ワールドトリガー「Re:自戒の絆」   作:悠士

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29話 終わりの一手

「三輪が!?」

 

『ああ、偶然居合わせた三輪が人型と戦っている。その隙に三雲は本部に近づいている』

 

レイジさんからの情報で偶然だというが、多分だけど迅さんが関係しているんじゃないかって思う。ネイバーに恨みを持っている三輪が素直に修を助けるつもりはないだろうし。遭遇するように未来を選んだってことなんだと思う

 

「オレも目視まで近づいた!」

 

『護は修の援護に行け。三輪が抑えているなら敵の目的の阻止が優先だ』

 

「了解!」

 

数十m先には修の姿が確認できた。横には三輪と情報にあった生物を弾とするトリガー使いのネイバーも。たった一人で大丈夫なのかと不安になったが、シールドを薄く小さくして広範囲を防御していた。命中したらキューブにされる性能を小さいシールドで対処するなんて考えている。威力自体はそこまでない。当たったからといって弾けるわけでも貫通するわけもないから厚さなんて必要ない

足止めとしては十分すぎるだろう。あとはトリオンがどっちが先に切れるかの勝負だろう

 

「修!!」

 

「護! これは…?」

 

「オレのブラックトリガーだ」

 

家の門に隠れていたからそこへ降りた。一緒にいる狼達が気になっているようだが端的に答える

 

「ん?…避けろ!」

 

「っ…!」

 

「これは…あの女のトリガー!?」

 

視界の隅で何かが光ったと思った次には見覚えのある黒い物体が空中に出現する。口にするより早く手を伸ばして避けさせるとオレの腕を貫通して修の足にまで刺さった

 

「…目標補足」

 

地面の空間からミラと呼ばれていたトリガー使いが現れた。周囲に敵の目らしいものはないのに正確すぎる。トリオン反応で来たにしては門の陰に隠れているオレたちを狙えるなんて仕組みが分からない

 

「とりあえず逃げるぞ!」

 

「は、はい!」

 

何のために狙うのかは分からないけど千佳ちゃんを奪われるわけにはいかない。剣を振りぬくが今度は地面に沈んで回避した。修は家の塀を沿うように奥へ進んでいく

 

「っち…あっちか!」

 

修を追いかけたにしてもどこへどう曲がったかなんて分からないはずだ。ここは住宅地だから隠れられる場所は多い。だけどサイドエフェクトが敵の女が修たちのほうへ行っているのが見えた

 

「意外と早いわね」

 

「くそっ! またかよ!」

 

思った以上に厄介なトリガーみたいだ。後ろからの不意打ちのつもりだったのにあっさりと回避されてダメージを与えさせてくれない。ほぼノータイムで出現する黒い空間は音もないためどこから出てくるのか分からない。こっちの飛び道具はオレと同じように撃ち返すのでは接近戦しかない。それでも修たちが逃げる時間が稼げればいい

 

「これならどうだ!」

 

「それはもう見たわ」

 

狼達を周囲に集めて口を開かせる。その瞬間トリオンの弾丸が一斉に敵に襲い掛かった

一菜が本部へ捕虜を連行しながら付き添わせた狼に弾を撃っていると連絡がきた。だから今も狼の腹の空間には一菜が用意してくれた弾がある

 

「はじめてだったら、少しは手傷を与えたかもしれないわね」

 

「っ……まあ、ワープのトリガーがそこまで早くなければオレの勝ちだったろうな」

 

意味があまりないだろうと思っていたけれど、かすり傷一つすらないなんて予想より低かった。一体どうやってこいつを攻略するべきか悩む。専用トリガーなら可能性はあったかもしれない。けれどいま解除すれば再換装できる自信がない。境界の守護者(ガルディアン)でも気力を振り絞って発動させたようなものだ

 

「でも、あなたを相手をしている暇はないのよ」

 

「…また修のところか」

 

すぐに援護に向かうと空から黒い何かが落ちてきた。修の肩越しだがあの形状は新型のトリオン兵だった。今あんなものに襲われたら修なんてあっさりとやられる。焦って倒そうと前に出ようとするが、その前にレプリカが止めてきた

 

『心配無用だ、護』

 

「レプリカのコピー、追いついてきたのか!」

 

「コピー!?」

 

遊真のブラックトリガーが学習し自分の力にするのは知っているが、トリオン兵までもコピーするかとオレは驚いた。なんでもコピーできるなんてチートもいいところだ。だがあればこっちの味方なら逆に戦力は増えたようなもの

