Re:超高校級の幸運のボクがゼロから始まる異世界生活?絶望的だね   作:エウロパ

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第三話『フェルトの人生史上最大最悪の奇怪な事件』

SYSTEM VOICE

このSSを読んでくださっている皆様、初めまして。私、SYSTEM VOICEという名の天の声でございます。ダンガンロンパのゲームを知っている方は本物の天の声を聞いたことがあるかと思います。今回はSS各話に散りばめられているヒントの様なものについてご紹介いたします。

各話の文中には〝□□□〟この様なカッコで囲まれている単語や文が幾つか存在します。これらの単語や文はたまに〝重要ではないもの〟も含みますが中には登場人物達の〝過去〟〝現在〟〝未来〟の行動とかその他諸々に深くか関わっているものも多く存在いたします。いわば〝ヒント〟の様なものです。今回のお話もその中の一つであります。このSSは不定期更新なので次回の更新までに長く時間が空くことがあると思います。なのでその間、退屈でしょうがない!という方は今後の展開がどうなるのか、狛枝は何がしたいのか?何をしているか等々……推理とまでは言いませんが想像とかしてみるのも良いかもしれません。話数が進むにつれてこのヒントの様なものがどんな意味を持っているのかは分かるようになっていく予定ですのでご安心してくださいね。

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

こうして、王都を歩いていると、あの日の出来事が今でも鮮明に思い出される。

彼は結局、アタシに何を言いたかったのだろうか?何をしたかったのだろうか?

今となっては永遠に分かることは無いだろう。

あの事件の後、アタシはあの彼について調べられる限り調べた。

でも、何も分からなかった。

彼が何処から来たのかも何をしていたのかも何もかも……。

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

金髪の小柄な少女、フェルトは屋根の上を走っていた。

走りながら自分の手の中にある今日の〝得物〟である小さな宝石が埋め込まれた〝徽章〟を見て笑顔になる。

 

(まぁ、チョロかったな!)

 

フェルトは貧民街で暮らす多分、十五歳の少女だ。

貧民街での生活は厳しい為、フェルトの様な少女は盗みや体を売るとかしないと生きてはいけない……。

フェルトの専門は盗みで今までそれで生計を立てていた。

今回のフェルトの仕事はこのフェルトの手の中にある徽章をある人物から盗み出すという依頼だった。

そのある人物に関する情報は外見等、少しの情報しか与えられなかったが何とか上手くいった事にフェルトは胸を少し撫で下ろしていた。

 

(でも、魔法で攻撃されるとは思っていなかったけど……それに……)

 

フェルトは忌々しそうに後ろを見た。

もちろん、後ろには誰もいない。

だが、フェルトには分かっていた。さっきから自分は追いかけられていると。

今は屋根の上だし引き離してはいるが確実に追いかけられている。

その追いかけてきているヤツの正体はフェルトには既に分かりきっていた。

この徽章の持ち主の〝銀髪の少女〟だ。

何せ、フェルトが徽章を盗んだ瞬間に街のど真ん中で魔法をぶっぱなしたヤツだ。

 

「チッ……しつこいヤツだぜ!でも、逃げればこっちのもんよ!」

 

フェルトは自信満々に言うと屋根と屋根を意図も簡単に飛び越え、目の前に大通りが現れれれば屋根から飛び降り道を行く竜車の荷台の屋根をクッションの様に飛び驚くべき跳躍力でジャンプして屋根に再び飛び乗る。

そうしてフェルトは道中を急いだ……。

 

 

 

しばらくして……

フェルトは屋根を降りて一時的に道を全力で走っていた。

それも今度は先程とは違いかなり焦りながら……。

 

「待ちなさい!!」

 

後ろをみればあの銀髪の女が走って追ってきている。

 

「くっそ!!アイツしつこ過ぎだろ!?」

 

まさに危機一髪。

フェルトは必死に逃げていたのだが気がつけば引き離したと思っていた銀髪の女に追い付かれそうになっていた。

フェルトは銀髪の女を引き離すために人が通りの多い道に入った。

 

「どけ!どけ!どけ!」

 

人混みをたくみにすり抜け通りを走り抜る。

しばらくそうしていると、後ろから銀髪の女の姿が消えた。

女の声も段々遠ざかるのがわかる。

さすがに、人混みの中ではあの銀髪の女も行動が制限されるようだ。

 

「良し!このまま!!」

 

やがて、フェルトの目の前に一つの路地が現れた。

その路地を見てフェルトは笑みを浮かべた。

 

「しめた!」

 

あの路地に入り込めば今度こそ絶対に逃げ切れる!フェルトはそう思い、路地へと入っていった。

 

 

 

「――――っ!?」

 

路地に入ったフェルトはその光景を見て足を止め急停止した。

靴が地面と擦れザザッーと音をたてる。

だが、急に止まったため足ふみをしてしまう。

 

「おおっと、と、と、と!?……危ねぇ…………って!に、兄ちゃん、そんなところに突っ立ってると危ないだろ!!そこをどけよ!!アタシが通れないだろ!?」

 

フェルトは怒った様子で片腕を前につきだし指を指す。

 

フェルトの目の前には白髪の青年が立っていた。

それも、気持ち悪い笑みを浮かべながら……。

 

