ワールドトリガー「Re:自戒の絆」   作:悠士

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3話 最初の相手は風間隊

 オレは昨日と同じように本部の本部長室に入った

 

「ん?どうした護?」

 

 誰かが入って来たのを知ると動かしていた手を止めた顔を上げてオレを見た

 

「はい、今日の弁当ッス」

 

「ありがと、いつも助かるよ」

 

 叔父さんは中身が入った弁当を受け取ると代わりに空になった弁当箱をオレに差し出した、忍田本部長と一緒に過す事になって分かった事はまず食生活は適当だった事

 最初のご飯は黒い炭と思うほど黒かった卵焼き、しかもそれ以降はレトルト…インスタント…惣菜と料理が苦手だという事

 これでは体が壊れると代わりにオレがキッチンに立つことになったが、それでもやはり最初は四苦八苦したが、風間さんと一緒にボーダーに入隊してきたレイジさんの趣味が料理だということを知ると頼んで料理を教えてもらった

 それからは叔父さんの昼は弁当になり、朝と晩は自宅で食べるのだが昨日みたいに泊まったりなんて事も少なくない

 

「それと護、今日はトリガーを使っていないだろうな?」

 

「もう使わないッス!!太刀川さんと同列に扱われるのは嫌だから!!」

 

 どう言う意味なのか聞かれて、昨日の風間さんとのやり取りをそのまま話した

 

「………そうか……ならもうするなよ」

 

「わかってるッス!!っと、それと昨日支部長(ボス)が合格祝いでとこれをくれたんス」

 

 昨日の合格祝いのことを思い出したオレは、ポケットから林藤支部長からくれた温泉の宿泊チケットを見せた

 

「たまには叔父さんとボーダーの事は忘れて楽しんで来いって言ってたッス」

 

「そうか林藤さんが、日付は1週間後かそれまでには行けれるようにするよ」

 

 その後少しだけ朝見たニュースの事とか学校の事とか話をしてこれ以上邪魔するわけにはいかないと部屋を出た

 オレは本部を出て玉狛支部に行き、まだ使ったことのないトリガーの訓練をしようと向かった

 

 玉狛支部には殆ど人がおらず小南は文化祭の準備に、烏丸はバイトに、レイジさんは大学に向かい林藤支部長は本部へ会議に行ったそうだ、残って課題とか片付けている宇佐美がオレに何処へ行くのか声をかけてきた

 

「これから訓練室に行くッスよ」

 

「そう?なら私もいくよ、説明とか必要でしょ?」

 

 課題を片付けて宇佐美と一緒に地下の訓練室に行った

 

「トリガー起動(オン)

 

 トリオン体に換装を終えたオレには仮のトリガーと違い、弧月の代わりに右手にはオレ専用の大きな槍型トリガー春風(はるかぜ)が握られていた

 

「おお!!カッコイイッス!!」

 

「私もそう思う、ロイ(ろっちー)の話だとガンダムとか言うアニメの作品に出てくる武器を元にしたらしいよ。先端から弧月が出るよ」

 

 宇佐美の言うとおり春風を起動すると先から弧月が出た

 この世界に来てロイは日本料理…アニメ…マンガなど大層気に入ったようだ、何よりBL作品があることに一番驚いていた

 

「それじゃ中に入るよ、適当に的とか出してッス」

 

「いいよ~それならアタシの『やしゃまるシリーズ』はどう?」

 

 宇佐美が独自にプログラミングしたモールモッドの改良版、速度重視、硬度重視など戦闘訓練するにはいいが

 

 色とネーミングセンスがなぁ…………

 

 これまでに宇佐美のズレたセンスの被害者は少なくない、とくに以前所属していた風間隊の3人は苦労したそうだ

 

「今回はいいッスよ、トリガーの練習がしたいだけッスから」

 

「んんっ~~……分かった……」

 

 悔しそうに『やしゃまるシリーズ』が入った記憶媒体をしまった

 

『それじゃスナイパー用の的を出すね』

 

 仮想戦闘空間が作られると、それと同時にボーリングのピンと似たような形の的が出現した、頭と胴と思われる表面には的が描かれていた

 

「ソードモードはさっき試したから次はガンモードだな」

 

『それならそのまま撃ち出す感じでいいよ、弾は――――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後の訓練は順調だった、試しに通常のモールモッドと結局だけど宇佐美の『やしゃまるシリーズ』も出してもらった。初めての武器で扱いに苦労はしたが何とか撃破した

 その日の夜8時頃に防衛任務も終わり帰ろうかと思ったそのとき、ポケットに入れている携帯が着信を知らせる曲が鳴った、画面を見ると掛けてきた相手は風間さんだった

 

「もしもし?」

 

『護か、今空いているか?』

 

 昨日に続いて今日も予定を聞いてくるあたり1つの事に思い当たった

 

「もしかして模擬戦ッスか?」

 

『ああ、空いているなら相手を頼みたいんだが?』

 

「いいッスよ、これから本部に行きますね」

 

『無理言ってすまないな、本部長に言ってランク戦のブースを借りているからそこで待ってるぞ』

 