 

「レプリカ。新型にあの女の相手を頼めるか? どうも今のオレとは相性が悪くてな」

 

新型に空間トリガーの棘が刺さるが、硬いのか目玉までは届いていなかった。あの攻撃が防げるならあの女にとって相性はよくないはずだ。今までの情報からすればあいつ自身の攻撃はあの棘のみ。仲間との連携も可能だが単独ではそれ以外の攻撃手段はないってことかもしれない

 

ブラックトリガーは良くも悪くも強い。だがその分敵との相性に左右されやすい。汎用性を求めているボーダーのトリガーは組み合わせによってはブラックトリガーといえど天敵となりえる

 

『心え―』

 

「…っ!!」

 

「言ったはずよ。悪足掻きは好きじゃないの」

 

レプリカの新型であの女の相手を頼んだ次には空間トリガーの棘で真っ二つにされていた

 

「…っ!! レプリカーー!」

 

「乗れ!!」

 

一瞬だけ驚きで我を忘れていたが、コピーした新型が動いたことで我を取り戻した。だけど動いたってことはレプリカが操作しているわけじゃないって事になる。どうなっているのかは分からないけどまだ動くなら戦ってもらうしかない。修が半分になったレプリカの片方を持って去ろうとするが、片足が動かないのでは遅い

オレの狼に跨らせてこれで一気に距離を稼ぐことにする

 

少し走ったところで建物の破壊音が聞こえてきた。三輪と相手にしているネイバーが近くに来ていたのだ。しかも鳥を出して新型に放ってきた

 

「させるか!!」

 

「っち、邪魔をするな!」

 

キューブ化されて無力化されては困るから、一菜の弾丸を放って阻止する。オレにまで飛ばしてくるが撃ち落せば問題ない

 

『護、頼みがある』

 

『なんだ?』

 

オレが守る行動を取ったことで断続的に新型のほうへ鳥を飛ばしてくる。このままジリ貧かと思ったとき修から通信が来た

 

『20秒だけ、時間を稼いでほしい』

 

『20秒? なにをするつもりだ?』

 

『レプリカが、策があるって』

 

20秒の時間稼ぎをしてほしい。それが修からの頼みだった。厳しいけど不可能ではない。だが修にどうにかする方法なんてあるかと聞けばレプリカに案があるらし

いったいどんな策なのか分からないけど、遊真たちと旅をした数年間の記録を持つレプリカだから最善策を考え付いたのかもしれない。半分になった状態でできるのかはわらかないけど、ただ修一人を進ませるよりはマシかもしれない

 

『わかった。最低でも20秒は稼いでやる』

 

『ありがと』

 

「さっきから小さい攻撃ばかりだな? 邪魔ならオレをどっかに飛ばしてしまえばいいのに」

 

敵が修に向ける意識を少しでも減らすためにも挑発を仕掛ける

 

「あら、あなたのような相手にそんなトリオンを使うなんてもったいないわ」

 

「そう…かよ!」

 

成功かどうかはわからないが話し相手にはなってくれそうな感じだ。壁を蹴って近づいて剣を振る。当たり前のようにワープして逃げられる

 

「さっきから逃げてばかりだな? 棘で刺す以外何もできないから逃げるしかできないのか?」

 

「…弱者ほどよく吼えるわね」

 

「当たり前だ! オレは子供だ、一人の人間だ。弱いのは当然で、だからこそ頼るんだよ!!」

 

「っ!! うっとうしいわね」

 

苛立っているのか眉間に皺が少し寄った。オレの言葉に煽り返してくるが、反論せずに受け止める。オレは所詮強いと思い上がっていた弱い子供だ。戦うこと以外何もできない。ネイバーと知られたときオレは何もできなかった。根付さんたち大人の人が頑張っただけだ

ただ頼ることしかできなかった。子供なんだから当然かもしれない。戦える力があるからって、サイドエフェクトがあるからって何でもできるわけじゃない。だからオレは、オレに足りないものを周りに頼って助けてもらう

今はそうでも、いつか今度は頼らせてと言われたときにそうすればいい

 

オレばかり見ているから狼の動きが見えていなかった。後ろから口を開けた狼がレプリカがコピーした新型を吐き出した。殴ろうとしてくるのを下がって回避したのを見て柄の狼を伸ばした

