「美保鎮守府NOW」(第10部)   作:しろっこ

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いよいよ隠岐周辺の敵本隊への攻撃が始まる。だが形勢は美保が有利。そのとき執務室に艦娘がお茶を持ってきた。


第52話:『隠岐海戦』

「じゃあな、クソ提督……」

 

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「美保鎮守府NOW」(みほ10)

第52話:『隠岐海戦』

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 執務室内では各自、執務室のソファやイスに腰を掛ける。そして壁のスクリーンに映し出される戦況に注目していた。特に注目するのは隠岐の島周辺の敵艦隊だ。

 

 副長官が腕を組んで言う。

「第一次の攻撃で敵の本体の半数近くが殲滅されたのか」

 

司令が応える。

「そうですね……ただ地震の影響で、どうしても安定してレールガンの運用が出来ない状態です」

「それは痛いな」

 

……確かにスクリーンに表示されているレールガンの状況は軒並み待機状態になってしまった。

 

 金城提督も言う。

「最新の電算技術兵器も結局は、電気がなければただの箱だな」

 

「あはは……」

 痛いところを突かれて美保司令は乾燥した表情で苦笑している。

もちろん提督は悪気があって言ったのではないことは分かっていた。むしろ、その壁が無いことが彼の良い面なのだ。

 

 ドイツ武官が聞く。

「その米軍の開発したレールガンが、この山陰海岸にいくつか設置されているわけか」

 

 すると司令ではなくケリーが応えた。

「そう……山陰は空いている土地も多いですし、何より他地域よりも機密が守りやすい。それに美保鎮守府には過去に敵が何度も攻撃してきたという要素もあります」

 

 イタリア武官が言う。

「つまり壮大な実験場みたいなところね」

 

 提督も聞く。

「沿岸部の敵はかなり撃退したが……美保はやっぱりミサイルとか飛び道具系が中心か?」

 

 苦笑する美保司令。

「そうですね。もちろんミサイルもありますが正直、美保の艦娘も私自身も敵の上陸作戦や近接戦闘、特に肉弾戦は避けたい傾向がありますね……トラウマかなあ」

 

提督は言った。

「何だ、それならオレが稽古付けてやっても良いんだぞ?」

 

 彼の言葉に場の雰囲気が和んだ。

 

 ドイツ武官が言う。

「そうだな……前線の兵士はオールマイティなほうが良い。武器も使えて素手でも戦えるような艦娘が理想だな」

 

 それは諜報部員そのものだな。

 

 続いてイタリア武官。

「でもねぇ、やっぱり艦娘も鎮守府も個性はあるわ。指揮官によっても部隊の性格は変わるし。アタシとしては無理に『こうあるべき』って型にハメる必要も無いと思うの」

 

 この言葉には一同、頷いた。

 

 副大臣も言う。

「まあ政治家として言わせて貰えばレールガンとか飛び道具は予算が大きくなる。美保は実験場的に米軍が提供してくれているから助かるが、もしこれが『自力武装』となれば、もはや帝国海軍の予算だけでは、まかない切れないだろう」

 

 美保司令も答える。

「そうですね。理想としては今のうちに敵を叩いて置いて何とか講和に持ち込んで戦争終結となれば良いのですが……敵が聞く耳を持つかどうかですね」

 

 それを聞いた提督は『ほほう美保司令は、そこまで考えているのか?』と思った。もちろん現状では深海棲鑑が人類との和平交渉に応じる気配はまったく無い。

 

 ここで痺れを切らしたように副長官が聞いた。

「話を変えて悪いが……そのレールガンって言うのは、レーザー兵器か何かか?」

 

「えっと……何ていうか」

 司令はちょっと困った顔になった。

 

するとケリーが続ける。

「電磁石で高速弾頭を連射する兵器です。日本ではあまり研究されていないようですね」

 

 別にケンカを売っている訳ではないのだろうが副長官は少しムッとした。

 副大臣が苦笑して言う。

「いやぁ、研究はしていると思いますけどね、実証実験までは……やっぱり予算が厳しくて」

 

 その時インカムに受信した司令が返事をする。

「え? ……ああ繋いでくれ」

 

 何処かから入電したようだ。思わず聞き耳を立てる面々。

「どうだ様子は……うんうん。そうか。基本、君に任せるが……あ? いや」

 

誰だろうか? 口調からすると相手は指揮権を持つ艦娘らしい。

 

