Re:超高校級の幸運のボクがゼロから始まる異世界生活?絶望的だね   作:エウロパ

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Chapter1  異世界はファンタジーと希望と絶望の香り
第一話 『超高校級の異世界召喚』


 

 

 

ちょ、ちょっと狛枝クン……なにちてるでちゅか!?

 

 

   何って……ロシアンルーレットでしょ?

 

 

   弾は一発だけしか抜いてないから……生存確率六分の一だね

 

 

だ、ダメでちゅよ!やめてくだちゃい!!

 

 

   たいした才能じゃないけど……ボクにだって超高校級と呼ばれる才能があるんだよ。

 

 

   超高校級の幸運と呼ばれる才能がさ

 

 

   でも、たかが六分の一程度の確率を勝ち取れなくて何が超高校級って話でしょ?

 

 

   その程度で死ぬ運なんて……そんなものは才能とは呼べないよ

 

 

   ボクが超高校級の幸運なら……ボクはここで生き残るべきなんだ

 

 

   ね?そうでしょ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

「どおしてこんな事になっちゃったんだろうね……」

 

青年は腕を組んで建物の壁に背中を着いて途方にくれた様子でただ街の大通りの人だかりを見つめていた。

ヨーロッパ風の建築物を連想する色とりどりの建物が密集する大通りを見れば巨大な蜥蜴に荷車を牽引させた馬車の様な物が行き交い歩道を見れば人に混じって明らかに人ではない獣と人を掛け合わせたような姿をして人と同じ様に服を着た生き物も大勢いる。

彼らも人間達と同じ様に服を着て言葉をつかって喋っていた。

それらの様子を総合するに人間と同じ様に彼らにも人権が有るのだろう。

青年の目の前に広がるこの光景は典型的なファンタジー世界だったのだ。

一方、青年はどうだろうか。

青年の髪の色は白色、これは〝ここ〟でも比較的珍しい方だが周りに溶け込んでいる為、大丈夫だろう。

問題は服装である。

青年は赤いワンポイントの模様がある白いTシャツに黒いズボン、さらにその上にはフード付きの緑色のロングコートを着ていた。

とても〝現代〟的な服装ではあるが〝ここ〟では非常に目立つ格好である。

〝ここ〟では現代的な服を着た人は誰一人として見かけないのだ。

そのお陰で先程から通りかかる人から好奇の目線が寄せられている。

まぁ、それでもこの格好をやめるつもりは青年には無かったが……。

 

「……とりあえず、今の状況を整理しようかな」

 

(――やっぱり、こういう時は、まずは自分の名前の確認からだよね……ボクの名前は〝狛枝凪斗〟〝超高校級の幸運〟といったゴミクズみたいな才能を持った私立希望ヶ峰学園の高校生だ…………よし、あの時みたいに記憶が消えているような事は無いみたいだね。えっと、事の始まりはボクの感覚から言うとついさっきだ。ボクはあの時、ロシアンルーレットをやったんだ……だけど、実際には引き金は引けなかったんだよね。その証拠にボクの手元には五発の弾丸がこめられたままのリボルバーが握られている……確かあの時、ボクは自分の幸運を信じてゲームを受けた。なんたってボクの才能は幸運だからね!だけど、ボクがリボルバーを自分の頭に向けたその瞬間、ボクは異様な寒気を感じた。それで後ろを振り返ってみたら……こうなっていた訳だ。今までジャバウォック島に居たはずなのに、気がついたら一瞬でこのファンタジー感溢れる街に居たという訳だ。当然ながらジャバウォック島にこんな街はない)

 

狛枝はポケットから電子生徒手帳を取り出した。

そして、もう片方の手に持ったリボルバーを見つめる。

 

(今、ボクが持っている道具はこの二つだけか……リボルバーはまだ、使い道があるとしても、電子生徒手帳は今のところ使えそうに無いね。さっき何か情報が載っているか見てみたけど何も載っていなかったしね。バッテリーは……そういえば充電何て一回もしたことないし意外と平気かもしれないな。でも一応節約しないとね……)