実はフェルトが路地に入った瞬間、路地の奥の階段にこの〝白髪の青年〟が座っていたのだ。

別に座っているだけなら避けられるから問題は無かったのだが、青年はまるでフェルトが路地に入ってくるのを見計らったかの様に立ち上がり両手を広げて通せんぼをしてきた。

おかげで、フェルトは追突をさけるために急停止をしざる終えなかったのだ。

 

フェルトは思考しこの青年を新手のイタズラか、ゆすりかと考えた。

こんな、路地にいるようなヤツは大抵、そういうヤツだからだ。

 

「お前……どうせ、ここを通りたければ交通量を払えとか言うつもりだろ!だけどな、アタシにはお前なんかに払う金なんか持ってねーぞ!!」

 

フェルトは威嚇するように声を張り上げた。

そして、腰にかけていた剣の柄を掴み勢いよく引き抜く。

 

しかし、男はフェルトの剣を見ても顔色一つ変えなかった。

 

フェルトは剣を構えて警戒した。

 

(こ、こいつ、何者だ?体はどう見てもヒョロイし武器も持っているようには見えないのにどうして平然としていられるんだ……?)

 

そんな警戒をするフェルトを余所に青年はまるで嬉しそうな表情をして両腕を肘から上だけ上げてその口を開いた…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ!待っていたよフェルトさん!」

 

 

 

 

 

青年が何を言っているのかフェルトには一瞬理解できなかった。

 

「……は、はぁ?」

 

青年はまるでフェルトを大歓迎するかの如く笑顔で話はじめたのだ。

 

「ボクは本当にツイてるよ!こうして君に会えるなんてね!」

 

フェルトは開いた口が塞がらない。

フェルトが数秒間固まっていると青年は片手を顎に当てて考えるようなポーズを取りはじめた。

 

「……あれ?違った?君の名前は〝フェルト〟であってると思ったんだけど……」

 

どうやら、フェルトが固まっていたのを青年は名前を間違えたと勘違いをしたようだ。

 

(……って、そうじゃねー!!)

 

「い、いや、いや、いや!そうじゃねぇーだろ!?なんで兄ちゃんがアタシの名前を知ってるだよ!?……少なくともアタシは知らないからな!?」

 

我に帰ったフェルトが青年の発言に突っ込む。

すると青年は先程の考えるような表情をやめて元の笑顔に戻った。

 

「良かった。フェルトさんで正解だったんだね。もしも、こんな所で〝重要人物〟の名前を間違えたりなんかしたら自己嫌悪で死んでしまいたくなるところだったよ」

 

「お、おい!質問に答えてねーぞ!!」

 

「そんなに焦らなくても……ほら、質問には答えるからさ……そうだね。こうして顔を会わせるのは初めてになるんじゃないのかな」

 

「じゃあ、何でアタシの名前を知ってんだよ!」

 

「君はそれなりに有名人なんだよ?ボクごときが知っていてもおかしくはないと思わない?」

 

「…………まぁ、確かに……って」

 

(……ダメだ、こいつの口車に乗せられてる……冷静に考えろ。こいつの目的はなんだ?)

 

フェルトは頭を横に振り青年を睨み付け頭をフル回転に思考させた。

 

(そう言えば……こいつは、私を見て〝待っていたよ〟って言ってたよな?……それって〝待ち伏せ〟してたって事じゃ…………てことは)

 

「わ、分かったぞ!兄ちゃん……お前、あの銀髪の女の仲間だろ!?盗みの依頼にも見えねぇーし。アタシをこんな所で足止めするのが目的だろ!?そうはいかねぇーからな!!」

 

フェルトは青年に怒鳴った。

今のフェルトには青年はこんな所で待ち伏せをしている理由はこれしか考えられなかった。

すると、青年は少しだけ困ったような表情をした。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ。ボクはそんな事しないよ。ボクはむしろ君の味方なんだからさ」

 

「み、味方?」

 

「そうだよ。〝今回〟ボクは君を助けに来たんだ」

 

「はぁ?何言ってんだお前……そんな、くだらない手にアタシは乗らないからな!それじゃあ、アタシはもう行くからな」

 

フェルトはそう言うと呆れた様子で青年の横を通ってこの場から立ち去ろうとした。

すると、青年は通りすぎようとするフェルトに残念そうに

呟いた……。

 

 

 

 

 

 

 

「そっかぁ、それは残念だなぁ……このままじゃあ、君の大切な人が〝この世から永遠にさよなら〟するんだけど、それが君の選択だって言うならボクはもう諦めるしかないよね」

 

 

 

 

 

 

 

「………………え?」

 

青年のその言葉を聞いた瞬間、フェルトの思考は停止した。

足も動かなくなる。

今、コイツは何を言ったのかと……。

 

(私の……大切な……人が…………居なくなる…………?)

