「美保鎮守府NOW」(第10部)   作:しろっこ

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ゲーム感覚であっけなく終わってしまった戦闘であったが、某国が絡んでいたこともあり戦後処理が必要になるのだった。


第53話:『戦後処理と大晩餐会』

「実戦が最大のレクチャーだな」

 

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「美保鎮守府NOW」(みほ10)

第53話:『戦後処理と大晩餐会』

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 ドアをノックして副司令官の祥高が来て敬礼をする。

「司令、今時点でのご報告に参りました」

 

「ああ、頼む」

司令が応えると彼女はバインダーをめくりながら報告する。

 

「隠岐周辺の敵は撤収。また海岸に展開していた敵も航行可能な者は退却。一部は自爆しました」

 その言葉に一同は沈痛な表情になる。

 

 祥高は続ける。

「一部の敵が上陸を試みましたが全て撃破。これは陸軍の協力を得たようです。この詳細については後ほど陸軍から資料を持参するとのことです。また敵の残骸は陸軍が回収を希望しておりましたので、そのまま提供致します」

 

 提督が司令を向いて聞く。

「ウチ(海軍)で回収しないのか?」

 

 司令は応える。

「よほど特異な敵でなければ全部、任せています。ウチ(美保)では場所も時間も人手も不足していますから。もっとも、この美保地域では陸海空軍が、お互いに緩やかに連携していますし調査結果はきちんと報告書をくれるので良しとしていますよ」

 

「ふーん」

 腕を組んで応える提督。正直彼にとっても、どうでも良いのだが。

 

 祥高は続ける。

「その件ですが今日の戦闘も含めて陸軍と空軍から担当者が打ち合わせ希望しています。どちらも美保鎮守府で希望されていまして時間はこちらに一任するそうです」

 

 司令は応える。

「空軍と陸軍か。15時でどうかな?」

「承知しました。先方に伝えます」

 

 副大臣は言う。

「その報告はオレと副長官も同席するから、その旨は先方に伝えてくれ」

 

 そこで副長官が口を挟んだ。

「あと姉さん、軍令部からの情報で分かっているとは思うが舞鶴と佐世保にも戦闘があったことは口頭で伝えておいてくれ」

「分かったわ」

……そこだけ一瞬、姉妹の会話になる。ちょっと微笑ましかった。

 

 祥高は続ける。

「あと今日の午後、予定されていた見学とレクチャーは中止で宜しいでしょうか? 艦娘たちも疲れてますし」

 

 司令は返事をする。

「ああ、そうだね。哨戒や警備担当以外は前線に出た者から優先的に臨時休養を与えてくれ。もちろん点呼と装備チェックは忘れないように」

「承知しました」

 

「……後は無いかな」

「はい、では……」

ここで祥高と司令は互いに軽く敬礼をして、彼女は退室した。

 

 副大臣はイスに深く腰を掛けて言った。

「そうか、いよいよ『戦後処理』だな」

 

 副長官も、しみじみと言う。

「しかし電算化と兵器の強化で戦闘もあっという間に終わってしまう時代なのかな」

 

全員苦笑する。

 

 副大臣が言う。

「今回の敵は、やはり深海棲艦だけじゃないんだろう? 国際問題になるぞ」

 

 続けて副長官。

「やはりシナか?」

 

 司令はちょっと困った顔をする。

「データ分析してみないと分かりませんが……識別コードでは某国が入っていたとだけ、お伝えしておきます」

 

 彼はケリーと顔を見合わせる。

「スミマセン、機密事項なので」

 

 副大臣は頭の後ろで手を組んだ。

「ウン、ウン、そうだね。機密事項だよな」

 

 するとイタリア武官が言う。

「現場は、こんなに打ち解けているのに軍組織とか国境の壁って厚いのねえ」

 

 ドイツも言う。

「そうだな。わが国ももし先の大戦後に占領されていたら分断統治されていたと言う話もある。貴国もそうだろう?」

 その言葉に日本人メンバーは頷く。

 

 ドイツ武官は続けた。

「同じ民族、国家が分断されることは悲劇だ」

 

 司令も言う。

「せめて……このブルネイを中心とした私たちは、この友好関係を続けたいですね」

 

 提督も応える。

「そうだな。艦娘を仲立ちとした友好だな」

 

 その言葉に、改めて場の雰囲気が和む。

 

 司令が言う。

「午後からレクチャーがなくなりました」

 

彼は武官たちを向くと申し訳無さそうに言う。

「この後の陸軍や空軍との報告には米軍も同席することになりますが、ドイツやイタリアの皆さんには、ちょっとご遠慮頂く事になりそうです」

「ああ」

「仕方ないわね」

 海外武官たちは納得したように応える。

 

 司令は言う。

「ゲストの皆さんは、ちょっと時間が出来てしまいますね」

 

イタリア武官が応える。

「仕方ないわ」

 