 

「しまった!? 放しなさい!」

 

「そうはいかないだろ! オラッ!」

 

ジャラジャラと鎖の音を鳴らしながら敵の女のミラに向かった。すぐには避けれなかったようで左腕に噛み付いた。棘を刺してくるがダメージはない。狙いをオレに変えてくるが、それよりこっちが早く狼を引っ張ったことで噛み付いた腕が千切れた

 

このまま追撃しようとするが、横から魚が迫ってきてて邪魔された。ビルの壁を壊し蹴り飛ばす。出水のおかげでトリオン以外には弱いことが分かっている。けれど数が圧倒的に違いすぎるから推し負ける

 

「っく……修!?」

 

物陰から出た修はついに行動に移すことにしたみたいだ。今の状況でどんな策があるのかわからないが、このまま追い詰められてジリ貧になるよりは一か八かの賭けに頼るしかない

今度は鳥が修を追いかけるがコピーしたトリオン兵が瞬時に動いて盾になった。けれどトリオン出できている以上キューブ化して倒されてしまった。あとはオレと三輪が惹きつけるしかない

 

「ミラ、仕留めろ」

 

「了解しました」

 

距離がある以上すぐには駆けつけれない。それよりミラってやつを倒す方がいいと、もう一度柄の狼を飛ばして首を食い千切ろうとしたけど小さな棘で阻止され、しかも修の体にいくつもの棘が刺さって身動きが取れなくなっていた。横からはキューブ化する鳥が迫っている

 

「ベイルアウトしろっ!!」

 

最悪オレがキューブ化した千佳を回収すればいい。修まで回収できるかわからない。考える余裕なんてないんだからそうしてくれと願っていたら、何を考えたのかトリガーを解除した

 

「っ、換装を解いた!?」

 

換装時にほんの数秒だけ多少の位置情報のズレがあっても換装できるよう作られている。そのおかげで棘から脱出できた修は物理には効かない鳥を受けながらも本部の入り口へ向かって走った。たしかに片足が使えなくなっていたトリオン体よりは早い。だけどそれで間に合うかは分からない

 

「うるさいぞ!」

 

「バイパー!」

 

オレとしたことが修の無謀な策に呆然としていた。ビルの上では三輪たちが戦っていて、キューブ化のトリガーを使うネイバーにダメージを与えていた。とりまるがやられた連携を逆手にとって。我に返ったオレは援護しようとするが、ミラのトリガーで三輪はどこかに飛ばされてしまった

 

あとすこし、10秒でもいいから時間を稼げればいい。修がたどり着いて本部に入ればいいのだから

 

「邪魔だ!」

 

「それはこっちのセリフだ!」

 

焦っているのか鳥を大量に出して襲い掛かってくる。一菜に命令して狼に弾丸を送ってもらっているからギリギリ迎撃できているが、ミラの方まで注意しながらは生き残れるか分からなかった

だけどその心配はなさそうだった

 

「トリオン切れか? 空間移動するだけあって相当トリオンを使うみたいだな!」

 

「黙りなさい!」

 

図星だ。敵に余裕がなくなってきてる。ミラの手にしている球体の形状が崩壊し始めた。これまでのダメージでトリオンも大量に漏れているだからこの辺が限界なのだろう。棘も長さも数も減った。放っておいても何もできないはずだ

 

「しまった!」

 

三輪がいなくなったことでフリーになったネイバーがまっすぐ修のところへ向かっていった。修のそばに置いておいた狼は消されてしまったしすぐには助けられない。せめて壁を削ろうと守っている魚を狙う。オレも下りて境界の守護者(ガルディアン)を防御モードにして黒い棒を地面叩きつける。黒い線が一直線に伸びていく

 

奴との間に壁と棒を伸ばして邪魔をする。キューブ化と言っても通れるだけの大きさを作るのに時間が掛かるはずだ。これで修の策は通せる、そう思っていた

 

「っ………修ーーー!!」

 

ミラのトリガーの棘が修を貫いた。生身だから今度は痛みがある

すぐに助けに行きたいが、今動けば修との間を遮っている壁が消えてしまう。そして千佳が奪われてしまう

 

「っ……どうすれば………修…!?」

 

このあとどうすればいいのか逡巡していると修は足を止めた。そして脇に抱えていた切断されたレプリカを手に持って――投げた

 




ようやく大規模侵攻も終わりが見えてきましたねー
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