マルマル:プロローグ
鉄くさい臭いが鼻孔を伝って、つつー、と流れ落ちていく。
それすらも気にならないくらいに、俺は妙な既視感に冷静さを欠き、眼前の出来事に意識を捉われ、困惑していた。
「なに、これ――――」
鏡。最古のそれは水面にまで遡り、人類史と共にあり続けてきた。
それに映る姿が自己のものであると知ることが自己認識の一歩であるとされ、鏡によって、人は自分自身を客観的に捉える術を得たのだ。
そして、鏡に映る自分を自分と認識できる能力のことを自己鏡映像認知能力というらしい。それの有無は、動物の知能を測るための目安となるほどだ。
さて、霊長の頂点たる人間として、まだ若くはあるが齢を重ねてきた俺である。この自己鏡映像認知能力というやつは、俺にももちろん備わっていると思われる。だって、小さい頃はなんとなく鏡の
結論、自己鏡映像認知能力は俺にも備わっている。
が、しかし。しかしだ。
だとするならば、この現状をどう見るべきか。
現在、俺は見覚えのないどことも知れぬ部屋の中で一人、等身大の鏡、いわゆる姿見の前に立ち尽くし、それに映る己の姿を凝視している。
艶のある黒い髪。これはいい。俺も日本人ゆえ、黒髪はデフォルトだ。
問題点その一。その見事な黒髪が、俺がいつも切り揃えているのよりもやや長めに伸びており、あまつさえそれが左右の側頭部で一つずつ結われていることだ。
そして、そんな黒髪に縁取られた顔。
問題点その二である。この世に生を受けかれこれ十数年、俺はこの一人称のとおり、
しかし、今、鏡に映る俺の顔には、それがないのだ。吊り上がった勝ち気そうな目は瞳が大きく、けれど鋭さよりか、どこか包容力を感じさせる。すっと通った鼻梁は色白で、そのくせ勝ち気そうな印象を強調していた。頬も血色がよく、染み一つないそれはさながら玉のようである。唇も瑞々しく、輪郭も端整そのもの。
まさしく、絵に描いたような美少女である。
極めつけは、そんな見映えのする顔の下に、これまた美麗な肢体がくっついているのだ。
細っこい首筋に続き、思わず触れてしまいそうになる鎖骨、肩のライン。さらには、華奢ながらにどこか力強さも感じさせる四肢。そして、男が感じる性差の象徴とも言える乳房。うん、ナイスおっぱい。形のいいそれは、現在、外気に晒され、惜しげもなくその形姿を見せびらかしている。まぁ、ガン見しているのはなにを隠そう俺一人だけだけど。
さて、ここまでで情報を整理しよう。
俺の姿が映るはずの鏡に映るのは知らない誰かの姿だった。
伸びた髪、知らない髪型、かわいらしい顔、美麗な肢体、おっぱい。あ、そういえば鼻血……ティッシュ的な……あ、あったあった。……よし。
うん、では、情報を統合しよう。
まとめると、だ。
どうやら俺は、冴えない男から美少女にジョブチェンジを果たしたらしい。
ダー○の神殿行ったら、これ、戻してもらえたりしねぇの……?
おっかしいなぁ。。
もっとこう、おっぱいという単語を散りばめたくて書き始めたんだけど(川内あんま関係ない)、これ、ぜんぜんおっぱい要素ないよ。。?
でも川内愛に目覚めてしまったので、ちょっと彼女を改二にしてきます。