 

フェルトはハッとした様な表情をすると青年の方をゆっくりと振り向いた。

青年は相変わらず薄っらと笑みを浮かべている。

 

「良かった、ボクの話を少しでも聞く気になってくれたんだね」

 

「おい……どういう事だ?アタシの大切な人が居なくなるって……?」

 

「そのままの意味だよ。君の大切な人は、このままだと今日の夜には……」

 

そこまで言うと青年は完全な〝笑み〟を浮かべた。

フェルトはその笑みを見て怒りを覚えた。

しかし、今はそれよりもこの青年の話を聞かなければならない。

そして青年は続けて言った。

ねっとりとした声で……。

 

「殺されるんだよ」

 

一瞬、一瞬だが時が止まったかの感覚に陥った。

しかし、フェルトすぐに思考を復活させる。

 

「は……ハッ!そ、そんな、でまかせ誰が信じるか!アタシが思いつく範囲の大切な人はそう簡単に死ぬようなヤツは居ないからな!!」

 

「うーん……これは、狛ったねぇ……今の話は全て真実なんだけどなぁ……あっそうだ、これを言わないとさすがに信じてもらえないかな」

 

「も、もったえぶんないでさっさと答えろよ!!」

 

「そう、大きな声を出さないでよ。怒ってるならほら、深呼吸、深呼吸」

 

「て、てめぇ……!!」

 

フェルトの怒りは頂点まで達した。

フェルトは次の瞬間には青年を押し倒し、短剣を青年の首もとに圧し当てた。

 

「イタタタ……」

 

「早く言え!!さもないと……」

 

「……仕方ないな、ボクとしてもこんなくだらない死にかたをするのはゴメンだし、さっさと言うよ。今夜犠牲になる君の大切な人は……」

 

「…………」

 

フェルトは青年を睨み付けたまま青年の言葉に聞き入る。

青年はゆっくりと答えた。

 

「ロム爺さんだよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

(ロム爺が…………死ぬ?)

 

 

 

 

 

「ぷっ…………あっははははは!!」

 

フェルトは青年の上で馬乗りになったまま腹を抱えて笑った。

 

「ろ、ロム爺が殺されるって……んな訳あるわけねぇーだろ!あははは!!」

 

「ウゲッ!?ちょ、ちょっと!?ボクの上で暴れないでよ!?」

 

青年は自分の上で暴れるフェルトに対して鈍い無様な声を上げながら止めるように言う。

 

「ははは――あっ悪い悪い」

 

青年が苦しそうな表情をするのを見てフェルトは笑うのを止めた。

 

「ふぅ…………」

 

青年は息を調える。

 

「……ねぇ?ちなみに聞きたいんだけどさ……」

 

「……ん?」

 

フェルトは青年の方を向いた。

 

「君が言うロム爺が殺されることはないって言うその根拠はさ、何処からき

てるのかな?」

 

「はぁ?ロム爺が殺されることはない理由?そんなの決まってんだろ。ロム爺は〝喧嘩〟で負けたことなんか一度もねぇーんだぜ?そんなロム爺が殺されるなんてありえねーんだよ」

 

フェルトは青年の質問にまるで自慢をするように答えた。

すると、青年はフェルトの回答を聞いて呆れたような表情をした。

 

「はぁ……あのさぁ……もう少し頭を使って答えてくれないかな?」

 

「あぁ!?」

 

フェルトは再び青年を睨み付けた。

だが、青年は相変わらず呆れたような表情をしている。

 

「まぁ、ここで色々とボクが話しても良いんだけどさ……もうこの場所にいられる〝時間〟も残り少ないんだよねぇ……」

 

「時間…………?」

 

「あれ?もしかして忘れてるの?君って今、追われてるんだよ?」

 

「あっ……そうだった…………そうだったあああああああああ!?!?」

 

フェルトの声が路地に響いた。

この青年との言い争いをしていた事で完全に忘れていたのだ。

フェルトは青年に馬乗りになった状態から飛び上がった。

 

「お前のせいで追い付かれちまうだろうが!!さっさと、逃げねぇーと……」

 

フェルトは青年を指差しながら言った後、路地の奥を眺めた。

逃げる算段を考え直していたのだ。

そして、答えを瞬時に導き出すと動き出そうとした。

すると、後ろから青年が喋った。

 

「別に逃げなくても大丈夫だと思うよ?少なくとも今すぐにはね。まだ時間もちょっとはあるし」

 

「はぁ?何言ってんだ!?言ってることが矛盾してるだろ!?」

 

「別に矛盾なんてしてないよ。最初にボクは言ったよね?ボクは君の味方ってさ」

 

青年は立ち上がると自信満々そうにポーズを取りながら言う。

 

「よく考えてみてよ。フェルトさんとボクがこの路地で会ってからどれくらいの時間がたっていると思ってるの?」

 

「そ、そう言えば……」

 

かなり時間がたっている。

一体、どれくらいの間、自分はこの青年と騒いでいただろうか?正確な時間は分からないが、それなりに時間は経過したはずだ。

それなのにあの銀髪の女はここに来る気配は全くない。

街中で魔法をぶっぱなすヤツだ、路地に逃げ込んだ位で逃げ切れるわけがないのだ。

だとするとあの銀髪の女がここに来ないのには理由があるはずだ。

その理由はフェルトには一つしか思い当たらなかった。

フェルトは青年を見つめる。

 

「まさか……お、お前、何やったんだ!?あの女をどうやって……」

 

「どうやら、ボクを少しは信じてくれたみたいだね。そう、実はボクが君への追っ手を足止めするために幾つか手を打っておいたんだよ。君を捕まえさせる訳にはいかないもんね」

 

「お前、本当に何者だよ……」

 

警戒を強めるフェルトに青年は嬉しそうに笑った。

 

