彼女はニンジャ刀に手を掛ける。いつの間に持ってきたんだ?
「非常時には常識だろ?」
ま、そりゃそうだ。
司令が提督に補足する。
「聞かれたかも知れませんが、空軍及び陸軍からの索敵情報が現在ダウンしています。この間隙を突いて敵が電撃作戦に出てくる可能性があります。いつも敵は、こちらの索敵範囲のギリギリのところで様子を伺っていましたから」
なるほど、そこまで敵の動向を掴んでいるのか。
「我々も可能な限り手伝うぞ」
ドイツとイタリア、それにケリーも申し出ている。
振り返った司令は矢継ぎ早に指示を出す。
「U-511は潜水艦部隊に合流して索敵。他は沿岸部で指示に従って下さい……神通と比叡、それに伊勢!」
すぐに呼ばれた艦娘たちが来た。
「君たちの部隊に海外武官が連れてきた艦娘たちを振り分けてくれ。今回は沖合いに展開せず、全部隊沿岸部で頼む。場合によっては上陸作戦に対抗することもあるので、携行可能な者は地上兵器も持参」
『了解』
艦娘たちは敬礼をして直ぐに散った。なるほど、美保鎮守府は小さいながらも小回りが利きそうだな。
「私たちも手伝うぞ」
武蔵と日向だ。
「武蔵は美保の金剛の指示に従って沿岸に展開。日向も沿岸で伊勢と共に航空索敵を頼みます」
『了解』
司令は二人に言う。
「弾薬は金剛や伊勢に言って、補充して下さい」
「分かった」
武蔵はウインクをして言った。
「フフフ、美保家の武蔵としての初陣だな」
それを聞いた日向も微笑んで言った。
「まだ敵が来ると決まったわけではありませんよ」
「分かっている。だが……きっと来るぞ」
その言葉に黙って頷く日向だった。
「司令!」
霞が来た。
「空軍の電探が復旧したそうです」
「分かった。すぐにリンクシステム……メインは通さず、一時的にサブチャンネルに接続させてくれ」
「了解」
霞は駆け足で戻る。
司令は提督に言った。
「私たちは司令室へ行きますが、提督も来られますか?」
彼は頷いた。
「ああ、見せてもらうよ」
「オレたちも良いかな?」
副大臣と副長官だ。それに海外武官たちも同行している。
「はい、参りましょう……この人数だと、ちょっと狭いかもしれませんが」
彼らは2階へと上がる。
2階へと上がると執務室の向かいに作戦司令室がある。
彼らが入ると、中には祥高と寛代、それに大淀が居た。さすがにちょと狭いかもしれない。
「あ……」
と言いながら状況を察した大淀が言う。
「私の端末だけ持ち出して別室でやりましょうか?」
司令は言う。
「いや、良いよ。様子だけ見て、あとは執務室でモニターするよ」
確かに狭いな……と誰もが思った。こればかりは小さな鎮守府ではどうしようもない。美保鎮守府作戦司令室。広さは12帖ほどだが各種通信機器が所狭しと置かれているので、当然狭い。
「それでも最新の機器に更新するたびに、広くなってきましたよ」
司令の言葉に、海外武官や提督たちは頷く。確かに、ほとんどの機械は最新らしく端末自体の厚みも少ない。
「以前はエアコンも無くて……夏は大変でしたね」
祥高が笑う。寛代や大淀も頷く。
ドイツ武官は言う。
「なるほど小さいながらも機能的だ。日本人らしいな」
イタリア武官も言う。
「そうね……あまりゲージュツ的じゃないけど、百人規模ならこんな感じかしら?」
続いてケリー
「でもここで美保エリアの陸海空の全ての情報と、艦娘たちの動向をオスプレイやM-ATV経由で米軍ともリンクさせているのよね?」
提督には正直よく分からなかった。
司令は頷く。
「はい。実はサーバーは地下にあります。それをファイバーで結んでいます。以前から何度か地震に遭っていますが、今のところ断線などの被害はありません。またメインサーバーは海軍省と米軍の施設も一部借りてますから、この鎮守府のシステム自体が一種の端末に過ぎません」
ほおっと感心したような一同。
その時、各種のディスプレイやランプが一斉にアラート信号を出した。
「やはり来たな!」
全員に緊張が走る。だが美保司令は落ち着いていた。
「大淀さん、全員に作戦Bで待機と指示」
「了解」
いよいよ始まるか。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
(ごません様とのコラボ企画作品)
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ10」とは
「美保鎮守府:第拾部」の略称です。