 

「はぁ……状況を整理してみたけど今度ばかりは、さすがのボクも意味がさっぱり分からないよ……」

 

(まさか、本当にファンタジー世界だったりしてね……少なくともボクの知っている知識の範囲内にこんなファンタスティックな国、聞いたことも無いよ……異世界とでも今は言っておこうかな……ここが本当に異世界だとしたら、あの絶望の島から脱出できて良かったと思うべきかな…………)

狛枝は自分の頭に片手を当てて掻いた。

ジャバウォック島で色々あったお陰で多少の事には驚かないつもりだったが……さすがの狛枝もこの状況には困惑しきっていた。

 

(まだ、モノクマが何かした可能性は有るけど、こんな事をする理由がないし今回ばかりは何だか違う気がするんだよね…………)

 

狛枝は手を顎に当てて考えた。

 

「……ここで考えても、らちがあかないね。とりあえず、移動しよう」

 

狛枝はそう言うと電子生徒手帳とリボルバーをポケットにしまって歩き始めた。

狛枝は歩きながら感心した様子で大通りを見回している。

大通りには沢山の馬車?が隙間なく規則正しく走っており外見の中世的な印象とは裏腹に高度に発達した物流網と法的整備を伺い知ることができた。

さらに、これだけ多くの露店商や店を見ていると、この都市の巨大さとこの都市がある国家の巨大さを実感する。

 

しばらく狛枝は大通りにそって進んでいくと市場のような場所に出た。

狛枝は人混みのなかを縫って進み街の様子を見る。

 

(やっぱり、システム的に見れば高度に近代化されたボクの世界に通じるものがいくつか見受けられるけど全体的に見れば文明水準は中世ヨーロッパの様な雰囲気だね……あっそういえばボク〝ここ〟のお金持ってないな……すぐに元の世界に戻れるなら別に構わないんだけど、長期間、もしくは死ぬまで、ここ居るとなるとお金は絶対に必要だよね……これからどうしようかな……今のボクは水も食料も持っていないし、このままでは野垂れ死にだ)

 

「どうしようかな…………」

 

狛枝は立ち止まって周りをぐるりと見回した。

そして、とある赤い物が目にはいった。

 

「ん?林檎?ここにも、ボクの世界と同じ様な果物が有るのかな?」

 

狛枝は好奇心でとある青果店の前に近寄った。

青果店の店先には沢山の果物が並べられている。

その中に林檎と良く似た果物を見かけたのだ。

 

(あれは……値札かな?字は読めそうにないね。でも……不思議なことにこの世界に来てからボクはこの世界の〝言葉〟 の意味が理解できるんだよね。さっきから通りかかる人の言葉を盗み聞きしているから間違いはない。問題はこっちから話しかけても通じるかどうかかな……)

 

そんなことを考えていると店先で立ち止まった為か結構な筋肉をつけた青果店の店主の男が丁度良く狛枝に話しかけてきた。

 

「おおっ、そこの、おにーちゃん。変わった格好してんな。旅の途中か?」

 

(実験ついでに、この人に色々聞いてみようかな)

 

「……まぁ、そうだね。旅……と言っても良いのかな……色々あってね」

 

「なんだ、おにーちゃん。元気ねぇじゃねぇか」

 

「実は……旅の途中で偶然、この国に立ち寄ったんだけど何の準備も予備知識もなしに来ちゃったものだからこの国の左も右も分からないんだよ……」

 

「おい、おい、この国の左も右も分からないって……それで良くこの〝ルグニカ〟に来たな」

 

青果店の店主が呆れた顔で狛枝を見つめる。

 

(言葉は通じるようだし、それにどうやら、ボクの話に乗ってきたみたいだね……それなら)

 