「ま、まだ、信じてる訳じゃねぇー!そもそもロム爺が殺されるなんて話も信じられねぇーしよ!!」

 

「えっ……まだ理解してないの?しっかりしてよ……ここに居られる時間は残り少ないっていったよねぇ…………まぁ、良いか。このままだと君は納得しなさそうだし仕方ないから、ボクが理解できるように手伝ってあげよう。もう一度手短に聞くけどさ〝ロム爺さんが殺されるわけがない〟って根拠はなんなの?」

 

「だから、さっきから言ってんだろ!ロム爺は喧嘩に負けたことなんか――――」

 

「それは分かったからさ。もっとちゃんと説明してよ」

 

フェルトが先程と同じ説明をしようとすると青年はそれを遮った。

 

「なっ……」

 

「確かにロム爺さんは〝喧嘩〟には強いかもしれないよ?でもね、その相手がもしも〝超人的〟な〝殺し屋〟だったりしたら?凄腕の〝剣の使い手〟とかだったりしたら?もしそんな相手でもロム爺さんが勝てると言うのならボクに説明して見せてよ」

 

「そ、それは…………」

 

「答えられるわけないよね。だって君は、ロム爺さんがそんな〝超人的な〟〝凄腕の襲撃者〟に勝てる根拠なんて知ってるわけないもんね……いや、無いと言った方が良いかな。だって〝結論〟は見えてるもんね」

 

「…………」

 

フェルトは何も答えられなかった。

心ではロム爺ならどんなやつが相手だろうがブチのめせるはず……そう思って疑っていなかったが青年の高圧的な雰囲気と青年の言うことへの不安感も出てきて答えられなかったのだ。

 

「…………」

 

「浮かない顔をしているねフェルトさん。それじゃあさ、こういうのはどうかな?ボクの事を信じてくれなくても良いから今日一日だけはボクと一緒に行動しようよ。それで何もなければそれで良しだし、何もなければボクは君の前から消えるよ。ね?これなら安心でしょ?」

 

「…………………分かったよ。安心はできねぇーけど……今日一日だけは兄ちゃんと行動してやるよ。でも、まだ、信じた訳じゃねぇーんだからな。勘違いはすんなよ。とりあえず話だけは聞いてやるよ。信じるか信じねぇーは、後だ」

 

「分かってるよ」

 

青年がそう言った後、フェルトは青年に促されるまま路地の奥の方へと青年と進み一緒に路地を出ていった。

 

 

 

路地を離れた後、二人は人や龍車が行き交う大通りを貧民街のある方角へと向かって歩いていた。

 

「「…………」」

 

二人は無言で両者の間には張りつめた空気が流れる。

 

「…………おい」

 

そんな中、フェルトは青年に向かって話しかけた。

 

「もう、路地からは結構離れたぞ。あの銀髪のねぇーちゃんの姿も見えねぇーし。いい加減、訳を話してくれよ兄ちゃん。さっきは驚いてたから何も言えなかったけどよ、万が一兄ちゃんの言う通りロム爺が今晩襲われるとして、何で兄ちゃんは見ず知らずのアタシたちを助けようと思ったんだよ?それで兄ちゃんに何の得があるんだよ?それを聞かねぇーと、信用もできやしねぇーからな」

 

フェルトは当然の疑問を青年に投げ掛けた。

それに対して青年は立ち止まりフェルトの方を振り向いた。

 

「ボクが君を助ける理由?そんなの決まってるでしょ?」

 

青年はまるでそれが当然の事のように言いフェルトは首をかしげる。

 

「全ては――――」

 

(……一体どんな理由があるんだ?)

 

フェルトは身構えた。

 

 

 

 

 

 

「〝希望〟の為だよ」

 

 

 

 

 

「……………はぁ?」

 

青年の回答を聞いた瞬間、フェルトは妙な脱力感を覚えた。

今までの緊張が嘘のように力が抜ける。

 

「だから〝希望〟の為なんだよ!そうでもなければ、ボクが動くわけがないもんねぇ」

 

「…………何となくお前が〝ヤバイヤツ〟だってことは理解したよ」

 

フェルトは苦笑いを浮かべ呆れたような表情をした。

 

「……そう言えば兄ちゃんの名前、まだ聞いてなかったな。名前なんてんだ?」

 

「ボクの名前?」

 

「兄ちゃん以外誰だって言うんだよ……」

 

「いやぁ、嬉しいなぁ。ボクみたいなゴミ屑の名前を聞いてくれるなんてさ」

 

「いや、そう言うのは良いから……で?名前は?」

 

「ボクは〝狛枝凪斗〟だよ。これからよろしくね。フェルトさん」

 

「おう……あんまり、よろしくしたくねぇーけどな…………」

 

フェルトは謎の青年の〝狛枝凪斗〟という名前を聞いて嫌そうな素振りをした。

するとそんな時、フェルトの中にふとした疑問が浮かび上がってきた。

それはこの狛枝凪斗という一見、力の無さそうな青年がどうやって徽章の持ち主の銀髪の少女を足止めしたのかできたかという事だった。

 

「そう言えばよ兄ちゃん。さっきから気になってたんだけどよ、どうやってあの銀髪のねぇーちゃんを足止めしたんだ?」

 