続いてドイツ武官、軽く腕を組んで言う。

「ただ実戦の状況を司令の説明つきでリアルタイムで拝見出来たから我々としては、これでも十分と言える」

 

 副長官は眼鏡を軽く持ち上げて言う。

「ああ、実戦が最大のレクチャーだな」

 

 クネクネしてイタリア武官が言う。

「そうねえ……まぁウチの司令部にはここまでの設備はないけど、米軍がウチにも提供してくれないかしら」

 

 苦笑するケリー。

「私はフィリピン米軍なので欧州は分かりませんが……」

 

 するとドイツが補足するように言う。

「必要なら今後そういう話もあるだろう。深海棲艦は、世界共通の課題だ」

 

 副大臣も言う。

「まあオレたち官僚や制服組は、たまたま現場に居てラッキーだったな」

 

 司令は補足するように説明する。

「今回、海外の艦娘にも多少参戦して頂いているので、あとで個別にお話は伺うかもしれません」

 

 すると副大臣が提督を見て言う。

「義務ではないがブルネイも15時からの話し合いには参加出来るがどうする?」

 

 提督は肩をすくめるようにして応える。 

「オレは良いよ。会議とかって面倒だからな」

 

 そう言いながら、ふと時計を見る提督。何かを思いついたように口を開いた。

「どうだろう、せっかくだからオレが艦娘たちに何か作って、ご馳走してやろうか?」

 

 急にその場のメンバーの目の色が変わる。なるほど皆、ブルネイ提督の「Bar」の噂は聞いているらしい。

 

 副大臣と副長官がほぼ同時に言う。

「噂のブルネイ鎮守府メニューか!」

「それは期待できそうだな?」

 

 司令も尋ねる。

「良いんですか?」

 

 提督は頭の後ろに腕を組んで答える。

「ああ……材料の買出しとか手伝って貰うかもしれないが、オレも腕を揮(ふる)わないと鈍(なま)ってしまうからな」

 

 そうなると食事会、いやパーティかイベント規模になる。司令はデスクに近寄ると、おもむろに内線を取った。

「祥高さんか? 食当に伝達してくれ。今日はブルネイの金城提督が料理を作ってくれる。足りない食材の買出しと調理の補佐を頼むと……ああ、経費も頼む」

 

 それを聞いていた海外武官も言う。

「提督だけに仕事をさせるのは悪いわ、私も加勢して良いかしら?」

 

 イタリア武官に続いて意外にもドイツ武官が言った。

「では私もドイツの伝統料理を振舞ってみようか?」

 

 微笑みながら司令は言った。

「これは、もっと補佐役が必要ですね」

 司令は誰かを呼び出した。

 

 直ぐに鳳翔が来た。司令は彼女に言った。

「鳳翔さん、今日は金城提督と海外の武官が夕食作ってくれることになった。かなり大掛かりなものになりそうだ。そこで美保と彼らの調整役を、お願い出来ないかな」

 

 物静かに状況を理解した彼女は、微笑みながら言った。

「いつも手伝ってくれる駆逐艦たちも、補佐をお願いしても良いですか?」

 

 司令は応える。

「分かった、副司令には言っておく。あと戦闘参加組で疲れている子は外してくれ」

「承知しました」

 彼女は軽く頭を下げて退出した。

 

 美保司令は時計を見て言った。

「ではこの場は解散して私とケリーさん、副大臣、副長官は陸軍、空軍との情報交換。金城提督とドイツ・イタリアの武官の皆さんには、一旦食堂に下りて頂いて、さきほどの艦娘、鳳翔さんと食事の準備をお願いします」

『了解』

 

 その後、青葉の報告によると提督には鳳翔さんと雷、吹雪など駆逐艦が補佐に入った。大部分の食材は在庫分で賄(まかな)えたが、金城提督が地場の食材を見たいとのことで電チャンの運転で境港の市場などを見て回ったそうだ。

 

 なお、この際の軍用車は残念ながらM-ATVではなく三菱の普通のタイプだった。

 

 イタリアにはリベッチオとPOLA、そしてドイツにはU-511と潜水艦たちが数名、手伝いに入ったらしい。

 

 食事会と言っても最初は食堂でこじんまりとしたイメージしかなかった司令だった。だが良く考えたら美保の食堂には百名も入らない。

 

 そう思っていたら、金剛などかつてブルネイまで遠征したメンバーを中心に『屋台』を組んではどうか? という提案があり、それを受け入れた。

 

 金剛や比叡、夕張たちを中心として美保鎮守府の中庭を中心として簡易的な屋台が次々と設営された。食事を作らないで手持ち無沙汰の艦娘たちが喜んでその作業を手伝うので中庭を中心に、ちょっとした賑わいが起きる。

 

 やがて陸軍と空軍のスタッフが鎮守府に到着した。彼らと会議をしながらも担当官たちは『何が始まるんですか?』と興味津々であった。

 