「そこでなんだけど、できれば、いくつか教えてほしいことがあるんだけど良いかな?ボク、実はこの国のお金持ってないからこのままだと野垂れ死にしそうなんだよね。それでせめて情報だけは欲しいんだ」

 

狛枝は困った表情を浮かべて言った。

店主はそれに対してめんどくさそうな顔をする。

 

「文無しかよ……文無しでしかも何も知らずにルグニカに来るって……結構〝絶望的〟な状況じゃないか?」

 

「確かにそうかも知れないね。でも、これだけは言わせてもらうよ。どんな絶望的な状況でも……最後には〝希望〟が勝つ。ボクはそう信じてるんだ」

 

「は、はい?」

 

「あぁ……でもボクみたいな結局、希望の踏み台にすらなれなかったヘタレはこのまま餓死して死んだ方が世の中の為になるかもしれないね……」

 

「お、おい……何もそこまで言ってねーだろ……」

 

狛枝の異様な変容に若干、引きぎみになるも店主は少し考えるそぶりをした。そして口を開いた。

「……商品を買う気が無いなら商売の邪魔だからさっさとどっか行け!って普段なら言っているところだが……おにーちゃん、本気で困っている様だし、嘘をついているようにも見えないから少しだけなら質問に答えてやるよ。ただし、少し!だからな」

 

「ありがとう。店主サンって外見は怖そうだけど意外と優しいんだね」

 

「余計なお世話だ」

 

狛枝は笑顔でお礼をした。

店主は少し照れ臭そうにするも、さっさとしろと言った。

 

「それじゃあ、最初の質問なんだけど……さっき、店主サンが言ってた〝ルグニカ〟って言うのがこの国の名前?」

 

「ああ、そうだ。てか、ルグニカを知らないって……一体どんな田舎から来たんだよ……」

 

「まぁ、そこは気にしないでよ。ボクが住んでいたのはとっても、とっても、遠い場所にある国なんだ……それじゃあ、次の質問だけど、今からボクが言う大陸の名前で知っている大陸があったら教えてよ」

 

「え?そんな事で良いのか?」

 

「うん。ボクが知っている地名とここが一致するか知りたいんだ。それじゃあいくよ……ユーラシア大陸、アフリカ大陸、北アメリカ大陸、南アメリカ大陸、オーストラリア大陸、南極大陸……どう?知っているのが在るかな?もし、あったらこのグルニカが何処にあるかも教えてくれたら嬉しいんだけど……」

 

「おい、おい、おい……俺はそんな大陸聞いたこたぁーねぇし、ルグニカはそんな訳分からない所にはねぇーぞ……」

 

店主の男が呆れを通り越して本当に心から心配そうな表情を浮かべる。

 

「なるほどね……それじゃあ今度はこの国がどんな国なのか教えてくれないかな?」

 

「この国がどんな国か?この国は――――」

 

店主の男はそのあとこの〝ルグニカ〟という国がどんな国なのか語り始めた。

 

「……そっか、それじゃあ最期の質問だよ……店主サンは〝私立希望ヶ峰学園〟を知っているかな?」

 

「……キボウガミネガクエン?なんだそりゃ?知らないな」

 

「なるほど、ね…………」

 

(予想はしてたけど、やっぱり、本当にここはボクの知らない世界みたいだね……)

 

「店主サン。質問に答えてくれてありがとう。他にも色々聞きたいことが沢山有るけどそれは他の人に聞くことにするよ。商売の邪魔をしちゃ悪いからね。それじゃあボクはこの辺で」

 

狛枝は今知りたかった必要最低限の情報を手に入れたため店主にニコッと笑いかけると手を振ってその場を後にしようと歩き始めた。

すると……。

 

「……チッ、あーもう、しかたねぇーな!おい、おにーちゃん!ちょいと待ちな!!」

 

店主は舌打ちをしらかと思うと狛枝を呼び止めた。

 