フェルトは狛枝凪斗に質問する。

それに対して青年は〝まるでなんでもない事〟のように語りだした。

 

「君を追っていた少女の事?それは簡単な事だよ。ちょっと、そこら辺に居る不良達をけしかけたんだ」

 

「兄ちゃん……なんかヤバイな…………」

 

「うーん……そうかなぁ?ボクはいたって普通だと思うんだけど……」

 

「いや、いや、いや、兄ちゃん。それが普通と思ったら大間違いだぞ」

 

「そうかなぁ……」

 

 

 

※※※

 

 

 

「――兄ちゃんって変な格好してるよな。それに髪型も凄いし。どっから来たんだ?この国の人間じゃないんだろ?」

 

「はぁ……その質問は正直もう〝何十回〟も聞いた気がするよ……」

 

「まぁ……そんな目立つ格好していればそうだろうな」

 

もうじき夕暮れの時間帯になる頃。

ロム爺の盗品蔵に行くまでの道のりの間、フェルトと狛枝凪斗は〝他愛の無い話〟をしていた。

盗品蔵のある貧民街までそれなりに距離が離れている。

いくら狛枝凪斗が怪しいヤツだとしても重苦しい空気の中、ずっと黙っているのは厳しかった。

だが、この〝他愛の無い話〟のお陰でフェルトにはこの謎の青年、狛枝凪斗について幾つか分かった事があった。

一つは目この狛枝凪斗は〝ヤバイヤツ〟だと言うこと。二つ目は〝希望〟と言う言葉に異常に反応すること。三つ目は異常にネガティブだという事だ。

 

「確かにボクはこの国の人間ではないよ。地図にも載ってないような遠くの国から来たからね」

 

「ふーん……なんか大変そうだな」

 

「アハハハ……まぁそうだね。〝お金も持ってないし〟行くあても無いからね」

 

「お、おう……」

 

「「………………」」

 

「ま、まぁ、なんだ。〝強く生きろよ〟兄ちゃん」

 

フェルトは狛枝に苦笑いで返した。

 

「ちょっと待って」

 

「ん?今度はどうしたー?店の看板が気になったのか?」

 

狛枝が急に立ち止まりフェルトに疑問を投げ掛ける。

フェルトはそれに対して〝またかよ〟とでも言いたいような表情をした。狛枝は時よりフェルトの発言や周囲の様子を見ては質問してくるのだ。

今回のもそれだ。

 

「いや、そうじゃなくてさ。その〝強く生きろよ〟って言う言葉さ、貧民街じゃ〝皆よく言ってる〟よね。スローガンか何かなの?」

 

「その口ぶりだと前にも言われたことがあるのか?」

 

「まぁ、そうだね。ボクの場合は言われたと言うより、たまたま会ったここの〝住人と一緒に行動〟してた時に〝偶数耳にした〟と言う方が近いけど」

 

「ふ~~ん」

 

狛枝の質問にフェルトは少し以外に思った。

 

(こんな何処からどう見ても怪しいヤツの相手をするヤツ何てアタシ以外にも居たんだな)

 

「で、どうなの?スローガンか何かなの?」

 

「まぁ、スローガンて言ったらスローガンだな……」

 

「あはっ!皆、仲良しなんだね」

 

狛枝は笑顔で言った。

そんな狛枝に対してフェルトは狛枝を睨み付ける。

 

「……あんなやつらと一緒にすんなよ。あいつら口だけで強くもなんともねぇ。性根の染みったれた人生の負け犬どもだよ」

 

「それは言い過ぎなんじゃない?君も貧民街に住んでるんでしょ?」

 

「――ッ!!」

 

フェルトは狛枝に怒った様子で詰め寄った。

 

「私はここに居るやつらとは違う!あんな路地裏で一生を終わらせる気なんてさらさらねぇーんだ!」

 

(アタシは…………違うんだ!!)

 

「……悪るかったな、忘れてくれ。兄ちゃん何かに分かってもらおうとは思ってねーからよ……」

 

フェルトはそう言うとムスッとした様子で歩き始めた。

 

(どうせコイツも………………)

 

 

 

「……素晴らしい」

 

「え?」

 

フェルトは奇妙な狛枝の言葉に後ろを振り向いた。

すると狛枝は自分の両腕を組むように掴んで佇んでいた。

 

「おい、どうした――――」

 

「素晴らしいよ!!君は希望に満ちているんだね!!君のような素晴らしい才能を持った娘に出会えるなんて……あぁ、ボクはなんてツイてるんだろうね!!」

 

「フッ……変なヤツ」

 

フェルトはそう言うとうっすらと笑みを浮かべたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方、フェルトと狛枝はロム爺の盗品蔵に無事に〝予定より少し早く〟到着した。

 

(何か良くわかんねぇーけど、早くついたな……って、あの兄ちゃんは……)

 

「おい、どうしたんだよ。兄ちゃん。早く行くぞ!」

 

盗品蔵の入口の前での目の前でフェルトは声を上げる。

フェルトはさっきまで自分の横を歩いていた狛枝が急に立ち止まった為、後ろを振り向いて声をかけたのだ。

狛枝は腕を組んで盗品蔵を見上げていた。

 

「あ、ごめん……分かってるよ。それじゃあ、そろそろ入ろうか」

 

「…………おう?」

 

