「美保鎮守府NOW」(第10部)   作:しろっこ

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司令の自宅で艦娘たちは合宿のような状態になる。そこに緊急通信が入ったが……。


第59話:『自宅合宿』

「あの……私、こういうの初めてで」

 

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「美保鎮守府NOW」(みほ10)

第59話:『自宅合宿』

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 しばらく泣き続けていた曙は静かになった。寝てしまったようだ。

 

 司令は呟くように言う。

「寝てしまったね……」

 

 早苗も応える。

「ふふ……駆逐艦娘って、一途な子が多いよね」

 

 司令は曙を抱っこしたまま早苗に問い掛ける。

「そういえば、お前たち二世のカテゴリーって、どうなるんだろう?」

 

「えっと……」

 ちょっと首を傾げる早苗。

 

「最初、駆逐艦かな? って思ったけど。軽巡かも知れないし。うーん、伊吹も多分同じだと思うけど、何にでも成れるって感じかな?」

 

 司令も少し考えて応える。

「なるほどね……その上、今はオスプレイのパイロット。確かに無限の可能性はあるってところだな」

 

「あら、寝ちゃったのね」

 祥高が寝室を覗く。

 

「もう寝ようかと思うけど、どうしよう? 横須賀のメンバーも川の字で寝たいって言うし、ここ(寝室)じゃ狭いよね」

 

 司令もちょっと考えて言う。

「そうだな……いっそ、リビングで全員で寝ようか?」

 

「わぁ、合宿みたい」

 これは早苗。

 

「じゃ、居間を片付けて、布団を運びましょう。早苗、手伝って」

「うん」

 早苗は寝室を出る。部屋は司令と曙だけになり静寂に包まれる。

 

「お父さん」

 急な曙の問い掛けに、少し驚いた司令。

「……何だ、起きていたのか」

 

「ちょっと前に話していた、アナログとかドンブリが危ないって、どういうこと?」

「ああ、あれか」

 ちゃんと気にしていたんだな、と彼は思った。

 

 曙を抱っこしたまま司令は説明する。

「指揮官個人の経験だけで艦隊運用をすると、時に偏見や主観、独善を生む」

 

「分かんない」

 わざとだろうか? 彼女は、ぶっきらぼうに言った。ただ口調は穏やかだった。

 

「あ、ゴメンな」

 司令は別の言葉を探した。

 

「簡単に言うと『自分勝手』はダメって事かな」

「え?」

 曙は疑問に感じたようだ。

 

「軍隊なのに自分勝手が通用するのか?」

「うーん」

 意外にこの子は鋭いな。司令は少し考えた。

 

「艦娘の部隊は特殊だから、どうしても鎮守府ごとに雰囲気が変わるんだ」

「うん、それは分かる」

 腕の中で少し顔を上げて答える曙。

 

 司令は続ける。

「指揮官が自分勝手にやりたい放題のブラック鎮守府とか言われるところもある」

「うん……時雨や不知火が言ってた。そこって艦娘同士、お互いも仲が悪くなって、ただ居るだけでも凄く大変だって」

 

「そうだな」

 曙は意外に、いろいろ聞いているんだなと彼は思った。

 

「でも自分勝手なように見えても、きっちり運営されているところもある。例えば今来ている金城提督のブルネイみたいなところだな」

「ああ……あの提督。最初、クソかと思ったけど、そうでもないね」

 クソか。相変わらず口は悪いよな、この子は。

 

「今日も祭りの関連で彼に助太刀してもらったけど、海軍の常識だけでは通用しないことも少なくない。私だって世の中のことは知らな過ぎると思うよ」

「そうなのか?」

「ああ。だから彼のような人材は海軍では貴重だと思う」

「へえ」

 曙は分かってくれるだろうか?

 

 司令がそう思っていると彼女は言った。

「それも『縁』っていうのかな」

 

「あ、そうだね」

 分かってくれたか。彼は少し安心した。

 

 ふと顔を上げて何かを思い出したような目をする曙。

「漣とか朧が今日、変な服着ていたけど」

「ああ、あれはメイド服だ」

「……何それ?」

 この子は絶対に着ないだろうなと思いながら司令は説明する。

 

「ブラックではないんだがメイド服とか妙な趣味に走る鎮守府も一部にはあるらしくてな。俗に『カオス化』とも呼ばれるが。当然、そういう鎮守府は外部から見ても誤解が多くなるから別のトラブルが起こりやすい」

「えぇ? ヤバいじゃん」

 一瞬、息を呑んで司令を見上げる曙。その大きな瞳で至近距離から見詰められて以前の司令だったらドキドキしていただろう。

 

「ヤバイな」

 ただお互いに『娘』と『父親』という意識が強くなった今では不思議と変な『ときめき』感は消えた。それは司令も曙も、お互いが感じる変化だろう。

 

「ま、メイド服を着るくらいなら漣は以前からやっていたからな。あの程度なら私も敢えて止めようとも思わない」

「ふーん」

 

 司令は苦笑して言った。

「それこそ、お前が着ても驚かないと思うぞ」

 

 これは冗談のつもりだったが曙にはちょっと通じなかった。

「何だと! このクソ……」

 

 彼女が叫びかけたとき、祥高が部屋に入ってきた。

「あら、目が覚めたのね」

 

『クソ』と言いかけていた曙は、さすがに慌てて口を閉じた。ただ祥高は彼女が何を言いかけていたかは悟ったようだった。

 