 司令の会話は続く。

「そうだ。全弾は撃たないで最初に2発、残りは様子を見て……だな。そうだ、ありがとう」

 

 会話の雰囲気から推測するに相手の艦娘は控えめな性格なのだろう。

 

「誰かな……」

 司令と同じく艦娘を束ねる金城提督としても、そこは関心があった。

 

「ウフフ、艦娘の部隊の指揮官って、皆、やさしい口調になるのよね」

イタリア武官がクネクネしながら言うとドイツ武官は応える。

 

「いや、そうとも限らん。わが軍では総じて敬語など使わん。ビシッとしているぞ」

 

すると苦笑したイタリア武官は手で何かを払うような仕草をした。

「やぁねぇ、だからドイツ人は無骨だって言われるのよ!」

 

 ちょっとムッとしたドイツ武官。

 

 すると副大臣が加わる。

「しかし、このブルネイの提督殿も、どちらかと言うとドイツっぽいと言うか、あまり優しくはないぞ」

 

「あはは」

 提督は適当に笑っておいた。余計なお世話だ。

 

「クソ提督は居るかぁ!」

 いきなりノックもせずに艦娘が執務室の扉を開けた。

 

「クソ?」

 武官たちが目を丸くしている。司令と提督は苦笑している。お茶を持って来た艦娘らしい。

 

「やぁボノちゃん、相変わらずだねぇ」

 副大臣が笑顔で手を振るが完全に無視された。

 

「提督?」

 そう言いながらドイツ武官が金城提督を見るが、曙は美保司令を見ている。

 

「けが人を給仕に使うとは、いい度胸だね? ……このクソ提督!」

 そう言いながらも、お盆に載せた茶碗を司令の袖机に置いて給仕の準備をしている。

 

「失礼」

 実はもう一人の艦娘がポットを持って入って来ていた。響だ。

 

 ドイツ武官は思い出したように言った。

「駆逐艦、曙と響か」

 

 曙は給仕をしながら、それでも軽く会釈をした。響は「よろしく」と小声で言いながらその場で軽く敬礼をしている。

 

「それ、こっちに早く寄こしなさいよ!」

 茶碗を並べ終えた曙が響に命令口調で言う。言われた響はマイペースでそれに従うが明らかに二人のテンポはかみ合っていない。

 

「ボノちゃんボノちゃん、クールダウンだよ?」

 半分からかうように副大臣が言う。それでも無視し続ける曙。

 

 やがて二人は、各自にお茶を配り始める。その間も曙は司令をチラチラ見ているが、響はスクリーンの情報を気にしているようだった。

 

「頂きマース」

 おどけたように言うのは副大臣。この人もマイペースである。彼の言葉を合図のように各自が、お茶をすすり始める。

 海外武官たちも日本語が堪能なだけあって、緑茶も抵抗無く飲めるようだ。

 

「ありがとう。戻って良いよ」

 司令が言うと、響は軽く手を上げて言う。

 

「司令官……戦況は有利なのか?」

「ああ、沿岸部はかなり掃討したから、あとは沖合いの本隊がどうなるか……だね」

 司令が応えたタイミングでスクリーンのある一点、赤碕沖の海上で『OK』の点滅表示。

 

すぐにインカムに反応があったらしく司令が応える。

「OKだな? よし分かった。最初に2発、残りは状況次第だ」

 

 彼の言葉で全員がスクリーンに注目する。赤碕沖の点滅は『FIRE』に変わる。直ぐに隠岐周辺の赤いマーカーで美保湾に最も近い二つの点にボックスが開き、カウントダウンが始まる。

 一同……曙や響も含めてその数字がゼロになるのを見詰めていたが、やがて『HIT』表示。続けて二つの光点は消滅した。後は沈んだ敵艦の概要データがボックス表示されデータベースに自動照会されている。

 

「轟沈か……」

 副長官が呟くように言う。と、同時に隠岐周辺の敵部隊の陣形が突然乱れ始める。

 

 ドイツ武官が言う。

「ついに混乱し始めたな」

 

それを見た司令はインカムに指示を出す。

「アケボノ、残弾すべて発射だ。標的はプログラムに任せて良い。……そうだ、終わったら君は交代してくれ……あ? いや、そんなことは無い。君の手柄だ。うん、ありがとう……いや、良いよそんな……君の気持ちだけで十分だから……」

 

