「それが有ったからこそ、美保に残る決意を」
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「美保鎮守府NOW」(みほ10)
第77話:『対立の構造』
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副大臣が美保司令と金城提督を呼ぶ。
「これは元帥の名代として話すことを留意してくれ」
金城提督は彼の発した『元帥』と言う言葉で思い出した。
「そうだ……ジイさんの俺への今回の美保の視察での謎かけの答えが原潜だってことは分かった。だが問題は、なぜ美保に原潜があるかってことだよな」
副大臣は頷く。
「その背景の説明をかいつまんで話そう」
……ここで彼は、ブルネイと美保の両青葉が聞き耳を立てていることに気付く。
苦笑した彼は言った。
「やはり、こういう話は上でしよう」
彼は青葉たちに『あっちへ行け、シッシ』という素振りをした後で2階へと向かう。
金城提督はブルネイの艦娘たちに声を掛ける。
「悪いな。大人の話し合いになるから、ちょっと待っていてくれ」
一番最後から彼らに続いた美保司令に祥高が言う。
「後で、お茶をお持ちしますね」
「頼むよ」
頷いた美保司令は2階へと向かった。
一連のやり取りを見ていたブルネイの青葉は、メモ帳を頭の上に乗せながら残念そうに言う。
「ああ、残念だなあ」
美保の青葉が、それを受けてウインクをしながら応える。
「そうですね……でも、副大臣が二人の指揮官に、どういう話をするのか、だいたい想像は出来ますよ」
「え、それはぜひ、聞いておきたいですね」
そう言いながらブルネイの青葉が再び着席すると川内と金剛も黙って座る。
美保の青葉は、それを見ながら言った。
「あら? あなた達も聞きたいの」
頷いた二人の艦娘。まずは金剛が言う。
「妻、即ちワタシは緊急時にはdarling……いや、テイトクの代理を務めるオプションがあるのデス!」
続いて川内。
「まあ今回、私が参加した以上、そういうことも知っておくべきだろう」
二人の意見を聞いた美保の青葉は微笑んで着席する。
「いい心掛けだと思いますよ」
そこへ朝潮が近づく。
「では、皆さんには私が、お茶をお持ちしますね」
『お願いします』
なぜか全員で声がそろった。
2階の執務室へ戻った副大臣と金城提督、そして後から入った美保司令はソファに腰を掛ける。
まずは副大臣が言う。
「近年生じた深海棲艦との戦い。またその背後では米露、支那との冷戦構造もあるのは二人とも知ってるな?」
頷く二人を見て彼は続ける。
「軍隊、特に海軍においては打撃力が不可欠だ。つまり現代では空母機動艦隊と潜水艦だな。ところが我が国は長らく、それらを建造する必要は無かった。理由は分かるな?」
金城提督が納得したように言う。
「ああ……それが艦娘になるのか」
副大臣は頷いた。
「そう。艦娘の出現と人間への深海棲艦との戦いは、良くも悪くも現実兵器の建造を不要、または著しく遅らせた。だがそれは我が国だけの話だ。他の国々は黙って見ていた訳じゃない。影では様々な兵器の基礎研究が進んでいる。特に米国は独自に空母や潜水艦の研究を進めていた」
ここでドアがノックされ、祥高がお茶を持って入室。彼女なら話を聞かれても問題ないと思った副大臣は話を続ける。
「艦娘というのは不思議な存在だ。その攻撃力と航続力など、あらゆる面で現実の兵器を凌駕している。それは同時に他国にとっては脅威でもあるんだ」
各自、祥高が持ってきたお茶を手にした。祥高は軽く礼をして退室した。
副大臣は続ける。
「特に各国が研究しているのが原子力だ。ブルネイが我が国を恫喝した例もあったが原油の供給は、そもそも深海棲艦によって寸断されている。我が国はブルネイ泊地の艦娘たちの活躍によって何とかシーレーンが守られているからこそ、いまだに内燃機関と艦娘による攻撃力が主軸であり続けているんだ」
二人の指揮官が頷くのを見て、副大臣は強調するように言う。
「もし今、深海棲艦の連中がいなくなったら、世界はどうなると思う?」
金城提督が答える。
「そりゃ、その時点で一番、軍事力のある国家が出しゃばって来るだろう?」
副大臣は頷く。
「正解だ。さっきも言った通り世界では今、大きく勢力が二分されようとしている。米国を中心とする陣営と支那や露西亜なんだ」
頷く二人の指揮官。副大臣は続ける。
「人間の国家間での二分した構造は米国政府の基本方針を転換させた。だから米国は後の世界を見越して徐々に我が国への軍事技術供与を開始しているんだ」
金城提督が口を開く。
「それが美保へのオスプレイとか原潜の提供か?」
すかさず美保司令が補足するように言う。
「オスプレイはそうですが、原潜はちょっと違いますね」
副大臣は頭を掻きながら言う。
「おいおい焦るなよ……」
だが彼は時計を見て言った。
「まあ、あまり詳しく話す時間も無いな。ざっくり言えばオスプレイだけでなく米国ではジェットエンジンの研究も進んでいる。それは、ここでは赤城2号が研究していたな」
美保司令が頷く。さらに続ける副大臣。
「米国は艦娘に対抗できる機関としての原子力技術を高めて通常艦艇にそれを乗せ始めている。それが空母であり、また潜水艦になるんだ」
「へえ……」
金城提督は生返事をした。
構わず続ける副大臣。
「特に原潜については日米両国で、すったもんだした挙げ句に何とか第1段階の攻撃型原潜(SSN)の建造までは、こぎ着けさせた。これは、ひとえに元帥閣下の尽力の賜物だ」
「そうなんだ……あのジイさんがねえ」
少し元帥を見直した金城提督。
それを受けて副大臣は言う。
「そう、美保司令はその攻撃型原潜『曙』の2代目の艦長になるんだ」
「ほう」
それは意外だなと金城提督は美保司令を見る。
司令は苦笑しながら提督に説明するように言った。
「まあ……。ただ私は鎮守府の執務もあるので現場の指揮は実質的に赤城2号に任せて居たんです。それがあの事件で……」
少し俯いて哀しそうな表情に変わる美保司令。金城提督は、それを受けて言った。
「そうか。するとあの加賀が、その後を引き継ぐことになるのか?」
美保司令は顔を上げる。
「はい。赤城(1号)からも、そんな話を聞いていますけど……」
すると副大臣は腕を組んで言う。
「あの加賀が、その案を受けてくれるかな? 提督のラブコールも拒否していただろ? 元々敵側に居た彼女は難しい性格だな」
すると金城提督は確信を持った表情で答える、
「いや、その件は大丈夫だ。あいつは受け入れるよ」
「そりゃまた……自信タップリだね?」
ニタニタ笑う副大臣。
「俺には分かる。いや、ひょっとしたら……あいつはそれが有ったからこそ美保に残る決意をしたのかも知れん」
金城提督は自分に言い聞かせるように答える。
その確信を持った返事に、大きく頷く副大臣と美保司令だった。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
(ごません様とのコラボ企画作品)
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ10」とは
「美保鎮守府:第拾部」の略称です。