「……何かな?」

 

狛枝は後ろを振り向く。

すると、店主は店の棚の引き出しから何かを取り出してそれを巾着袋のような袋に積めて狛枝の所にやって来た。

そして、 その袋を狛枝の手に握らせる。

袋の中には何か金属質の物が入っているようで金属が擦れるような音がした。

 

「これは?」

 

「少ないがルグニカの金だ。これだけあれば三日くらいは食い物には困らない筈だ。貸してやるから感謝しろよ?普段なら絶対にこんな事しねーんだからな。今日は気分が良いから特別だ!」

 

「店主サン……ありがとう。とても嬉しいよ!このお礼はいつかさせてもらうよ」

 

「是非そうしてくれ。あと、返すのは返せる時で良いからな。ほら、さっさと行った行った」

 

「うん。それじゃあね、店主さん」

 

そう言うと今度こそ狛枝は青果店を後にした。

貰ったお金はコートの内ポケットにしまう。

 

(三日位は食料には困らないか……我ながらツいてたね。まさか、あんな形でお金が手にはいるとは思わなかったよ)

 

「とりあえず何処に行こうかな……」

 

狛枝は歩きながら考えた。

だが、狛枝はとくに行かなくてはならない様な場所もなく目的もなかった為、数時間くらい街をさ迷ったあと最終的に行き着いた場所は通りから少し外れた場所にある薄暗い路地だった。

 

「はぁ……街をぶらぶらしてみたけど結局、目立った収穫は無かったね……」

 

狛枝は溜め息をつきながら言った。

今、狛枝は路地の奥の階段に座っている。

そんな彼の手元には道中、露店で買った林檎、この世界ではリンガと呼ばれている果物が握られていた。

狛枝はリンガを見つめる。

 

(……結局分かったのは、ここが〝ルグニカ王国〟の首都である事と〝お金〟あと、盗み聞きした情報によると獣っぽい人々〝亜人〟の人達?が話していた昔、人間と亜人の間で起きた〝亜人戦争〟という戦争が有ったという事。どうやら両者の間には未だに深い溝があるみたいだ。それとこれは直接ボクには関係のない事だけど近々〝王選〟と呼ばれるイベントがこの国では有るそうだ。話によれば何らかの原因によって王朝の血筋が断絶してしまった様だね。それ以外の情報は…………何もないね)

 

「はぁ…………」

 

狛枝は今日、何回目かの溜め息を出した。その時だった。

 

「おい、てめぇ!なに一人でブツブツ言ってんだ?」

 

突然話しかけられた狛枝は頭を上げた。

路地の外からの逆光で三人の男のシルエットが見える。

目が慣れてきてその姿がはっきりと見えるようになると狛枝はめんどくさそうな表情をした。

その三人は服装こそこの世界の服装だったのだが姿は明らかにボクの世界で言う〝チンピラ〟もしくは〝不良〟そのものだったのだ。

 

「……君たちは何なのかな?」

 

「そんな事よりテメェーの心配をしなくて良いのかぁ?いてぇー思いしたくなきゃ出すもんだすんだな」

 

真ん中にいた男が狛枝に上から目線で不適に笑って言う。

狛枝はその様子を見て立ち上がった。

そして、もう一度三人を見回す。

 

「何処の世界にもこういうのは居るんだね…………まぁ、こんな路地に入ってきたボクも悪いんだけどさ……」

 

(まずいね……一応、ボクにも対抗処置は有るけど余り無駄に使いたくないな……)

 

狛枝はポケットの中のリボルバーを意識した。

 

「おい!ブツブツ言ってんじゃねぇーぞ!!」

 

真ん中の男が一歩踏み出し今にも殴りかかりそうな勢いで狛枝に迫る。

 

「ちょ、ちょっと……落ち着こうよ。ほら、深呼吸、深呼吸」

 

チンピラの男に対し狛枝は両手を肘から上げて苦笑いを浮かべた。

 

