「美保鎮守府NOW」(第10部)   作:しろっこ

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副大臣からブルネイの未来について提案とも思われる内容を聞く提督たちだったが……。


第78話:『ブルネイの未来』

「原潜はブルネイで建造費込みってことか?」

 

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「美保鎮守府NOW」(みほ10)

 第78話:『ブルネイの未来』

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「次、良いか?」

時間も押しているので副大臣は矢継ぎ早に話しを進める

 

「原子力技術と言うのは簡単ではない。それを艦船に乗せるとなると周辺技術も含めていくつかの段階を踏む必要があるんだ」

美保司令がメモを取り始めた。

 

金城提督は半分上の空だったが相手は副大臣なので、あからさまに無視も出来ない。

 

それを察したのか副大臣は苦笑した。

「提督には苦手な話だろう。だが今後のことも含めた話だから我慢してくれ」

 

彼は続けた。

「美保鎮守府の原潜の次に、我が国は新たな原潜を建造すべきだ」

 

「……どうせ次の原潜はブルネイで建造費は込み…… ってことか?」

頭の後ろに手を組みながらも話の流れは察していた提督。

 

彼の予測に少し驚いたような表情を見せる副大臣。

「ほほう、さすが察しが良いな」

「ああ、そういう話には敏感だぜ」

 

美保司令も顔を上げた。

「そうなんですか?」

 

 提督の言葉を受けた副大臣は軽く咳払いをして続ける。

「そうだ。美保で原潜を運用したノウハウを使って、いずれブルネイでも原潜を配備する計画があるんだ」

「そりゃ、あくまでも予定だろう?」

 

あまり乗り気でない提督の言葉に副大臣は反応する。

「今回、ブルネイ政府に威圧された原油の話があっただろう? あれも裏を返せばブルネイ政府や軍の本音は我が国との連携を願っているってことにもなる」

「まあ、そうだろうな。俺もブルネイには根回ししているから」

 

それを聞いた副大臣は苦笑した

「君のその行動は傍から見ると自分勝手な独裁者的に見えるだろう。だがそれは結果的に我が国を利することになっている」

 

 この言葉に二人の指揮官は驚いた表情を見せる。

 

 副大臣は頷いて続ける。

「わが国は緩やかに米国側に組みしている。もちろん彼らの言いなりにはならない。美保の原潜建造費だってオレと閣下で必死に予算を通したんだぜ」

 

「そりゃ、ご苦労なこったなぁ」

提督はニヤニヤしている。

 

だがフンと鼻で笑うように副大臣も応える。

「何だかんだ言ってもカネを出した者が強い。真の主導権が握れる」

 

急に周りを気にしながら声を潜める副大臣。

「つまり我々は力と同時に世界のイニチアチブを取るんだよ」

 

この野心とも取れる発言に、二人の指揮官は顔を見合わせた。

『……』

 

言い訳をするように副大臣は笑う。

「オレが言っているんじゃないぞ。元々は閣下の受け売りだから」

 

すると提督は呆れたように言う。

「あのジジイめ……引退するとか言って、そんな気はサラサラないようだな」

 

副大臣は、お茶をすすった。

「ただ単にカネだけ出せって言うんじゃない。軍事力や技術交流も含めて更にブルネイと美保と、トライアングルで連携していこうぜってことだ。そうなれば訓練や技術交流でお互いの関係は更に深まるだろう」

「……だろうな」

 

そこで、ふと考えたように提督が言う。

「もし、そうなったらウチも美保みたいな米国システムを入れるのか?」

 

副大臣は肩をすくめる。

「いや……抵抗があるなら無理にとは言わない。我が国の電算システム技術も向上しつつあるからな。ただ原潜の基本設計は米国だ。いずれ米国製の武器や装備を導入するなら基幹システムは米国製にして置いた方がいろいろスムーズだ。そこは割りきるしかないと思う」

 

 提督は複雑な表情を見せた。それを見た副大臣は言う。

「君が艦娘を信頼していることは分かるよ。だが時代は変化し続ける。それに、いつまでも彼女たちを最前線に追いやるのは可哀相じゃないか?」

「……」

 

腕を組んだ提督を見ながら副大臣は続ける。

「ブルネイだけじゃない。アジアではインドやインドネシアとも水面下で我が国との交渉が進んでいる」

「ええ?」

 

少し驚いた提督に追い討ちをかけるように副大臣は畳み掛ける。

「インドはもう原潜を保有している。しかも、あそこは支那と仲が悪い。だから自分たちが『日本の次期原潜の建造費も出すから我が国と共同運用してくれないか?』とまで提案してきている」

「おいおい……マジかよ?」

 

少し慌てた提督を見て副大臣はニタニタする。

「さすがの金城提督もブルネイが置いてけぼりされると焦るなよ? まあインドに関してはブルネイと別枠で交渉を進めても良いと政府……いや閣下は考えている」

 

 この副大臣の話の持って行き方は、まるで元帥のジジイそっくりだと提督は苦笑した。

「ブルネイでも原潜を導入すべきだと言う事情は理解した。ただ、いくら俺でも即答は出来ん。実際、ブルネイ政府関係者とも調整せにゃ」

 

副大臣は笑いながら応える。

「良いよ。即答は求めちゃいない。今後、長いスパンで検討してくれってことだ。美保だって10年計画で原潜を入れたんだからな。まだ先の話さ」

 

