「美保鎮守府NOW」(第10部)   作:しろっこ

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司令と横須賀から来たメンバーは司令の自宅へと向かう。そこでは美保鎮守府の位置について、話題になった。


第57話:『米軍と帝国海軍』

「何だと? このクソ提督!」

 

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「美保鎮守府NOW」(みほ10)

第57話:『米軍と帝国海軍』

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 時刻は既に22:00を回っている。

 

 司令たちは電ちゃんを先頭に車庫へ向かう。ふと広場を見ると屋台も大体片付いて艦娘たちが掃除をしている。祭りの後の余韻が漂う。

 

 そして広場の向こうの暗がりでは無人偵察車と警備班が淡々と巡回を続けていた。

 それを見て日向が呟く。

「美保は変わったな」

 

「そうだね」

 司令は同意した。確かに彼女が居た頃から大きく変わった。

 

 美保鎮守府。ここは恐らく国内でも屈指の極小鎮守府だ。それでいて警備体制は最も厳しい部類に入るだろう。それは当然、目に見える警備だけに留まらない。

 

 ここには諜報部門も併設されているが、それ自体対外的には完全に伏せられている。当たり前だが敢えて公開する意味が無い。もちろん今日来た同盟軍に関しては例外である。

 

 日向は続ける。

「噂は向こうでも聞いてたが、ここは目に見えないガード……私の電探で受信出来ない特殊な電波が飛び交っているのを感じる」

「敏感だな」

「……」

 

 彼女は少し恥ずかしそうに微笑む。そう、ここは日向が言う通りステルス無線は当然だが、他にも各種の機密電波が飛び交っている。それに付随して幾重にも防御が張り巡らされている。

 

 司令と共に歩きながら彼女は言う。

「横須賀でもたまに聞くが美保の防御システムの大半が米軍提供って?」

「そうだよ」

 

 車庫の前で一瞬立ち止まって彼女は言う。

「それについて今でも反対意見が多いとか。導入するときも、かなり揉めて……結局、元帥の一声で決定されたって?」

 

 共に立ち止まった司令は、ため息混じりに言った。

「やれやれ……それって結局、美保の基幹システムについては他所にもあれこれ知れ渡っているってことか」

 

 司令の言葉に日向は前髪を気にしながら応える。

「まあ……その程度は知られても問題は無いと思うけど」

 

 二人は、お互いに苦笑した。不思議と和やかな雰囲気になった。

 

 また歩き出すと彼女は言った。

「でも、そういう話題が出るのは一部だけ……やっぱり普通の人は無関心かな」

「そうだろう?」

 

 司令は、ちょっと肩をすくめて見せた。

「山陰の片田舎の鎮守府なんて関東の人には眼中にも無いだろうよ」

 

 彼らは車庫に入る。点検を終えた夕張たちが敬礼をする。電チャンがM-ATVのドアを開けて司令たちに乗車を案内する。

 

 今日の司令の自宅警護は曙と響だ。彼女たちは乗車前に短機関銃を簡単にチェックしている。その姿も最近は板についてきた。

 

 車庫のM-ATVは2台あり、もう一台の運転手は神通。彼女が横須賀の武蔵と羽黒、それに美保の響を案内している。

 

 武蔵が車体に軽く触れながら言う。

「立派な装甲車だな。海軍には勿体無いくらいだ」

「ホントですね」

 同意する羽黒。

 

 司令は簡単に説明する。

「これはフィリピン米軍から貸与されている車両ですが、ほとんど改造していますからもはや譲渡に近いですね」

 

「さすが陸軍だな」

 珍しく響がボソッと言う。

 

「あ、そうか。本来は海軍の車両じゃないよな?」

 司令が受けると武蔵が腕を組んで言う。

 

「まあ、あそこはゲリラも居るし海兵隊との絡みもあるのだろう」

 

 軽く頷きながら司令は言う。

「これでオスプレイや司令部と情報のやり取りをしながら移動も出来ます」

 

 すると武蔵はフッと目を閉じて何かに聞き耳を立てるような仕草をする。

「なるほど……確かに聞こえる。これは艦娘ともデータを連携出来るのだろう?」

「はい」

「上陸した敵の掃討という位置づけか」

 