「はぁ?なに寝ぼけた事言ってんだ?ころがされてぇーのか!?」

 

「いや、ボクはそんなつもりで言った訳じゃないんだけどな……それに、ボクは無一文だよ?金目の物なんか持ってないし襲っても意味がないと思うんだけど……」

 

「「…………」」

 

三人のチンピラは狛枝の話を聞いてからお互いにしばらく顔を見合せそして、ニヤッと笑った。

 

「決めた。てめぇは絶対に締め上げて身ぐるみ全部剥いでやるよ」

 

「……ちなみに、どうしてそんな結論に至ったのかな?」

 

「そんなん決まってんだろ」

 

そう言うとチンピラの男は狛枝の1メートル以内に入り手を伸ばした。

狛枝は殴られる覚悟をする。

 

「テメェーのしゃべり方がムカつくからだよ!!」

 

チンピラの男が腕を振り上げその拳が狛枝の顔面を直撃した……かと思ったちょうどその時だった。

 

「どけどけ~!!そこのやつら~邪魔!!」

 

「「あぁ?」」

少女の声が聞こえた。

チンピラの動きが止まる。

チンピラ三人も狛枝も声が聞こえた方向をみた。

するとそこには路地の入口から入ってきた13か14歳くらいの小柄な女の子が居た。女の子は金髪のセミロングに赤い瞳でそれがとても印象的だと狛枝は感じた。

 

「ええ??なんだこの状況?」

 

少女は急いでいる様子だったがチンピラに狛枝が巻き込まれているのを見て少女は足を止める。

 

「アハハハ……できれば、ボクを助けてくれたら嬉しいんだけどな。もしくは誰か助けを呼んでくれないかな?」

 

狛枝は少し笑って少女に助けを求めた。

しかし、少女は……。

 

「うーん、ダメだ。ごめんな!強く生きてくれ!じゃあな!」

 

そう言い残すと少女はチンピラと狛枝を駆け足で通り過ぎ驚異の脚力であっという間に壁をかけ上がって屋根まで上がり何処かに行ってしまった。

チンピラと狛枝はしばらく呆然としていたがハッと現実に戻る。

狛枝はまた苦笑いを浮かべてチンピラの男の方を向いた。

 

「あー……今ので諦めてくれたりしないかな?」

 

「むしろ水刺されて気分を害した」

 

「だよね……」

 

狛枝は落ち込んだ様子をみせ狛枝は今度こそ目を瞑って殴られる覚悟をしたふりをした。

ポケットの中で狛枝はリボルバーの銃口をチンピラの男の足に向ける。

今、ここで襲われて貴重な道具を奪われるわけにはいかない。

一発でも狛枝に殴りかかった時、目の前のチンピラの男の足には銃弾の穴が開くというわけだ。

 

「そんじゃ行くぞ!!」

 

チンピラの男が改めて腕を振り上げ拳に力を込める。

そして、再び狛枝に殴りかかった。

だが、しかし……、

 

「そこまでよ!」

 

路地に響き渡ったのは狛枝のリボルバーの銃声ではなく綺麗な透き通った様な少女の声だった。

狛枝はチンピラの後ろを見る。

 

「な、なんだーてめぇーは!?」

 

チンピラの男が騒いでいた。

騒いでいる相手はまたしても路地の入口から現れた謎の少女。

だが、先程の金髪の少女ではない。

新たに現れた少女は外見が18歳で容姿は銀色の長い髪に紫紺の瞳を持ち透き通る様な白い肌を持た少女だった……。

 

「……今なら許してあげる。だから盗んだ物を返して!」

 

「盗んだ物?」

 

「他の物なら諦めもつくけど、あれだけはダメ。良い子だからおとなしく渡して!!」

 