そこでメモ帳を置いた美保司令が呟く。

「わざわざ、そのために美保を?」

 

彼を見て副大臣は言う。

「ああ。まっさらから鎮守府を作って構成員は艦娘だけ。それに艦娘と相性の良いお前だ。機密保持と実験のためには美保は最適だろう?」

 

時計をチラッと見た彼はボソッと言った。

「それに政府が本気になりゃ、地方の提督の首切りくらい簡単だし……な?」

 

すると、いきり立つ提督。思わず立ち上がった。

「おいっ脅すのか? そんなことすりゃ俺にも覚悟があるぞ!」

 

軽く手を上げて制する副大臣。

「落ち着けって……あくまでも最悪の場合の話ってことだ。それにブルネイの艦娘たちだって実際、全員が一枚岩ってわけじゃ無いだろ? 知ってるぞ」

 

提督は彼の言葉に言葉を詰まらせた。副大臣の態度を見ていると、なぜか江戸幕府を連想するのだった。

「やれやれ……お前らは参勤交代に城の普請までさせて大名を経済的に締めつけるって感じか」

 

すると副大臣は笑う。

「待ってくれ、誤解しないでくれよ。これは一方的な締め付けじゃない。我が国……引いてはアジア全体の安全保障の話だ。経済だって安全保障があって初めて成り立つンだろう? その為の先行投資はあって然るべきだろ?」

 

美保司令は改めてメモを取っている。それを見た提督は美保司令は相変わらず律儀だなと思った。彼が青葉とウマが合うのも判る気がした。

 

そのとき誰かがドアをノックした。

「失礼します」

 

副司令の祥高だった。

「舞鶴からの大艇、ただいま到着しました。今、接岸作業中です」

 

「よし、行こうか……」

副大臣の言葉に全員は立ち上がった。

 

廊下を歩きながら副大臣は提督に聞いた。

「ところでブルネイへ帰る準備は、もう出来ているのか?」

「ああ、ほとんど手ブラだ。着替えは金剛に任せているし」

「そっか。さすがだな」

 

 副大臣は感心しているが、それは美保提督も同様だった。ブルネイは大所帯だが提督本人は意外に質素でシンプルなのだろう。

 

 埠頭に下りると既に着水した二式大艇が徐々に岸に近づく。ブルネイの提督に艦娘たち、それに本部から来た副大臣、出雲、石見が揃っていた。

その周りを美保の艦娘たちが取り囲んでいる。

 

副大臣は雑談のように話す。

「原子力の我が国への提供、特に軍事利用については米国政府内でもまだ意見が割れているんだ」

「そうですか?」

 

美保司令が応えると彼は続けた。

「欧米の圧力で大東亜戦争後の我が国は永らく核兵器の開発が抑制されてきた……表向きはな。だが基礎研究は続いていた」

 

金城提督は言う。

「核兵器か……人類にとっては今、それどころじゃないけどな」

 

副大臣は軽く頷いて続ける。

「実はドイツも総統閣下が謎の自主規制をしていたため多くのユダヤ系の学者が国外逃亡し、以後は核兵器の開発が停滞していた。その辺りは君が懇意にしているドイツ武官に聞きたまえ。彼も今度のハワイ島遠洋航海に参加する予定だ」

 

いつの間にか金剛に腕を巻き着かれながら提督が言う。

「でも原子力の民間での利用は進んでいるよな?」

 

「その通りだ。だがまだレベルが小さい。そもそも元帥閣下は国内のいくつかの鎮守府を候補に挙げて、いずれ原潜を導入しようとしていた」

 

副大臣のその言葉に突然、何かを悟った美保司令は言った。

「するとやはり、あのブルネイ演習に始まる一連の出来事は?」

 

「……ああ」

珍しくタバコを取り出した副大臣は火を点けている。彼も喫煙者だったのかと美保司令は思った。

 

彼は『はあっ』と煙を吐きながら続ける。

「すべては原潜配備のため。そして、いずれ核兵器の配備も検討してのことだ。これは『我々を信頼するから』との但し書き付きの元帥からの伝達事項だ。忘れるな」

 

それを聞いた二人の指揮官を中心に、その場にいた全員が少しずつ敬礼を始める。

 状況がよく分からない若い艦娘たちも周りの雰囲気に合わせて慌てて敬礼をした。若い艦娘が聞く。

「何で急に?」

 

大淀が説明する。

「元帥のような『高い位置』に居て尊敬されている人の発言は、それ自体が敬礼すべき価値あるものなのよ」

「ふうん」

 

副大臣はブルネイの艦娘たちを見ながら言う。

「今聞いた内容は、お前たちも他言無用だぞ……特に青葉!」

「えへへ」

 

彼女は頭をかいた。

「分かりました。青葉もジャーナリストですから守秘義務は徹底します」

 

そんなやり取りを見ながら提督と美保司令は政治や軍の中心に居る者たちの策略と言う名の戦争を垣間見るようだった。それはある面、目に見えない戦場であり、何ともいえない恐ろしさをも感じさせた。

 

そうしている間にも大艇は近づき、接岸作業を始める。

 

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
(ごません様とのコラボ企画作品)
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ10」とは
「美保鎮守府:第拾部」の略称です。
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