そう言うと狛枝はフェルトの元へと歩いて来た。

だが、フェルトは少し気になった。さっきの狛枝の表情に少し思うところがあったのだ。

 

(なんか、真剣そうだったな……)

 

狛枝がフェルトの立っている所で一緒に盗品蔵の扉の前で止まる。

 

「どうしたの?早く中へ入ろうよ。時間も余り無いしさ」

 

「そ、そうだな」

 

そう言うとフェルトは盗品蔵の扉の前に立つと軽く拳を握り扉をノックした。

するとすぐに扉の向こうから歳をとった男のような声がフェルトの耳に入った。フェルトもそれに反応し答える。

 

「大ネズミに」

 

「毒」

 

「白鯨に」

 

「釣り針」

 

「我等が貴きドラゴンに」

 

「クソったれ」

 

それはロム爺の盗品蔵の合言葉だった。ここは貧民街。これぐらいやらなければ危ないのだ。合言葉を言い切るとすぐに扉の鍵がガチャと外れる音がする。

するとフェルトはいつものように扉を開けた。

フェルトが先に盗品蔵の中へと入り、その後にくっついていくように狛枝が後から入った。

 

 

 

「待たせちまったなロム爺。変なヤツに絡まれちまってよ」

 

「――ん?フェルト、お前さんの後ろに居る小僧は誰なんじゃ?」

 

フェルトは盗品蔵に入ると入り口の側にいた普通の人より倍近くは身長がある〝爺さん〟に気軽に話しかけた。

それに対して爺さんはフェルトの後に入ってきた狛枝を見て首をかしげた。

 

「ああ……この兄ちゃんは…………ちょっと、そこで、会ったんだけどよ……」

 

(うーん……しまった、どう説明すれば良いか考えてなかったぜ……どうやって説明しよっかなぁ……)

 

フェルトはどう説明しようかと困った表情をした。すると、そんなフェルトの様子に感ずいたのか狛枝が口を開いた。

 

「フェルトさん。時間も無いし、ボクが自分で説明するよ」

 

「……分かった。アタシも兄ちゃんをどうやって紹介すればいいか分かんなかったよ」

 

フェルトは苦笑いを浮かべた。

フェルトと狛枝の会話に理解が追い付かない爺さんは首をかしげ続けた。

そんな状況で狛枝はフェルトの前に出て爺さんの前に立った。

 

「やぁ。お爺さん、あなたがこの盗品蔵の主〝ロム爺〟さん、なんだよね?」

 

「ああ、いかにもワシがロム爺じゃが……お前さん、どうやら取引をしに来た様には見えんが……」

 

「あはっ!さすがは盗品蔵の主さんだよねぇ。その通り。今回ボクがここに来たのは取引ではないんだ。まぁ……〝ある意味〟では〝取引〟になるのかもしれないけどさ……」

 

狛枝がある意味では取引と言った瞬間、フェルトの表情が少し曇った。

それをロム爺は見逃さずに察しる。

 

「なんじゃか……きな臭い話のようじゃの……まぁ、とりあえず、座っていけ。落ち着いて話すとするかの……」

 

そう言うとロム爺はカウンターの前にある席に座って話すように狛枝とフェルトを促した。

狛枝はそれについて了承するとフェルトもカウンターの前の席に座ることにした。

そして、ロム爺は入口の扉を閉めると、カウンターの内側へ行きカウンター越しに席についた狛枝と向かい合った。

 

「まずは、ボクも自己紹介をしなくちゃいけないね。ボクの名前は狛枝凪斗だよ。よろしくね。ロム爺さん」

 

「……それでお前さんの、用件は何なんじゃ?」

 

「そうだね。それじゃあ、さっそくだけど本題にはいろうか」

 

「…………」

 

フェルトは狛枝が淡々と喋り始める姿を隣の席から横目で見て気に入らなそうに聞いていた。

 

(こいつ……なんで、今からあんな話をするってのに楽しそうなんだよ……)

 

「ねぇ、フェルトさん」

 

「な、なんだ?」

 

話の流れ的にてっきりロム爺相手に話すのかと思ったがそう思った矢先にフェルトに話がかけられほんの少しだけ驚く。

 

「このあとだけどさ、もしかして誰かと待ち合わせしてない?」

 

「待ち合わせ?…………っ!?なんでお前がそんな事知ってんだよ!?」

 

「その反応、やっぱり待ち合わせしてるみたいだね」

 

「だけどよ?待ち合わせしてんのはアタシの〝客〟だぜ!?兄ちゃんの話と何の関係があるんだよ!?」

 

「……関係おおありだよ。あのさ、その〝客〟って、〝黒髪の大人の女性〟じゃなかった?」

 

「な、なんで、そんな事まで……」

 

フェルトしか知らない情報を次々と出してくる狛枝にフェルトは言葉を詰まらせた。

 

「のぉ……ワシには話が見えんのじゃが……」

 

ロム爺は話が良く分からず疑問を嘆きかける。

狛枝はロム爺に向き直ると真面目な表情で言った。

 

「今から話は繋がるよ……フェルトさんはどうやら頭がちょっと固いみたいだから、ここはロム爺さんが理解してくれれば取りあえずは良いね」

 

「喧嘩売ってんのかよ!」

 

「……フェルトさん、少し静かにしてくれるかな。これじゃあ、できる話もできないよ?」

 