少女は何かを探している様だった。

狛枝はすぐに思考し理解した。

少女は〝何か〟を奪われこの路地にやって来た。

その何かを奪ったのは恐らく先程の〝金髪の少女〟だ。

あの慌てようからほぼ間違いないだろう。

 

「こいつを助けに来た訳じゃねぇーのか?」

 

チンピラの男が戸惑った様子で少女に聞いた。

少女は今にもチンピラに殴られそうになっている狛枝を見る。

 

「変な格好の人ね……でも、私と関係があるのか聞かれたら無関係と答えるしかないわ」

 

「だったら俺らは関係ねぇ!何か盗まれたってんだったらさっきのガキだ!」

 

「そうだ!あっちに逃げてった!」

 

チンピラの一人の大男は金髪の少女が走り去っていった方角を指さす。

 

「うん……嘘じゃないみたいね。早くおいかけないと!」

 

少女はそう言うとまたしてもチンピラと狛枝を通り過ぎた。

 

「「ふぅ」」

 

チンピラの三人は安堵する。

これで心置きなく窃盗ができる、そう思ったのだろう。

しかし、運は狛枝を既に味方していた……。

 

「でも……それは、それとして、見過ごせる状況じゃないわね!」

 

少女は路地の奥にある階段の上で立ち止まると、こちらを振り返って言った。

振り返り際に少女は片手をチンピラ達に向ける。

少女の手のひらが蒼く輝ったかと思うと一瞬で大きな氷が生成され次の瞬間にはチンピラ三人はその氷が撃ち込まれ地面に倒れていた。

 

「あれは……まさか、魔法?それとも超能力……かな?」

 

狛枝は呆然とその様子を見ていた。

すると、チンピラ達が起き上がりリーダー格の男が刃物を二つ取り出した。

 

「ま、魔法使いだろうが何だろうが二体一で勝てると思ってんのか!?」

 

リーダー格の男は狼狽えながらも必死に意地をはる。

どうしても諦めたくないようだ。

だが、少女は余裕の様子を見せた。

 

「そうね。二体一は不公平かも」

 

「じゃあ、二体二なら対等な条件かな?ニャン♪」

 

何の前触れもなく男っぽい声が聞こえた。

狛枝は辺りを見回すがここには狛枝とチンピラ三人、それと少女の五人しか見当たらなかった。

狛枝がもう一度、少女を見るとそこには少女の掌にのった猫がいた。

その猫は何と小さな鞄を肩にかけて二足で立ち器用に前足を腕組のように組んでいた。

 

「せ、精霊術師!?」

 

チンピラの大男が動揺した様子で言った。

精霊術師とはそれほどまでに恐れられる存在なのかと狛枝は思った。

 

「ご名答。今すぐ引き下がるなら追わないわ。すぐに決断して」

 

少女がチンピラ達に〝命令〟する。

 

「クソあま!!次に会ったときはただじゃおかねぇーからな!!」

 

リーダー格の男が少女を指差して言った。

すると猫?がチンピラに話しかける。

 

「この娘に何かしたら、末代まで祟るよ?その場合、君が末代なんだけど」

 

猫?がニヤついて言うとチンピラ達はバツの悪そうな顔をして何も言わずに走り去って逃げていった。

 

「…………」

 

狛枝はその様子をいつの間にか壁際に寄って見ていたがチンピラ達が走り去って行くのを目で見送ると少女の前まで行って少女の顔を見た。

そして、片腕を肘から下だけ上に上げるとニコッと笑った。

 

「その……ありがとう。助かったよ」

 

「動かないで!」

 

少女は狛枝にそう言うと狛枝の目を見つめた。

 

「アハハハ……どうしたのかな?」

 

狛枝は動じずに苦笑いを浮かべながら少女の目を〝普通〟に見つめ返した。

すると少女はムッとした表情をした。

 

「ほら!やましいことが有るからニヤニヤ笑ってるんだ!私の目に狂いは無かったみたいね」

 