「了解ッス」

 

 電話を切って帰ろうと思っていた足を本部に向けて歩き出す

 20分ぐらいして本部に着いて、風間さんが借りていると言ったランク戦のブースがある通路には風間隊の4人が待っていた

 

「遅いよ、もっと早く来てよ」

 

「さっきまで任務だったんだからしょうがないだろ、菊地原」

 

 耳が隠れるほど長い髪が特徴で口が過ぎる少年は菊地原(きくちはら)士郎(しろう)、ケンカに発展しないよういつも菊地原を抑える役割をしているのが歌川(うたがわ)(りょう)

 

「早速で悪いがはじめるぞ」

 

 風間さんが急かすように言うと先にブースに入っていった

 

「はじめまして風間隊のオペレーターの三上(みかみ)歌歩(かほ)です。今日はよろしくお願いしますね」

 

 風間隊のオペレーターがオレに挨拶してきた、いつもは風間さんたち3人しか知らなかったからオペレーターに会うのは今回が初めてだ

 

「おー忍田護ッス、よろしくッス~」

 

「そんな奴の相手してないで早く行くよー」

 

 菊地原が相変わらずの口の悪さで三上に入るように促してきた

 オレは隣のブースに入りトリオン体になって準備は完了すると風間隊が使っているブースから通信が入った

 

『今回は遠征任務を想定している、ステージ選択はそっちに任せる』

 

『え~こっちで選びましょうよ?そのほうがボッコボコに出来るし』

 

『遠征任務では相手の方にアドバンテージがある、だから模擬戦では護に選んでもらう』

 

 端末の先で風間さんと菊地原が少し話をしていたが、風間さんの言い分が正しいと唸るような声が聞こえてきた

 

「分かったッス」

 

 

 

 

 ――――――ランク戦ブース…風間隊

 

 

「今回はどう攻めます風間さん?」

 

「当然最初からカメレオンで行く、今のところ護のサイドエフェクトは1度トリオンを視ないと効果は無い」

 

「だけどあっちはガンナー用トリガーを使って自分の周りに撒くんですよ?攻撃するのはカメレオンを解かないといけないじゃないですか?」

 

 最初に歌川が戦術をどうするのか風間に聞くと以前と同じ策で行くようだ、だがそれに菊地原は文句を言うが他に手が無いのも事実

 

「歌川、今回はアレを使え。それで護の壁を削るぞ」

 

 風間隊の3人は護攻略のキーマンを歌川に委ねた

 

 

 

 戦闘が開始されフィールドに転送された風間隊はまず部隊の合流を優先、ランク戦の仮想エリアでは隊員1人1人が離れた場所に転送されるため当然合流が優先される

 

『三上、護から離れている場所に合流できるポイントを調べてくれ』

 

 《了解です。このフィールドで最適なポイントは……こことここですね》

 

 三上が指定したポイントは護から凡そ北西に200mと北500mくらいのところだった、護が選択したフィールドは高層ビル群が戦闘フィールドの9割を占めていて行動範囲が限定される、特に機動力を生かして奇襲が主な戦い方の風間隊では攻撃の方向が絞られるフィールドは弱点ともいえる

 

 風間はレーダーで2人の位置を見て合流場所を指定した

 

 

 

 風間隊が合流し始めている頃、フィールド中央で周囲に超スローのガンナー用トリガーを展開して風間隊がやってくるのを待っていた

 

「どう攻めて来るかな~楽しみだな~」

 

 毎回オレのサイドエフェクトの弱点を見つけようと様々な手で攻めてきたが未だに判明していない、今のところ分かっているのは忍田本部長、太刀川隊、嵐山隊、迅、玉狛第一とA級チームには殆どバレている

 

 未だに風間隊だけが分からないのはセットしているトリガーが理由だけど

 

 今回はどう攻めてくるのか考えようとしたところで想定外の攻撃が後ろから()()()きた

 

「ッッ!!?この攻撃……」

 

 予想以上に数が多くて撒いた弾も当たって相殺されたが、残りは間を通ってきてオレに命中した

 

 ガンナー用トリガー!?誰が!?

 

 後ろを向いても既に誰も居らず撃ってすぐに隠れたようだ

 すると次の瞬間いきなり目の前に風間さんが現れ右手に出したスコーピオンでオレの首を切ろうとしたけれど

 

「ッ!?」

 

「惜しいッスね風間さん、さっきのはマジでビビったスよ?」

 

 オレのメイントリガーにはスコーピオンをセットしており、顎と鎖骨を繋ぐように出して風間さんの攻撃を防いだ。すぐにγ(ガンマ)を起動してトリオンキューブを出して無理矢理風間さんを後退させて距離を取らせた

 オレは春風に付けられているグリップを左手で持ち右手で柄を持って風間さんに狙いを定めると撃つ

 

 

 

 

 ――――――

 

 

 

「ッッ!?……なんだ!!?」

 

 春風から撃たれた弾丸をシールドを展開して防いだがシールドが()()()()()()()

 トリガーの故障なのかと原因を考える暇もなく2発目が撃たれ今度は防がずに避けた

 