「キィィィ!!」

 

「フェルトさんの事はおいといて、今起きていることをボクの推測を交えながら説明するけど良いよねロム爺さん?」

 

「お、おう……お前さん、中々の毒舌じゃな…………」

 

ロム爺は困ったような良くわからないと言った様な苦笑いを浮かべる。

 

「それじゃあ、時間も無いし簡潔に説明するね。結論から言うと、フェルトさん、君は今回の仕事を引き受けるべきではなかったね。いくらお金を貰える予定だったのかは知らないけどさ」

 

「もう黙ってらんねぇー!!アタシの仕事にイチャもんつける気かよ!!」

 

狛枝の言ったことにフェルトは声を張り上げた。

 

「まぁまぁ……そう怒らないでよ。黙ってられないって……黙ってないよね?話は最後まで聞いてほしいなぁ。でも、次回からは仕事選びは気を付けた方が良いと思うよ?フェルトさん」

 

狛枝がフェルトに謎の忠告をするとロム爺が何か分かったかのように声をだした。

 

「……ちょっとまて、お前さん。今の言葉を聞くからには、お前さんの〝きな臭い話〟はフェルトの〝仕事〟と関係しているよう様に聞こえるんじゃが……」

 

「うん。その通りだよ。これからこの盗品蔵に来るフェルトさんの〝客〟は……ふっ」

 

狛枝はそこまで言うと薄っすらとニヤけた。

 

「お、おい!アタシの客が何だってんだよ!?」

 

フェルトは我慢できずに声を上げる。

そして、狛枝は答えた。

 

「……〝プロの殺し屋〟なんだよ」

 

「…………は?」

 

フェルトは間の抜けた声を出した。

 

(アタシの客が…………殺し屋?)

 

「こ、殺し屋じゃと!?」

 

ロム爺はカウンターから体を乗り出し驚愕した。

 

「ま、待て!待て!お前さん。その根拠は何なんじゃ!?どうしてそんなこ事がわかる!?」

 

「そ、そうだぜ!兄ちゃん!根拠を言えよ!?」

 

ロム爺とフェルトは狛枝に詰め寄る。

 

「根拠?」

 

「そうだ!根拠が無いならアタシは信じねぇーぞ!!」

 

(……アタシの客が殺し屋だって?冗談じゃねぇ!!アタシの客が……アタシが見つけた客が殺し屋なんてあるわけがねぇーんだ!!)

 

「……じゃあ一つ、ボクが持っている〝根拠〟を君達に教えてあげるよ」

 

「根拠?」

 

「物証が乏しいというか、無いから信じてもえるか分からないけど、これは〝ボクが幸運にも偶然〟目撃してしまった情報だよ。ボクはね、ある殺人現場を見ちゃったんだ……〝黒服を着た長い黒髪の女性〟が人を殺す瞬間をね……ボクとしては、どうでも良い事だったんだけど……その後、気になって彼女の事を調べたんだ。そしたら……驚くべき事実が分かっちゃったんだよ。彼女はここ最近、王都を騒がせている〝殺し屋〟だったんだ。しかも、最悪なことに彼女はとある〝有名な泥棒〟にある〝物〟を盗んできてほしい依頼をしていた事が分かったんだ」

 

「まさか……」

 

フェルトはそう呟くと自分の手のひらの中にある徽章に目をやった。

 

「おや。フェルトさんはもう気がついたみたいだね。そうだよ。その殺し屋が盗んできてほしいと頼んだのは〝君〟の事なんだよ……そして、君が今手に持っている〝徽章〟こそが殺し屋が欲しい物なんだよ。あ、それに前もって言っておくけど黒髪でしかも黒服の人物ってこの国ではかなり珍しいよね?しかも長髪なんて……ここから先は言わなくても分かるよね?」

 

「どうなんじゃフェルト!お前さんの客は〝黒髪の長髪で黒い服を着ていた〟のか!?」

 

「そ、それは……確かに黒髪の長髪で黒い服を着ていたけどよ!!偶然かもしれないだろ!!それに殺し屋だとして何の問題があるんだよ!?」

 

「「…………」」

 

フェルトはムキになり声を荒げた。そんな様子を狛枝は無表情で。ロム爺は口を半開きにして聞いていた。

すると、ロム爺は項垂れるようにガクッとカウンターに突っ伏した。

 

「のぉ~……勘弁してんかのぉ……洒落にならんぞい…………いくらワシでも殺し屋の相手は勘弁じゃ」

 

「ろ、ロム爺までソイツの肩を持つのかよ!?」

 

「フェルト……お前さん良く考えてみ……もし、この小僧が言うように〝本物の殺し屋〟で〝王都を騒がす様な殺し屋〟だとしたら今お前さんが持っている〝徽章〟は殺し屋が誰かに盗むように依頼されたか、殺し屋が喉から手が出るほど手に入れたい代物という事なんじゃよ……」

 

「それに何の問題が……」

 

「つまりね。フェルトさん、ロム爺さんはこう言いたいんだよ。殺し屋は自分に足がつく可能性が高い……つまりフェルトさんや、その取引に関わった〝関係者〟を殺しにくる可能性が高いっていう事なんだよ。しかも、王都を騒がせる程の大物という事はその辺は徹底しているはずだ…………フェルトさんが持っているその徽章はね……ただの金目の価値がそこらの物じゃないんだよ。その〝徽章〟はね……これから〝此処〟に〝フェルトさんにとって〟の〝絶望〟を招き入〝鍵〟となり得る物、なんだよ」