「そうかなぁ?ボクには今のはただ、この状況に苦笑いを浮かべただけで邪悪な感じは無かったと思うんだけど」

 

「パックは黙ってるの!」

 

「あなた!私から徽章を盗んだ物を娘を知ってるでしょ!?」

 

少女は相変わらずムッとした表情のまま狛枝に聞いてきた。

それに対して狛枝は正直に言うだけだ。

 

「残念だけど、ボクは何も知らないな」

 

「…………」

 

少女はしばらくの間ムスッとした様子で狛枝を見ていたが少したつと……、

 

「え!?やだ、嘘。まさか、本当にただ回り道しちゃっただけ!?」

 

少女はようやく状況を理解したようだった。

 

(この娘は平気みたいだね……まぁ、戦ってもボクに勝ち目は無いけど……)

 

その様子を見て狛枝は彼女は危険ではないと判断しポケットの中で握っていたリボルバーから手を離した。

 

「あなた、でも、盗まれた徽章には心当たりあるでしょ?これくらいの大きさで真ん中に宝石が埋め込まれているの」

 

少女は今度は普通に質問してきた。

 

「徽章というと身分を証明したりするものだね。さっきも言ったと思うけど……残念ながらボクは何も知らないよ。ボクはここで偶然、さっきの奴らに襲われていただけなんだからね」

 

「そう……」

 

狛枝の話を聞いて少女は明らかに落胆した。

 

「……でも、それを盗んだと思われる人は見たかな」

 

「っ!?それって、金髪で小柄な女の子の事!?」

 

「うん、そうだよ。その娘、とんでもない脚力でね。壁を蹴りあげてそのまま屋根の方に行って何処かへ行っちゃったんだ。いや、あれにはさすがのボクも驚いたよ。あれだけの脚力を持っていればボクの居た国では〝超高校級の才能〟って事になったかもしれないね」

 

「チョウコウコウキュウの才能?何なのそれ?」

 

少女は狛枝の言葉に首をかしげる。

 

「こっちの話だから気にしないでも良いよ」

 

「……でも、やっぱりここに来たのは間違いなかったのね……」

 

少女は顎に手を当てて少し考えた。

そして、行動に移そうと狛枝の顔を見た。

 

「それじゃあ……私は急いでるからもう行くわね。今回は偶然私が通りかかって平気だったけど、次からは人気のない路地に一人で入るなんて危ない事はするべきじゃないわね。これは心配じゃなくて忠告。次に同じ様な場面に出くわしても私があなたを助けるメリットが無いもの。だから期待しちゃダメだからね!」

 

「アハハハ……心配してくれてありがとう。次からは気をつけるよ」

 

「べ、別に心配している訳じゃないわ!いくわよパック!」

 

少女は照れくさそうにそう言い残すと路地の入口の方へと歩いていった。

 

「ごめんねー。素直じゃないんだよ。うちの娘。変に思わないであげて」

 

路地に残っていた猫?が空中をフワフワと浮かびながら狛枝に言った。

狛枝はニコッと笑いながら答える。

 

「大丈夫だよ。別に変になんて思ったりしないから。それよりも今、ボクはとても嬉しいんだ」

 

「嬉しい?」

 

「確かに彼女の行動はメリットよりもデメリットの方が多いかもしれないけど、それを補うに有り余るような〝エネルギー〟を彼女は内に秘めているのが彼女の目を見たとき一目で分かったよ」

 

「へぇ~。君、面白いこと言うね。それで?そのエネルギーって何なのかな?」

 

猫?が興味深そうに得意気な顔で聞いてくる。

すると、狛枝はまるで嬉しいことを語るように両腕を肘から上げて楽しそうに口を開いた……。

 

「それはね〝希望〟だよ」

 

「希望?」

 

「そう。彼女の目は希望に満ちていたんだ!こんな訳のわからないファンタスティックな場所に飛ばされて、さっきまでどうなるかと思ったけど素晴らしいよ!この世界は、希望に満ちている!これが分かっただけでも今のボクはとても嬉しいんだよ!」