『三上、オレのトリガーはどうなっている?シールドが勝手に戻ったが?』

 

『はぁ?何言ってるんですか風間さん、勝手に戻るわけないじゃないですか?それこそトリガーが故障でもしない限りありえないですよ』

 

 菊地原が即座に違うと言うが風間のトリガーを調べた三上は違うと答えた

 

 《いえ、トリガーの故障ではないです。ただ、どういうわけか風間さんのメイントリガーにセットされているシールドの接続が切れているんです》

 

『切れている?』

 

 《はい、風間さんの使用命令は届いているんですが、途中で「何か」が阻んでいて使えなくなっているみたいなんです》

 

『…………おそらくあのトリガーから撃つ弾丸が原因だろう、あくまで仮定でしかないがトリオン体に命中したら全トリガーが使用できなくなるはずだ。菊地原、歌川絶対に当たるなよ』

 

『わかりました』

 

『トリガーが使えなくなるとかチートじゃん、まあ、でも当たらなければいいだけだけど』

 

 ついさっきシールドで防いだ風間に聞こえていてもお構い無しに言う菊地原に歌川は出ないはずの冷や汗が流れた気がした

 

 

 

 ――――――

 

 

 今度はオレが前へ飛び出し春風を振る、風間さんはそれを鍛えた反射神経で避けながら攻めるがメインにセットされている春風からスコーピオンに切り替えて防ぐ。お互い防がれたり防いだり避けたりと中々手傷すら負わせられない

 そんなとき風間さんの攻撃を避けようと後ろに跳んだらいつの間に接近したのか歌川が()()()()()()()()()()()を出して構えていた

 

「『通常弾(アステロイド)』」

 

「っ!?しまっっ………」

 

 シールドを持っていないオレはもろに被弾した

 

「っく!………まさか歌川がガンナー用トリガーを装備しているなんて………オレへの対抗策ッスか?」

 

「いや、訓練生の頃からからだ。今まで使わなかったのはこういうときのために使わないように言っていたからだ」

 

 スコーピオンを出しながら歩いて近づいてくる風間さんが言ってきた、確かにこれは想定外だと思った

 風間さんは隊長としても優秀で、隊を作るときも当時孤立していた菊地原を誘ったり利用価値が高いと早い時期から見出していた

 

 歌川のアステロイドは当たり所が悪く片足を無くし地面に突っ伏すような状態になり、ここからどう凌ごうかと策を巡らせた

 

「…………エスクード!!」

 

 ワザと声を大きく言って警戒心を上げさせて玉狛独自の防御壁を風間の足元に出現させた

 オレの手から薄緑に輝く軌跡が地面を這うよう進み、その先に壁が出たため2人の視線は自然とそっちに向いた、オレはその隙を逃さずガンナー用トリガーで歌川の足に傷を負わせた

 後ろに飛んで避けた風間さんは援護に行けず、地面から出た壁が囮だと気づいたときには歌川は既に手傷を付けられていたが、被害は小さくお互いオレから距離を取っていた

 

「大丈夫か歌川?トリガーに変化は?」

 

「すみません風間さん………全トリガーが使えなくなりました」

 

『何やってんだよ歌川、まんまと引っかかって』

 

 傷は大きくもないがトリガーが一切使えなくなった歌川は必要以上にオレから距離を取った、無防備の状態からは足手まといにしかならないからだ

 

「風間さんの予想が当たりましたね」

 

「ああ、中々に厄介だ。おまけにサイドエフェクトの弱点すらまだ分かっていない」

 

 他の人から聞けばいいだけなのだが風間さんはそうはしなかった、プライドが高く自分で弱点を見つけると決めている。とある大学生のようになるべく他人の世話になりたくないという子供染みた意地が主な理由なのだが

 

 欠けた足をスコーピオンでフィギュアスケートの靴ように形を変えて足の代用とした

 すると前後にいた風間さんと歌川が突然飛んで逃げた、追いかけようとしたら地面に影が出来て段々と大きくなっていき、上を見るとどこから壊したのか()()()()()がオレに向かって飛んできた

 

「ちょ……なんスかソレーーっ!!?」

 

 体を捻って避けたがそこでしまった、と思った

 落下した電柱は土煙を上げてオレの視界を塞いだ、回りを見ても風間さんと歌川の2人を()()()()()()()()

 体を捻ってもギリギリで当たるかと思ったオレは目を咄嗟に()()()しまったため追跡できなくなってしまった

 

 

 ――――――――

 

 

『どうだ三上、護に動きはあるか?』

 

 《いえ、ないです。どうやら隊長たちを見失ってしまったみたいですよ?》

 

『見失う?護のサイドエフェクトは障害物があっても位置が分かるはずだが』

 

『いいじゃないですか見失ったんなら、これでまた奇襲が出来ますよ』

 

 先ほどの電柱は菊地原が投げ飛ばしたものだ、歌川が逃げる時間が稼げればいいと思っていての攻撃だが、まさかそれがオレのサイドエフェクトの追跡から逃げることが出来るとは幸運だった

 

 

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