 武蔵クラスになると特殊な無線モードを持っている。従って彼女には作戦用の極秘通信なども傍受できるから美保の実情は既に、ある程度分かっているようだった。

 

 彼女は再び目を開けると司令に言った。

「いろいろ気になるが細かいことは、また後で聞かせてくれ」

「はい」

 

 すると彼女は怪訝そうな顔をする。

「『はい』は止めてくれよ親父。公的な場所でなければもっと……砕けてくれた方が私も嬉しい」

「そうか?」

 

 彼女はニヤリとしながら司令の肩を軽く叩くと神通の案内で装甲車に乗り込む。続けて羽黒。

 響は律儀に乗り込む際に律儀に小さく敬礼をした。もう一台には司令夫妻や日向、曙が乗り込んだ。

 

 全員が乗り込んだ後、夕張たちが合図をして車庫のシャッターを開ける。電チャンと神通はインカムを着けると司令部に発車の確認を求める。

 

 やがてGOサインが出てフロントパネルの液晶画面が軒並み緑色に変わっていく。それを見て日向が呟く。

「まるで飛行機だな」

 

「何だか面倒だね」

これは曙。

 

「常に最新情報をリンクさせるので司令部の発進許可が必要なのです」

 電チャンの説明に頷く日向。

 

「なるほど、これが米国の技術革新って奴か……」

「ふーん」

 曙には、あまり感心することではないらしい。

 

 朝潮の誘導で、まず神通の車両が先に出発。続いて少し間隔をあけて司令たちの車が動き始める。車庫内に居た夕張や整備関係の艦娘たちが敬礼をして見送っている。

 

 敷地内を走りながら電チャンが言う。

「1号車、問題なく出発しました。これより官舎へ向かいます」

 

「了解……やれやれ、今日も終わったな」

 司令が制帽を取ってくつろぐ。

 

 日向が聞く。

「司令はなぜ、こんなに米軍と関係が深いのだろうか?」

 

「そうだな」

 司令は日向を見て応える。

 

「以前、ブルネイに遠征したことがあったよな」

「それは覚えている」

「そこでフィリピンの元帥と個人的なパイプが出来たり、あの大井親子の救出に絡んで米軍の特殊部隊とも面識が出来ていたことが有利に働いているのだと思うよ」

 

 日向は少し考え込む。

「それは……司令が手を廻して、そうなったのか?」

 

「いや」

 彼は頭を振った。

 

「私は不器用だから、そんなことは出来ないな。偶然……これも縁と言うのだろう」

 

 すると曙も話に加わる。

「青葉が言ってたけど……米軍が、わが国を乗っ取るって噂……あれ、本当?」

 

 司令は彼女を見て応える。

「バカバカしい」

 

 すると誤解をしたのか彼女は、いきなり怒り出す。

「何だと? このクソ提督!」

 

「いやバカって、お前のことじゃなくて」

 その言葉にハッとしたような曙は、勝手に赤くなっている。車内は少し和んだ雰囲気になった。

 

 車両は路地に入り、車体を揺らしながらJR境線の踏切を通過する。

 

 司令は頭の後ろに手を組んで曙を見て言った。

「仮に米軍が何かたくらんでいるとしても、まず目の前の敵から国土を護る事が必要だろ?」

 

 曙は短機関銃を抱えたまま頷く。司令は続ける。 

「そして敵は今、単独じゃないんだ。彼らがシナやロシアと手を組み始めているのは、お前も知っているだろう?」

 

 曙は頷きながら言った。

「でも米軍が帝国海軍と、くっつき過ぎだって批判する国もあるって?」

 

 司令は感心して応える。

「意外に知っているな……その通りだよ。米軍の同盟国の一部からも『肩入れし過ぎ』って批判がある。そもそも大声では言えないがオスプレイもこの車両も無償だからな」

 

「マジか?」

「マジだよ」

 

 ちょっと目を丸くしている曙に司令は言った。

「お前の掛けているその銃だって米軍がくれたようなものだ」

「これ……米軍の銃なのか?」

「製造はイスラエルだけどな」

 