 

「…………」

 

猫?は狛枝が豹変する様子を何も言わずに目を細めて見つめていた。

すると狛枝は何もなかったかのように猫?に接した。

 

「それより、行かなくてもいいの?彼女、待ってるみたいだよ?」

 

「……ああ、うん。そうだね。それじゃあ僕もこの辺で失礼するよ。バイバーイ」

 

そう言って猫?は少女を追いかけて路地から去っていった……。

 

 

 

 

 

※※※※※

 

 

 

 

 

「……それで、何で貴方は私達に着いてくるの!?」

 

少女は若干、困惑した様子で少女の斜め後ろを歩いている青年に言った。

 

「え?何でって、面白そうだからに決まってるでしょ?」

 

青年は答えた。

その青年の正体は何を隠そう先程、少女が助けた狛枝だ。

 

「面白そうって……」

 

「それに、君達にはこんなボクを助けてもらった恩があるからね。ボクで良ければ力をかすよ。盗まれた物を取り返したいんだよね?」

 

「うん……まぁ、そうだけど……」

 

「うーん、悪意は感じないし素直に受け入れても良いと思うよ?ごうかん相手の弾除けは多い方が良いしね」

 

少女が答えを出すのに戸惑っている間に猫?が助言を出した。

 

「アハハハ……これは手厳しいね」

 

「でも、本当?本当に良いの?何のお礼もできないからね?」

 

「大丈夫、大丈夫。心配なんて要らないよ。ボクも退屈していたところだったんだ。むしろ、ちょうど良いくらいだよ」

 

狛枝は笑顔で少女に言った。

 

「それで、どうかな?ダメなら諦めるけど……」

 

「うーん、そこまで言うなら、手伝って貰おうかしら……」

 

「ありがとう。こんなボクの提案を受け入れてくれてとても嬉しいよ。そうと決まればお互いに自己紹介でもしようか。あ、でも別に名のらなくても良いからね?ボクみたいな得体の分からない人間に名乗りたくなんて無いだろうしね」

 

狛枝の提案に少女は「いいえ、名乗らせてもらうわ」と答え、狛枝の意見に同意した。

 

「それじゃあ、私からするわね」

 

「え?ボクから言い出したんだからボクが先にするよ」

 

「いいえ、貴方は私の探し物を手伝ってくれるんだもの私が先に自己紹介するわ」

 

「分かったよ。じゃあ、君から先に自己紹介をよろしくね」

 

「私は…………」

 

そこからしばらく、時間が空いた。

少女は一瞬、手で口元を隠し何かを躊躇うようなしぐさをすると

神妙な面持ちで自分の名前を語った。

 

 

「…………サテラ、そう呼ぶと良いわ」

 

 

「サテラさんか……良い名前だね」

 

「え?」

 

狛枝が普通に〝サテラ〟という名前を良い名前と誉めると少女は驚いた顔をした。

狛枝は首をかしげる。

 

「どうかした?」

 

「う、うんうん。それで?あなたの名前は?」

 

サテラは狛枝に名前を聞いた。

そして、狛枝はこの世界にやって来て初めて自分の名前を口にした……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボクは狛枝凪斗だよ」

 

 

 




本日は読んでくださり、ありがとうございます。
この二次創作小説はスーパーダンガンロンパ2の狛枝凪斗とRe:ゼロから始まる異世界生活のクロスオーバーです。


もし、希望厨こと狛枝凪斗がリゼロのスバルの代わりに召喚されたら……みたいな感じの作品です。
勢いで書いたものなので恐らく不定期更新になりそうですが、その代わり各話の長さを増量でお届けしたいと思います。

狛枝がお金をもらえたのは彼が『超高校級の幸運』の持ち主だったからです。

王国名の書き間違いがあったので書き直しました。
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