 祥高は、ちょっと微笑みながら二人に言った。

「リビングの準備が出来ました」

 

「そうか……じゃ、行こうか」

「うん」

 二人は立ち上がる。

 

 リビングでは横須賀メンバーが会話している。

 まずは羽黒から。

「あの……私、こういうの初めてで」

 

 続いて、やはり寝巻きではなく、はちきれんばかりの浴衣を着ている武蔵。

「ウソを言うな。横須賀でも泊まりがけの地上訓練とかあっただろう?」

 

「いえ……その、テントとか宿舎のベッドは慣れているのですが」

 羽黒は既にパジャマを着ているのに何を抵抗しているのか謎である。

 

「大丈夫、コレも立派な訓練だ」

 落ち着き払った日向。浴衣姿の彼女は普段とあまり変わりない雰囲気だな。

 

 勝手に舞い上がっている羽黒を武蔵と日向が諌めているという妙な構図が展開されている側では響と寛代が既に布団の中で大人しくなっていた。

 

 祥高と早苗は、明日の準備だろうか? キッチンで何かをやっている。

 

「じゃ、寝るから……」

 そう言って曙は寛代の横に入ろうとした。

 

 その時、布団に横になっていた寛代が突然跳ね起きて、回り見る。自分が起こしたのではないかと一瞬、曙は焦っていた。

 

 しかし違ったようだ。

 寛代は半分ボーっとした表情のまま立ち上がると祥高の近くへ行って彼女の寝巻きを引っ張る。

 

「どうしたの?」

 何かをブツブツと言っている寛代の口元に耳を寄せている祥高。彼女は何度か頷いた後、寛代を布団へ連れて行ってから、司令のところへ来た。

 

 軽く敬礼をして言う。

「報告です。司令部から今回の作戦を分析した結果、1ないし2体の敵の特殊部隊が上陸した可能性が高いそうです」

 

 寛代も呟くと、どこに持っていたのか小さいタブレットを出す。

「データ、来た」

 

 そこには戦況分析の画面が表示され、今回の戦闘の数値とグラフ。下半分にアラート表示がされ、敵の数に差異が生じている……つまり沈没せず、退却もしていない残党の可能性を示していた。

 

「正確には確認は出来ていないのか?」

 司令の問い掛けに祥高は答える。

 

「はい。あくまでも分析システムが出した内容なので、出動命令までは出せないレベルですが……司令の判断で、哨戒部隊は出せます」

 まあ、米軍のシステムを信用していない軍部の関係者も多い。

 

「データはM-ATVとオスプレイには流した」

 寛代は淡々と報告。タブレットにはそれぞれのシルエットが表示され、共にOKとグリーン表示された。

 

 司令は少し考えて言った。

「分かった。鎮守府で夜間追撃用の地上哨戒部隊を待機させておいてくれ。あと早苗と伊吹、さらに神通には夜間出撃に備えるよう伝達」

「ハッ」

 祥高は敬礼をすると、まずは早苗に伝え、続けて鎮守府に連絡を取る。その様子を心配そうに見詰めていた曙が言う。

 

「お父さん……いや、クソじゃない提督。いや、司令……」

 慌てた曙を見て司令は頷く。

 

「大丈夫だよ。お前は寝てて良い」

 そう言いながら彼はリビングの端にある小さなテーブルでカバンからノートパソコンを取り出すと起動させる。

 

「米軍からも情報がたくさん着始めている」

 寛代がタブレットを見ながら呟くように言う。

 

 司令は寛代に聞く。

「それは今のところ予想データだけだな?」

「……」

 彼女は黙って頷くだけだった。

 

 祥高は司令に言う。

「今、神通からでM-ATVでこちらへ来た方が良いか聞いています」

 

 司令は言う。

「いや、そのまま大井宅で待機……向こうに動き無い以上、こちらからも下手に動かない方が良い。分析結果が予想で終わる可能性もあるし」

「了解」

 

 寛代もタブレットを見ながらしばらく窓辺で耳を傾けていたが、振り返る。

「米軍のデータも落ち着いてきた」

 

「そうか……」

 司令は自分の端末の画面を見てしばらく腕を組んでいたが、やがて言った。

 

「神通だけ待機しておいて、後は寝よう」

 司令のこの言葉に、横須賀メンバーはズッこけたようだった。

 

「真(まこと)か?」

 武蔵が信じられないと言った表情で聞くが司令は涼しい顔だ。

 

「うん、あくまでもデータ上のアラートだし敵がどこまで我々の情報を掴んでいるか全然分からないからね」

 

「まあ、パパがそう言うなら」

 日向のこの言い方に、その場は急に和んだ。曙は、なるほどパパにはそういう効果もあるのかと妙に感心していた。

 

 祥高が言う。

「司令、私は念のために起きています」

 

「あ、それならお母さん、私と交代制で対応しましょうか?」

 直ぐに早苗が応える。

 

 母子の会話を聞いていた司令は言った。

「そうだね。時間は二人に任せる」

 

『了解』

 二人は敬礼した。

 

「じゃ皆、もう寝よう」

 司令はパソコンのフタを閉じると、そそくさと端の布団に潜り込んだ。それを見ていた他の艦娘たちも祥高を除いて布団に入った。

 

 羽黒も流れるままに巻き込まれてしまった感じだったが布団に入って思った。

『こういう合宿も良いモノですね……』

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
(ごません様とのコラボ企画作品)
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ10」とは
「美保鎮守府:第拾部」の略称です。
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