 そうこうしているうちに、食事会の話になり、陸・空軍の幹部を中心に両軍の希望者も招待することになった。また彼らから地元自治体も声を掛けてはどうかという話になり、陸軍が輸送を担当して参加者を募ることになった。

 

 そうなると食事の量が足りるか心配になった司令だった。

 

 しかし参加者が増えることを聞きつけた提督や海外武官、また食事担当の艦娘たちが奮起して、直ぐに追加されたようだ。

 

 日が傾く頃になると屋台だけでなく妙な電飾や提灯、LEDライトなどが鎮守府のあちこちに飾られた。また風船や各種飾りつけも進んでいた。なぜ、こういうことは素早いのか疑問に思う司令だった。

 

 ちょうど戦闘に勝利したこともあり鎮守府全体の祝賀ムードも高まっていた。

 

 ただ司令は副司令に指示して一部の艦娘と無人警戒車に鎮守府内外の警戒をさせることは忘れなかった。海岸での大規模戦闘の後である。ゲリラやスパイが潜り込んでいる可能性も否定できない。

 

 開会直前になると、なぜか浴衣を着た地元や軍関係者、それに艦娘たちも『装備』と称する浴衣を着こんで集まり始めた。

 

 広場で様子を見ていた司令に副司令が話しかける。

「もう、お盆はとっくに過ぎていますけど、やっぱり艦娘たちは浴衣が似合いますね」

 

 腕を組みながら司令は応える。

「もともと、お盆なんて旧暦で祝うものだよ」

「そうなんですか?」

 

 司令は月を見た。

「今夜も満月かな……旧暦の8月15日は必ず満月になるからね」

「そっか……そうなんだ」

 

 妻でもある祥高の、やや砕けた反応に意外に思った司令だった。

自宅ならまだしも、ここは鎮守府内だ。しかも二人は司令と副司令という立場。

 だが周りの雰囲気から、そうなったのかも知れない。

 

「美保鎮守府で、こういうイベントと言うか、お祭りって初めてだね」

「そうですね」

「やっぱり定期的にやるべきかなあ?」

「はい。その方が皆も喜びますし、この規模になれば他所からもお客さんを呼べるから良いですよね」

「そうだな……」

 

 やがて、美保における大夕食会は18:00より盛大に開催された。いつの間にか広場に設置された演台で挨拶をするように促された美保司令。

「聞いてないなあ」

 と言いつつも、マイクを持って彼は舞台に立った。

 

「このたびは美保鎮守府主催の大晩餐会にお集まり頂きまして有り難うございます」

 深々と礼をする司令。会場から拍手。

 

「さて、日本海での戦闘直後の急ごしらえの催しとなりました。日頃、何かとご迷惑をお掛けしている地元の皆様。また共に戦って下さる陸軍、空軍の皆様。そして、当美保鎮守府で日夜、闘ってくれる艦娘に謝意を表して乾杯の音頭のご挨拶とさせて頂きます……では、皆様、グラスをお持ち下さい」

 ここで会場の全員が飲料を手にする。

 

「乾杯!」

『かんぱーい』

 

 美保の艦娘たちはあまり縁が無かったが、今回はゲストも居るため、飲酒喫煙はOKとなった。すると数名の艦娘が、お酒に口を付けていた。司令は苦笑した。

 司令が壇を降りると、陸軍と空軍の司令官が来た。彼らは互いに握手をした。

 

 すると横から青葉の声がした。

「あ、こっち見て下さぁい」

 

 美保とブルネイの青葉がダブルでカメラを構えてストロボを光らせる。他にもカメラやスマホを持っている艦娘や軍人、来場客たちも集まって同様に撮影した。

 

 すると「オレもオレも……」

と言いながら、やっぱり副大臣がやって来た。

 

「良いんですか? 写っても」

司令が言うと彼は笑った。

「いや、コレがむしろ平和のために努力しているって言う構図になるんだよ」

「へえ……」

 

 何だかんだ言いながらも三軍の司令官と副大臣という絵になる構図で盛んにストロボを浴びている。

 

 副大臣は残念そうに言う。

「これならプレスも呼んでおけば良かったな」

「心配要りませんよ、青葉が居るから……」

 司令が応えると彼は言った。

 

「そうだな……彼女は貴重な『戦力』だ」

 彼が呟くように言った後、司令官たちは手を離した。

 

「ほな皆様、お食事とご歓談中ですがぁ」

「お楽しみのところ、えろぉスンマへんなぁ」

ふと見ると壇上には黒潮と龍驤が登壇する。おいおい、この二人が司会か?

 

それでも会場は、盛り上がっている。

 

 いつしか美保湾の上には満月が出ていた。

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
(ごません様とのコラボ企画作品)
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ10」とは
「美保鎮守府:第拾部」の略称です。
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