 何、いちゃついているんだ? 的な会話に一同は苦笑している。もちろん司令も苦笑しながら、インカムを外した。

「どうやら収束しそうですね」

 

 スクリーンでは残弾による次の攻撃が実行され再び敵の轟沈表示。あとは司令が言う通り敵の部隊は完全に戦意を喪失。退却を開始した。

 

 画面では自動的に各部隊へ撤退命令が指示され撤収が始まる。

 

副長官が聞く。

「このシステムは撤退命令も出すのか?」

 

司令は応える。

「はい。もちろん最終決定は司令部が判断しますから、副司令が指令室から指示を出しています。このスクリーンでは一瞬表示されただけですが、最も効率的な帰還ルートや、その際の装備すべき武装、各残弾や燃料。そしてお互いに不足している場合には誰に渡すか? というところまで全て現場の艦娘にも自動的に指示が出ます」

 

副大臣も唸る。

「至れり尽くせりだな」

 

司令は言う。

「人間がやれば、数十人規模の司令部が必要になりますが、計算部分はすべて電算機がやってくれますからね。美保鎮守府規模でもかなりの戦闘ルーチンが実行できるようになります。高効率ですよ」

 

 スクリーンの画面両サイドには、今回の敵の種類や、こちらからの攻撃のヒット率、その他が次々と表示され、自動的に処理されていく。

 

ケリーも言う。

「これらの戦闘情報が米軍と共有されて蓄積されて次回に生かされます。その分析処理もほぼ、自動的に電算処理されます。人間がやったら数日かかるものが、わずか数分で終わります」

 

「あっけない……ものだな」

副長官が淡々と呟く。ただそれは金城提督も同様だった。こんなスクリーンだけで終わってしまう戦闘があって良いのだろうか? いや、戦争に良いも悪いも無いのだが……。

 

 なるほど、こういった電算化システムによって人間や艦娘の経験だけで戦うのではなくなる。基本的な戦略や武器の選択、さらに照準まで機械に任せて艦娘や我々は戦いに専念するだけだ。戦闘中の交戦データまでもリアルタイムで蓄積され戦術に反映されていく。そして戦闘結果はデータベースに蓄積され、次回の戦闘にまた反映される。

 

 これが現代戦? どこか納得できない部分が残る提督だった。

 

「アケボノって言うのが部隊名ね?」

イタリア武官の指摘に、ハッとしたような一同。思わず曙に注目が集まる。

 

「……な、何だよ? アタシは関係ない……ってかホラ、行くよ! 響っ」

 なぜかお盆を抱えて真っ赤になる曙。その仕草は艦娘というより普通の少女そのものだった。

そそくさとお盆や急須を片付けると、響を急かすようにする曙。

 

 ただ、それでも彼女は司令の横を通り過ぎる際に小声で「じゃあな、クソ提督……」と声を掛けていた。

 

 そのままドアを開けて軽く会釈をして退出する曙。続いて、ドアの前で敬礼をしてから退出する響。

 最後にドアが閉まると執務室には急に静けさが戻って来たようだった。

 

「まるで嵐だな……いや、曙一人だが」

苦笑する副長官。だが海外武官も含めて、その曙自身が、その言動とは裏腹に司令を慕っている雰囲気は感じていた。

 だから司令も特に曙の言動を一同に詫びることは無かった。

 

 突然ケリーが口を開く。

「曙……POLAもあんな感じだわ。裏表があるのよね」

 

するとイタリア武官も言う。

「それは、うちのリベも同じよ」

 

するとなぜかドイツ武官に注目が集まる。彼はそれに気付いたようで口を開いた。

「U-511か。あの子も、あそこまで極端ではないが、性格は良い」

 

 口には出さなかったが金城提督も同様に感じていた。艦娘は皆、一途で優しい心を持っている。それを外見だけで判断して捻じ曲げてしまうのは結局、人間の指揮官であり組織なのだ。

 

 ただこの場に集ったメンバーは全員が艦娘の本質を理解していることに、ふと安堵する提督だった。彼は同行していた金剛や川内、そして青葉……いや、ブルネイに残してきた全ての艦娘たちのことを想っていた。

 

 ホームシックではないが改めて、早くブルネイに早く帰ってやりたいなと思うのだった。

 

『いつまでここに釘付けかな……もう宿題は良いだろう?』

 彼は心の中で呟いていた。

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
(ごません様とのコラボ企画作品)
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ10」とは
「美保鎮守府:第拾部」の略称です。
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