 二人の会話を聞いていた日向も言う。

「米軍への批判は横須賀や中央でも聞くな……まだ反対意見が根強い」

 

 そこで祥高も口を開いた。

「でも海軍で反対していた人も美保を見学したら考えを変えるわよ。その象徴がオスプレイ。それに司令部や各電算システムも見て貰えば、だいたい理解は得られるし」

 

 日向も頷いている。そんな会話を続けながら装甲車は夜の弓ヶ浜半島の畑の中の一本道を走り続ける。

 やがて左手に空軍施設のシルエットやライトが見え始めた。

 

 ハンドルを握っている電チャンが珍しく話に加わる。

「私もたまに他所の方をお乗せすると美保の運用効率に感心するみたいなのです」

 

 司令が返す。

「そうだな。だいたい国内の鎮守府では、ほぼ経験的なアナログ運用が多い」

 

「アナログ?」

 曙が不思議そうに言う。

 

 司令は答える。

「要するに指揮官や隊長が自分の経験だけで判断して命令することだ」

「ふーん」

 

 日向も呟く。

「そうだな……横須賀も現場は、ほとんどそうだが」

 

 装甲車は交差点で止まる。車内に交差点のライトの光が差し込む。

 

 司令は腕を組んで続ける。

「それでも艦娘の能力が高いから、今まではそういうドンブリ勘定的なアバウトさでも敵に対抗出来ていた」

 

「ドンブリ?」

 曙は単語の意味が良く分からないらしい。

 

 司令は続ける。

「つまり、敵も進化して賢くなっているんだ。軍令部の戦闘データを米軍の専用システムで分析すると面白いぞ……軍令部もハッキリとは言わないがシナやロシアが絡みだしてから明らかに最近、海軍の勝率が下がっているんだ。しかも艦娘が致命的な被害を受けることも増えている」

 

 信号が青に変わり装甲車は右折する。ずっと話を聞いていた日向が不安そうに聞く。

「そういえばパパ、武蔵の傷も最近付いたって……それって結構ヤバくない?」

 

「パパ?」

 曙が日向の発言に絶句している。司令は今さら彼女に止めろとも言えずに苦笑するばかり。

 

 装甲車は夜の二車線の道路を走る。明るい街灯がついているので車内が定期的に照らされる。そのたびに曙の変顔が浮かぶ。彼女は日向の『パパ』発言と、そもそもこの話題の何がヤバいのかイマイチ分かってない。

 

 装甲車は順調に走る。

 

 司令は続ける。

「まあ軍令部も必死に艦娘を増やしているが、それでギリギリ何とか勢力を保っている程度だ。そんな闇雲な人海戦術って、かつてのシナがやった無駄な戦略だぞ」

 

 曙が不思議そうに聞く。

「ねぇヤバいって何処が? だって艦娘が強くて敵をやっつけて。別に良いじゃないの?」

 

 取り敢えずパパは不問らしい。

 

 司令は彼女を向いて言う。

「曙、私たちは国家に関わる仕事をしているんだ。それは個人と違って、その場の思い付きとか偶然に任せていれば必ず歪みが出てバラバラになってしまうぞ」

 

 いきなり『国家』といわれても呆けたような表情をしている曙。司令は、なおも噛み砕いて説明をしようとしたときだった。

 

「そろそろ到着です」

電チャンの言葉で車内の雰囲気が変わる。

 

 司令は曙に言った。

「また後で説明しようか?」

 

 曙は意外に素直な顔で頷いた。

 

 2台のM-ATVは、やや間隔を空けて5階建ての高層住宅が見える場所にやって来た。

 

 曙が聞く。

「あれは?」

「空軍の官舎だよ」

「へえ」

 

 そこは長い柵で仕切られていた。守衛は居ないがゲートが設けられ周りとは独立したエリアになっている事が分かる。

 海軍省の官舎は同じ境港市内にあった。

 

 速度を落としながら電チャンが説明する。

「空軍の隊員官舎の一部を借りているのです」

 

彼らが到着したのは、その官舎の一角だった。

 

 空軍の官舎は、軍への反対派対策か妙に広大だ。その敷地内には小さい山や川まで流れ、いくつかの広場や公園も整備されている。

 