 

「アタシに、とっての…………絶、望」

 

「……どうかな?フェルトさん、ロム爺さん、事の重大さを理解してもらえたかな?」

 

フェルトがようやく理解したのを見て狛枝は腕を組ながら二人に言った。

 

「「…………」」

 

フェルトとロム爺は沈黙する。

数秒間の沈黙の後、ロム爺が口を開いた。

 

「ん?ちょっと待てよ……」

 

「……どうしたんだよロム爺?」

 

疑問の顔を浮かべるロム爺にフェルトは疲れた様子で聞いた。

 

「小僧、お前さん、今の話を冷静に考えると〝お前さんが嘘を言って取引をさせない様にしようとしている〟事もあり得るんじゃないかの?例えばそうじゃの……実はお前さんの正体が〝今回のフェルトの客の商売敵〟とかの……」

 

ロム爺は狛枝に対して冷ややかに言った。そのロム爺の言葉にフェルトは目を見開く。

 

(商売敵……そうか!そうだとすれば、コイツがアタシと客との取引を知っていたとしても、おかしくない!)

 

フェルトは席から立ち上がると狛枝の方を睨み付け指を指した。

 

「そ、そう言う事だったんだな!!お前がアタシにすり寄って来たのも、アタシと客との取引を邪魔しようとしてるのも全部、お前が〝商売敵〟だからなんだな!?」

 

フェルトはここぞと言わんばかりに狛枝に詰め寄った。

狛枝に対してフェルトとロム爺の冷たい視線が突き刺さる。

すると、狛枝はまた、残念そうな顔をした。

 

「はぁ……一応、反論はさせてもらうよ。ボクは〝商売敵〟なんかじゃないよ?フェルトさんには、何度も言うようだけどボクは〝希望の味方〟なんだ。まぁ、こう言った所で今は証拠もないし信じて貰えるとは思えないけどさ……」

 

狛枝はため息をつきながら反論した。

 

「それじゃあさ、ボクから一つ提案があるんだけど、聞いて貰えるかな?受けるか受けないかはそっちで決めて良いからさ」

 

「……提案?」

 

「言いじゃろう……言ってみ」

 

提案の言葉にフェルトとロム爺は目を細める。

 

「ボクは〝君達の取引を止めない〟その代わりにその取引の交渉を……〝ボクにやらせてほしいんだ〟」

 

「は……はぁ!?何言ってんだ兄ちゃん!?」

 

「そうすればボクが必ず、〝彼女の正体を暴いてあげるよ〟」

 

狛枝は自信満々そうに満面の笑みを浮かべた。

その様子をフェルトとロム爺は唖然とした様子で見ていた。

 

「ちょ、ちょと、待ったーーーー!!!!いや、いや、いや、色々言いてぇー事はあるけどよ!!まず、第一に自分の仕事を他人に任せられるか!!それに兄ちゃん、商売の交渉なんてやった事あんのかよ!?」

 

「別にないけど?」

 

「さらっと言うなよ!!」

 

「確かに商売の交渉はしたことないけど〝命を懸けた学級裁判〟に比べたらこんなのは簡単だよ。様は話術と情報戦なんでしょ?」

 

「良くわかんねぇーけど……そう言う事言ってんじゃねぇーよ!!」

 

「そうじゃ、そうじゃ、フェルトのいう通りじゃぞ。小僧、お前さん、今の提案はさすがに無理がありすぎるぞい。ワシらはまだ会って一日もたっておらんのじゃぞ?そんなお前さんに大事な仕事を任せられるわけなかろう……お前さんが逆に盗むこともあり得るのじゃからな」

 

狛枝に対して疑いの視線がさらにキツくなった。

だが、狛枝はそんなことは気にしていなさそうに笑顔のまま自信満々そうのまま、話を続けた。

 

「そう言うと思ってたよ……それじゃあ、ボクを少しでも信用してもらえる様にと言ったらなんだけど……君達に〝これ〟を貸してあげるよ。ボクがもしも君達を裏切ったらこれを売るなり使うなり好きにして良いよ」

 

そう言うと狛枝はポケットの中にてを突っ込むと〝黒い手のひらサイズの板〟のような物を取り出した……。

 

 

 

 

 




10月中に更新しますとか言っておきながら間に合わなくて本当にごめんなさいッ!
しかも、こんなに文が絶望的に長くなっちゃって本当に申し訳ないです!
お気づきの方も居るかも知れませんが今回のお話の最後は気持ち悪く無理やり切った感が強いと思います。実は書いている途中で思った以上の長文になってしまったので3話と4話の2回に分けて投稿させていただきました(4話は最終チェック後にすぐに投稿させていただきます11月1日現在)。

今回の話は一応、狛枝クンの目線のお話ではなくフェルトからのお話です。
正直、最初から最後まで狛枝のオンパレードみたいな感じですけどね。
狛枝クンの様子がなんだか、少しおかしい様ですが、どうしてしまったんでしょうか……。
狛枝クンは何をしているんでしょうか……。


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