 その敷地の北側にある小高い山のふもとを切り開いて海軍の官舎が建てられていた。今のところ司令用の宿舎と幹部用が1棟、それに予備として2棟の宿舎が建っている。

 

 再び電チャン。

「海軍の宿舎までは、あと少し走るのです」

 

 日向が言う。

「なるほど……すると今回みたいに艦娘をたくさん連れてきても空軍にも分からないだろうな」

 

 やがて司令の自宅前に着いた。出発の知らせを受けていた早苗と寛代、少し離れた隣家から大井親子が出迎えてくれた。

 

 横須賀のメンバーは一様に大井と挨拶をしている。

「お前が大井だな」

「は……初めまして」

「よろしく」

 

 やはり彼女の存在は全艦娘たちの注目の的らしい。

「よろしく」

 

 そう応える大井の笑顔に少し度肝を抜かれたような横須賀メンバーだった。デフォルトの大井とは微妙に雰囲気が違うからだろう。

 

 彼らが降車して直ぐに副司令が受電する。彼女は司令に確認する。

「司令、今夜はゲストが多いので神通さんと車両も、今晩はここに待機させて宜しいでしょうか?」

 

 司令は答える。

「それは構わないが……ウチに入りきるかな?」

 

 するとそのやり取りを聞いていた大井が言う。

「あの、もし宜しければ、うちにもお泊めしても良いですよ?」

 

「あ、そうか? 悪いな……」

 司令が言うと彼女は首を振る。

 

「良いの。今だって親子二人で広すぎるくらいで……少しはお役に立ちたいから」

 

 司令夫妻は顔を見合わせて頷き合った。

「じゃ、お願いしよう」

 

 副司令は指示を出す。

「では神通さんも今夜はここで待機となります」

 

「かしこまりました」

 神通は敬礼をする。

 

 大井は続ける。

「横須賀の皆さんでも、もし希望されたらウチで泊まっても大丈夫ですから。その際はいつでも連絡を入れて下さい」

「ああ、助かるよ」

 

 その場に居た艦娘たちは、この大井の申し出に少々驚いたかも知れない。デフォルトの彼女の性格は、かなり自己中心であったから。

 

 同時に彼女の対応を通して、艦娘がケッコンすることはスペックだけでなく性格も変わり得るという事実を感じたことだろう。

 

 もちろん、それは人も同様なことだ、と司令は思うのだった。

 

 大井親子及び神通と手を振って別れた彼らは一旦、司令の自宅へ入った。

 やや身をかがめて玄関に入った武蔵はリビングに入るなり感慨深そうに言った。

「そういえば私もプライベートで司令官や提督の自宅に入るというのは初めてだな」

 

 横須賀メンバーだけではない。美保の艦娘たちも軒並み頷いている。その言葉に司令も反応する。

「確かにそうかも知れないな。だいたい指揮官と艦娘という構図はいつも鎮守府に居るイメージが強い」

 

 彼は、そう言いながら制帽をリビングの入口にあるフックに掛けた。

 

 その動作を興味深そうに見詰めていた曙だったが、他の艦娘たちも初めて入る一般家庭のリビングなのだろう。何となく浮いた感じで落ち着かない。

 

 副司令……いや、祥高が気を利かせて声を掛ける。

「皆さんも自由に腰をかけて、くつろいで下さい。ここは鎮守府ではありませんよ」

 

 そこで

「あ……」

 と言ったのは羽黒。

 

「どうかしたのか?」

 響が聞くと彼女は感心したように言う。

 

「この床……バリアフリーなんですね」

 

「え?」

 これは曙。彼女はバリアフリーそのものも知らなさそうだ。

 

「夜も遅いですけど……取り敢えず、お茶を出しますね」

 軍服の上着を脱いだ祥高がカッターシャツにエプロンを着けて台所へ入る。それは普段の姿とは少し雰囲気が違っていた。

 

「なるほど鎮守府とはまた違った趣……ケッコンとは良いものかも知れぬな」

 武蔵が言う。その台詞には妙に実感がこもっていた。

 

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
(ごません様とのコラボ企画作品)
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ10」とは
「美保鎮守府:第拾部」の略称です。
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